米国TOD(Transfer on Death)指定口座を相続したときの実務と落とし穴【POD口座・遺言との関係】
10秒でわかる この記事の要約
- 米国のTOD(Transfer on Death)指定口座・POD(Payable on Death)指定口座は、名義人死亡時に受取人へ権利が移転する仕組みで、米国内では通常のプロベート(検認)を経ずに解約・送金できます。
- ただし、TOD/PODは米国内での自動移転手続きを指すもので、日本の相続税申告の対象からは外れません。日本側では、米国法上のNon-Probate Assetであっても、相続・遺贈等により取得した国外財産として申告対象になる可能性が高いです。
- 米国所在資産の額によっては、米国側でもForm 706-NA(米国非居住者用遺産税申告書)やIRS Transfer Certificateの対応が問題になります。金融機関が資産移転にTransfer Certificateを求めることがあります。
- 遺言(Will)とTOD/POD指定が食い違う場合、TOD/POD指定が優先される州が多く、遺言の内容だけを信じていると想定外の受取人に権利が移転する事故が起きます。
米国の証券会社や銀行では、口座開設時にTOD(Transfer on Death)やPOD(Payable on Death)という「死亡時受取人指定」を登録できる仕組みが広く使われています。TOD/PODは、名義人死亡時に登録された受取人へ権利が移転する制度で、米国の相続手続きで多くの日本人相続人を悩ませるプロベート(検認)を米国内では回避できる強力な仕組みです。
しかし、TOD/PODは「自動的に受取人に渡るからそれで終わり」ではありません。米国ではForm 706-NA・Transfer Certificate等の税務・手続き確認が金融機関から求められる場合があり、日本側では相続税申告・遺産分割・遺留分等の論点が残ります。本記事では、米国TOD/POD口座を相続した場合の実務手順と見落としがちな落とし穴を、行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。米国税務・現地弁護士業務の判断が必要な部分は、米国税理士・米国弁護士との連携が前提となる点にご留意ください。
TOD/POD口座とは——米国の相続実務における位置付け
TOD/POD指定口座は、米国で1980年代から普及した「死亡時受取人指定(Beneficiary Designation)」の仕組みで、口座名義人が生前に「私が死んだらこの口座はこの人に渡す」という指定を金融機関に登録しておくものです。
TODとPODの違い
- TOD(Transfer on Death):主に証券口座(株式・投資信託・債券等)に使う受取人指定
- POD(Payable on Death):主に預金口座(普通預金・定期預金・CD等)に使う受取人指定
名称は違いますが、法的な仕組みはほぼ同じで、「名義人死亡時に指定受取人へ権利が移転する」という機能を持ちます。対象資産の種類によって呼び名が変わるだけと理解して差し支えありません。
プロベート(検認)を回避する仕組み
米国の通常の相続手続きでは、遺産は名義人死亡時にいったんEstate(遺産)という法的な単位に集約され、州の検認裁判所(Probate Court)が承認した遺産管理人(Executor/Administrator)を通じて相続人に分配されます。この検認手続き(プロベート)は6か月〜2年かかることがあり、弁護士費用・裁判所費用が高額になることも珍しくありません。
TOD/PODで指定された資産は、米国金融機関上はこの検認手続きを経由せず指定受取人が権利を取得します。「Non-Probate Asset(非検認資産)」と呼ばれる分類に入ります。実務では、Death Certificate(死亡証明書)の提示と受取人本人確認だけで、数週間〜数か月で口座の解約・送金が進むことが一般的ですが、非米国居住者・大口資産・米国税務確認の必要性がある場合は数か月〜1年程度かかる場合もあります。
根拠となる米国法
TOD/PODの制度的な根拠は、米国のUniform Law Commissionが起草したUniform TOD Security Registration Actや、各州が個別に採用しているPOD法・州法にあります。州によって制度の細部が異なるため、対象口座がどの州の法律に基づいて運営されているかを確認することが重要です。たとえば、カリフォルニア州とニューヨーク州ではTOD/PODの取扱いの細部に違いがあります。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
