相続コラム

ホーム相続コラム賃貸住宅に住んでいた親が亡くなったら|賃借権の相続・解約・原状回復と連帯保証

賃貸住宅に住んでいた親が亡くなったら|賃借権の相続・解約・原状回復と連帯保証

最終更新:

相続手続き

アバター画像

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司



10秒でわかる この記事の要約

  • 賃貸住宅の賃借権は相続財産。借主(親など)が亡くなっても契約は自動で終わらず、相続人に承継される(無償で借りる使用貸借は借主の死亡で終了=民法597条3項とは異なる)。
  • やることは、①大家・管理会社へ連絡 ②契約内容の確認 ③継続か解約かの判断 ④解約申入れ ⑤残置物の搬出・原状回復 ⑥敷金の精算、の順。
  • 連帯保証は誰が亡くなったかで扱いが分かれる。とくに相続人自身が保証人なら、相続放棄しても保証責任は消えない。2020年4月以降に締結・合意更新された個人根保証は極度額の定めが必要(民法465条の2)で、借主・保証人の死亡で元本が確定する(民法465条の4)。
  • 相続人がいない場合、内縁の配偶者など同居者は賃借権を承継できる(借地借家法36条。ただし相続人の有無は戸籍調査で確認)。
  • 滞納家賃・原状回復費が大きいなら相続放棄も選択肢。ただし家賃の支払い・解約・家財の処分などが法定単純承認になると放棄できなくなるため、手をつける前に相談を。

「賃貸住宅で一人暮らしをしていた親が亡くなった。部屋はどうすればいいのか」。こうしたとき、慌てて退去や片付けを進めてしまいがちですが、賃貸借契約は借主の死亡で自動的に終わるわけではありません。建物の賃借権は相続財産として相続人に引き継がれ、契約の継続・解約、残置物、連帯保証、敷金など、いくつもの論点が関わります。

本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、賃貸住宅の借主(親など)が亡くなったときに必要な手続きを、実務目線で整理します。


賃貸借契約は相続される(賃借権の相続)

まず押さえたいのは、建物の賃借権(部屋を借りる権利)は相続財産にあたり、借主が亡くなると相続人に承継されるということです(民法第896条)。借主が亡くなっても、契約は自動的には終わりません。相続人が賃料を支払えば、そのまま住み続けることもできます。

ここで混同しやすいのが、無償で借りていた場合(使用貸借)との違いです。親族の家などを無償で借りる使用貸借は、借主の死亡によって終了します(民法第597条第3項)。一方、家賃を払って借りる賃貸借は終了せず、相続される点が異なります。

したがって、賃貸住宅の借主が亡くなったら、相続人は「契約を続けるか、解約するか」を判断し、必要な手続きを進めることになります。まずは大家・管理会社へ連絡し、契約内容を確認することが出発点です。


借主が亡くなった後にやること(手続きの流れ)

賃貸住宅の借主が亡くなったときは、次の流れで進めます。

順序 やること ポイント
大家・管理会社へ連絡 死亡の事実を速やかに伝える
契約内容の確認 賃料・解約予告期間・連帯保証・原状回復の取り決め
継続か解約かの判断 相続人で話し合う。相続放棄の可能性も含め検討
解約の申し入れ 予告期間(多くは1か月前など)に従う
残置物の搬出・原状回復 家財の片付け、契約に基づく原状回復(民法621条)
敷金の精算 未払家賃・原状回復費を清算し、残額の返還を受ける

注意したいのは、相続放棄を検討している場合です。③〜⑤の段階で、家賃を相続財産から支払ったり、家財を持ち帰ったりすると、相続を承認したとみなされ(法定単純承認)、放棄できなくなるおそれがあります。負担が大きそうな場合は、片付けや支払いに手をつける前に確認が必要です(後述)。

契約を続ける?解約する?

