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相続人に行方不明者がいる場合の不在者財産管理人|遺産分割の進め方

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相続手続き

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司




10秒でわかる この記事の要約

  • 相続人に行方不明者がいると、遺産分割協議は相続人全員でする必要があるため、そのままでは進められない。
  • 生死不明とまではいかず、生存している前提のときは、家庭裁判所で「不在者財産管理人」を選任する(民法第25条)。
  • 不在者財産管理人は他の相続人の代理人ではなく、不在者本人の財産を保護する立場。遺産分割協議に参加するには家庭裁判所の権限外行為許可が必要で、不在者の法定相続分相当を確保するのが基本。
  • 生死不明が長期(普通失踪7年・危難失踪1年)に及ぶ場合は失踪宣告も検討。期限内に分割できなければ未分割申告(小規模宅地等・配偶者税額軽減は原則使えない)になる。

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効です。そのため、相続人の中に連絡の取れない行方不明者がいると、相続手続きがストップしてしまいます。 勝手にその人を外して話を進めることはできません。

このようなとき、行方不明者が生存している前提であれば、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任し、その人に代わって手続きを進めてもらう方法があります(民法第25条)。本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、不在者財産管理人のしくみ・費用・誰がなるか・失踪宣告との違いを整理します。なお、家庭裁判所への申立書類の作成は提携弁護士・司法書士が対応します。


行方不明の相続人がいると遺産分割できない

遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意しなければ成立しません。1人でも欠けた協議は無効です。そのため、相続人の中に、住所も連絡先も分からない行方不明者がいると、預貯金の解約や不動産の名義変更が進められなくなります。

まずは、戸籍の附票・住民票で最後の住所をたどり、郵便(返戻の有無)、親族への照会、過去の住所・勤務先、メール・SNSなど、たどれる手段で連絡を試み、その調査の記録を残します(後の申立てで「不在の事実」を示す資料になります)。それでも所在が分からない場合に、不在者財産管理人の選任を検討します。なお、単に「疎遠で連絡しづらい」「住所は分かるが返事をくれない」だけなら行方不明とはいえないため、まずは連絡を尽くすことが前提です。


不在者財産管理人とは(民法第25条)

不在者財産管理人とは、従来の住所を去って容易に戻る見込みのない人(不在者)の財産を、本人に代わって管理する人です(民法第25条)。家庭裁判所が、利害関係人などの申立てによって選任します。

この制度は、不在者が生存していることを前提としています。行方は分からないけれど、亡くなったとまでは言えない、というケースで使います。

ここで重要なのは、不在者財産管理人は、他の相続人の便宜のために選ばれる代理人ではなく、不在者本人の財産を管理・保護する立場だという点です。そのため、遺産分割協議に参加する場合も、不在者に不利益な内容は家庭裁判所の許可を得にくく、不在者の法定相続分相当を確保する内容で進めるのが基本になります。選任された管理人は、通常は不在者の財産を保存・管理し、遺産分割や不動産の売却など管理の範囲を超える行為は、家庭裁判所の権限外行為許可を得て行います。


連絡の取れない相続人がいて止まっている相続、整理します

不在者財産管理人の選任に必要な戸籍収集・相続人の調査、その後の遺産分割協議書の作成・名義変更まで、行政書士法人トゥモローズがサポートします。家庭裁判所への申立ては提携弁護士・司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。

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失踪宣告との違い

行方不明者がからむ相続では、不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを使うかが問題になります。両者は前提が異なります。

項目 不在者財産管理人 失踪宣告
前提 生存している前提で所在不明 生死不明が長期間継続
期間要件 期間要件なし(所在不明の疎明が必要) 普通失踪7年・危難失踪1年
効果 不在者は相続人のまま。管理人が手続きに関与 行方不明者は法律上死亡したものとみなされる
遺産分割 管理人が権限外行為許可を得て参加 死亡擬制の時期に応じ、相続関係を組み直す
注意点 不在者の法定相続分確保が基本 行方不明者本人の相続が開始し、その相続人が新たに関与する可能性

生死不明が長期(普通失踪7年・危難失踪1年)なら失踪宣告、まだそこまでではなく早く分割したいなら不在者財産管理人、というのが基本的な使い分けです。状況に応じて、次のように使う制度が変わります。

状況 使う制度
住所も連絡先も分からない 不在者財産管理人
生死不明が7年以上/危難後1年以上 失踪宣告
住所は分かるが協議に応じない 遺産分割調停
所在は分かるが認知症などで判断能力がない 成年後見制度
海外在住で連絡が取れる 署名(サイン)証明・在留証明を使った遺産分割協議

選任の手続きと遺産分割への参加

不在者財産管理人の選任は、次の流れで進みます。

  1. 申立て:利害関係人(他の相続人など)が、不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所へ申し立てる
  2. 選任:家庭裁判所が、管理人としてふさわしい人(親族や専門家)を選ぶ
  3. 権限外行為許可:遺産分割協議への参加は、管理人の通常の権限(民法第103条の保存・管理)を超えるため、不在者財産管理人自身が、選任した家庭裁判所へ権限外行為許可を申し立てる(民法第28条)
  4. 遺産分割協議:許可を得て、管理人が不在者に代わって協議に参加する

申立てに必要な主な書類は次のとおりです。

書類 内容
不在者の戸籍謄本・戸籍附票 身分関係・最後の住所・移転履歴を確認
不在の事実を証する資料 連絡不能の経緯、調査記録、返戻郵便、親族照会記録など
不在者の財産に関する資料 不動産登記事項証明書、預貯金残高、有価証券資料など
申立人の利害関係資料 相続人であることを示す戸籍など
遺産目録・遺産分割協議書案 遺産分割が目的の場合、権限外行為許可で必要になりやすい

