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遺言書の付言事項とは|書き方・効果と限界・トラブルを防ぐ文例

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遺言書作成

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 付言事項とは、財産の分け方の理由や家族への想いを記す、遺言書の中の「法的拘束力のないメッセージ」。法律上の効力をもつ遺言事項とは区別される。
  • 付言に法的効力はないが、「なぜこの分け方にしたか」を理由つきで書くことで、相続人の不公平感をやわらげ、争いの予防に役立つ。
  • 付言で「遺留分を請求しないで」と書いても、遺留分侵害額の請求(民法第1046条)は止められない。遺留分対策は配分や原資準備で別途備える。
  • 特定の相続人を非難する記載は逆効果。自筆・公正証書のどちらでも付言は書ける。

付言事項(ふげんじこう)とは、遺言書の中に記す、財産の分け方の理由・家族への感謝・葬儀やお墓の希望といった、法的拘束力のないメッセージのことです。 遺言書には、法律上の効力をもつ「遺言事項」(誰に何を遺すかなど)と、効力はないが想いを伝える「付言事項」の2種類の記載があります。

財産の配分だけを淡々と書いた遺言は、ときに「なぜ自分は少ないのか」という不満を生みます。本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、付言事項の効果と限界、トラブルを防ぐ書き方と文例を解説します。なお、遺言の有効性をめぐる紛争への対応は弁護士の業務のため、提携弁護士と連携してご案内します。


付言事項と遺言事項の違い

遺言書の記載は、大きく2つに分かれます。

区分内容法的効力
遺言事項誰にどの財産を遺すか、遺言執行者の指定、相続分の指定など法律で定められた事項あり(法律上の効力が生じる)
付言事項分け方の理由、家族への感謝、葬儀・お墓・ペットの希望、メッセージなし(拘束力はない)

遺言は、民法が定める方式に従って作成する必要があります(民法第960条)。そのうえで、財産の承継先、遺言執行者の指定(民法第1006条)、相続分や遺産分割方法の指定など、法的効力を持たせたい内容は、本文の「遺言事項」として明確に記載します。付言事項は、これらの本文を補うメッセージであり、相続人や受遺者を法的に拘束するものではありません。だからこそ、形式にとらわれず自由に想いを綴れるのが付言の長所です。


付言事項に「できること」と「できないこと」

付言の役割を正しく理解するには、限界を知っておくことが大切です。

  • できること: 配分の理由を伝えて相続人の納得感を高める/感謝の気持ちを残す/葬儀・お墓・ペットなどの希望を伝える/円満な手続きを促す
  • できないこと: 相続人に特定の行動を法的に強制する/遺留分の請求を封じる/遺言事項として書いていない財産の承継先を決める

特に誤解が多いのが遺留分です。付言に「遺留分は請求しないでほしい」と書いても、遺留分を持つ相続人は遺留分侵害額を請求できます(民法第1042条・第1046条)。遺留分への配慮は、付言での「お願い」だけでなく、生前の配分調整や、請求された場合の支払原資の準備で備えるのが現実的です。

また、葬儀・納骨・お墓・ペットの世話に関する希望も付言に書けますが、付言だけでは相続人や第三者に実行を強制できません。確実に実現したい場合は、死後事務委任契約・負担付遺贈・信託・遺言執行者の指定など、本文や別の契約と組み合わせて設計します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):遺留分とは?割合・計算方法・侵害額請求を税理士がわかりやすく解説


トラブルを防ぐ付言の書き方

付言は「責める」ためではなく「理解してもらう」ために書くのが基本です。次の3点を意識すると、争いを招きにくくなります。

1. 配分の「理由」を添える

「長男に自宅を遺すのは、同居して介護をしてくれたから」のように、配分の理由を具体的に書くと、ほかの相続人の不公平感がやわらぎます。理由のない不平等は不信を生みますが、納得できる理由があれば受け入れられやすくなります。

