遺言書作成を行政書士に依頼するメリット・費用・進め方|自分で作る場合との比較
10秒でわかる この記事の要約
- 遺言書は自分でも作れるが、方式不備があると無効になる。財産の特定不足や遺留分への配慮不足は、無効ではなく手続きの停滞や争いの原因になる。
- 専門家に依頼するメリットは、方式・文言の不備を減らし実行しやすい遺言にできること、遺留分・二次相続への配慮、公証役場との調整や証人手配まで任せられること。
- 費用は、行政書士報酬(遺言の内容により変動。複雑なケースほど高くなる)のほか、公正証書なら公証人手数料が別途。手数料は財産額・受け取る人数で算定し、全体1億円以下なら遺言加算1万3,000円が加わる。
- 進め方は、相談→意向と財産のヒアリング→原案作成→公証役場との調整→作成、という流れ。遺言能力が必要なので判断能力があるうちに早めに。
「遺言書は自分で書けばいい」と思う一方で、「書き方を間違えて無効になったら」と不安に感じる方は多いものです。実際、自筆の遺言は手軽に作れる反面、方式の不備があると無効になり、また財産の特定があいまいだったり遺留分への配慮を欠いたりすると、相続手続きが滞ったり相続人の争いを招いたりすることがあります(遺留分の問題は、遺言が無効になるのではなく、後述の遺留分侵害額請求として現れます)。
そこで選択肢になるのが、専門家に依頼して作る方法です。本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、遺言作成を行政書士に依頼するメリット・費用の目安・相談から完成までの進め方を、自分で作る場合と比較しながら整理します。なお、紛争性がある場合は提携弁護士、登記は司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
遺言書は自分でも作れる。でも「無効」と「争い」が怖い
遺言書は、必ず専門家に頼まなければ作れないものではありません。自分で書く自筆証書遺言は、紙とペンがあれば費用をかけずに作成できます。
ただし、自筆証書遺言には次のようなつまずきが起こりがちです。
- 方式の不備:全文の自書・日付・署名・押印などの要件を満たさず、無効になる
- 財産の特定があいまい:「自宅」「預金」などの書き方が不正確で、手続きで使えない
- 遺留分への配慮不足:特定の人に偏らせて、ほかの相続人とトラブルになる(これは遺言を無効にする問題ではなく、遺留分侵害額請求につながる問題)
- 保管の問題:紛失・改ざん・発見されないリスク
紛失・改ざんのリスクは、法務局の自筆証書遺言書保管制度(保管申請手数料1件3,900円)を使えば下げられ、相続開始後の家庭裁判所の検認も不要になります。ただし、法務局は遺言の内容の有効性まで保証するわけではありません(外形的な方式の確認にとどまります)。
公証人が関与して作る公正証書遺言は、方式不備で無効になりにくく、原本が公証役場に保管され、検認も不要です。確実性を重視するなら、公正証書遺言を軸に、専門家のチェックを受けて作ると、方式・文言・財産特定のリスクを下げられます。
専門家に依頼する5つのメリット
遺言作成を専門家に依頼すると、主に次のメリットがあります。
- 方式・文言の不備を減らせる:要件や文面を整え、無効や「手続きで使えない」リスクを下げ、実行しやすい遺言に近づけられる。公正証書遺言にすれば、公証人の関与でこの効果がさらに高まる。
- 遺留分・二次相続に配慮できる:兄弟姉妹以外の相続人の遺留分(侵害すると遺留分侵害額請求の対象になり得る)や、残された配偶者のその後(二次相続)まで見据えた配分を検討できる。
- 意思を正確に文章化できる:「誰に・何を・どの方法で」渡すかを、手続きで使える表現で書ける。付言事項で家族へのメッセージも整理できる。
- 公証役場との調整・証人手配を任せられる:公正証書遺言に必要な、公証人との文面・日程の調整や、証人2名の手配まで任せられる。
- 遺言執行まで見据えられる:遺言執行者の指定や、相続発生後の手続きの段取りまで相談できる。
なお、これらは行政書士単独の効果というより、公正証書化・公証人の関与・各士業との連携によって得られるものです。とくに、不動産が財産の大部分を占める、子どもがいない夫婦、特定の人に多く残したい、相続人以外へ渡したい、といったケースは、配分や文面の難易度が上がるため、専門家の関与が効いてきます。
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誰に頼める?行政書士・司法書士・弁護士・税理士の役割
遺言・相続に関わる専門家は複数いて、対応できる範囲が異なります。
- 行政書士:争いのない前提での、遺言書原案の作成、財産の洗い出しや必要書類の収集、相続手続きの整理などを担います。
- 司法書士:不動産の名義変更(相続登記)など、登記に関わる手続きを担います。
- 弁護士:すでに相続人間で争いがある、または訴訟・交渉が必要な場合の代理を担います。
- 税理士:相続税の試算・申告など、税務の判断を担います。