権限外行為許可では、家庭裁判所が遺産分割協議案の内容を確認します。不在者本人の意思を確認できない以上、不在者の取り分を不当に少なくする内容は許可されにくく、原則として法定相続分相当を確保する協議案を作成します。家庭裁判所への申立書類の作成は弁護士・司法書士の業務のため、提携の専門家と連携します。


費用・誰がなるか・管理の終わり方

不在者財産管理人について、実務でよく問われる点を整理します。

  • 費用:申立費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。さらに、不在者の財産内容や管理期間によっては、管理人報酬などに充てる予納金を求められることがあり、専門家が管理人に選任される場合などは数十万円程度になることもあります。
  • 誰がなるか:不在者と利害関係のない親族が選ばれることもあれば、弁護士などの専門家が選ばれることもあります。遺産分割で他の相続人と利害が対立する場合は、中立性の観点から専門家が選ばれやすくなります。
  • 管理の終わり方:不在者が見つかった、死亡が確認された、失踪宣告がされた、財産がなくなった、などの場合に管理は終了します。本人が現れれば、管理していた財産を引き渡します。

選任には時間がかかるため、相続税の申告期限(10か月)も意識して、早めに動くことが大切です。


相続税・申告期限への影響

不在者財産管理人の選任や権限外行為許可に時間がかかり、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割がまとまらない場合でも、申告期限は延びません。この場合、いったん法定相続分等に従って取得したものとして未分割申告を行います(国税庁No.4208)。

未分割申告では、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが原則として使えません。これらを後から適用するには、申告期限後3年以内の分割見込みであることを示す「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、分割が成立した後に修正申告または更正の請求を行う必要があります。こうした判断は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。不在者財産管理人の選任には時間がかかるため、申告期限から逆算した段取りが重要です。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の申告期限は10ヶ月|特殊ケース11パターンとペナルティを解説


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よくある質問(FAQ)

Q1. 相続人の中に認知症の人がいる場合も不在者財産管理人を使いますか?

A. いいえ。不在者財産管理人は「所在が分からない(行方不明)」人のための制度です。所在は分かっているが判断能力が十分でない相続人には、成年後見制度(成年後見人の選任)を使います。行方不明なのか判断能力の問題なのかで、使う制度が異なります。状況に応じて、どちらの手続きが必要かを確認します。

Q2. 連絡は取れるが協議に応じない相続人にも使えますか?

A. 使えません。不在者財産管理人は「行方不明(所在が分からない)」ことが前提です。住所が分かっていて連絡も取れるのに協議に応じないだけの相続人には、この制度は使えません。その場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるなど、別の方法で進めることになります。

Q3. 海外にいて連絡が取れない相続人の場合はどうしますか?

A. まず戸籍附票、親族からの聞き取り、過去の住所・勤務先・メール・SNSなどから所在確認を試みます。所在が判明し本人と連絡が取れる場合は、海外在住の相続人として、在外公館で取得する署名(サイン)証明・在留証明を用いて遺産分割協議を進めます(在外公館は連絡の代行機関ではなく、これらの証明の取得先です)。海外にいるというだけでは不在者には当たりません。所在がまったく分からず連絡手段も尽きた場合に、不在者財産管理人の選任を検討します。

Q4. 行方不明者を除いて、勝手に遺産分割を進めることはできますか?

A. できません。遺産分割は相続人全員で行う必要があり、行方不明者を除いて成立させた協議は無効です。預貯金の解約や不動産の名義変更も受け付けてもらえません。だからこそ、不在者財産管理人を選任し、その人に行方不明者の代わりとして協議に参加してもらう必要があるのです。

Q5. 当面の生活費は預貯金の仮払い制度でしのげますか?

A. 預貯金の仮払い制度により、各相続人は、金融機関の窓口で「相続開始時の預金額×3分の1×その相続人の法定相続分」の範囲で単独で払い戻しを受けられます(同一金融機関ごとに150万円が上限。民法第909条の2)。葬儀費用や当面の生活費に充てられますが、これは応急的な措置で、払い戻した分は後日の遺産分割でその相続人が取得したものとして調整されます。行方不明者がいる根本的な問題の解決には、不在者財産管理人の選任が必要です。


まとめ

相続人に行方不明者がいると遺産分割が進みません。生存している前提なら、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任し(民法第25条)、家庭裁判所の許可(権限外行為許可)を得て、管理人が代わりに協議に参加します。選任には予納金と期間がかかり、不在者の法定相続分を確保するのが原則です。生死不明が長期なら失踪宣告との使い分けを検討。申立ては弁護士・司法書士、税務は税理士と連携して進めましょう。

なお、不在者財産管理人の申立先は、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。申立書類の作成・遺産分割調停・紛争対応は弁護士・司法書士、未分割申告などの相続税は税理士と、役割が分かれます。行政書士法人トゥモローズは東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で相続手続きに対応しています。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第25条(不在者の財産の管理)
  • 民法第28条(管理人の権限・権限外行為の許可)
  • 民法第103条(権限の定めのない代理人の権限=保存・管理)
  • 民法第30条・第31条(失踪の宣告・死亡擬制)
  • 民法第907条(遺産分割協議)
  • 民法第909条の2(遺産分割前の預貯金の払戻し制度。1/3×法定相続分・150万円上限)
  • 相続税法第27条(相続税の申告期限)・国税庁No.4208(未分割申告)
  • 税理士法第2条・第52条(未分割申告・相続税は税理士の業務)
  • 弁護士法第72条・司法書士法第3条(家裁提出書類・調停・紛争対応)
  • 行政書士法第1条の3(戸籍収集・遺産分割協議書の作成等。他の法律で制限された業務を除く)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。