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海外相続で必要なMedallion Signature Guaranteeとは|米国株移管で求められる署名保証の取得実務と日本からの対応

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 米国株の相続で、Transfer Agent(移管代理人)や証券会社がMedallion Signature Guarantee(メダリオン署名保証)の取得を求めることがあります。これは、米国内の金融機関が「この署名は本人の真正な署名である」旨を保証する制度で、単なるNotary Public認証や公証人認証とは要件が異なります。
  • Medallion Signature Guaranteeは米国・カナダを中心とするMedallion署名保証プログラム参加金融機関が提供する制度で、日本国内の公証役場・通常の日本国内金融機関・在日米国大使館では取得できません。ただし、海外投資家については取引関係のある米国・カナダ系銀行・証券会社等の海外支店で取得できる可能性があるため、海外支店ルートの可否は個別確認となります。
  • Signature Guaranteeを求めるTransfer Agentの実務では、Signature Guaranteeでは足りずMedallionが必要とされるケースが多いため、まずTransfer Agentの指定を確認します。
  • 取得困難な場合の対応として、米国内代理人への委任(POA)経由での取得、証券の売却送金への切り替え、日本の金融機関経由の代替認証提案など、代替手段の設計は現地弁護士・現地金融機関との連携で進めます。

米国株や米国投資信託の相続手続きで、日本の相続人が最も戸惑うのが「Medallion Signature Guarantee(メダリオン署名保証)を取得してください」という要求です。これはTransfer Agent(移管代理人)や証券会社が、資産の名義変更・移管前に「署名が本人のものであること」を厳格に確認するための米国独自の制度で、日本の公証人認証やアポスティーユとは要件が根本的に異なります。

本記事では、海外相続で使うMedallion Signature Guaranteeを、仕組み・取得場所・日本から取れない理由・代替手段・実務対応まで、行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。

なお、本記事は米国株相続で使うMedallion Signature Guaranteeの一般的な実務を解説するもので、Transfer Agent・金融機関・時期により指定書式・要求水準は異なります。実際の取得ルートの設計は、現地代理人・現地弁護士・現地金融機関との連携で進めます。税務判断は税理士と連携します。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、米国株相続で必要な書類パッケージの原案作成、Medallion Signature Guarantee取得ルートの整理、米国内代理人への委任(POA)手配の進行管理を全国オンラインで対応しています。


Medallion Signature Guaranteeとは——制度の概要

Medallion Signature Guarantee(メダリオン署名保証)は、米国のSecurities Transfer Agents Medallion Program(STAMP)を中心とした署名保証プログラムで、米国内の金融機関が「この署名は本人の真正な署名で、かつ本人に取引権限がある」旨を保証する制度です。米国株・投資信託等の名義変更・移管・売却の場面で、Transfer Agent(移管代理人)が要求します。

3つのMedallionプログラム

米国では複数の署名保証プログラムが運営されており、主なものは以下の3つです。

  • STAMP(Securities Transfer Agents Medallion Program):最も広く使われる。米国内の銀行・信用組合・証券会社等の多くが加盟
  • SEMP(Stock Exchanges Medallion Program):地域証券取引所会員会社・清算会社・信託会社等が参加するプログラム
  • MSP(New York Stock Exchange Medallion Signature Program):NYSE member firms(NYSE加盟証券会社)が参加するプログラム

Transfer Agentは通常、上記3プログラムのいずれかによるMedallion Signature Guaranteeを受け入れます。

Notary Publicや公証人認証との違い

Medallion Signature GuaranteeがNotary Publicや公証人認証と根本的に異なるのは、次の点です。

  • Notary Public/公証人認証:署名の真正のみを認証(この署名は本人が行った)
  • Medallion Signature Guarantee:署名の真正に加え、本人が取引権限を持ち、かつ金融機関側が損失発生時に責任を負うことを保証

つまり、Medallion Signature Guaranteeを付与した金融機関は、後日その署名が偽造・無権限であったと判明した場合、被害額を補償する保証責任を負う仕組みです。このため、Medallion Signature Guaranteeを発行する金融機関の側でも、顧客の身元・取引権限・取引内容を厳格に審査するため、日本の相続人が容易に取得できる制度ではないのが実情です。

海外提出用書類の翻訳・公証・認証の全体像は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説」もあわせてご確認ください。


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米国株相続でMedallion Signature Guaranteeが求められる典型場面

