相続放棄したあとの管理義務|残された家財・空き家はどうなる
10秒でわかる この記事の要約
- 相続放棄をすると借金などは引き継がないが、放棄すれば一切関わらなくてよい、とは限らない。
- 2023年4月施行の改正民法940条で、相続放棄した人は「放棄の時に現に占有している財産」を、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意で保存する義務がある。
- 故人と同居していた家・手元の家財・車などが対象になりやすい。ペットも現実の世話が問題になる。遠方で占有していない財産は対象外。
- 管理義務から解放されるには、次順位の相続人または相続財産清算人に引き渡す必要がある。
「相続放棄をすれば、あとは一切関係ない」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。 借金などのマイナスの財産を引き継がない点はそのとおりですが、放棄した時点で現に占有している財産については、一定の保存(管理)義務が残ることがあります。
2023年4月施行の改正で、このルールが明確になりました(民法第940条)。空き家や残された家財をどうするか、固定資産税は誰が払うのか、いつまで管理が必要か——本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが整理します。なお、相続放棄の申述(家庭裁判所への手続き)は提携司法書士・弁護士と連携します。
相続放棄しても管理義務が残ることがある
相続放棄をすると、その人ははじめから相続人でなかったことになり、借金などのマイナスの財産も、預貯金などのプラスの財産も引き継ぎません。 これが相続放棄の基本的な効果です。
しかし、放棄したからといって、故人の財産をそのまま放置してよいわけではありません。 たとえば、故人と同居していた家に放棄後も住み続けている、家財や車が手元にある、といった場合、それらをどう扱うかが問題になります。ここで関わるのが、改正された民法第940条の保存義務です。
2023年改正後の保存義務(民法第940条)
2023年4月に施行された改正民法第940条は、相続放棄をした人の義務を、次のように定めています。
相続放棄をした者は、その放棄の時に現に占有している相続財産を、次に相続人となる者または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
ポイントは、「放棄の時に現に占有している財産」だけが対象という点です。改正前は「管理を継続しなければならない」と広く読めましたが、改正後は、放棄した人が実際に占有していた財産に限定されました。遠方にあって一度も占有していない不動産などは、原則として対象になりません。
放棄したあとの家・家財の扱いも、整理してご案内します
相続放棄後の管理義務の整理、次順位の相続人や相続財産清算人への引き渡しの段取り、戸籍収集・相続手続き全体まで、行政書士法人トゥモローズがサポートします。家庭裁判所の手続きは提携司法書士・弁護士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
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対象になりやすい財産(家・家財・ペット)
「現に占有している財産」として、実務で問題になりやすいのは次のようなものです。
| 例 | ポイント |
|---|---|
| 同居していた自宅 | 放棄後も住んでいる・鍵を管理している場合は占有にあたりやすい |
| 家財・家電・車 | 手元にある動産は保存の対象になりうる |
| ペット | 引き続き世話をしているなら、引き渡しまでの世話が必要 |
注意したいのは、処分行為と保存行為の区別です。価値のある家財・車・貴金属などを売却・廃棄・消費すると、相続財産の処分として法定単純承認に当たり、相続を承認したと扱われる(放棄が認められない・効力を争われる)リスクがあります(民法第921条)。一方で、腐敗物の処分や、倒壊・漏水を防ぐための応急的な対応など、財産価値を保つための保存行為は別に考えられます。境界の判断が難しいため、放棄の前後は自己判断で処分せず、専門家へ確認するのが安全です。
いつまで管理するのか
保存義務は、次に相続人となる人、または相続財産清算人に財産を引き渡すまで続きます。
- 次順位の相続人がいる場合:その人に引き渡せば、義務から解放される
- 次順位の相続人が受領を拒む・所在不明の場合:引渡しが進まないため、相続財産清算人の選任を検討する
- 全員が放棄して相続人がいない場合:家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、清算人に引き渡す
全員が相続放棄すると、財産を引き継ぐ人がいなくなり、空き家や家財が宙に浮いてしまいます。この場合、利害関係人などが相続財産清算人の選任を申し立て、清算人が管理・清算を行います。この申立ては、申立書の作成など家庭裁判所の手続きを伴うため、提携司法書士・弁護士と連携してご案内します。
固定資産税・相続財産清算人の費用
相続放棄をした人が気にするお金の論点が2つあります。
ひとつは固定資産税です。相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされるため、原則として被相続人の固定資産税債務を承継しません。ただし、市区町村から納税通知や現所有者申告の案内が届くことがあるため、相続放棄申述受理通知書・受理証明書の写しを提出し、課税担当部署へ確認します。放棄前にすでに来ていた納税通知の扱いなど、自治体の課税実務で対応が分かれることもあります。
もうひとつは相続財産清算人の費用です。全員が放棄して清算人の選任を申し立てる場合、家庭裁判所に予納金(清算人の報酬や手続費用に充てるお金。財産内容により事案によっては数十万円以上になることがある)を納めるよう求められることがあります。空き家を手放すために清算人を選任するなら、この費用も見込んでおく必要があります。
なお、相続放棄をしても、死亡保険金や死亡退職金などを受け取る場合は、相続税の課税関係が残ることがあります(受取人固有の財産でも、みなし相続財産として相続税の対象になり得ます)。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):【2026年最新】相続放棄と相続税の関係|節税効果・計算への影響を徹底解説
行政書士法人トゥモローズのサポート
当法人では、相続放棄後の管理義務の整理、次順位の相続人や相続財産清算人への引き渡しの段取り、戸籍収集・相続関係の確認をサポートします。放棄を考えている段階で、何に手をつけてよいか・いけないかを整理することで、放棄が無効になるリスクを防げます。
相続放棄の申述(家庭裁判所への手続き)や相続財産清算人の選任申立ては提携司法書士・弁護士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携し、窓口ひとつでご案内します。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続放棄は一度したら撤回できますか?
