海外口座を持つ人のための相続指示書(Letter of Instruction)の作り方|遺言との違い・記載項目・保管方法
10秒でわかる この記事の要約
- Letter of Instruction(LOI)は、遺族が相続手続きを円滑に進められるよう、本人が生前に残す法的拘束力のない補助文書です。海外資産のある方には特に価値があります。
- LOIは遺言(Will)と別物で、財産の分け方を決めるのではなく、資産の所在・連絡先・優先順位などを遺族に伝える「実務ガイド」の位置付けです。
- LOIは遺族が海外資産を発見し正規の相続手続きへ進むための「探索地図」であり、遺族にログイン権限や金融機関への請求権限を与える書類ではありません。
- パスワードを平文で直接書くのはセキュリティ上避けるべきで、パスワードマネージャーやデジタルレガシー機能を組み合わせて情報の在り処だけを伝えます。
海外口座や海外資産を持つ方が「もし自分に何かあったら、家族はどうやって手続きを進めるのか」と考えたとき、遺言(Will)だけでは足りない場面が多くあります。遺言は「財産の分け方」を決める法的文書ですが、家族が海外の金融機関の存在自体を知らなければ、そもそも相続手続きにたどり着けないためです。
この空白を埋めるのが、英米の相続実務で古くから使われてきたLetter of Instruction(LOI/指示書)です。本記事では、LOIとは何か、遺言との違い、記載すべき項目、パスワードの安全な渡し方、日本の公正証書遺言との併用方法までを、海外資産を持つ日本在住の方を想定して行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、海外資産を持つ方の生前対策として、Letter of Instructionの原案作成支援と公正証書遺言との併用設計を全国オンラインで対応しています。
Letter of Instruction(LOI)とは——遺言(Will)との違い
Letter of Instruction(LOI)は、本人が生前に、遺族が相続手続きを円滑に進められるよう作成する私的な指示書です。米国などのエステートプランニング実務で使われることがあり、遺言(Will)と併用する運用が知られています。
遺言(Will)とLOIの根本的な違い
| 遺言(Will) | Letter of Instruction | |
|---|---|---|
| 法的効力 | あり(民法上の法定書式) | なし(私的文書) |
| 目的 | 財産の分け方を決める | 手続きを進めるための情報を伝える |
| 書式 | 民法960条以下の要件を満たす必要 | 自由書式でOK |
| 作成方法 | 自筆証書・公正証書・秘密証書 | 手書き・PC作成いずれも可 |
| 更新 | 新しい遺言で撤回・変更 | 随時更新可能 |
| 開示時期 | 死亡後(原則) | 生前でも家族と共有可能 |
LOIは「もし自分に何かあったら、これを見て動いてほしい」という実務ガイドの位置付けです。遺言が「誰にいくら渡すか」を決める書類なのに対し、LOIは「どこに何があって、誰にどう連絡すればよいか」を伝える書類、と整理すると分かりやすいでしょう。
LOIは日本のエンディングノートとどう違うか
日本で普及している「エンディングノート」と近い性質を持ちますが、海外資産に特化した点で以下の違いがあります。
- 想定読者:エンディングノートは家族全員向けが多いが、LOIは相続手続きを担当する特定の人(遺言執行者・相続人代表・現地代理人)を想定した文書
- 記載事項の粒度:SWIFT/BIC、パスポート情報、現地Notaryの連絡先など、海外手続きの実務的な粒度で書く
- 言語:英文または日英併記で作成し、現地代理人が読める形にする場合もある
- 法的位置付け:エンディングノートと同じく法的拘束力はなく、金融機関に対して権限を証明する書類ではない。遺族・税理士・行政書士・弁護士・現地専門家が手続方針を把握するための内部資料として使われる