TOD/POD口座と通常の口座の相続実務の違い
TOD/POD口座と通常の口座では、相続時の実務が大きく異なります。TOD/POD口座があると分かった時点で、通常口座とは別の手順で進める必要があります。
通常の米国口座の相続実務
- Death Certificate(死亡証明書)を金融機関に提出
- 口座が凍結される
- 遺言または州の無遺言相続法に基づき、遺産管理人(Executor/Administrator)を選任
- プロベート裁判所の関与のもと遺産管理人が資産を管理
- 相続人への分配はプロベート完了後
- 所要期間:6か月〜2年
TOD/POD口座の相続実務
- Death Certificate(死亡証明書)を金融機関に提出
- プロベート財産としての凍結とは異なりますが、金融機関の内部審査・受取人確認が完了するまでは、売買・出金・送金が制限されることがある
- 指定受取人が金融機関指定フォームによりClaim(受取申請)を行う
- 受取人本人確認・税務関連フォーム(W-8BEN等)の提出
- 金融機関の内部審査後、指定受取人の口座または新設口座に資産が移転
- 米国のプロベートは経由しない
- 所要期間:数週間〜数か月(非米国居住者・大口資産・Transfer Certificate確認等で長期化することがある)
通常口座とTOD口座が混在する場合
同一金融機関でも、TOD指定のある口座と指定のない口座が混在するケースがあります。たとえば「メイン口座はTOD指定あり、後から開設したサブ口座はTOD指定なし」といった状況です。この場合、同じ金融機関でも口座ごとに別の手続きが必要となり、TOD指定のある口座は指定受取人が受け取り、指定のない口座はプロベート経由で分配されるという二重進行になります。
受取人が複数指定されている場合
TOD/PODは複数の受取人を指定できます(「Primary Beneficiary(主受取人)」と「Contingent Beneficiary(次順位受取人)」の階層構造を取ることが多い)。たとえば「主受取人:配偶者、次順位受取人:長男・長女(等分)」といった指定が一般的です。主受取人が既に死亡している場合は次順位受取人に権利が移り、全員が死亡している場合はプロベートを経由して通常相続に戻ります。
米国TOD口座の相続、日本側の書類作成から丁寧にサポート。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、米国TOD/POD口座を含む海外相続の日本側書類作成・書類パッケージのチェックリスト提供・現地窓口とのやり取りの日本側サポート・進行管理を全国オンラインで対応します(現地代理行為・法的判断は現地弁護士、米国税務は米国税理士、日本税務は税理士と連携)。初回相談無料。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
TOD口座の相続開始後の実務フロー(7ステップ)
TOD口座を相続した場合の実務フローは、通常口座より簡素ですが、書類の要求は厳格です。以下、実務での7ステップに整理します。
ステップ1:金融機関への死亡通知(Death Notification)
口座を保有していた金融機関のEstate Services(相続手続き部門)に電話またはオンラインフォームで死亡通知を出します。このタイミングで、TOD指定の有無、指定受取人の確認、必要書類のリストが提示されます。
ステップ2:Death Certificate(死亡証明書)の準備
TOD口座の相続に必ず必要となるのが、Death Certificate(死亡証明書)です。被相続人が日本で亡くなった場合は、日本の市区町村役場発行の死亡届受理証明書・死亡届記載事項証明書等を英訳し、翻訳者宣言書・公証・アポスティーユを組み合わせて提出します。米国では通常「certified copy」と呼ばれる州・郡等の発行機関が発行する公式な認証付き写しを求められることが多く、これは公証人が単にコピーを認証したものとは異なる点に注意します。認証済みDeath Certificateの複数原本(3〜5部)を用意しておくと、複数の金融機関に並行して提出できます。
ステップ3:受取人本人確認書類の提出
指定受取人が誰であるかを金融機関に証明するため、以下の書類を提出します。
- 受取人のパスポート(顔写真・生年月日ページ)
- 受取人の現住所証明(公共料金請求書等)
- Social Security Number(SSN)またはITIN(米国個人納税者番号)——保有している場合
- W-8BEN——後述のとおり、金融機関から提出を求められることがある
ステップ4:受取形式の選択