米国株の相続実務で、Medallion Signature Guaranteeが求められる典型場面を整理します。

場面1:Transfer Agent経由の株式相続(Direct Registration System / DRS)

被相続人が米国株を証券会社を経由せずTransfer Agentが直接管理する形式(DRS)で保有していた場合、Transfer Agent(Computershare、Equiniti Trust、American Stock Transfer等)から相続手続きの必要書類としてStock Power Form+Medallion Signature Guaranteeの組み合わせを要求されるのが一般的です。詳細は、海外証券口座の相続銘柄の現物移管の記事もあわせてご確認ください。

場面2:米国証券会社経由の株式移管

被相続人がCharles Schwab、Fidelity、Merrill Lynch等の証券会社経由で米国株を保有していた場合、証券会社によっては相続手続きにMedallion Signature Guaranteeを要求する場合と、自社独自のNotary Public認証で足りる場合があります。近年は自社独自のNotary Public認証(Signature Verification Form等)で対応する米国証券会社が増えていますが、証券会社の指定により対応が異なるため、事前確認が必須です。

場面3:米国株式の売却・現金化

相続後に米国株を売却・現金化する場合、Transfer Agent経由での売却手続きではMedallion Signature Guaranteeが要求されることがあります。現物移管が困難な場合の代替として売却送金を選択しても、Medallion Signature Guaranteeが必要になる場合があります。

米国不動産の名義変更は原則として別の実務

Medallion Signature Guaranteeは、主に米国証券・登録株式・投資信託等の移転で問題となる署名保証制度です。米国不動産の名義変更では、通常はNotary認証、Title Company(所有権保険会社)指定書式、州法上のプロベート・譲渡手続等が問題となり、Medallion Signature Guaranteeとは別の実務になります(米国不動産相続については現地弁護士との連携が原則必要です)。

Signature Guaranteeでは足りない

「Signature Guarantee」と「Medallion Signature Guarantee」は、名称は似ていますが別の制度です。通常のSignature Guaranteeは金融機関が単に署名の真正を証明する制度で、Medallionのような損失補償保証は伴いません。Transfer Agent・証券会社の実務では、単なるSignature GuaranteeではなくMedallion Signature Guaranteeが必要とされることが多いため、指定を必ず確認します。


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東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、米国株相続で必要なMedallion Signature Guarantee取得ルートの設計、書類パッケージの原案作成、米国内代理人への委任(POA)手配、現地弁護士・Transfer Agentとの進行管理を全国オンラインで対応します(現地代理業務・法的判断は現地弁護士、税務判断は税理士と連携)。初回相談無料。

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Medallion Signature Guaranteeが日本国内で取得できない理由

Medallion Signature Guaranteeは、原則として米国内でしか取得できません。日本国内の公証役場・金融機関では対応不可で、これが日本の相続人にとって最大のハードルとなっています。日本国内で取得できない理由を整理します。

理由1:Medallionプログラム参加金融機関が米国・カナダを中心とする

Medallionプログラム(STAMP、SEMP、MSP)は、いずれも米国・カナダを中心とする金融機関(銀行・証券会社・信用組合等)を対象としたプログラムで、日本国内の金融機関は原則として参加していません(米国・カナダ系金融機関の海外支店で対応できる可能性はあるため個別確認)。日本国内で通常の金融機関からMedallionを取得することは事実上できないため、米国・カナダ参加金融機関または海外支店ルートでの取得を検討する必要があります。

理由2:金融機関が損失補償保証を負う

Medallion Signature Guaranteeを発行する金融機関は、後日その署名が無権限・偽造であったと判明した場合の損失補償責任を負います。この責任構造は米国の金融機関補償ルールに基づくもので、日本の金融機関がこれを引き受ける法的・実務的な基盤はありません。

理由3:金融機関側の顧客審査要件

Medallionを発行する米国内金融機関は、原則として自行の既存顧客にのみサービスを提供します。つまり、Medallionを取得したい相続人が事前に米国内金融機関の口座を保有している必要があります。多くの米国内金融機関は、顧客関係(Customer Relationship)を6か月〜1年以上保有していることを条件としており、日本の相続人が米国旅行中に飛び込みで取得することは、原則として困難です。