つまりLOIは「海外資産を持つ方向けにエンディングノートを実務レベルまで具体化したもの」と考えて差し支えありません。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
なぜ海外資産を持つ人にとってLOIが特に重要か
海外資産のある方にとってLOIが特に重要な理由は3つあります。
理由1:家族が資産の存在自体を知らないことが多い
日本国内の預貯金口座については、口座管理法(預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律)に基づく「相続時照会」により、被相続人が生前にマイナンバーを付番していた預貯金口座の所在を確認できる場合があります。ただし、対象はマイナンバーが付番された預貯金口座に限られ、残高までは通知されません。そのため、通帳・キャッシュカード・郵送物・メール・過去の確定申告書控え等による調査を併用することが不可欠です。
海外口座については、このような公的な照会制度自体がありません。家族が「父が香港のHSBCに口座を持っていたらしい」といった手がかりを持っていなければ、そもそも手続きの起点にすら立てないケースが多発しています。海外資産の発見手順の詳細は、海外資産の発見「デジタル遺品整理」手順の記事でも解説しています。
理由2:現地手続きの複雑さと言語障壁
海外の金融機関に相続手続きを求めるには、英文の死亡証明書・戸籍謄本の翻訳・POA(委任状)・宣誓供述書・アポスティーユなど、複数の書類を並行して準備する必要があります。家族に英語や現地法の知識がなければ、どこから手をつければよいか分からず、手続きが数か月〜1年単位で停滞するのが実情です。LOIに「現地代理人の連絡先」「対応可能な日本の行政書士・弁護士」を書いておけば、家族はまず誰に相談すればよいかの入口が分かります。
理由3:口座凍結の長期化を防げる
海外口座は、名義人の死亡通知が金融機関に届いた時点で凍結されます。凍結解除には現地の相続手続きが必要となり、プロベート(検認)が必要な国では6か月〜2年かかるケースもあります。LOIで事前に金融機関名・口座番号・優先順位・現地手続きの見通しを整理しておくと、家族が最初に連絡すべき機関から順に着手でき、凍結解除までの期間を実務的に短縮できます。
海外資産の情報を、遺族に確実に届ける準備を。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、海外資産を持つ方のLetter of Instruction原案作成支援と、公正証書遺言との併用設計・保管方法の提案を全国オンラインで対応します(紛争性のある案件や現地法上の代理行為が必要な案件は弁護士・現地専門家と連携)。初回相談無料。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
LOIに書く項目——海外資産の棚卸しから連絡先まで
海外資産を持つ方のLOIには、次の6ブロックを目安に記載します。細かい書式は自由ですが、遺族が読み手として想定される以上、ブロックごとに整理された形式にすることが重要です。
ブロック1:本人情報
- 氏名(戸籍上の表記・英字表記・パスポート表記)
- 生年月日
- 本籍地・現住所
- 過去の海外居住歴(国名・時期・在留カード番号など)
- 保有する国籍・二重国籍の有無
ブロック2:海外資産の一覧
各金融機関ごとに以下を記載します。
- 金融機関の正式名称・国・都市・支店
- 口座種別(普通預金・定期預金・証券口座・保険 等)
- 口座番号 or ポリシー番号
- SWIFT/BIC コード・IBAN(該当する場合)
- 通貨と概算残高(記載日時点)
- 受取人指定・共同名義の有無(TOD/POD/Joint 等)
- 相続発生時に優先的に処理すべきか、後回しでよいか
ブロック3:連絡すべき人・機関
- 日本の行政書士・税理士・弁護士(担当者名・電話・メール)
- 現地の弁護士・現地専門家(住所・電話・メール・タイムゾーン)