A. いったん家庭裁判所に受理された相続放棄は、原則として撤回できません(民法第919条)。後から「やっぱり相続したい」と思っても取り消せないのが原則です。ただし、詐欺や強迫によって放棄させられた場合など、限られた事由があるときは取消しを主張できることがあります。放棄は慎重に判断し、迷う場合は期限内に専門家へ相談してください。
Q2. 放棄した家の家財を処分してもよいですか?
A. 慎重な判断が必要です。価値のある相続財産を処分・消費すると、相続を承認したとみなされ、放棄が無効になるおそれがあります(法定単純承認)。放棄を考えている、またはした場合は、財産に手をつける前に専門家へ相談してください。引き渡しの相手が決まるまでは、自己の財産と同一の注意で保存します。
Q3. 相続放棄したことを次の相続人に知らせる義務はありますか?
A. 法律上、次順位の相続人へ通知する義務は定められていません。ただし、自分が放棄すると次順位(兄弟姉妹など)に相続権が移り、その人が借金を相続してしまうことがあります。トラブルや恨みを避けるためにも、放棄したことを次順位の相続人へ知らせ、必要なら一緒に放棄を検討してもらうのが望ましい対応です。
Q4. 遠方にある実家にも管理義務はありますか?
A. 改正後の民法第940条は、保存義務の対象を「放棄の時に現に占有している財産」に限定しています。遠方にあって一度も占有していない(住んでいない・鍵も管理していない)実家などは、原則として保存義務の対象になりません。占有しているかどうかが判断の軸になるため、状況に応じて専門家に確認するとよいでしょう。
Q5. ペットを残して相続放棄したらどうなりますか?
A. ペットは法律上は「物(動産)」として扱われます。放棄した人が引き続き世話をしている(占有している)場合は、次の相続人や清算人に引き渡すまでの間、世話をする保存義務が生じえます。現実には、放棄しても飼い続けるか、里親を探すかを早めに決め、引き渡し先が決まるまで適切に世話をすることになります。
まとめ
相続放棄をしても、放棄の時に現に占有している財産は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務があります(2023年改正・民法第940条)。同居していた家・家財・ペットが対象になりやすく、勝手に処分すると放棄が無効になるリスクも。占有していない遠方の財産は原則対象外です。固定資産税は原則として承継しませんが、市区町村に受理証明書等を提出して確認します。清算人の選任には予納金がかかります。専門家と連携して進めましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続放棄後の管理義務の整理、次順位の相続人や相続財産清算人への引き渡しの段取りから、戸籍収集・相続関係の確認まで、放棄が無効になるリスクを防ぎながらサポートしています。家庭裁判所の手続きは提携司法書士・弁護士と連携します。
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相続放棄と相続税の関係(生命保険金の扱いや計算への影響)については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第919条(相続の承認・放棄の撤回及び取消し)
- 民法第921条(法定単純承認)
- 民法第939条(相続放棄の効力)
- 民法第940条(相続の放棄をした者による管理・2023年改正で保存義務に)
- 民法第952条(相続財産清算人の選任)
- 地方税法第343条(固定資産税の納税義務者・現所有者)
- 相続税法第3条(死亡保険金等のみなし相続財産)
- 税理士法第2条・第52条(相続放棄と相続税の判断は税理士の業務)
- 行政書士法第1条の3(相続関係書類の作成等)