つまり、「円満に遺言を残したい」「書類を正確に整えたい」という段階では行政書士が窓口になりやすく、登記・紛争・税務は、それぞれの専門家と連携して進めるのが基本です。行政書士は、他の法律で各専門家に制限された業務(登記申請の代理、税務申告、紛争の代理など)には踏み込まず、必要に応じて橋渡しをします。
| 依頼先 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 行政書士 | 争いがない前提で、原案作成・必要書類・公証役場調整を任せたい | 紛争の代理・登記申請・税務申告は不可 |
| 司法書士 | 不動産の承継・相続登記を強く意識したい | 税務判断・紛争代理は別途確認 |
| 弁護士 | 相続人間の争い・遺留分・有効性が問題になりそう | 費用は高くなりやすい |
| 税理士 | 相続税・二次相続・納税資金を重視したい | 法務の文言は他士業の連携が要ることも |
費用の目安
遺言作成を依頼するときの費用は、「専門家の報酬」と「公証人手数料などの実費」に分かれます。費用項目を分けて見ておくと、見積もりの比較がしやすくなります。
| 費用項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 行政書士報酬 | 内容の整理・原案作成・資料収集・公証役場調整 | 事務所・内容で変動(不動産が複数・配分が複雑なほど高い) |
| 公証人手数料 | 公正証書遺言の作成手数料 | 財産額・受け取る人ごとに算定し合算 |
| 遺言加算 | 全体の財産が1億円以下のとき | 手数料に1万3,000円を加算 |
| 正本・謄本の交付 | 公正証書の正本・謄本 | 枚数・交付方法で変動 |
| 証人手配費用 | 証人2名が必要 | 専門家・公証役場で手配する場合に発生 |
| 戸籍・証明書の取得 | 必要資料の実費 | 通数で変動 |
| 税務試算 | 相続税・二次相続の試算 | 税理士の業務 |
| 遺言執行報酬 | 相続開始後の執行 | 遺産額・業務量で変動(相続発生時に遺産から) |
公証人手数料は、公証人手数料令に基づき、財産を受け取る人ごとにその価額を基準表に当てはめて算出し、合算します。さらに全体の財産が1億円以下の場合は1万3,000円が加算されます(遺言加算)。正本・謄本の交付手数料や、公証人が出張して作成する場合の日当・交通費が加わることもあります。一般的な遺言では数万円程度に収まることもありますが、財産額が大きい・受け取る人が多い・出張作成などの場合は増えるため、事前に公証役場や依頼先で見積もりを確認します。なお、相続税が関わる場合の試算・申告は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):公正証書遺言の効果と作成方法をわかりやすく解説!!
相談から完成までの進め方
遺言作成を専門家に依頼した場合、一般的な流れは次のとおりです。
- STEP1 相談:遺言を残したい背景や心配ごとを伝え、方針を相談します。
- STEP2 意向・財産のヒアリング:誰に何を渡したいか、財産にどんなものがあるかを整理します。必要に応じて財産の調査や書類の収集も行います。
- STEP3 原案の作成:遺留分や二次相続にも配慮しながら、遺言の原案を作ります。付言事項もここで検討します。
- STEP4 公証役場との調整:公正証書遺言にする場合、公証人と文面・日程を調整し、証人2名を手配します。
- STEP5 作成当日:公証役場で内容を確認し、署名・押印して完成します。原本は公証役場に保管されます。
- STEP6 保管・執行の準備:正本・謄本の保管方法や、遺言執行者への引き継ぎを確認します。
体調や判断能力に不安があると、作成自体が難しくなることがあります。遺言には遺言能力(その時点で内容を理解し判断できること。民法963条)が必要なので、判断能力がしっかりしているうちに着手するのが大切です。
自分で作る場合と専門家に依頼する場合の比較
| 項目 | 自分で作る(自筆証書) | 専門家に依頼する |
|---|---|---|
| 費用 | ほぼ無料(保管制度利用で数千円) | 報酬+公証人手数料がかかる |
| 方式・文言不備のリスク | 自分で確認するため高め | 整えられるため下げやすい |
| 遺留分・二次相続の配慮 | 自分で判断する必要がある | 相談しながら設計できる |
| 公証役場の調整・証人手配 | 自分で行う | 任せられる |
| 手間・時間 | 調べながらで負担が大きい | 負担を減らせる |
| 向いている人 | 財産がシンプルで内容が明確 | 不動産が多い・配分が複雑・確実性重視 |
費用を抑えたい・内容がシンプルなら自分で作る選択もありますが、財産や相続人の事情が複雑なほど、専門家に依頼する価値が大きくなります。
遺言の作成や、財産の渡し方の設計については、こちらもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺言書は自分で書いても有効ですか?
