特別寄与料の相続税での取り扱い

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相続法

特別寄与料の相続税での取り扱いの写真

この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

40年ぶりの相続法大改正により創設された特別寄与料という制度。従前からあった寄与分は相続人にのみ認められていた制度でしたが、特別寄与料は、相続人でない親族についても遺産の一部を受け取ることが出来るようになりました。
今回は、この特別寄与料の相続税の取り扱いについて徹底解説します。
なお、相続法大改正の一番の目玉である配偶者居住権の解説については、配偶者居住権をわかりやすく徹底解説!【令和2年4月1日~適用開始】 を参照してください。

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特別寄与制度の創設の経緯

相続法改正前までは、寄与分は相続人にのみ認められていた権利でした。したがって、相続人以外の、例えば長男の嫁や内縁の妻がいくら被相続人を介護したり、財産増加に寄与したとしても遺産を分けてもらうことはできませんでした。
このような相続人以外の人の被相続人に対する貢献を考慮することにより、相続における遺産分配をより公平にするために、相続人以外の人にも一定の財産を請求できる権利を与えたのです。

特別寄与料の請求者

特別寄与料を請求できる人について、法制審議会で色々と議論があったそうです。例えば、全くの第三者まで広げるのか、親族等の身内にするのかなどです。結果的には、特別寄与料を請求できる人は、被相続人の親族となりました。
ちなみに、親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。

なお、特別寄与料を請求できる親族から以下の人は除かれているので注意が必要です。

□ 相続人
□ 相続放棄者
□ 欠格又は廃除により相続権を失った者

 

特別寄与の範囲

相続人に対して認められている寄与分については、寄与行為の態様に限定されていませんが、特別寄与については、寄与分よりも範囲は狭く、「療養看護その他の労務の提供」に限定されています。

特別寄与料の負担割合

特別寄与料は、相続人が負担することとなりますが、負担割合は、民法に定める法定相続分又は指定相続分とされました。
例えば、遺言書がない相続で、相続人が長男と二男がいたとして、長男の嫁に特別寄与料200万円を払うこととなったとします。
この場合には、長男から100万円、二男から100万円をそれぞれ長男の嫁に支払うこととなるのです。

権利行使期限

特別寄与者は、相続人に対していつでも特別寄与料の請求をできるのでしょうか?
例えば、亡くなってから5年後にこの制度をあることを知って相続人に請求できたとしたら、相続人はいつまで経っても安心して遺産を相続できません。このようなことにならないように、亡くなってから一定期間経った場合には特別寄与料を請求できなくなります。
具体的には、被相続人が亡くなったこととその相続人のことを知ってから6ヶ月以内、又は、被相続人が亡くなってから1年以内のいずれか早い日です。

相続税での取り扱い

特別寄与者

特別寄与者が相続人等から支払ってもらう特別寄与料の金額が決まった場合には、その特別寄与料の金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されます。
こちらも相続人からの贈与になるのか等色々想定されていましたが、一番無難に特別寄与者に相続税がかかることとなりました。

遺留分侵害額の請求と同様に特別寄与料の請求をした時点では何の課税関係も生じません。あくまで特別寄与料の金額が確定した段階で相続税の課税関係が発生するという点に注意が必要です。

相続税法第4条第2項

特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が確定した場合においては、当該特別寄与者が、当該特別寄与料の額に相当する金額を当該特別寄与者による特別の寄与を受けた被相続人から遺贈により取得したものとみなす。

なお、相続税の課税価格から控除できる葬式費用の額は、相続人又は包括受遺者が負担したものに限られていますが、特別寄与者が、現実に被相続人の葬式費用を負担した場合には、特別寄与料の額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該特別寄与料の額として取り扱います。

相続税法基本通達4-3

民法第958条の3の規定により相続財産の分与を受けた者が、当該相続財産に係る被相続人の葬式費用又は当該被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合において、これらの金額を相続財産から別に受けていないとき又は同法第1050条の規定による支払いを受けるべき特別寄与料の額が確定した特別寄与者が、現実に当該被相続人の葬式費用を負担した場合には、分与を受けた金額又は特別寄与料の額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該分与された価額又は特別寄与料の額として取り扱う。

特別寄与料を支払う相続人

特別寄与者に特別寄与料を支払った場合には、その特別寄与料相当額が債務控除の対象になります。

相続税法第13条第4項

特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る課税価格に算入される場合においては、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

特別寄与者の相続税申告書の提出期限

特別寄与者は、特別寄与料の金額が決まってから10月以内に相続税の申告書を提出しなければなりません。

相続税法第29条第1項

第4条第1項又は第2項(この第2項が前述の特別寄与者の相続税の取り扱いの条文です)に規定する事由が生じたため新たに第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなつた者は、同項の規定にかかわらず、当該事由が生じたことを知つた日の翌日から10月以内(省略)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

特別寄与者と相続人の間に争いなどがあり、被相続人の財産の概要を相続人から伝えてもらえずに、課税価格の全体像を把握できなかったら適正な申告などできないような気がしますが、今後の課題としてなんかしらの指針が出るかもしれません。

特別寄与料を支払う相続人の更正の請求期限

相続人等は、相続税の申告期限後に特別寄与料を支払うことになっても4ヶ月以内に更正の請求が可能となります。
未分割申告をしたあとに遺産分割が固まった場合に更正の請求ができるのと同じロジックです。

相続税法第32条第7項

相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額(省略)が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求(省略)をすることができる。

七 第4条第1項又は第2項に規定する事由が生じたこと。

Q & A

特別寄与者の相続税は2割加算の対象?

特別寄与者が被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む。)及び配偶者以外の人の場合には2割加算の対象となります。
ほとんどの特別寄与者が2割加算の対象となるかと思いますが、例えば、被相続人の両親(被相続人には子がいるため相続人には該当しない)が特別寄与者に該当する場合には2割加算の対象にはならないでしょう。
なお、2割加算の詳しい説明は、相続税の2割加算について徹底解説!を参照してください。

特別寄与料で世代飛ばしができる?

【前提】
被相続人:祖父(95歳)
相続人:長男(70歳、祖父の子)
特別寄与者:孫(45歳、長男の子)

上記前提において、相続税の節税となる財産の世代飛ばしを目的として相続人でない孫に長男が特別寄与料を1億円支払った場合において、その特別寄与料は認められるでしょうか?
さすがに1億円は現実問題として認められないでしょう。特別寄与料の創設の趣旨にも反してます。

孫が実際に祖父の療養看護をしていた場合に、社会通念上相当と認められる金額の範囲内であればもちろん特別寄与料として認められるでしょう。

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相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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