賃借権を相続したら、住み続ける(継続)か、解約するかを選びます。

続ける場合は、契約名義を相続人に変更するなどの対応を大家・管理会社と相談します。相続人が複数いるときは、賃借権は相続人の共有(準共有)状態になります。誰が住む・誰が名義人になるかを整理しておくと、後のトラブルを防げます。

解約する場合は、契約書に定めた解約予告期間(多くは「1か月前まで」など)を確認し、大家・管理会社へ解約を申し入れます。予告期間に満たない解約は、その分の賃料を求められることがあります。解約日までに残置物を搬出し、契約に基づく原状回復(民法第621条)を行います。

相続人が複数いる場合、解約や明渡しを誰がどう進めるかでもめることがあります。相続人間で方針を共有し、必要に応じて遺産分割協議のなかで賃貸借の扱いも決めておくとよいでしょう。

なお、敷金がある場合、敷金返還請求権も相続財産に含まれます。賃貸借の終了後、未払賃料や原状回復費などを差し引いた残額があれば、相続人に返還されます(民法第622条の2)。相続放棄を検討している場合は、敷金の受領も含めて慎重に判断します。


連帯保証人はどうなる

賃貸借契約には、連帯保証人が付いていることが多くあります。連帯保証は、誰が亡くなったのかで整理が変わるため、次の3つの場面を分けて考えます。

場面 整理
借主本人が亡くなった 賃貸借契約は相続人に承継される。ただし2020年4月以降の個人根保証では、借主の死亡で保証の元本が確定し(民法465条の4)、その後に発生する賃料・原状回復費まで当然に保証し続けるとは限らない
連帯保証人が亡くなっていた その時点までに確定した保証債務を、保証人の相続人が承継することがある。個人根保証では保証人の死亡でも元本が確定する
相続人自身が保証人だった 相続放棄をしても、保証人としての責任は当然には消えない(相続で承継した債務ではなく、本人の契約上の債務のため)

2020年4月以降に締結・合意更新された個人の根保証契約は、極度額(責任の上限額)を定めなければ効力が生じません(民法第465条の2)。賃貸借の連帯保証もこれに該当します。近年は、連帯保証人に代えて家賃保証会社を利用する契約も増えており、その場合は保証会社との契約内容(解約・精算の扱い)も確認します。

とくに注意したいのが、相続人自身が、亡くなった借主の連帯保証人になっていた場合です。この保証債務は相続とは別の本人の債務なので、後述の相続放棄をしても消えません。いずれにしても、滞納家賃や原状回復費が膨らむ前に、早めに解約・精算を進めることが、負担を抑えるポイントです。


内縁の配偶者・同居者は住み続けられる?

亡くなった借主と一緒に暮らしていた人がいる場合、その人が住み続けられるかは、相続人がいるかどうかで変わります。

相続人がいない場合は、婚姻や縁組の届出をしていなくても、事実上夫婦・養親子と同様の関係にあった同居者が、建物の賃借権を承継できます(借地借家法第36条)。内縁の配偶者やパートナーを保護するための規定です。

一方、相続人がいる場合は、賃借権はその相続人に承継されます。この場合、同居していた内縁の方が住み続けるには、賃借権を相続した相続人や大家との協議が必要になります。

もっとも、「相続人がいない」かどうかは戸籍調査で確認する必要があります。相続人の有無が不明な段階では、内縁の配偶者・同居者、大家・管理会社、専門家で状況を確認しながら進めます。事情によって扱いが大きく変わるため、同居者がいるケースでは、早めに専門家へ相談することをおすすめします。


相続放棄を考えるとき

滞納家賃が多い、原状回復費が高額になりそう、他にも借金があるといった場合は、相続放棄も選択肢になります。相続放棄をすれば、相続人として賃借権や滞納家賃の支払義務を承継することはありません。

ただし、相続人自身が連帯保証人になっている場合は別です。保証人としての責任は相続放棄では消えず、保証契約に基づいて滞納家賃や原状回復費を請求される可能性があります。相続放棄と保証責任は分けて確認する必要があります。

また、放棄を検討するなら、次の点に注意します。

  • 相続放棄には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という期限があります(民法第915条)。
  • 家賃を相続財産から支払う、賃貸借契約を解約する、家財を持ち帰る・処分するといった行為が、相続財産の処分にあたると、法定単純承認(民法第921条)とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。賃借権も家財(残置物)も相続財産であるため、解約通知や片付けも慎重に扱う必要があります。