2. 感謝を前向きな言葉で

家族一人ひとりへの感謝を、できるだけ具体的に書きます。特定の相続人を非難する記載は避けてください。感情的な言葉は、かえって対立を深める火種になります。

3. お願いは「お願い」として書く

「兄弟仲良く」「お墓を守ってほしい」といった希望は、強制ではなく願いとして書きます。法的拘束力がないことを前提に、気持ちが伝わる表現を選びます。


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そのまま使える付言事項の文例

実際の付言は、次のような構成にすると書きやすくなります。

付言事項の文例

この遺言を残すにあたり、家族へ私の気持ちを伝えます。長年連れ添った妻には、これまでの感謝を込めて、自宅と預貯金の多くを遺します。妻がこれからも安心して生活できるようにという願いからです。長男と長女には、それぞれ預貯金の一部を遺します。配分に差があるのは、妻の今後の生活を最優先に考えたためで、子どもたちに優劣をつけたわけではありません。どうかこの想いを理解し、家族で支え合って穏やかに手続きを進めてください。みんなと過ごした日々が私の宝物でした。本当にありがとう。

ポイントは、①感謝 → ②配分の理由 → ③家族への願いの流れです。寄付や遺贈を考えている場合は、その想いも付言に添えると、遺された家族が遺言者の意図を理解しやすくなります。なお、事業・自社株式・事業用資産の承継を遺言で定める場合は、遺留分・相続税・納税資金・事業承継税制などの検討が必要になるため、本文の設計と税務確認を税理士法人と連携して行います。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):遺言で寄付をすると相続税が非課税に!?(相続と寄付の関係 遺贈寄付編)

ケース別の文例

ご家族の状況によって、付言で伝えるべきことは変わります。代表的なケースの文例を挙げます。

  • 配偶者に多く遺す場合:「長年連れ添った妻に多くを遺すのは、これからの生活を安心して送ってほしいという私の願いです。子どもたちには、母さんを支えてくれることを願っています。」
  • 介護してくれた子に多く遺す場合:「長女には、私の介護を長年担ってくれた感謝を込めて、他のきょうだいより多くを遺します。皆、それぞれの形で支えてくれました。優劣をつけたわけではありません。」
  • 遺贈寄付をする場合:「財産の一部を◯◯(団体名)に寄付します。長く応援してきた活動を、最後に少しでも後押しできればと思います。家族にもこの想いを理解してもらえると嬉しいです。」
  • おひとりさまの場合:「身近で支えてくれた◯◯さんに財産を遺します。血縁ではありませんが、私にとって家族同然の存在でした。これまで本当にありがとう。」
  • 遺留分に配慮する場合:「配分に差をつけましたが、それぞれの事情を考えてのことです。どうか遺留分をめぐって争うことなく、話し合いで穏やかに進めてほしいと願っています。」

ただし、遺留分に関する付言はあくまでお願いであり、遺留分侵害額請求(民法第1046条)を止める効力はありません。遺留分を侵害する可能性がある場合は、付言だけに頼らず、本文での配分の調整・代償金の原資・納税資金まで含めて設計することが大切です。

逆に、避けたいNGな書き方は次のとおりです。

  • 「長男には一切遺さない。親不孝だったからだ」のように、特定の人を一方的に非難する記載
  • 本文(遺言事項)と矛盾する内容
  • 「絶対に変更するな」など、実現できない強い命令口調

付言は、読んだ家族が前向きな気持ちになれる言葉でまとめるほど、争いの予防効果が高まります。

付言で足りるもの・別の備えが必要なもの

伝えたい内容によって、付言で足りるか、本文や別契約での備えが必要かが変わります。

内容付言だけでよいか補足
感謝・配分の理由付言に向いている
「兄弟仲良くしてほしい」法的拘束力はないお願い
遺留分を請求しないでほしい×本文の配分調整・代償原資の準備が必要
葬儀・納骨の希望死後事務委任契約との併用が安全
ペットの世話負担付遺贈・信託・預託金の設計を検討
財産の承継先×必ず遺言の本文に書く