金融機関は、次のいずれかの受取形式を選ぶよう指示することがあります。
- 現金化して受取人の指定口座へ送金
- 現物(株式・投資信託等)のまま受取人名義の新規口座へ移管
- 一部現金化、一部現物移管の組み合わせ
ステップ5:金融機関の内部審査
提出書類がそろうと、金融機関の内部審査に入ります。通常は2〜6週間程度ですが、受取人が海外(日本等)在住の場合、大口資産の場合、後述のTransfer Certificateが求められる場合等は、審査に数か月〜1年かかることもあります。
ステップ6:送金または移管の実行
審査完了後、指定受取人の口座に送金または移管が実行されます。現金送金の場合は前記の「送金実務」と同じフローで着金します(SWIFT経由・中継銀行手数料等)。現物移管の場合は、日本の証券会社(受取側)との事前調整が必要になります。
ステップ7:完了通知と記録の保管
実行完了後、金融機関から完了通知が届きます。これは日本の相続税申告における課税対象の確認資料となるため、5〜7年程度は原本を保管しておきます。
TOD口座で用意すべき必要書類パッケージ
TOD口座相続の必要書類は、金融機関により細部が異なりますが、以下の書類パッケージを事前に揃えておくと、後日の書類差し戻し・追加要求で手続きが遅延するリスクを大幅に減らせます。
必須書類
①Death Certificate(死亡証明書)
- 認証済み原本またはcertified copy(州・郡等の発行機関が発行する公式な認証付き写し)
- 被相続人が日本で亡くなった場合は、日本の死亡届受理証明書・死亡届記載事項証明書等の英訳+翻訳者宣言書+公証・アポスティーユが必要(提出先金融機関が指定するDeath Certificate相当書類を事前に確認する)
- 複数原本を用意(3〜5部推奨)
②受取人の身分証明書
- パスポート原本またはcertified copy
- 顔写真・生年月日・国籍が確認できるページ
- 有効期限内であること
③受取人の現住所証明
- 公共料金請求書(電気・ガス・水道等)、銀行口座取引明細書、税務当局からの通知書等
- 発行から3か月以内であること
④W-8BEN(外国人ステータス・米国源泉所得の源泉徴収確認フォーム)
- W-8BENは、受取人が米国非居住者・外国人であることや、米国源泉所得(配当・利子等)に関する源泉徴収・租税条約適用の確認のため、金融機関から提出を求められることがある
- TOD/POD口座の元本移転そのものに対する源泉税フォームではない点に注意
- ただし、口座内で死亡後に発生する配当・利子等の米国源泉所得、または売却取引に関する報告・源泉徴収の要否について米国税務上の取扱い確認が必要になる場合がある
- IRSの公式書式を使用し、記入内容は米国税務に慣れた専門家のチェックを受けてから提出することが望ましい
⑤受取人指定を証明する書類(Beneficiary Designation Form)
- 金融機関が保管している書類なので、金融機関側で確認
- 相続人側からの提出は原則不要
状況により必要となる書類
⑥相続関係を示す書類
- 被相続人と受取人の続柄を示す戸籍謄本(英訳+翻訳者宣言書付き)
- 家族関係証明書等
⑦米国税務関連書類(Form 706-NA・Transfer Certificate)
- 被相続人が米国非居住・非米国市民の場合、死亡時の米国所在資産等が60,000米ドルを超えるとき、Form 706-NA(米国非居住者用遺産税申告書)の提出が必要となる場合がある
- 米国金融機関が資産移転にIRS Transfer Certificateの提出・確認を求めることがある
- これらは米国税務・現地実務の判断が必要となるため、米国税理士・米国弁護士と連携して確認する
⑧他の相続人による同意書(該当時)
- 通常は金融機関側から要求されないが、金融機関または現地弁護士から求められた場合に限り検討する
- 相続人間で紛争性がある場合は、逆に紛争化を招くこともあるため慎重に判断
書類パッケージの作成タイミング
米国のTOD口座相続では、書類の追加要求で手続きが数か月単位で遅延することが珍しくありません。上記の書類を事前に一括で準備してから金融機関に提出することで、書類のやり取り往復を最小化できます。日本の行政書士が書類パッケージの作成支援を行うことで、相続人の負担を大きく減らせる領域です。
TOD口座の落とし穴——見落としがちな5つのポイント
TOD/POD口座は便利な仕組みですが、実務では「知らなかった」で済まされない落とし穴がいくつかあります。特に日本の相続人にとって重要な5つを整理します。
落とし穴1:遺言(Will)より優先される