A. 民法の方式を満たせば、自分で書いた自筆証書遺言も有効です。ただし、日付や署名押印などの方式に不備があると無効になります。また、財産の書き方があいまいだったり遺留分を踏まえていなかったりすると、無効ではないものの、手続きが進まなかったり、相続人間で遺留分をめぐる争い(遺留分侵害額請求)になったりすることがあります。確実性を重視するなら、公正証書遺言や専門家のチェックを受けて作る方法が安心です。
Q2. 遺言作成を行政書士に依頼すると、費用はどのくらいかかりますか?
A. 行政書士の報酬は、事務所や遺言の内容によって幅があります。財産の種類や相続人の数、原案づくりの難易度で変わり、不動産が複数あるケースや配分が複雑なケースほど高くなります。公正証書にする場合はこれとは別に公証人手数料がかかり、財産の額や受け取る人数によって決まります。総額は内容で変わるため、依頼前に見積もりで内訳まで確認するのが確実です。
Q3. 遺言の作成にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 内容や財産調査の量によりますが、相談・ヒアリングから原案づくり、公証役場との日程・文面の調整を経て、数週間程度をみておくとよいでしょう。財産の種類が多い、相続人の関係が複雑などの場合は、もう少し時間がかかることがあります。体調や判断能力に不安があるときは、早めに着手するのが安心です。
Q4. 相続人どうしで争いになりそうな場合も、行政書士に頼めますか?
A. すでに争いがある、または訴訟になりそうな場合は、代理交渉や紛争解決ができる弁護士の領域です。行政書士が対応するのは、争いのない前提での遺言書原案の作成や手続きの整理です。不動産の登記は司法書士、相続税の計算・申告は税理士と、内容に応じて各専門家と連携して進めます。
Q5. 認知症が進んでからでも遺言は作れますか?
A. 遺言をするには、その時点で内容を理解し判断できる「遺言能力」が必要です(民法963条)。認知症などで判断能力が低下すると、遺言を作れなかったり、後から有効性を争われたりするおそれがあります。気になり始めた段階で、判断能力がしっかりしているうちに作成しておくことが大切です。
Q6. 公正証書遺言の証人は、誰でもなれますか?
A. なれない人がいます。民法974条により、未成年者、推定相続人や受遺者およびその配偶者・直系血族、公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人は、証人になれません(証人欠格)。そのため、家族や財産を受け取る人は証人になれないことが多く、実務では専門家や公証役場の紹介で、利害関係のない証人2名を手配します。
まとめ
遺言書は自分でも作れますが、方式に不備があると無効になり、財産の特定不足や遺留分への配慮不足は、無効ではなく手続きの停滞や争い(遺留分侵害額請求)の原因になります。専門家に依頼すると、方式・文言の不備を減らせるほか、遺留分・二次相続への配慮、文案や付言の整理、公証役場との調整や証人手配、遺言執行まで見据えられるのがメリットです。
費用は、行政書士報酬が遺言の内容によって変わり(不動産が複数ある・配分が複雑なケースほど高くなります)、公正証書なら公証人手数料が別途かかります。手数料は財産額・受け取る人数で決まり、財産が1億円以下のときは遺言加算1万3,000円が加わります。総額は内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。進め方は、相談→意向と財産のヒアリング→原案作成→公証役場との調整→作成、という流れです。遺言には遺言能力が必要なので、判断能力があるうちに早めに着手しましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言作成のご相談に対応しています。登記は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズ、紛争性がある場合は弁護士と連携します。
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公正証書遺言は、無効になりにくく検認も不要な、確実性の高い遺言方式です。効果や作成方法については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第960条(遺言の方式)・第963条(遺言能力)・第967条〜第969条(普通方式の遺言・自筆証書遺言・公正証書遺言)
- 民法第974条(証人・立会人の欠格事由)・第1004条第2項(公正証書遺言は検認不要)・第1022条(遺言の撤回)・第1046条(遺留分侵害額請求)
- 公証人手数料令(公正証書遺言の手数料の根拠)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律(自筆証書遺言書保管制度)
- 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く