在日米国大使館・領事館では取得不可

米国大使館・領事館ではNotary Public認証は取得できますが、Medallion Signature Guaranteeは取得できません。在日米国大使館ウェブサイトでも、Medallion Signature Guaranteeは米国内金融機関で取得すべき旨が案内されています。米国大使館のNotary認証を提出してもTransfer Agentから差し戻される場合があるため、代替ルートの設計が必要です。


Medallion Signature Guaranteeを取得する4つの現実的ルート

日本の相続人がMedallion Signature Guaranteeを取得するには、次の4つのルートが考えられます。案件の資産規模・時間的余裕・被相続人の現地関係により、最適なルートを選択します。

ルート1:相続人が渡米し、米国内金融機関で取得

相続人が既に米国内金融機関(Bank of America、Chase、Wells Fargo等)の口座を保有している場合、その金融機関の支店にパスポート・相続関係書類を持参して直接取得できる可能性があります。

  • 要件:米国内金融機関の口座(通常6か月〜1年以上の顧客関係)、パスポート、相続関係書類(Death Certificate、Family Tree等)
  • 所要期間:渡米日程を含めて2〜4週間
  • 費用:渡米費用+Medallion取得手数料(金融機関により無料〜数百ドル)

ルート2:米国内代理人にPOA経由で委任して取得(要事前確認)

米国在住の親族・現地代理人・現地弁護士にPOAを付与し、代理人が署名者として手続きを進められる可能性があります。ただし、Medallion Signature Guaranteeは署名者本人の真正性と、その署名者に取引権限があることを金融機関が保証する制度で、単に米国在住者や米国銀行口座保有者であれば取得できるものではありません。Transfer AgentがPOAによる代理署名を認めるか、米国内金融機関が代理人の署名・権限を保証するかを、事前に書面で確認する必要があります。

  • 要件:米国在住代理人、POA(Notary認証済み+アポスティーユ付き)、相続関係書類、Transfer Agent・金融機関のPOA代理署名受入れの事前確認
  • 所要期間:POA作成・郵送・事前確認を含めて6〜10週間
  • 費用:POA作成費用+代理人報酬+Medallion取得手数料
  • 委任状(POA)の詳細は、海外口座相続の委任状(POA)の作り方の記事もあわせてご確認ください

ルート3:現地弁護士・現地専門家経由で取得代行

米国の現地弁護士・現地専門家に相続手続き全体を委任し、その一環としてMedallionを取得してもらうルートです。資産規模が大きい・プロベート手続きが必要な案件で選択されます。

  • 要件:現地弁護士との契約、相続関係書類の英訳・認証パッケージ
  • 所要期間:3〜6か月(プロベート手続きを含む場合)
  • 費用:現地弁護士報酬(時間制または成功報酬)+Medallion取得費用

ルート4:Transfer Agentと代替書類での交渉

Transfer Agentによっては、資産規模が小さい場合や特別な事情がある場合、Medallion Signature Guaranteeの代わりに他の認証書類(Notary認証+Affidavit of Domicile+Family Tree等)で対応してくれる場合があります。

  • 要件:Transfer Agentとの英文書面交渉、代替書類の充実
  • 所要期間:交渉を含めて4〜8週間
  • 費用:現地弁護士報酬(交渉支援)+代替書類の作成費用
  • Medallion免除はTransfer Agentの裁量で、必ず認められるわけではない点に留意します

Medallion Signature Guarantee取得時の必要書類・準備

Medallion Signature Guaranteeを米国内金融機関で取得する際に必要となる書類・準備は、金融機関により異なりますが、一般的には次のパッケージが必要です。

基本書類パッケージ

  • 相続人のパスポート:本人確認資料
  • 米国内金融機関の口座証明:顧客関係の確認
  • Death Certificate(死亡証明書):被相続人の死亡事実の証明
  • Family Tree / Statement of Kinship:相続人の範囲の証明
  • 戸籍謄本・除籍謄本+英訳+翻訳者宣言書:相続関係の裏付け
  • Affidavit of Domicile:被相続人のドミサイル(domicile)の証明
  • Stock Power Form(記入済み・未署名):Medallionを付す対象書類

書類の認証パッケージ

各書類の認証は、以下を組み合わせます。

  • Death Certificate:発行国の公文書として、アポスティーユまたは領事認証
  • 戸籍謄本等:外務省アポスティーユ(公文書)+翻訳文+翻訳者宣言書(私文書として公証)
  • Family Tree・Affidavit of Domicile:公証役場での宣誓認証+公証人押印証明+外務省アポスティーユ
  • Stock Power Form:署名前に米国内金融機関に持参(署名は現地金融機関の窓口で行う)