- 各金融機関の相続手続き窓口(Estate Services、Bereavement Team等)の連絡先
- 過去に取引していた翻訳会社・公証役場の連絡先
ブロック4:デジタルアクセスの方針
- 使用しているパスワードマネージャーの種類(1Password、Bitwarden、iCloud Keychain 等)
- パスワードマネージャーのマスターパスワードの受け渡し方法(後述)
- Google/Apple/Microsoft のデジタルレガシー機能設定状況
- 生体認証で保護しているデバイスの一覧
ブロック5:葬儀・埋葬・その他の希望
- 希望する葬儀の形式・宗教・場所
- 遺骨・埋葬に関する希望
- 現在加入している葬儀保険・生命保険
ブロック6:遺族へのメッセージ
- 相続手続きに関する遺族への一般的なアドバイス
- 家族間で優先すべき考え方(争族防止・相続放棄の可能性など)
- LOI作成日と、次回見直し予定日
パスワードの安全な渡し方——LOIに直接書かないための3つの方法
LOIで最も慎重に扱うべきなのが、金融機関やクラウドサービスのパスワード情報です。「LOIに直接パスワードを書けば安全」と考える方もいますが、実際にはむしろ紙・PCデータのいずれの形式でも情報漏えいリスクが高いため避けるべきです。
なぜ直接記載を避けるべきか
- 紙のLOIは自宅で紛失・窃盗されるリスク
- PDF形式のLOIはPCがハッキングされた際の漏えいリスク
- 更新のたびに再作成する必要があり、古いパスワードが残ってしまう
- 遺族以外の第三者に見られた際、不正アクセス禁止法違反の温床になる
代わりに採るべき3つの方式
方式1:パスワードマネージャーとその情報の在り処を伝える
- 1Password、Bitwarden、iCloud Keychain 等のパスワードマネージャーを日常的に使う
- 各サービスのパスワードはマネージャーに登録し、平文のリストは残さない
- LOIには「使っているパスワードマネージャーの名称」と「マスターパスワードの保管場所」を書く(例:金融機関の貸金庫、弁護士事務所の預かり)
- 重要な注意:マスターパスワードは、遺族が海外資産の存在と所在を発見する手がかりであり、遺族に「各サービスへ自由にログインしてよい許可」を与えるものではありません。実際のアクセス・データ取得・アカウント閉鎖は、各サービスと金融機関が定める死亡時の正規手続きに従って進めます
- パスワードマネージャーによってはEmergency Access機能(緊急アクセス)があり、家族があらかじめ指定されると一定日数経過後にアクセスできる仕組みも用意されています
方式2:デジタルレガシー機能の活用
- Google「アカウント無効化管理ツール」——一定期間のアカウント無操作を検知すると、指定した信頼できる連絡先に一定範囲のデータ共有・アカウント閉鎖が行われる仕組み
- Apple「故人アカウント管理連絡先」——生前に指定した連絡先が、アクセスキーと死亡証明書を提示してAppleへ申請することでデータアクセスが可能になる仕組み
- LOIには「どのサービスでどの家族を指定したか」を書く
- なお、Googleは、故人のアカウントに関するリクエスト対応においてもパスワードやログイン情報を家族に提供する制度はないと明記しています。各社の正規手続きに従うのが原則です
方式3:分割保管(シェアード・シークレット)
- マスターパスワードを2〜3の断片に分割
- 各断片を別々の場所に保管(例:長男の元・弁護士・貸金庫)
- 相続発生時に断片を集めて復元する運用
- 生前にひとりが盗み見ても機能しない設計
LOIに書いてはいけない情報
- 平文のパスワード
- クレジットカード番号のフルナンバー
- 個人番号(マイナンバー)
- 金融機関の暗証番号
これらの情報は「どこにアクセスすれば分かるか」だけを書き、実データはパスワードマネージャー・貸金庫等の別ルートで保管します。デジタル遺品整理の全体像については、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「スマホ・パソコンの相続の注意点と手続きガイド」もあわせてご確認ください。
