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相続人に未成年の子がいる遺産分割|特別代理人の選任が必要なケースと手続き

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相続手続き

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司



10秒でわかる この記事の要約

  • 親(配偶者)と未成年の子が共同相続人として遺産分割するとき、親が子を代理すると利益相反になるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる(民法826条1項)。
  • 未成年の子が複数いる場合、必要な人数は親自身が共同相続人かどうかで変わる。親も共同相続人なら原則として各子に別の特別代理人。親が相続人でないなら、親が1人を代理しほかの子に特別代理人を選ぶ方法もある(民法826条2項)。
  • 利益相反は行為の外形で判断されるため、法定相続分どおりに分ける予定でも、遺産分割協議をするなら必要。不要なのは、協議をせず法定相続分の共有のまま承継する場合や、有効な遺言で取得者が決まっている場合など。親が相続放棄しても、未成年の子が複数なら子同士の利益相反に注意。
  • 流れは、①利益相反の確認 ②司法書士と連携して遺産分割協議書の案など申立資料を準備 ③子の住所地の家裁へ選任申立て ④審判・選任 ⑤特別代理人が子を代理して協議。
  • 家裁への申立書・添付の協議書案の作成は司法書士、申立代理・紛争は弁護士。行政書士は戸籍収集、相続人・相続財産の整理、選任後の遺産分割協議書作成・預貯金等の相続手続きを支援。

「亡くなった夫の遺産を、自分と幼い子どもで分けたい。母親の自分が子の分も決めればよいのでは?」。——実は、これはそのままではできません。親と未成年の子が同じ相続の当事者になる場合、親が子を代理して遺産分割をすると、親に有利な分け方ができてしまうため、子を守るしくみが必要になります。それが特別代理人です。

本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、特別代理人が必要なケース・不要なケース、選任の流れ、誰が代理人になるか、行政書士の関与範囲までを整理します。


なぜ特別代理人が必要なのか(利益相反)

未成年の子は、自分だけで有効に遺産分割などの法律行為をすることができず、通常は親権者(親)が代理します(民法第5条)。ところが、親と未成年の子が、同じ被相続人の相続人として遺産分割をする場合、親が子を代理すると問題が生じます。

たとえば、父が亡くなり、母と未成年の子が相続人になったケースを考えます。母が自分の取り分を増やそうとすれば、子の取り分は減ります。つまり、母(親権者)と子の利益が相反するのです。この状態で母が子を代理して協議を成立させると、子の利益が害されかねません。

そこで民法は、親権者と子の利益が相反する行為については、親権者は子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないと定めています(民法第826条第1項)。特別代理人とは、その遺産分割協議について、子の代わりに子の利益を守る立場で関与する人です。

なお、未成年の子が複数いる場合、必要な特別代理人の人数は、親自身も共同相続人かどうかで変わります。親も共同相続人であれば、親はどの子も代理できず、また1人が複数の子を代理することもできないため、原則として各子に別々の特別代理人が必要です。一方、親が相続人でない場合は、親が1人の子を代理し、ほかの子について特別代理人を選任する方法もあります(民法第826条第2項)。


特別代理人が必要なケース・不要なケース

特別代理人が必要かどうかは、「親権者と未成年の子の利益が相反するか」で決まります。ここで大切なのは、利益相反かどうかは、親に子を害する意図があるかではなく、行為の外形・性質から判断されるという点です。つまり、法定相続分どおりに分ける予定であっても、親と未成年の子が共同相続人として遺産分割協議をする以上、原則として特別代理人が必要になります。

ケース 特別代理人 注意点
親と未成年の子1人が共同相続人として協議 必要 法定相続分どおりの協議でも必要
親と未成年の子が複数、共同相続人として協議 原則、各子に別人が必要 親子・子同士の両方で利益相反
親は相続人でなく、未成年の子1人 原則不要 ほかの利益相反がないことが前提
親は相続人でなく、未成年の子が複数 一部の子に必要 親が1人を代理し、ほかの子を特別代理人が代理
遺産分割協議をせず、法定相続分で共有する 原則不要 後日の売却・分割協議時には必要となる場合あり
有効な遺言で全財産の取得者が決まっている 原則不要 遺言外の財産を協議する場合は別

2022年4月の民法改正で成年年齢は18歳に引き下げられています。子が18歳以上であれば、自分で遺産分割協議ができるため、特別代理人は不要です。判断が微妙なケースもあるため、迷う場合は専門家に確認しましょう。

なお、「不要」とされるのは、あくまで遺産分割協議をしない場合です。いったん法定相続分で共有した後に、不動産の売却・換価・共有物分割や、預貯金の解約・分配などを行う場合には、別途、遺産分割協議や処分行為が必要となり、その時点で特別代理人が必要になることがあります。「協議をせず法定相続分で承継する」ことと「法定相続分どおりに分ける遺産分割協議をする」ことは、区別して考えます。

