失踪宣告とは|行方不明者を法律上死亡として相続を進める手続き
10秒でわかる この記事の要約
- 失踪宣告とは、生死が不明な人を法律上死亡したものとみなす、家庭裁判所の制度(民法第30条)。
- 生死不明が7年続いた場合の「普通失踪」と、災害・事故など危難に遭った人の「特別失踪(1年)」がある。
- 失踪宣告が確定すると、その人について相続が開始する。行方不明の相続人がいて遺産分割が進まない場合などに使われる。
- 申立ては家庭裁判所への手続きで、申立書の作成は弁護士・司法書士の業務。行政書士は戸籍収集など前提を支援する。
家族や相続人の中に、長期間行方が分からない人がいると、相続手続きが前に進まなくなります。 遺産分割は相続人全員でしなければならず、生死不明の人を勝手に外すことはできないからです。
こうしたときに使えるのが、失踪宣告です。一定の要件のもとで、行方不明者を法律上死亡したものとみなし、相続などの法律関係を整理できます(民法第30条)。本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、失踪宣告のしくみ・手続き・費用・期間、宣告後に本人が戻った場合の扱いまで整理します。なお、家庭裁判所への申立書類の作成は提携弁護士・司法書士が対応します。
失踪宣告とは
失踪宣告とは、生死が分からない人について、家庭裁判所が法律上死亡したものとみなす制度です(民法第30条)。実際に亡くなったかどうかが確認できなくても、一定の要件と手続きを経て、死亡したものとして扱えるようにするものです。
これにより、行方不明者について相続を開始させたり、配偶者が再婚できるようにしたりと、宙に浮いていた法律関係を整理できます。相続の場面では、行方不明の相続人がいて遺産分割が進まないときや、長く行方不明の親などの財産を整理したいときに使われます。
普通失踪(7年)と特別失踪(1年)
失踪宣告には、状況に応じて2つの種類があります(民法第30条)。
| 種類 | 要件 | 死亡とみなされる時期 |
|---|---|---|
| 普通失踪 | 生死不明の状態が7年間続いた | 7年の期間が満了した時 |
| 特別失踪(危難失踪) | 戦争・船舶の沈没・震災など危難に遭い、その危難が去った後1年間生死不明 | その危難が去った時 |
死亡とみなされる「時期」が異なる点が重要です。特別失踪では危難が去った時に死亡したとみなされるため、相続開始の時期もそれに合わせて判断されます。普通失踪では、7年が満了した時に死亡したものとみなされます。
行方不明者がいて相続が止まっているなら、まず整理を
失踪宣告に必要な戸籍収集・行方不明の経緯の整理、その後の相続手続き全体の段取りまで、行政書士法人トゥモローズがサポートします。家庭裁判所への申立ては提携弁護士・司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
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手続きの流れ・費用・期間
失踪宣告は、家庭裁判所への申立てによって行います。おおまかな流れは次のとおりです。
- 申立て:利害関係人(配偶者・相続人など)が、不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所へ申し立てる
- 調査・公示催告:家庭裁判所が調査し、一定期間、本人や情報を知る人に届け出るよう公告(公示催告)する
- 審判(失踪宣告):期間内に届出がなければ、家庭裁判所が失踪宣告の審判をする
- 失踪届の提出:審判が確定しても戸籍は自動では変わりません。申立人は、審判が確定した日から10日以内に、審判書謄本と確定証明書を添えて、失踪者の本籍地または申立人の所在地の市区町村へ失踪届を提出します(戸籍法第94条。届書には民法第31条で死亡とみなされる日も記載)
申立費用は、収入印紙800円、連絡用の郵便切手、官報公告料などです。公示催告の期間は普通失踪で3か月以上、特別失踪で1か月以上設けられるため、申立てから宣告の確定まで半年〜1年程度かかることが一般的です。家庭裁判所への申立書類の作成は弁護士・司法書士の業務のため、提携の専門家と連携して進めます。
相続への影響と不在者財産管理人との違い
失踪宣告が確定すると、その人は死亡したものとみなされ、その人についての相続が開始します。ただし、行方不明の相続人について失踪宣告がされた場合、単純に「その人を除く」とは限りません。死亡したものとみなされる時期が、被相続人の死亡より前か後かで、結論が変わります。
| 状況 | 相続実務上の扱い |
|---|---|
| 行方不明者が被相続人より前に死亡したとみなされる | その人は相続人にならない。子などがいれば代襲相続を検討 |
| 行方不明者が被相続人より後に死亡したとみなされる | いったん相続人になり、その後その人の相続人が地位を承継する(数次相続) |
なお、似た制度に不在者財産管理人があります。両者は目的が異なります。
- 失踪宣告:行方不明者を死亡したものとみなす(長期間・生死不明が前提)
- 不在者財産管理人:生きている前提で、不在者の財産を管理する人を選ぶ(生死不明まではいかない、早く分割したい場合など)。管理人が遺産分割協議に参加するには、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です(民法第28条)
どちらが適切かは、行方不明の期間や事情によって変わります。
宣告後に本人が戻ってきたら(失踪宣告の取消し)