付言を活かすなら「本文」とセットで設計する

付言事項は、それ単体で力を発揮するものではありません。法的に有効な本文(遺言事項)があってこそ、想いが実際の財産承継として実現します。

  • 本文で財産の承継先と遺言執行者を明確に定める
  • 配分に差をつける場合は、遺留分も意識して全体のバランスを検討する
  • その配分にした理由を付言で補い、相続人の納得感を高める

この「本文+付言」をセットで設計することが、争いを防ぐ遺言の基本です。当法人では、公正証書遺言の作成サポートの中で、本文の整理とあわせて付言の文案づくりもお手伝いしています。


付言事項を書くときの注意点

最後に、よくある失敗を確認しておきます。

  • 本文と付言を混同しない: 財産の承継先など効力をもたせたい内容は、必ず本文(遺言事項)に書きます。付言に書いても法的効力は生じません。
  • 矛盾を残さない: 本文と付言で食い違う内容を書くと、相続人が混乱します。
  • 公正証書では公証人に趣旨を伝える: 公正証書遺言で付言を入れる場合は、内容を公証人に伝え、文章として整えてもらいます。
  • 更新を忘れない: 家族関係や気持ちが変わったら、本文の見直しとあわせて付言も書き直します。

遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 付言事項はどこに、どれくらいの長さで書けばいいですか?

A. 付言事項は、遺言の本文(誰に何を渡すかの部分)の後ろに書くのが一般的です。長さに決まりはなく、数行から1ページ程度で、伝えたい想いを簡潔にまとめるのが読みやすくなります。長すぎたり感情的すぎたりすると意図が伝わりにくくなるため、要点を絞ります。

Q2. 付言に書かないほうがよいことはありますか?

A. 特定の相続人を一方的に非難する表現や、差別的・侮辱的な内容は避けます。かえって家族の対立を生み、争いの火種になりかねません。付言は、感謝や配分の理由、家族への願いなど、円満な相続につながる前向きな内容にするのが効果的です。

Q3. 付言事項は自筆証書遺言でも公正証書遺言でも書けますか?

A. どちらの方式でも書けます。自筆証書遺言なら本文と同じく自書します。公正証書遺言でも、公証人に伝えれば付言として記載してもらえます。方式を問わず、本文(法的効力のある部分)と付言(想いを伝える部分)を分けて整理すると分かりやすくなります。

Q4. 付言の内容を後で書き換えたいときはどうしますか?

A. 遺言書の中に書いた付言事項を変更したい場合は、遺言そのものの変更・作り直しと同じく、遺言の方式に従って行う必要があります。ただし、法的効力を求めない単なるメッセージであれば、別途エンディングノートや手紙で補足する方法もあります。財産の承継先など効力を持たせたい内容は、必ず遺言の本文で見直します。

Q5. 付言事項は誰が読むことになりますか?

A. 付言は、相続が始まって相続人や受遺者が遺言書を確認するときに、本文とあわせて目にすることになります。亡くなった後に家族へ伝わるメッセージという性質です。読む人を思い浮かべながら、誤解を招かない表現で書くことが大切です。


まとめ

付言事項は、法的効力はないが、相続を円満に進めるための「想いの架け橋」です。配分の理由を添え、感謝を前向きな言葉で伝えることで、相続人の納得感が高まり、争いの予防につながります。一方で、遺留分の請求を封じるなど法的な効果は生じないため、効力をもたせたい内容は必ず本文(遺言事項)に書き、付言はそれを補う役割と位置づけることが大切です。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、付言事項を含む公正証書遺言の作成をサポートしています。「想いをどう言葉にすればいいか分からない」という段階から、初回無料相談をご利用ください。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第960条(遺言の方式)
  • 民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
  • 民法第1006条(遺言執行者の指定)
  • 民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)
  • 民法第1046条(遺留分侵害額の請求)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。