特別代理人選任の流れ

特別代理人の選任は、家庭裁判所への申立てで行います。

  • 申し立てる人:親権者、または利害関係人
  • 申立先未成年の子の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 申立費用:対象となる子1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(額は家庭裁判所により異なるため申立先へ確認)
  • 主な書類:申立書、未成年者の戸籍謄本、親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、利益相反に関する資料(遺産分割協議書の案など)

ポイントは、申立ての段階で遺産分割協議書の「案」を提出することです。家庭裁判所は、その案が未成年の子の利益を害しないかを確認したうえで、特別代理人を選任します。選任後は、その特別代理人が子を代理して、案に沿った遺産分割協議を成立させます。

つまり、「先に協議書の案を固める → 申立て → 選任 → 協議成立」という順序になります。子の相続分をきちんと確保した案にしておくことが、手続きをスムーズに進めるカギです。

なお、選任後に、家庭裁判所へ提出した遺産分割協議書の案から重要な内容を変更する場合は、そのまま署名せず、家庭裁判所や手続きを担当した専門家へ確認します。変更の内容によっては、追加資料の提出や、改めての手続きが必要になることがあります。


誰が特別代理人になれるか

特別代理人には、未成年の子と利益が相反しない人を選びます。

  • 多いのは、祖父母、おじ・おばなど、その遺産分割で利害が対立しない親族です。
  • 適当な親族がいない場合は、専門家を候補者とすることもできます。
  • 申立ての際に候補者を挙げられますが、最終的に誰を選任するかは家庭裁判所が判断します。

逆に、親権者本人や、その遺産分割で財産を取得する人、特定の相続人と利害が強く結びつく人は、利益相反の関係にあるため、候補者として適切でないと判断される可能性があります。候補者は挙げられますが、最終的に選任するかどうかは家庭裁判所が判断します。

特別代理人は、その遺産分割協議についてのみ、子を代理する立場です。選任された特別代理人は、子の利益を守る役割を担うため、安易に親の言うとおりに署名する人ではなく、内容を理解して関与できる人を選ぶことが望ましいといえます。


注意点(子の利益の確保)

特別代理人をめぐって、とくに注意したい点を整理します。

① 原則として子の法定相続分の確保が求められる
家庭裁判所は、未成年の子の利益が害されないかを確認します。実務では、原則として未成年の子の法定相続分を確保する内容が求められます。法定相続分を下回る案にする場合は、合理的な理由や、子に実質的な不利益がないことを具体的な資料で説明する必要があり、遺産分割案の修正や追加資料の提出を求められたりすることがあります。

② 手続きを飛ばした遺産分割は効力が生じない
特別代理人を選任せずに、親権者が未成年の子を代理して行った遺産分割は、無権代理行為として、子に当然には効力が及びません。成年に達した子本人や、適法に選任された特別代理人による追認がない限り、有効な遺産分割として扱われない可能性があります。後で登記や預金手続きの場面で問題が判明し、やり直しになることもあるため、最初から正しい手順で進めることが大切です。

③ 未成年の子が複数いる場合は、必要な代理人の人数に注意
未成年の子が複数いて子同士の利益が相反する場合、同じ人が複数の子をまとめて代理することはできません。親自身も共同相続人であれば、親はどの子も代理できないため、原則として各子に別の特別代理人が必要です。一方、親が相続人でない場合は、親が1人の子を代理し、ほかの子について特別代理人を選任する方法もあります(民法第826条第2項)。

未成年の子がいる相続では、相続税の未成年者控除など税務上の取扱いも関わります。税額の計算は税理士法人トゥモローズと連携して確認します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の未成年者控除をわかりやすく徹底解説


未成年の子がいる相続は誰に頼む?

未成年の子がいる相続は、内容によって相談先が分かれます。

  • 行政書士:戸籍収集による相続人・相続財産の調査、財産資料の整理、選任後に成立した遺産分割内容の協議書の作成、預貯金等の相続手続き、全体の段取り
  • 司法書士:特別代理人選任申立書と、その添付資料となる遺産分割協議書の案など(裁判所へ提出する書類)の作成、不動産の相続登記
  • 弁護士:申立ての代理、分け方について争いがある場合の交渉・代理
  • 税理士:相続税の試算・申告(未成年者控除などの税務判断を含む)

ここで注意したいのが、裁判所へ提出する書類の作成は司法書士の業務だという点です。特別代理人選任申立書や、その添付資料として家庭裁判所に提出する遺産分割協議書の案は、行政書士ではなく司法書士が作成します。当法人では、戸籍収集や相続人・相続財産の調査を行い、申立ては提携司法書士、争いがあれば提携弁護士と連携し、選任後の遺産分割・各種手続きまで全体をサポートします。「特別代理人が必要かどうか」の段階で相談すると、全体の流れを整理して進められます。費用は依頼する範囲・内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。遺産分割協議書については、遺産分割協議書は自分で作れる?もあわせてご覧ください。


未成年の子がいる相続や、遺産分割協議書については、こちらもあわせてご覧ください。

相続手続き、まるごとおまかせ。行政書士法人トゥモローズの相続手続きサポート

よくある質問(FAQ)

Q1. どんなときに特別代理人が必要になりますか?