書式と作成の実務——テンプレートと注意点
LOIには法定の書式はありませんが、以下のポイントを押さえて作成すると、遺族が読みやすく実用的な文書になります。
書式に関する基本ルール
- タイトル:Letter of Instruction / 遺族への指示書 と明記
- 作成日:必ず記載(何度も更新するため、最新版が分かるようにする)
- 作成者:氏名、生年月日、住所を明記
- 見出し構造:本人情報・海外資産・連絡先・デジタル・葬儀・メッセージなど、ブロックごとに大見出しを付ける
- フォーマット:PC作成でOK。手書きにこだわる必要はない
- 言語:日本語で作成し、必要に応じて英訳を添付。現地代理人が英語話者なら英文原本を添付
必ず明記すべき5つの但書き
作成後のトラブルを防ぐため、LOIには次の5つの但書きを冒頭または末尾に明記します。
- 「本書は法的拘束力のない私的な指示書であり、遺言としての効力は持たない」
- 「財産の分け方は、別途作成する遺言(Will/公正証書遺言)に従うものとする」
- 「本書は作成日以降の変動を反映しない可能性があるため、最新の情報は各金融機関に直接照会すること」
- 「パスワード情報は直接記載しておらず、指定の保管場所を参照すること」
- 「本書の内容に矛盾がある場合、または本書と遺言に相違がある場合は、遺言を優先する」
この但書きにより、後日「LOIに書いてあった内容と遺言が違うがどうするか」といった相続人間の紛争を防げます。
具体的な作成手順
- 上記6ブロックの見出しだけを先に作成する(骨格を作る)
- 海外資産の一覧を手元の書類・過去の郵送物から埋めていく
- 連絡先を整理する(電話番号・メールアドレスの確認)
- パスワードマネージャーの整備(この段階で日常のセキュリティも改善)
- 但書きを追記し、家族の誰に保管を委ねるかを決める
- 弁護士・行政書士・信頼できる家族に保管を依頼する
- 半年〜1年ごとに見直し、更新した年月を記録する
保管方法と遺族への伝え方——「見つけてもらえない」を防ぐ
LOIは作成しただけでは意味がありません。遺族が実際に発見でき、内容を実行できる保管方法を選ぶことが実務上の要諦です。
推奨される保管場所(複数併用)
- 自宅の耐火金庫:家族が最初に探す場所。原本を1部保管
- 弁護士・行政書士事務所の預かり:万が一自宅で紛失した場合の予備。ただし依頼料が発生
- 銀行の貸金庫:長期保管に向くが、契約者死亡で貸金庫自体も凍結されるため、遺族が開けられるまで時間がかかる点に注意
- 信頼できる家族の元:配偶者、成人した子など、緊急時に確実に連絡が取れる家族
遺族への伝達方法
作成したLOIの存在を、少なくとも1〜2名の遺族に生前に伝えておくのが実務的です。伝達の方法として次の3つが考えられます。
- 口頭で伝える:LOIの保管場所と、開封の権限を持つ人を口頭で説明
- 簡易メモを共有:詳細は書かず「金庫の中にLOIあり/担当は○○」といった簡易メモを家族間で共有
- 遺言執行者への周知:遺言執行者にLOIの保管場所を伝える、あるいは公正証書遺言の正本・謄本を家族が保管している場所と同じ場所にLOIを置くことで、遺言確認の流れで自動的にLOIも発見される(公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、公証役場にLOIを置くという意味ではありません)
保管場所を誰にも知らせないパターンの危険性
LOIをせっかく作成しても、保管場所を家族の誰にも伝えていなかった場合、相続発生後に遺族が見つけられないまま、海外資産の所在すら把握できずに終わる事故が発生します。「サプライズで見つけてもらう」を避け、少なくとも配偶者または成人した子1名には保管場所を明示的に伝えておきましょう。
更新のタイミング
LOIは以下のタイミングで見直します。
- 海外金融機関の口座を新規開設・解約したとき
- 連絡先(メール・電話・住所)が変わったとき