賃貸物件は「とりあえず片付けないと」と動きがちですが、負担が大きい可能性がある場合は、何かに手をつける前に、まず放棄の可否を確認することが重要です。大家・管理会社へは、死亡の事実を伝えるにとどめ、「相続放棄を検討中で対応を確認している」と伝えて、解約・支払い・片付けに進む前に専門家へ相談するのが安全です。相続放棄ができなくなる行為については、税理士法人トゥモローズの解説もあわせてご覧ください。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):法定単純承認とは?相続放棄ができなくなる行為

なお、単身高齢者の賃貸では、入居者の死亡後の賃貸借契約の解除や残置物処理に備えるため、国土交通省・法務省が残置物の処理等に関するモデル契約条項を公表しています。これは、生前に受任者を定めて契約しておくためのモデルであり、相続発生後に当然に大家が残置物を処分できる制度ではありません。おひとりさま・身寄りが少ない方の生前対策として検討します。

また、相続放棄をした場合でも、放棄の時に家財・鍵・室内の動産など相続財産を現に占有しているときは、次に管理できる人(次順位の相続人や相続財産清算人)に引き渡すまで、一定の保存義務が残ることがあります(民法第940条)。占有の有無や清算人の選任状況によって対応が変わるため、個別の確認が必要です(相続放棄したあとの管理義務もご覧ください)。


賃貸住宅の相続は誰に頼む?

賃貸住宅の借主が亡くなったときの手続きは、内容によって相談先が分かれます。

  • 行政書士:相続人の確定(戸籍収集)、賃貸借の継続・解約に関する大家・管理会社とのやり取りに必要な書類の準備、遺産分割協議書の作成など。相続手続き全体の段取りをサポートします
  • 司法書士:不動産がある場合の相続登記(名義変更)
  • 税理士:相続税の試算・申告(滞納家賃や敷金など債務・債権の扱いを含む)
  • 弁護士:大家や保証人との間で金銭の争いがある場合の交渉・代理、相続放棄をめぐる紛争

なお、行政書士が行うのは、相続人の調査、資料の整理、通知書・届出書類などの作成支援、相続手続き全体の段取りです。大家・管理会社・保証人との間で、金額や責任をめぐる争いがある場合の交渉・代理は弁護士と連携します。

賃貸物件の相続は、退去・原状回復の期限に追われやすく、相続放棄の判断とも絡みます。「片付けを始めてよいか」の段階で相談すると、放棄の可否も含めて全体を整理できます。費用は依頼する範囲・内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。


相続放棄の判断や、相続手続き全体については、こちらもあわせてご覧ください。

相続手続き、まるごとおまかせ。行政書士法人トゥモローズの相続手続きサポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 賃貸住宅に住んでいた親が亡くなりました。部屋はすぐ退去しないといけませんか?

A. すぐに退去する必要はありません。建物の賃借権は相続財産として相続人に承継されるため、相続人が賃料を支払えば契約は続きます。続けるか解約するかを相続人で決め、解約する場合は契約書に定めた予告期間(多くは1か月前など)を確認して解約を申し入れます。まずは大家・管理会社へ死亡を連絡し、契約内容を確認しましょう。

Q2. 亡くなった親の部屋の連帯保証人は、契約が終わるまで責任を負い続けますか?

A. 誰が亡くなったかで扱いが分かれます。借主の死亡では賃貸借は相続人に承継されますが、2020年4月以降の個人根保証は借主の死亡で保証の元本が確定します(民法465条の4)。保証人が先に亡くなっていた場合は、確定した保証債務をその相続人が承継することがあります。なお、個人根保証は極度額を定めなければ効力が生じません(民法465条の2)。とくに、相続人自身が借主の連帯保証人だった場合、相続放棄をしても保証責任は消えない点に注意します。

Q3. 内縁の配偶者が同居していました。住み続けられますか?