現地窓口での手続きの流れ

米国内金融機関の窓口に予約を取り、以下の流れで手続きします。

  1. 事前予約(Medallion Signature Guarantee取得の目的を明示)
  2. パスポート・口座証明・相続関係書類の提示
  3. 金融機関担当者が書類・身元・取引権限を審査(数日〜数週間かかることもある)
  4. 審査通過後、窓口担当者の面前で相続人がStock Power Form等に署名
  5. 金融機関がMedallion Stamp(印章)を書類に押印
  6. 完成書類を相続人が受領

取得後の書類の取扱い

Medallion Signature Guaranteeが付与された書類は原本1通で発行され、コピーには効力がありません。紛失・破損した場合は再取得となるため、取得後は速やかにTransfer Agent・証券会社に送付し、郵送時は追跡可能な国際郵便(FedEx、DHL等)を使用します。


Medallion Signature Guaranteeが取得困難な場合の代替戦略

日本の相続人がMedallion Signature Guaranteeを取得できない場合の代替戦略を整理します。案件の状況により、複数の代替戦略を並行して検討します。

代替戦略1:現地代理人・現地弁護士へのフル委任

米国の現地弁護士に相続手続き全体を委任し、Medallionの取得・株式移管・売却送金までを一括で任せる戦略です。

  • メリット:相続人が渡米する必要がなく、複雑な現地手続きを一元化できる
  • デメリット:現地弁護士報酬が高額(時間制で数千ドル〜数万ドル)
  • 適用場面:資産規模が大きい(数十万ドル以上)、プロベートが必要な案件

代替戦略2:証券の売却送金への切り替え

米国証券会社に相続時売却を委託し、売却代金を日本に送金する戦略です。現物移管を諦めることで、Medallion取得を回避できる場合があります。ただし、Transfer Agent経由で登録株式を売却する場合など、売却指示そのものにMedallion Signature Guaranteeが求められることがあります。売却送金を選ぶ場合でも、Transfer Agent・証券会社の指定書類・要求Medallionを事前に確認します。

  • メリット:Medallion取得不要、手続きが比較的シンプル
  • デメリット:売却タイミングを選べない、相続税評価と売却額の差異が生じる
  • 適用場面:現物保有継続の必要性が低い、資産規模が中程度以下の案件

代替戦略3:Transfer Agentとの英文書面交渉

資産規模が小さい場合(閾値は金融機関により異なる)や特別事情がある場合、Transfer Agentに対して英文書面でMedallion免除を要請する戦略です。代替書類(Notary認証+Affidavit of Domicile+Family Tree+現地弁護士のCover Letter等)で対応してもらえる場合があります。

  • メリット:渡米・現地弁護士費用を抑えられる
  • デメリット:Transfer Agentの裁量で必ず認められるとは限らない
  • 適用場面:資産規模が小さい($10,000程度以下の目安)、時間的余裕がある案件

代替戦略4:米国内親族・友人へのPOA委任(要事前確認)

米国在住の親族・友人にPOAを付与し、代理人として手続きを進めてもらう戦略です。ただし、Medallion Signature Guaranteeは金融機関が署名者本人の真正性と取引権限を保証する制度であり、単に米国在住者や口座保有者であれば取得できるものではありません。Transfer Agentと米国内金融機関がPOAによる代理署名を認めるかは事前に書面で確認します。

  • メリット:現地弁護士費用を抑えられる
  • デメリット:親族・友人に手続きの負担を強いる、POA作成・認証の手間、Transfer Agent・金融機関が代理を認めない場合は使えない
  • 適用場面:米国在住の信頼できる親族・友人がおり、Transfer Agent側もPOA代理を認める案件

選択の判断基準

代替戦略の選択は、以下の要素を総合的に判断します。

  • 資産規模(数千ドル〜数十万ドル以上)
  • 現物保有継続の必要性(相続税評価上の理由・投資戦略上の理由)
  • 渡米可能性・米国内親族の有無
  • 時間的余裕(相続税申告期限との関係)
  • 現地弁護士費用と資産規模の均衡