- パスワードマネージャーを変更したとき
- 家族構成に変更があったとき(婚姻・出産・離婚・死亡)
- 遺言を新たに作成・変更したとき
- 何もなくても1〜2年に1回は見直す
遺言(公正証書遺言)との併用設計——役割分担と整合性
LOIは遺言と併用してこそ真価を発揮します。両者を組み合わせて設計することで、「財産の分け方の法的拘束力」と「実務手続きの円滑さ」を両立できます。
役割分担の設計例
| 決めたい内容 | 記載する書類 |
|---|---|
| 財産の相続人・分配割合 | 遺言(公正証書遺言) |
| 遺言執行者の指定 | 遺言 |
| 海外資産の所在・金融機関の連絡先 | LOI |
| デジタル資産のアクセス方法 | LOI |
| 現地代理人・日本の士業の連絡先 | LOI |
| 葬儀・埋葬の希望 | LOI |
| 遺族への私的メッセージ | LOI |
公正証書遺言をあえて選ぶ理由
海外資産を持つ方の場合、遺言は公正証書遺言を優先的に検討します。理由は次のとおりです。
- 自宅保管の自筆証書遺言は検認手続きが必要で、遺言の存在自体を証明する初期手続きに時間がかかる(ただし法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は検認が不要)
- 公正証書遺言は公証人が遺言能力・内容を確認したうえで作成されるため、日本国内で証明力が高く、原本は公証役場に保管される
- 公証人関与の遺言として海外の代理人・現地専門家に説明しやすい
- 遺言執行者の指定がスムーズに機能する
ただし、日本の公正証書遺言がそのまま海外金融機関で受理されるとは限りません。提出先国・金融機関の指定に応じて、英訳、公証、アポスティーユ、領事認証、現地プロベート等の追加手続きが必要になる場合があります。海外金融機関側での受理要件は、事前に対象金融機関の相続手続き窓口(Estate Services等)に確認するのが実務的です。
整合性を保つための工夫
遺言とLOIの内容が食い違うと、相続人間の紛争や金融機関の受理拒否につながります。次の3点を必ず守りましょう。
- 遺言優先の但書きを必ずLOIに入れる
- 遺言を更新したときは必ずLOIも見直す(作成日を必ず更新)
- 遺言執行者にLOIの存在と保管場所を伝える
行政書士・弁護士が支援できる範囲
行政書士は、LOI原案の作成支援・海外資産の棚卸しリストの整理・公正証書遺言との整合性チェック・保管方法の提案などを行います。公正証書遺言そのものの作成は行政書士が原案作成を支援し、公証役場での作成手続きへ橋渡しする形が一般的です。相続人間の紛争リスクが高い案件、遺留分に関する法的判断が必要な案件、成年後見の申立てが必要な案件は、弁護士・司法書士と連携して対応します。
よくある質問(FAQ)
Q1. Letter of Instructionは遺言と同じ効力がありますか?
A. ありません。LOIは法的拘束力を持たない私的な指示書であり、財産の分け方を決める効力はありません。財産の相続人・分配割合を法的に定めるには、民法960条以下の要件を満たした遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)が別途必要です。LOIはあくまで、遺言を実行する際の実務ガイド・海外資産の所在情報・連絡先などを伝える補助文書として位置付けられます。
Q2. LOIにパスワードを直接書いてもよいですか?
A. 推奨しません。紙・PC上どちらの形式でも情報漏えいリスクが高いためです。代わりに、日常はパスワードマネージャー(1Password、Bitwarden 等)を使い、LOIには「マスターパスワードをどこに保管したか」だけを書く方式が実務的です。Google・Appleのデジタルレガシー機能を事前設定し、その設定内容をLOIに記載する方法も有効です。マイナンバー・クレジットカード番号のフルナンバー・銀行暗証番号も同じくLOIには書かず、別ルートで保管します。
Q3. LOIは家族に見せるべきですか?誰に保管させるべきですか?
