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ネット銀行・ネット証券の一覧の作り方|通帳のない口座を遺す

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生前対策

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 紙の通帳が届かない口座は、家中を探しても出てきません。存在に気づかれないまま放置されることがあります。
  • 休眠預金等活用法の対象預金は、最終異動日等から10年で休眠預金等になります(同法第2条第6項)。ただし移管後も元の金融機関で払戻しを受けられます。
  • この10年ルールは預貯金の制度です。証券口座・株式・投資信託は対象外です(同法第2条第2項)。
  • 一覧に書くのは、金融機関名・サービス名と、契約の名義、問い合わせ窓口です。パスワードは書きません
  • 生前の棚卸しはメール・郵便物・アプリ・明細・税務資料の5つから。死亡後は相続時口座照会とほふりの開示請求という公式の調べ方があります。

前回の記事で、パスワードより先に作るべきものとして「どこに何があるかの一覧」を挙げました。

今回は、その一覧の作り方です。

紙の通帳がある口座なら、家族は家の中を探せば見つけられます。

ところが、ネット銀行とネット証券には通帳がありません。郵便物も、設定次第でほとんど届きません。

つまり、本人以外の誰も、その口座の存在を知らないという状態が生まれます。

相続の実務でいちばん困るのは、分け方でも税金でもなく、財産が見つからないことです。

本記事では、生前に作っておく口座一覧について、何を書き、何を書かないか、どうやって漏れなく洗い出すかを、行政書士の実務目線で整理します。


通帳がない口座は、存在に気づかれない

相続手続きは、財産を見つけるところから始まります。

紙の通帳やキャッシュカードがあれば、家族はそれを持って窓口へ行けます。

ネット銀行には、その入口がありません。

取引明細も、残高のお知らせも、画面の中とメールで完結します。

紙が一枚も残らない設定にしていると、家族は口座の存在そのものに気づけません。

なお、これは資産の大小と関係ありません。

数十万円の口座でも、数千万円の口座でも、見つからなければ同じ結果になります。

私が相談を受ける中でも、「たしかネット証券をやっていたはずだが、どこか分からない」というご家族からの問い合わせは珍しくありません。

なお、本記事の前半は、本人が生前に自分の口座を棚卸しする方法です。

死亡後に家族が故人のIDでログインして調べる、という前提では書いていません。

亡くなった後にどう探すかは、記事の後半でまとめています。


遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

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対象預金は「最終異動日等」から10年で休眠預金等になる

先に範囲をはっきりさせます。

ここから説明する10年ルールは、休眠預金等活用法の対象となる預貯金の制度です。

同法第2条第2項は「預金等」を、預金保険法上の一般預金等・決済用預金、農水産業協同組合貯金保険法上の一般貯金等・決済用貯金と定めています。

証券口座、株式、投資信託、暗号資産は含まれません。

同じ10年で自動的にどうかなる、という制度ではないので、混同しないでください。

そのうえで、預貯金の話です。

同法第2条第6項は、休眠預金等を「預金等であって、当該預金等に係る最終異動日等から十年を経過したもの」と定めています。

起算点は「最終異動日等」です。入出金がなかった期間が問われます。

見つからないことが原因ではありません。取引がないことが要件です。

移管金が預金保険機構に納付されると、法律上は従来の預金債権に代わり、同額の「休眠預金等代替金」の支払請求権を持つ扱いになります。

つまり、お金がなくなるわけではありません。

移管後も、元の金融機関で所定の手続きをすれば払戻しを受けられます。

ただし、その手続きにも口座の特定が必要です。

相続人が「どこかにあるはず」という状態では、そもそも請求先が分かりません。

なお、一定額に満たない場合などは事前の通知が省かれることがあります(同法第7条第2項ただし書)。

登録している住所やメールアドレスが古いままだと、通知が届かないまま10年が過ぎます。


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一覧に書く項目・書かない項目

一覧の目的は、家族が「どこに問い合わせればよいか」を分かる状態にすることです。

残高を正確に記録する必要はありません。金額は日々動きますし、更新が追いつかなくなります。

一覧に書く一覧に書かない
金融機関名・サービス名パスワード・暗証番号
契約の名義(旧姓なら旧姓も)秘密の質問の答え
登録しているメールアドレス(一部を伏せる)2段階認証の復旧コード
問い合わせ窓口・相続専用ダイヤル暗号資産の秘密鍵・シードフレーズ
資産の種類(預金・投資信託・株式など)スマートフォンの解除番号
支店名・口座番号の下4桁ワンタイムパスワードの受信設定
マイナンバーを届け出ているかログインID
外国株・信用取引・借入の有無
最終更新日