案件ごとに最適な戦略が異なるため、初動段階で現地弁護士・行政書士・税理士との検討会を開くのが実務的です。


Medallion Signature Guarantee関連の実務トラブルと対処

Medallion Signature Guaranteeを巡る実務トラブルと対処を整理します。事前に想定しておくと、対処時間を短縮できます。

トラブル1:米国内金融機関で取得を拒否された

米国内金融機関の窓口で、Medallion Signature Guaranteeの発行を拒否されるケースがあります。多くは顧客関係が浅い(口座開設から6か月未満等)、身元書類の不備、相続関係書類の不足が原因です。対処法は、事前に金融機関のMedallion発行要件を確認し、必要書類を漏れなく揃えることです。拒否された場合は、別の米国内金融機関(既存顧客関係のある機関)への切替を検討します。

トラブル2:Medallionの限度額(Coverage Limit)を超えた

Medallionには、スタンプのAlpha Prefix(接頭記号)ごとに保証上限額(Coverage Limit)が設定されています。取引価額が上限を超える場合、Transfer Agentから差し戻されることがあります。具体的な接頭記号(Prefix)と保証上限額はTransfer Agent・保証機関(SIA Medallion等)の最新表で確認する必要があります。資産規模が大きい案件では、Transfer Agentが求めるカバレッジ層に対応できる金融機関を選定します。

トラブル3:Medallion付き書類を郵送中に紛失

Medallionが付与された原本書類を国際郵便で送付する際、配達事故・紛失リスクがあります。紛失時は再取得が必要で、相続人本人の再渡米または現地代理人経由の再手配となり、時間・費用ともに大きなロスとなります。対処法は、追跡可能な国際郵便(FedEx、DHL、UPS等)を使用し、受取人側でも受領確認を送信してもらう運用です。

トラブル4:Transfer Agentが古いフォームで却下

Transfer Agent(Computershare、Equiniti Trust等)は、時折フォーム改訂を行います。取得後にフォームが旧版になった場合、Transfer Agentから最新版での再提出を求められることがあります。対処法は、Medallion取得直前にTransfer Agentのウェブサイトで最新フォームを確認し、最新版フォームに対してMedallionを取得することです。

トラブル5:相続人が複数いる場合の同時取得の難しさ

相続人が複数いる案件で、Transfer AgentからMedallionを全相続人分要求されるケースがあります。相続人が世界各国に散らばっている場合、全員がそれぞれ米国内で取得する必要があり、スケジュール調整の難易度が非常に高くなります。対処法は、相続人代表1名にPOAで委任集約し、代表者のみのMedallion取得で対応する方法をTransfer Agentと事前調整することです。


よくある質問(FAQ)

Q1. Medallion Signature Guaranteeが本当に必要かどうかは、事前にどう判断すればよいですか?

A. まず被相続人の資産保有形態を確認します。SBI証券・楽天証券・マネックス証券等の日本の証券会社経由で米国株を保有していた場合は、日本の証券会社を通じた相続手続きが原則で、通常はメダリオン印章は問われません。一方、Charles Schwab・Fidelity・Merrill Lynch等の米国証券会社で直接保有していた場合や、Direct Registration System(DRS)経由でTransfer Agentが直接管理している登録株式を保有していた場合は要否確認が必要です。次にTransfer Agent・証券会社の相続手続きページで「Signature Guarantee Required」等の記載を確認し、証券会社に電話で「メダリオン印章が要求されるか、代替書類で対応可能か」を英文で問い合わせます。要否の確認を初動で行うことで、不要な取得コストを回避できます。

Q2. Medallion Signature Guaranteeの見た目やスタンプの確認方法はどのようなものですか?

A. Medallion Signature Guaranteeは、金融機関が書類に押す特殊なスタンプ印章で、金融機関名・Prefix(接頭記号)・シリアル番号・保証プログラム名(STAMP/SEMP/MSP)等が刻印されています。Prefixのアルファベットは金融機関ごとに割り当てられ、これによって保証機関・保証上限額が識別可能です。スタンプに滲みや欠けがあると、Transfer Agentが真正性を確認できず差し戻される可能性があります。取得後はスタンプの印章面を汚さないように保管し、原本を追跡可能な国際郵便でTransfer Agentに送付します。Medallionが偽造されるリスクもあるため、Transfer Agent側は複数の識別番号を照合して真正を確認する仕組みが用意されています。相続人としては、Medallion付き書類の原本を大切に管理することが実務のポイントです。

Q3. 相続人が米国内金融機関の口座を持っていない場合、Medallion取得のためだけに口座開設できますか?