A. 保管場所は少なくとも1〜2名の家族(配偶者または成人した子)に生前に伝えておくのが実務的です。内容全体を事前に見せる必要はありませんが、「金庫の中にLOIがある」「担当の行政書士は○○」といった発見のヒントだけは共有しましょう。原本は自宅金庫、弁護士・行政書士事務所の預かり、または公正証書遺言の正本・謄本を家族が保管している場所と同じ場所に置くなど、複数箇所への分散保管が推奨されます(公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、LOIを公証役場に保管するという意味ではありません)。銀行の貸金庫は本人死亡で凍結されるため、単独での保管には向きません。
Q4. LOIはどのくらいの頻度で更新すべきですか?
A. 海外金融機関の口座開設・解約、連絡先の変更、家族構成の変更、遺言の変更、パスワードマネージャーの変更があった際は都度更新します。特に変化がない場合でも、1〜2年に1回は内容を見直しましょう。更新の際は、必ず「作成日」を新しい日付に書き換え、旧版のLOIは破棄またはアーカイブとして日付付きで別保管します。複数の版が残っていると、遺族が「どれが最新か」判断できず混乱の原因となります。
Q5. 遺言(公正証書遺言)とLOIの内容が食い違ったらどうなりますか?
A. 法的には遺言が優先されます。LOIには法的拘束力がないため、財産の分け方や執行方法に相違があった場合は、必ず遺言に従って手続きが進みます。ただし、遺言とLOIの内容が食い違うこと自体が相続人間の紛争や金融機関の受理遅延の原因になるため、LOIの冒頭または末尾に「遺言と本書に相違がある場合は遺言を優先する」旨の但書きを明記し、遺言を更新した際は必ずLOIも同時に見直すのが実務的です。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
海外資産を持つ方にとって、Letter of Instruction(LOI/遺族への指示書)は、遺言だけでは埋められない「実務ガイド」の空白を埋める重要な文書です。LOIは法的拘束力を持たない私的文書であり、財産の分け方を決める効力はありませんが、海外金融機関の一覧・連絡先・パスワードの安全な渡し方・現地代理人の情報などを整理して遺族に伝えるための実務ガイドとして機能します。
作成時は、本人情報・海外資産一覧・連絡先・デジタルアクセス・葬儀希望・遺族へのメッセージという6ブロックで整理し、パスワードを直接書かないルールを守ります。パスワードマネージャーの保管場所の共有、Google/Appleのデジタルレガシー機能(Emergency Access等の正規機能)、分割保管の3方式を組み合わせ、遺族が正規手続きへ進むための手がかりを残す設計が実用的です。遺言(公正証書遺言)と併用し、「遺言優先」の但書きを明記して整合性を保ちましょう。保管場所は必ず配偶者または成人した子1名以上に伝え、1〜2年ごとに内容を見直します。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、海外資産を持つ方のLetter of Instruction原案作成支援と、公正証書遺言との併用設計・保管方法の提案を、生前対策の初期段階からサポートしています。アメリカ・香港・シンガポール・英国・オーストラリア・中国・カナダ等、主要国の金融機関実務に対応可能で、紛争性のある案件や現地法上の代理行為が必要な案件は弁護士・現地専門家と連携します。
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根拠法令・公的資料
- 民法960条(遺言の方式)
- 民法961条(遺言をするには15歳に達していることが必要)
- 民法963条(遺言能力)
- 民法968条(自筆証書遺言)
- 民法969条(公正証書遺言)
- 民法985条(遺言の効力の発生時期)
- 民法1004条(自筆証書遺言・秘密証書遺言の検認/法務局保管制度利用の場合は検認不要)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律(自筆証書遺言書保管法)
- 公証人法(公正証書遺言の作成手続き)
- 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(口座管理法)——マイナンバー付番済み口座の相続時照会の根拠
- 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律2条・3条(他人の識別符号を用いた不正ログインの禁止)