書かない側に入れたものは、一覧とは別に管理します。

保管方法はパスワードの遺し方|エンディングノートに書いてはいけない理由にまとめました。

なお、旧姓の口座は見落とされやすい財産です。

結婚前に作った口座をそのままにしている方は、名義欄に旧姓と記しておいてください。

ただし、一覧そのものも取引先が分かる情報です。フィッシングやなりすましの材料にもなり得ます。

本人が更新しやすく、かつ第三者が自由に読めない場所に置いてください。

施錠できる書庫か、暗号化したファイルが現実的です。

家族に伝えるのは中身ではなく、一覧の存在と保管場所だけで足ります。


生前に口座を洗い出す5つの手がかり

ここからは、本人が自分の口座を思い出すための方法です。

自分の口座であっても、全部を挙げられる方は多くありません。

次の5つを順に見ていくと、忘れていた口座が出てきます。

手がかり1:メールの検索

メールソフトで「お取引」「残高」「明細」「口座開設」などの語を検索します。

各社からの通知メールが残っていれば、そこに会社名があります。

手がかり2:郵便物

ネット専業でも、法定書面や税務の書類が届くことがあります。

証券会社からの特定口座年間取引報告書は代表的な手がかりですが、電子交付のみに設定していると郵送されません。会員ページの交付履歴も見てください。

手がかり3:スマートフォンのアプリ

ホーム画面だけでなく、アプリの一覧を最後まで見てください。

使っていないアプリが残っていることがあります。

手がかり4:クレジットカードと引落しの明細

毎月の引落し先に、証券口座への積立が混じっていることがあります。

手がかり5:確定申告の控えと税務の資料

上場株式やFXを申告していれば、確定申告書の控えや添付・保存した資料から証券会社名が分かることがあります。

確定申告書の本体だけで会社名まで特定できるとは限らないため、特定口座年間取引報告書や取引明細もあわせて見てください。

なお、洗い出しは一度で終わりません。

思い出したときに書き足せるよう、更新しやすい形で作ってください。


亡くなった後に口座を探す2つの公式ルート

一覧を残せないまま亡くなった場合でも、家族が使える公式の調べ方があります。

ここは相続人が使う方法で、前の章とは立場が違います。

ルート1:マイナンバーによる相続時の口座照会(預貯金)

2025年4月1日から、マイナンバーと預貯金口座を紐づける制度が拡充されました。

デジタル庁は、金融機関の窓口等で口座に付番しておくと「相続時や災害時には、付番口座の所在を把握できる」と案内しています。

ただし、金融機関へのマイナンバーの届出は任意です。

付番していない口座は、この方法では見つかりません。

また、対象は預貯金であり、証券口座をまとめて探せる制度ではありません。

手数料や申込方法、対象となる金融機関の範囲は各行で異なるため、窓口へ確認してください。

ルート2:ほふりの登録済加入者情報の開示請求(国内の株式等)

証券会社が分からないときは、証券保管振替機構(ほふり)の開示請求が使えます。

振替株式等の口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧を、有料で確認できる制度です。

ここで分かるのは口座がある会社の名前までです。

銘柄も残高も分かりませんし、外国株式や国債・社債は対象外です。

開示結果に出てきた各社へ、相続人として残高証明書を請求する流れになります。

なお、これらはあくまで補助的な手段です。

付番されていない口座も、外国株も、暗号資産も、この2つでは出てきません。

生前の一覧が不要になる制度ではない、と理解してください。


証券口座は預金より手間がかかる

預金と証券では、相続手続きの重さが違います。

預金は、解約して現金を分ければ終わります。

証券は、そうはいきません。

上場株式や移管できる投資信託は、相続人名義の口座へ振り替えてから換金するよう求められることが多くあります。

その場合、相続人側にも証券口座が必要です。持っていなければ、そこから開設することになります。

ただし、すべての商品が同じ扱いではありません。

単元未満株式、移管できない投資信託、外国株式や外国債券、上場廃止銘柄などは、売却や買取り、金銭での精算といった別の処理になることがあります。

具体的な移管先や売却方法は、証券会社へ確認してください。

その間も、株価は動きます。

手続きに数か月かかることを考えると、この点は事前に家族へ伝えておく価値があります。

なお、有価証券は相続税の申告でも評価に手間がかかる財産です。関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続税申告で漏れやすい財産ベスト10|税務調査で指摘されないための対策」もあわせてご確認ください。