TOD/POD指定は、多くの州で遺言より優先されます。たとえば「遺言では長男に全財産を渡す」と書かれていても、TOD指定で「次男を受取人」と指定されている口座は、遺言の内容に関係なく次男に権利が移転します。被相続人が遺言を作成した後にTOD指定を更新していなかった場合、想定外の受取人に権利が渡ってしまう事故が発生します。
落とし穴2:日本の相続税・遺留分の対象になる可能性
TOD/POD口座は米国内での自動移転を実現する仕組みですが、日本の相続税法上は、名義人死亡により受取人に権利が移転した資産として、相続・遺贈等により取得した国外財産として日本の相続税の申告対象になる可能性が高いです。国税庁は、相続や遺贈で財産を取得した人が日本国内に住所を有する場合、取得したすべての財産が相続税の課税対象になると整理しています。また、日本民法上の遺留分算定基礎への算入や、他の相続人との特別受益との関係も、死亡保険金等の類似論点も含めて個別判断となる領域です。税務判断は税理士、遺留分・特別受益に関する法的判断は弁護士に相談することをおすすめします。
落とし穴3:受取人が既に死亡している場合の複雑化
主受取人(Primary Beneficiary)が既に死亡している場合、次順位受取人(Contingent Beneficiary)に権利が移りますが、次順位受取人が指定されていない場合はプロベート経由に戻ります。この判定は金融機関の内部審査で行われるため、「TOD指定があるから安心」と思っていた口座が突然プロベート案件になり、半年〜2年の追加時間が発生する事故があります。
落とし穴4:受取人が離婚した元配偶者になっている
被相続人が再婚している場合や、TOD指定を離婚後に更新していない場合、元配偶者が受取人として登録されたままになっているケースがあります。州によっては離婚により自動的にTOD指定が無効になる法律があるものの、そうでない州では元配偶者に権利が移転します。被相続人の生前にTOD指定の更新状況を確認しておくことが理想です。
落とし穴5:米国側の Form 706-NA・Transfer Certificate
TOD/PODはプロベート回避の仕組みですが、米国遺産税の確認まで回避できるわけではありません。被相続人が米国非居住・非米国市民であっても、死亡時点の米国所在資産(U.S.-situated assets)の公正価値が60,000米ドルを超える場合、Form 706-NA(米国非居住者用遺産税申告書)の提出が必要となる場合があります。ここで重要なのは、口座残高全体で判定するのではなく、米国遺産税上の米国所在資産に該当するかを資産種類ごとに確認することです。たとえば、TOD証券口座内の米国株式・米国ETF等と、POD預金口座の預金では、米国遺産税上のsitus(所在)判定が異なる可能性があります(米国株式は米国所在資産として扱われる一方、米国銀行預金は非居住者との関係で異なる取扱いになり得る等)。米国税理士・米国弁護士に個別に確認します。
また、米国金融機関が資産移転にIRS Transfer Certificateの提出・確認を求めることがあり、この確認が終わるまで送金・移管が保留されるケースがあります。「TOD指定があれば米国税務は関係ない」という誤解は非常に多いため、米国税理士・米国弁護士との連携が実務上必須となる領域です。
日本の相続税・遺産分割との関係
TOD口座は米国内での自動移転を実現しますが、日本の相続税・遺産分割からは切り離されません。日本の相続実務との関係を整理しておく必要があります。
日本の相続税との関係
被相続人が日本の居住者であった場合、全世界の相続財産(海外資産を含む)が日本の相続税の課税対象となります。TOD/POD口座の資産も、米国法上のNon-Probate Assetであっても、日本側では相続・遺贈等により取得した国外財産として日本の相続税課税の対象となる可能性が高いです。
外国税額控除は「相続税側」と「所得税側」を分けて理解する
米国側で税金が課された場合の日本側外国税額控除は、次の2種類を制度として分けて整理する必要があります。
- 米国遺産税が課された場合:日本の相続税申告における外国税額控除の検討対象
- 口座内で発生した配当・利子等に対する米国源泉所得税:日本の所得税申告における外国税額控除や所得計算の論点
相続税側の外国税額控除と所得税側の外国税額控除は制度が異なるため、税理士に分けて確認します。TOD/POD口座では、被相続人の死亡時点までの所得税と、その後の相続税・遺産税で扱いが変わる点にも注意が必要です。
税務観点の詳細は税理士へ
