非上場株式(自社株)の相続手続き|株主名簿の書換と会社への対応
10秒でわかる この記事の要約
- 非上場株式の相続は、証券会社で完結する上場株式と違い、発行会社への「株主名簿の書換(名義書換)」が中心になる。
- 相続で株式を取得した相続人は、発行会社へ株主名簿の名義書換を請求する。株主として会社に権利を行使するには、株主名簿への反映が重要(会社法第130条・第133条)。
- 遺産分割で取得者が決まる前は、株式が相続人間で共有状態になることがあり、権利行使者1人を定めて会社へ通知する必要がある(会社法第106条)。
- 多くは譲渡制限株式。定款があれば会社が売渡しを請求できるが、決議・通知・期限の手続きが必要(会社法第174条〜第177条)。
- 株式の評価・相続税は専門性が高く税理士法人と連携。会社が協力しない・価格で揉める場合は提携弁護士と連携。
非上場株式(自社株)の相続手続きとは、亡くなった方が保有していた非上場会社の株式について、取得する相続人を確定し、発行会社に対して株主名簿の名義を書き換える一連の手続きのことです。 上場株式のように証券口座で完結せず、発行会社とのやり取りが中心になるのが大きな特徴です。
特に同族会社の自社株は、経営権そのものに直結するため、手続きが複雑になりがちです。本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、非上場株式の相続を手続き目線で整理します。なお、株式の評価・相続税の計算・申告は税理士法人トゥモローズが、株式をめぐる紛争は提携弁護士が対応します。
上場株式との違い|「発行会社」が窓口
まず、上場株式との違いを押さえます。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式(自社株) |
|---|---|---|
| 手続きの窓口 | 証券会社(口座移管) | 発行会社(株主名簿の書換) |
| 譲渡制限 | なし | 付いていることが多い |
| 評価 | 市場価格で明確 | 評価方法が複雑(専門家の関与が必要) |
| 論点 | 主に評価・換金 | 名義書換・経営権・他の株主との関係 |
上場株式は証券口座の移管で進みますが、非上場株式は発行会社に株主名簿を書き換えてもらう必要があります。会社の協力が前提になる点が、難しさの源です。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):非上場株式の評価 最低限知っておきたい基礎知識!
株主名簿の書換(名義書換)の基本
非上場株式の相続手続きの中心が、株主名簿の書換(名義書換)です。
株式の譲渡については、取得者の氏名・住所が株主名簿に記載・記録されなければ、会社等に対抗できないとされています(会社法第130条)。相続は売買などの譲渡ではなく一般承継のため株式そのものは当然に承継されますが、相続人が会社に対して株主として円滑に権利を行使するには、発行会社に相続関係書類を提出し、株主名簿の名義書換を受けることが実務上重要です。株式を取得した人は、発行会社に対して名義書換を請求できます(会社法第133条)。特に議決権・配当・株主総会の通知などでは、会社が誰を株主として扱うかが問題になります。
進め方の基本は次のとおりです。
- 発行会社へ株主の死亡を連絡し、株式の内容(種類・株数・譲渡制限の有無)を確認する
- 遺産分割で株式の取得者を決める
- 会社所定の名義書換請求書と必要書類を提出する
- 株主名簿が書き換えられ、取得者が株主として記録される
遺産分割前の株式は「共有」状態になることがある
注意したいのが、遺言や遺産分割協議により取得者が確定する前の取扱いです。この間、非上場株式は相続人間で共有状態になることがあります。この場合、相続人が個別に議決権を行使できるわけではなく、共有者の中から権利を行使する者1人を定め、その氏名を会社へ通知しなければ、原則として議決権などの株主権を行使できません(会社法第106条)。
同族会社では、誰が権利行使者になるか・議決権をどう行使するかが経営権に直結するため、対立が生じやすい場面です。紛争性がある場合は、早期に提携弁護士と連携して対応します。
自社株の相続、手続きと専門家連携をまとめて
戸籍収集・相続人の確定・遺産分割協議書の作成から、発行会社への名義書換請求の準備まで。株式の評価・相続税は税理士法人トゥモローズ、株式をめぐる紛争は提携弁護士と連携し、行政書士法人トゥモローズが窓口ひとつでサポートします。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
譲渡制限株式と会社の売渡し請求
非上場会社の株式の多くには、譲渡に会社の承認を要する「譲渡制限」が付いています。ここに、相続特有の論点があります。
相続による取得には特則がある