失踪宣告は「死亡したものとみなす」制度ですが、実際に本人が生きて戻ってきた場合に備えた取消しの規定もあります(民法第32条)。
本人または利害関係人が請求すれば、家庭裁判所は失踪宣告を取り消します。取り消されると、宣告によって生じた効果(相続など)は、原則としてさかのぼってなかったことになります。ただし、次の点に注意が必要です。
- 善意で行った行為は有効:失踪宣告が事実と異なることを知らずに行われた行為(取引など)は、その効力に影響しません
- 財産は現に利益を受けている限度で返還:宣告で財産を得た相続人などは、現に利益を受けている限度で返還すれば足ります
戻ってくる可能性が残るケースでは、こうした取消しの効果も踏まえて判断する必要があります。
失踪宣告と相続税
失踪宣告では、普通失踪なら7年満了時、特別失踪なら危難が去った時に死亡したものとみなされ、その時期を基準に相続人や評価の判定が行われます。一方、相続税の申告期限の起算点は、原則として、失踪宣告に関する審判の確定があったことを知った日です(相続税基本通達27-4)。その翌日から10か月以内に申告・納付を検討します。死亡とみなされる時期と、申告期限の起算点がずれるため、注意が必要です。
こうした相続税の申告期限や計算の判断は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。行方不明者がからむ相続は、手続きと税務の両面で特殊なケースになりやすいため、早めに専門家へ相談するのが安全です。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の申告期限は10ヶ月|特殊ケース11パターンとペナルティを解説
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よくある質問(FAQ)
Q1. 音信不通なだけでも失踪宣告できますか?
A. できません。失踪宣告は「生死が不明であること」が要件です。連絡が取れないだけで、どこかで生きていることが分かっている(生存が推測できる)場合は、失踪宣告の対象になりません。この場合は、生きている前提で財産を管理する不在者財産管理人の選任を検討します。生死不明が7年続いて初めて、普通失踪の失踪宣告を申し立てられます。
Q2. 失踪宣告のあとに本人が生きて戻ってきたらどうなりますか?
A. 本人や利害関係人の請求により、家庭裁判所が失踪宣告を取り消します(民法第32条)。取り消されると相続などの効果は原則さかのぼってなくなりますが、宣告が事実と異なることを知らずに行われた行為は有効で、財産を得た人は現に利益を受けている限度で返還すれば足ります。戻る可能性があるケースでは慎重な判断が必要です。
Q3. 行方不明の配偶者と離婚したい場合も失踪宣告が必要ですか?
A. 必ずしも失踪宣告による必要はありません。配偶者が3年以上生死不明の場合は、それを理由に離婚の訴えを起こす方法もあります。失踪宣告は配偶者を死亡したものとみなすため、婚姻が解消され相続も開始します。離婚と失踪宣告では効果が異なるため、目的に応じて選びます。判断は弁護士と相談するのが確実です。
Q4. 失踪者が受け取るはずだった生命保険金はどうなりますか?
A. 失踪宣告で死亡とみなされた場合、その人を被保険者とする生命保険金は、死亡保険金として支払われる対象になりえます。死亡とみなされる時期や、保険契約の内容によって取扱いが変わるため、保険会社に確認が必要です。後日、失踪宣告が取り消された場合の精算もあわせて、慎重に進めます。
Q5. 失踪宣告と死亡届はどう違いますか?
A. 死亡届は、実際に亡くなったことが確認できた場合に提出するものです。失踪宣告は、生死が確認できない人を、家庭裁判所の手続きを経て法律上死亡したものとみなす制度です。失踪宣告が確定すると、その審判をもとに戸籍に記載され、相続が開始します。生死不明という点が、通常の死亡届と大きく異なります。
まとめ
失踪宣告は、生死不明の人を法律上死亡したものとみなす家庭裁判所の制度です(民法第30条)。生死不明7年の普通失踪と、危難後1年の特別失踪があり、確定するとその人の相続が開始します。公示催告のため半年〜1年かかるので、早く分割したい場合は不在者財産管理人との使い分けも検討します。宣告後に本人が戻れば取消し(民法第32条)もあります。申立ては弁護士・司法書士、相続税は税理士と連携して進めましょう。
なお、失踪宣告・不在者財産管理人の申立書類の作成は弁護士・司法書士、相続税の申告は税理士と、手続きごとに専門家が分かれます。行政書士法人トゥモローズは東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で相続手続きに対応しています。
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失踪宣告など、相続税の申告期限が特殊になるケースについては、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第30条(失踪の宣告)
- 民法第31条(失踪の宣告の効力・死亡擬制)
- 民法第32条(失踪の宣告の取消し)
- 民法第28条(不在者財産管理人の権限外行為許可)
- 民法第770条第1項第3号(3年以上の生死不明を理由とする離婚)
- 戸籍法第94条(失踪宣告の届出。確定日から10日以内)
- 相続税基本通達27-4(失踪宣告の場合の「相続の開始があったことを知った日」)
- 税理士法第2条・第52条(相続税の申告・計算は税理士の業務)
- 行政書士法第1条の3(戸籍収集・相続関係書類の作成等)