A. 多くの米国内金融機関は非居住外国人の口座開設を制限しており、日本居住の相続人が来店して即日口座開設することは一般的に困難です。米国内金融機関の口座開設には、米国内住所・SSNまたはITIN・W-8BEN等の書類が必要で、非居住者向け口座開設プログラムを提供する金融機関(HSBC US、Citibank等の国際銀行)を選ぶ選択肢もありますが、Medallion取得資格の付与(通常6か月〜1年の顧客関係)には時間がかかります。相続手続きに間に合わせるためには、口座開設ではなく米国在住の親族・現地弁護士等へのPOA委任、または売却送金への切替が現実的な選択肢となります。

Q4. Medallion Signature Guarantee取得にかかる費用の目安は?

A. 米国内金融機関でのMedallion取得手数料自体は、無料〜数百ドルが目安で、多くの金融機関では既存顧客に対して無料または低額です。ただし、相続人が渡米して取得する場合は渡航費用(航空券・宿泊費等)、現地代理人経由の場合はPOA作成費用+代理人報酬、現地弁護士経由の場合は弁護士報酬(時間制で数千ドル〜数万ドル)が追加で発生します。トータル費用は取得ルートにより10万円〜数百万円と大きく変動するため、資産規模と費用のバランスを見て代替戦略(売却送金・Medallion免除交渉等)も含めて検討します。

Q5. Medallion Signature Guaranteeの有効期限はありますか?

A. Medallion Signature Guarantee自体に法定の有効期限はありませんが、実務上、Transfer Agentは取得から60〜90日以内のMedallionのみを受け付ける運用が一般的です。取得から時間が経ちすぎると、Transfer Agentから「too old」として差し戻され、再取得となるケースがあります。実務では、Medallion取得後は速やかにTransfer Agentに提出するのが原則で、他の書類(Death Certificate、Family Tree等)の準備を先に完了させてから、最後にMedallionを取得する順序で進めるのが効率的です。


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まとめ

米国株の相続で求められるMedallion Signature Guarantee(メダリオン署名保証)は、米国・カナダを中心とするSTAMP・SEMP・MSPプログラム参加金融機関が発行できる署名保証制度で、Notary Public認証や公証人認証とは根本的に異なる署名の真正+取引権限+損失補償責任を保証する仕組みです。日本国内の公証役場・金融機関では取得できないため、日本の相続人が最も戸惑うのが取得ルートの設計です。

取得ルートには、相続人渡米・現地代理人へのPOA委任・現地弁護士経由・Transfer Agentとの代替書類交渉の4つがあります。案件の資産規模・時間的余裕・被相続人の現地関係により、最適なルートは異なります。資産規模が小さい案件では、Medallion免除交渉や売却送金への切替も現実的な選択肢です。

取得時の書類パッケージは、パスポート・米国内金融機関の口座証明・Death Certificate・Family Tree・戸籍謄本英訳・Affidavit of Domicile・Stock Power Formを組み合わせ、米国内金融機関の窓口担当者が身元・取引権限を審査した上で、面前署名+Medallion Stamp押印の形で完成させます。日本の行政書士は、書類パッケージの原案作成・POA手配・現地弁護士との連携・進行管理の領域で相続人の負担軽減に貢献できます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、米国株相続で必要なMedallion Signature Guarantee取得ルートの設計、書類パッケージの原案作成、米国内代理人への委任(POA)手配、現地弁護士・現地金融機関との連携進行管理を、全国オンラインで対応しています。Charles Schwab、Fidelity、Computershare、Equiniti Trust等の主要Transfer Agent・証券会社の実務に対応可能で、現地代理業務・法的判断は現地弁護士、税務判断は税理士法人トゥモローズと連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法882条(相続の開始)
  • 公証人法(公証人による認証の根拠)
  • 外国公文書の認証を不要とする条約(アポスティーユ条約、日本は1970年批准)
  • 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
  • 米国Securities Transfer Agents Medallion Program(STAMP)——米国・カナダの多数の金融機関が参加する署名保証プログラム
  • 米国Stock Exchanges Medallion Program(SEMP)——地域証券取引所会員会社・清算会社・信託会社等が参加するプログラム
  • 米国NYSE Medallion Signature Program(MSP)——NYSE member firmsが参加する署名保証プログラム

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。