なお、一覧には「どの会社に、どんな種類の資産があるか」まで書いておいてください。

預金だけなのか、投資信託があるのか、外国株を持っているのかで、家族の準備が変わります。

外国株がある場合は、さらに手続きが複雑になります。


年に一度、更新する仕組みをつくる

一覧は、作った時点から古くなります。

口座を増やしたり、解約したりするたびに、実態とずれていきます。

そこで、更新する日を決めてしまうのが確実です。

誕生日、年末、確定申告の時期など、毎年必ず来る日に紐づけてください。

見直すのは次の3点だけで足ります。

確認すること見る場所
増えた口座はないかこの1年のメール・郵便物
解約した口座が残っていないか一覧そのもの
登録メールアドレスは今も使えるか各社のマイページ

登録メールアドレスの確認は、意外に効きます。

勤務先のアドレスで登録したまま退職すると、通知が一切届かなくなるためです。

なお、一覧を作ったこと自体を家族に伝えていなければ、意味がありません。

どこに置いてあるかだけは、口頭でも伝えておいてください。

一覧ができたら、次は「誰に何を渡すか」です。進め方は遺言書のデジタル下書きを作る意味|法的効力・清書・2026年改正にまとめました。


よくある質問(FAQ)

Q1. 家族に知られたくない口座がある場合はどうすればよいですか?

A. 一覧を2つに分ける方法があります。家族がすぐ見てよいものと、封をして別に預けるものです。ただし、遺産分割の対象になる財産や相続税の課税対象になる財産は、漏れなく確認する必要があります。生命保険金のような受取人固有の財産や、財産性のないアカウントは扱いが別なので、個別に区別します。隠したままにすると、後から見つかったときに手続きをやり直すことになります。

Q2. ネット証券は残高証明書を出してもらえますか?

A. 相続手続きの一環として、死亡日時点の残高証明書を発行してもらえるのが一般的です。請求できるのは相続人で、戸籍などの書類が必要になります。会社ごとに様式と必要書類が異なるため、まず相続専用の窓口へ連絡してください。

Q3. 口座がありそうな会社に、生前のうちに問い合わせてもよいですか?

A. 本人であれば、自分の口座の有無を各社に確認できます。氏名・生年月日・登録していた可能性のある住所やメールアドレスを伝えると調べてもらえることがあります。旧姓で開設した口座は、旧姓も併せて伝えてください。

Q4. 一覧は紙とデータのどちらがよいですか?

A. 更新のしやすさならデータ、家族の見つけやすさなら紙です。データにする場合は、その保存先自体にどうアクセスするかという問題が残ります。紙で作って施錠できる場所に置き、置き場所を家族に伝えておく方法が、実務では確実です。


遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

まとめ

通帳が届かない口座は、家族から見えません。

最後の取引から10年が経てば休眠預金等となり、預金債権は消滅します。代替金として請求できる仕組みはありますが、そもそも口座を特定できなければ手続きに入れません。

一覧に書くのは、金融機関名、契約の名義、問い合わせ窓口、資産の種類までです。

パスワードや暗証番号は書きません。

洗い出しは、メールの検索、郵便物、スマホのアプリ、カードの明細、確定申告の控えの順に見ていきます。

そして、毎年必ず来る日を決めて更新してください。

作った一覧の置き場所を家族に伝えるところまでが、この対策の完成です。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、口座の棚卸しから遺言書の作成まで、生前の備えを一体で設計しています。


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あわせて読みたい


根拠法令・公的資料

  • 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律第2条第6項(休眠預金等の定義・最終異動日等から10年)
  • 同法第7条(公告・通知及び休眠預金等代替金)
  • 民法第896条(相続の一般的効力)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。