A. 亡くなった借主に相続人がいない場合、事実上夫婦・養親子と同様の関係にあった同居者は、建物の賃借権を承継できます(借地借家法36条)。一方、相続人がいる場合は賃借権は相続人に承継されるため、同居していた内縁の方の居住をどう続けるかは、相続人や大家との協議になります。状況により扱いが変わるため、早めに専門家へ相談しましょう。

Q4. 部屋に残った家財(残置物)は、勝手に処分してよいですか?

A. いいえ。残置物も相続財産にあたるため、大家・管理会社が相続人の同意なく処分することはできません。相続人側も、相続放棄を検討している場合は、家財の持ち帰り・売却・廃棄が法定単純承認とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。相続放棄をしない前提でも、相続人が複数いる場合は、相続人間で確認し、処分・形見分けの記録を残して進めるのが安全です。

Q5. 滞納家賃や原状回復費が高額です。相続放棄すれば払わなくて済みますか?

A. 相続放棄をすれば、相続人として賃借権や滞納家賃の支払義務を承継することはありません。ただし、相続人自身が連帯保証人になっている場合、保証人としての責任は相続放棄では消えません。また、放棄には相続の開始を知ってから3か月の期限があり、家賃の支払い・解約・家財の処分などが法定単純承認とみなされると放棄できなくなります。負担が大きい場合は、何かに手をつける前に、まず放棄の可否を専門家に相談しましょう。

Q6. 相続放棄を検討中でも、大家に解約の連絡をしてよいですか?

A. 死亡の事実を連絡すること自体は通常問題ありません。ただし、相続人として賃貸借契約を解約する、家賃を支払う、家財を処分するなどの行為は、相続財産の処分と評価されるおそれがあります。相続放棄を検討している場合は、放棄を検討中で対応を確認していると伝えるにとどめ、具体的な解約・支払い・片付けに進む前に専門家へ相談するのが安全です。


まとめ

賃貸住宅の借主(親など)が亡くなっても、賃貸借契約は自動では終わりません。建物の賃借権は相続財産として相続人に承継されます(無償の使用貸借が借主の死亡で終了するのとは異なります)。相続人は、大家・管理会社への連絡 → 契約内容の確認 → 継続か解約かの判断 → 解約申入れ → 残置物の搬出・原状回復 → 敷金の精算、という流れで進めます。

連帯保証は誰が亡くなったかで扱いが分かれ、とくに相続人自身が保証人なら、相続放棄をしても保証責任は消えません。2020年4月以降の個人根保証は極度額の定めが必要で(民法第465条の2)、借主・保証人の死亡で元本が確定します(民法第465条の4)。相続人がいない場合は内縁の同居者が賃借権を承継できること(借地借家法第36条。相続人の有無は戸籍調査で確認)も押さえておきましょう。滞納家賃や原状回復費が大きい場合は相続放棄も選択肢ですが、家賃の支払い・解約・家財の処分が法定単純承認になると放棄できなくなるため、手をつける前の確認が重要です。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。相続登記は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。


相続手続き、お悩みではありませんか?

戸籍収集から遺産分割協議書の作成、預貯金・不動産・自動車などの名義変更まで、
相続を専門に扱う行政書士が、税理士・司法書士と連携してワンストップで対応します。

03-6280-5188

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00

初回相談無料|今すぐ予約する


関連記事


根拠法令・公的資料

  • 民法第896条(相続の一般的効力。賃借権は相続財産として承継)
  • 民法第597条第3項(使用貸借は借主の死亡によって終了)
  • 民法第465条の2(個人根保証契約の極度額。定めがなければ効力を生じない)・第465条の4(主たる債務者又は保証人の死亡で元本確定)
  • 民法第621条(賃借人の原状回復義務)/第622条の2(敷金)
  • 民法第915条(相続の承認・放棄の熟慮期間)/第921条(法定単純承認)/第940条(放棄後、現に占有する相続財産の保存義務)
  • 借地借家法第36条(居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合の同居者の承継)
  • 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)/司法書士法第3条(登記申請の代理)
  • 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く

公的機関・根拠リンク

アバター画像

この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。