TOD/POD口座の相続税評価、外国税額控除、Form 706-NAとの関係など、税務面の判断は個別事情により大きく変わるため、税理士への相談が必須です。米国資産の相続税の詳細については、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「アメリカの相続手続きと遺産税【税理士が完全ガイド】」もあわせてご確認ください。
遺産分割協議との関係
米国金融機関実務上、TOD/POD口座はTOD指定に従って指定受取人が取得します。しかし、日本側では次のような論点が発生します。遺産分割協議書には、TOD/POD口座を「除外」と単純に扱うのではなく、TOD/POD口座の取得者・代償調整の有無・他の相続財産との精算方針を明記するのが実務的です。
- 遺留分算定基礎への算入:死亡保険金等の類似論点と同様、日本の遺留分算定基礎に含めるかは個別判断となる領域
- 他の相続財産との代償調整:TOD口座で受け取った受取人が、他の相続財産の相続分を減らして他の相続人と調整する形が実務で採られることがある
- 特別受益との関係:TOD指定を「特別受益に類する行為」として調整するかは、事案により判断が変わる
これらの論点は個別事情により判断が変わるため、弁護士との相談が必要です。行政書士は、遺産分割協議書の原案作成やTOD口座の実務手順の支援は行いますが、遺留分侵害額請求や特別受益に関する法的判断は業務範囲外です。
他の相続人への説明と合意形成
TOD口座で単独の受取人が資産を取得すると、他の相続人から「自分の取り分が減った」と感じられトラブルになることがあります。受取人が事前に他の相続人に説明し、必要に応じて代償金の支払いや他の相続財産での調整を行うことで、後日の紛争を防ぐことが実務上重要です。
TOD口座を持っていた場合の日本側の相続実務
米国のTOD口座があることが分かった場合、日本側では以下の実務を並行して進めます。受取人が単独で対応するのは負担が大きいため、行政書士・税理士・米国税理士・米国弁護士との連携で進めるのが現実的です。
日本側で進める実務(受取人視点)
- 日本側書類の準備:戸籍謄本・遺産分割協議書(TOD/POD口座の取得者・代償調整方針を明記)・被相続人の身分証明等
- 日本側書類の英訳・認証:翻訳者宣言書+公証・アポスティーユを組み合わせる
- W-8BEN等の記入準備:金融機関から求められた場合に備え、内容を米国税務に詳しい税理士に確認してから記入
- Form 706-NA・Transfer Certificateの要否確認:米国所在資産が60,000米ドル超の場合、米国税理士・米国弁護士に確認
- 日本の相続税申告資料の準備:TOD口座の資産評価額(相続開始日のTTB換算)、受取金額、米国側源泉徴収額等
- 他の相続人への説明:受取人だけが得をする形にならないよう、他の相続人との合意形成
日本の受取口座の準備
米国から送金を受ける場合は、日本の受取口座を事前に整えます。外貨のまま受け取るなら外貨預金口座、円転して受け取るなら円口座に加えて受取銀行への事前通知が必要です。送金実務の詳細は、海外口座の送金実務ステップの記事で解説しています。
日本の相続税申告への影響
TOD口座で受け取った資産は、日本の相続税の課税対象になる可能性が高いため、相続開始日から10か月以内の相続税申告に含めて申告します。米国側の Form 706-NA・源泉徴収税との関係で外国税額控除の計算が必要となる場合があり、国際相続の税務に詳しい税理士との連携が必須です。
行政書士による書類作成支援の範囲
日本の行政書士は、以下の支援ができます。
- 日本側書類の作成(戸籍謄本の取得代行、遺産分割協議書の原案作成、身分証明の整理)
- 書類の英訳資料の準備(翻訳者宣言書付き)
- 米国金融機関へ提出する書類パッケージのチェックリスト提供
- 米国金融機関とのやり取りに関する日本語での事前相談
- 米国の税理士・弁護士との連携調整
- 日本国内の税理士との連携調整
現地法上の代理行為・法的判断は現地弁護士、米国税務判断は米国税理士、日本の税務判断は日本の税理士、遺留分・特別受益等の法的判断は日本の弁護士に依頼するのが業際上の整理となります。行政書士は日本側の書類作成と進行管理の整理役として関与します。
よくある質問(FAQ)
Q1. TOD口座は遺言(Will)より優先されますか?
A. 多くの州でTOD指定が遺言より優先されます。遺言で「長男に全財産」と書かれていても、TOD指定で他の受取人が指定されている口座は、遺言の内容に関係なく指定受取人に権利が移転します。被相続人が遺言作成後にTOD指定を更新していないと、遺言の意図と異なる受取人に権利が渡る事故が起きます。海外資産のある方は、遺言と各口座のTOD/POD指定の整合性を定期的に確認することが重要です。
Q2. TOD口座の受取人が既に亡くなっている場合はどうなりますか?