相続などの一般承継で譲渡制限株式を取得した場合は、売買による譲渡とは異なり、取得者である相続人側から名義書換を請求できる場面があります(会社法第133条・第134条)。譲渡承認を要する通常の譲渡とは別の扱いがされるためです。ただし、株券発行会社かどうか、譲渡制限の有無、会社所定の書類によって実務対応が変わるため、まず発行会社へ確認しながら進めます。
会社からの売渡し請求(会社法第174条)
会社は、定款に定めがある場合、相続などの一般承継で譲渡制限株式を取得した人に対し、その株式を会社へ売り渡すよう請求できます(会社法第174条)。会社にとって望ましくない人が株主になるのを防ぐための制度です。ただし、請求するには定款の定めがあるだけでは足りず、会社法所定の手続きが必要です。
- 株主総会の決議で、売渡しを請求する株式数などを定める(会社法第175条)
- 会社が相続その他の一般承継があったことを知った日から1年以内に請求する必要がある(会社法第176条)
- 売買価格は会社と相続人の協議で定め、協議が調わなければ、請求日から20日以内に裁判所へ価格決定の申立てができる(会社法第177条)
売渡し請求を受けた場合は、価格と期限の管理が極めて重要です。同族会社の経営権に直結し、価格交渉や裁判所への申立てを伴うため、紛争性のある対応は弁護士の業務になります。請求を受けたら、早めに提携弁護士・税理士と連携して対応します。
株式の評価・相続税は税理士法人と確認
非上場株式は、相続税評価の難易度が高い財産です。国税庁は、取引相場のない株式について、取得した株主が同族株主等か、それ以外の株主かにより、原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式など)または配当還元方式で評価する旨を示しています。会社規模・株主の立場・財産内容・配当状況などにより評価方法が変わるため、株式の評価・相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが担当します。
特に、同族株主以外の株主が取得する場合などに配当還元方式が問題になることがあります。会社法上の「売渡し請求の価格」と、相続税法上の「配当還元方式による評価額」は別物ですので、混同しないようご注意ください。
非上場株式では、次の3つの価格・評価が一致するとは限りません。どの場面の価格を問題にしているのかを分けて整理することが重要です。
| 価格・評価 | 用途 |
|---|---|
| 遺産分割上の時価 | 相続人間でどう分けるかを決めるための価額 |
| 相続税評価額 | 相続税申告で使う評価額(同族株主等か否かで原則的評価方式または配当還元方式) |
| 会社法上の売買価格 | 売渡し請求・譲渡承認拒否後の買取などで問題になる価格 |
このうち相続税評価額は国税庁の財産評価のルールに基づくもので、会社法上の売買価格とは別論点です。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):非上場株式の相続税評価 配当還元方式とは!?
名義書換に必要な書類
名義書換に必要な書類は、発行会社によって異なりますが、一般的には次のとおりです。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 戸籍一式または法定相続情報一覧図 | 被相続人の死亡と相続人の範囲を証明 |
| 遺産分割協議書 | 株式の取得者を明記。相続人全員の実印 |
| 取得する相続人の印鑑証明書 | 実印もあわせて準備 |
| 株券 | 株券発行会社の場合 |
| 会社所定の名義書換請求書 | 発行会社の様式 |
発行会社が求める書類は会社ごとに違うため、まず発行会社に必要書類を確認してから準備するのが確実です。預貯金・不動産の相続で集めた戸籍・印鑑証明書を、株式の手続きにも流用できる場合があります。ただし、発行会社ごとに発行期限・原本提出の要否・原本還付の可否が異なるため、事前に確認しましょう。
会社が協力しないとき・評価で揉めるとき
非上場株式の相続では、同族会社の経営権をめぐって対立が生じることがあります。
- 書類を整えて請求しても、会社(他の株主)が名義書換に応じない
- 会社からの売渡し請求で、価格の折り合いがつかない
- 株式の評価をめぐって相続人間で揉める
こうした紛争性のある対応は、弁護士の業務です。当法人(行政書士法人)は、前提となる戸籍収集・相続人の確定・遺産分割協議書の作成といった手続き面を担当し、紛争性が生じた場合は提携弁護士と連携してご案内します。株式の評価・相続税は、税理士法人トゥモローズが対応します。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 株券が見つからない場合はどうすればいいですか?