A. 親権者と未成年の子が、ともに同じ相続の当事者になり、遺産分割協議をするときです。親が子の代理人として分け方を決められると、自分に有利にして子の取り分を減らすこともできてしまうため、子を守る立場の代理人を家庭裁判所に選んでもらいます(民法826条)。

Q2. 法定相続分どおりに分ける場合も、特別代理人は必要ですか?

A. 必要です。特別代理人が必要かは、親に子を害する意図があるかではなく、遺産分割協議という行為の性質から判断されます。そのため、結果的に法定相続分どおりに分ける予定でも、親と未成年の子が共同相続人として協議をする以上、原則として特別代理人が必要です。逆に、協議をせず法定相続分の共有のまま承継する場合は、原則として不要です。

Q3. 親が相続放棄をすれば、特別代理人は不要になりますか?

A. 子が1人だけなら、親が相続放棄して相続人でなくなることで、親子間の利益相反は原則として解消され、不要になることがあります。ただし、未成年の子が複数いる場合は、親が放棄しても子同士が共同相続人として利益相反する関係が残るため、特別代理人が必要になることがあります。子の人数によって結論が変わる点に注意します。

Q4. 未成年の子が2人いる場合、特別代理人は何人必要ですか?

A. 親自身が共同相続人かどうかで変わります。親も共同相続人なら、親はどの子も代理できず、1人が複数の子を代理することもできないため、原則として子それぞれに別の特別代理人が必要です(子2人なら2人)。親が相続人でない場合は、親が1人の子を代理し、もう1人の子について特別代理人を選任する方法もあります。

Q5. 特別代理人を立てれば、どんな内容の遺産分割でも認められますか?

A. いいえ。家庭裁判所は、未成年の子の利益が害されないかを確認します。申立て時に遺産分割協議書の案を提出し、実務では原則として子の法定相続分を確保する内容が求められます。法定相続分を下回る案は、合理的な理由や子に不利益がないことを資料で説明する必要があり、案の修正や追加資料の提出を求められることがあります。

Q6. 特別代理人の選任申立ては、行政書士に頼めますか?

A. 家庭裁判所へ提出する選任申立書や、その添付資料となる遺産分割協議書の案は、裁判所提出書類として司法書士の業務です。申立ての代理や相続人間の争いへの対応は弁護士の業務になります。行政書士は、戸籍収集による相続人・相続財産の調査や、選任後に成立した遺産分割内容の協議書の作成、預貯金等の相続手続きなどを担います。状況に応じて、提携する専門家と連携してご案内します。


まとめ

親(配偶者)と未成年の子が共同相続人として遺産分割をする場合、親が子を代理すると利益相反になるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます(民法第826条第1項)。利益相反は行為の外形で判断されるため、法定相続分どおりに分ける予定でも、協議をするなら必要です。未成年の子が複数いる場合、必要な人数は親自身が共同相続人かで変わり、親も共同相続人なら原則として各子に別の特別代理人が必要です(民法第826条第2項)。協議をせず法定相続分の共有のまま承継する、子が成人している、有効な遺言で取得者が決まっている場合などは不要です。

手続きは、①利益相反の確認 ②司法書士と連携して遺産分割協議書の案など申立資料を準備 ③子の住所地の家裁へ選任申立て ④審判・選任 ⑤特別代理人が子を代理して協議、という流れです。子の法定相続分を確保した内容にしておくことが、円滑に進めるポイントです。なお、特別代理人を選任せずに親が子を代理した遺産分割は、無権代理として追認がない限り効力が生じないおそれがあります。家裁への申立書や添付の協議書案の作成は司法書士、紛争は弁護士、行政書士は戸籍収集・相続財産の調査や選任後の遺産分割・各種手続きを担います。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。選任申立書の作成は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第826条(利益相反行為。親権者と子・子同士の利益相反では特別代理人を家庭裁判所に請求)
  • 民法第5条(未成年者の法律行為)/第4条(成年年齢は18歳)
  • 民法第824条(親権者の財産管理・代理権)
  • 家事事件手続法(特別代理人選任の審判。同法別表第一に掲げる事項)
  • 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)/司法書士法第3条(登記申請の代理、裁判所提出書類の作成等)
  • 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。