A. 現在は株券を発行していない会社(株券不発行会社)が多く、株券そのものが存在しないこともあります。まず発行会社に、株券発行会社かどうかと、名義書換に必要な書類を確認します。株券発行会社で株券を紛失している場合は、会社所定の手続きが必要になります。
Q2. 名義書換をするまで配当金は受け取れますか?
A. 配当や株主総会の通知は、会社が株主名簿上の株主を基準に処理します。名義書換前に発生した未受領の配当は相続財産として整理し、受領方法は発行会社に確認します。名義書換後は、取得した相続人が株主として配当を受け取ります。基準日や支払時期によって扱いが変わるため、発行会社へ確認しながら進めます。
Q3. 会社が株式の評価に必要な決算書などを出してくれない場合は?
A. 少数株主であっても、持株要件など会社法上の一定の要件を満たせば、会計帳簿の閲覧・謄写を請求できる場合があります(会社法第433条)。もっとも、会社が拒否する場合や評価資料の開示をめぐって争いになる場合は、法的な対応が必要になり、これは弁護士の業務です。当法人では、提携弁護士と連携してご案内します。
Q4. 少数株主でも会社に対してできることはありますか?
A. 議決権の行使、配当を受け取る権利、一定の要件を満たす場合の帳簿閲覧請求など、株主としての権利があります。ただし、同族会社では少数株主の影響力が限られることも多く、売渡し請求などの論点も生じます。権利関係が複雑な場合は専門家に相談します。
Q5. 相続した非上場株式を会社や第三者に売ることはできますか?
A. 多くの非上場株式には譲渡制限が付いており、第三者へ売却するには会社の承認が必要です。承認されない場合でも、会社法上、会社または指定買取人による買取手続きに進むことがありますが、通知・期限・価格決定などの手続きが複雑です。売却や価格をめぐって対立する場合は、弁護士・税理士と連携して対応します。
まとめ
非上場株式(自社株)の相続は、①発行会社への連絡と株式内容の確認 → ②遺産分割で取得者を決定(確定前は共有・権利行使者の指定/会社法第106条)→ ③株主名簿の書換請求(会社法第130条・第133条)→ ④譲渡制限・売渡し請求(会社法第174条〜第177条)への対応という流れで進みます。上場株式と違い発行会社が窓口になり、同族会社では経営権をめぐる対立が生じやすいのが特徴です。評価・相続税は税理士、紛争は弁護士と、専門家の連携が鍵になります。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、戸籍収集・遺産分割協議書の作成・名義書換の準備をサポートしています。株式の評価・相続税は税理士法人トゥモローズと連携し、窓口ひとつで進められます。
関連記事
税務の観点もあわせてご確認ください
非上場株式の評価方法や事業承継税制など税務面については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(株式の評価・相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 会社法第106条(共有者による権利の行使・権利行使者の指定)
- 会社法第124条(基準日。配当・議決権の基準)
- 会社法第130条(株式の譲渡の対抗要件・株主名簿)
- 会社法第133条(株主名簿の名義書換の請求)
- 会社法第134条(譲渡制限株式の取得者からの名義書換請求の特則)
- 会社法第174条〜第177条(相続人等に対する売渡しの請求・決議・期限・売買価格の決定)
- 会社法第433条(会計帳簿の閲覧・謄写請求と持株要件)
- 行政書士法第1条の3・第1条の4(戸籍収集・遺産分割協議書等の書類作成・相談業務)
- 弁護士法第72条(名義書換拒否・売渡請求価格・経営権をめぐる紛争対応)
- 税理士法第2条・第52条(株式の評価・相続税の申告は税理士の業務)