A. TOD指定には主受取人(Primary Beneficiary)と次順位受取人(Contingent Beneficiary)を階層的に指定できるのが一般的です。主受取人が既に死亡している場合は次順位受取人に権利が移り、次順位受取人も指定されていない場合や全員死亡している場合はプロベート経由で通常相続に戻ります。この判定は金融機関の内部審査で行われるため、TOD指定の内容と最新の状態を事前に確認しておくことが重要です。
Q3. TOD口座の指定は生前に取り消せますか?
A. はい、TOD/POD指定は名義人が生前にいつでも変更・取消しできます。金融機関に指定変更フォーム(Beneficiary Change Form)を提出することで、受取人の追加・変更・削除が可能です。婚姻・離婚・出産・受取人の死亡等のライフイベントがあった場合は、遺言と併せてTOD/POD指定の見直しをおすすめします。指定を残したまま忘れられている口座は、想定外の相続人に権利が渡る原因となります。
Q4. TOD口座と共同名義口座(Joint Account)の違いは何ですか?
A. TOD口座は名義人死亡後に受取人に権利が移転する仕組みで、名義人が生前は単独名義として自由に処分できます。一方、共同名義口座(Joint Account with Right of Survivorship)は生前から共同名義人が権利を持つ形式で、名義人の一方が死亡すると生存者に権利が集約されます。生前の管理権限、共同名義人の債権者からの差押えリスク、日本の税務上の取扱い(みなし贈与判定等)で違いがあるため、案件に応じた使い分けが必要です。
Q5. TOD口座を持つ被相続人が生前に日本に帰国していた場合、TOD指定はどうなりますか?
A. TOD指定は口座を保有する米国金融機関の登録に基づくものなので、被相続人が日本に帰国して日本の居住者になっていても、TOD指定自体は登録されたまま有効に機能します。ただし、被相続人が米国口座を長期間放置していたり、住所変更・連絡先変更を金融機関に届け出ていなかったりすると、金融機関が「休眠口座」として州の未請求資産(Unclaimed Property)管理機関に資産を移管してしまうケースがあります。生前に定期的な口座取引・連絡先更新をしておかないと、TOD指定があっても実務上の受取に時間がかかる場合があります。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
米国のTOD/POD指定口座は、名義人死亡時に受取人へ権利が移転し、米国内では通常のプロベート(検認)を回避できる仕組みです。通常の米国相続なら6か月〜2年かかるところ、TOD/PODでは数週間〜数か月で解約・送金が進むことが多いですが、非米国居住者・大口資産・IRS Transfer Certificate確認等が絡む場合は数か月〜1年程度かかることもあります。実務では、Death Certificate(発行機関認証のcertified copy)・受取人本人確認書類・W-8BEN等の書類パッケージを事前に一括で用意し、金融機関に提出する流れです。
ただし、TOD/PODは米国内での自動移転を実現するだけで、日本の相続税申告・遺産分割・遺留分の対象からは切り離されません。米国側でも死亡時の米国所在資産が60,000米ドルを超えると Form 706-NAが問題になり、金融機関がIRS Transfer Certificateの確認を求めることがあります。遺言との優先関係(TOD指定が優先される州が多い)、次順位受取人の指定漏れ、元配偶者への権利移転など、見落としがちな5つの落とし穴に注意が必要です。行政書士は日本側書類の準備と進行管理の整理役として機能し、米国税務は米国税理士、日本税務は税理士、法的判断は弁護士、現地代理は現地弁護士との連携で対応するのが業際上の整理となります。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、米国TOD/POD口座を含む海外相続の日本側書類作成・進行管理・書類パッケージの整理を、初動対応から実行完了までの各段階でご支援しています。米国本土・ハワイ・香港・シンガポール・英国・オーストラリア等、主要国の金融機関実務に対応可能で、現地代理行為・法的判断は現地弁護士、米国税務は米国税理士、日本税務は税理士法人トゥモローズと連携します。
関連記事
税務の観点もあわせてご確認ください
本記事は米国TOD/POD口座を相続した場合の実務手順を、行政書士の書類作成支援目線でまとめたものです。米国相続税(遺産税)、外国税額控除、Form 706-NA、日本の相続税との整合性など税務面の判断については、税理士法人トゥモローズが公開している以下の記事もあわせてご確認ください。
根拠法令・公的資料
- 民法896条(相続の一般的効力)
- 民法898条(共同相続の効力)
- 民法1042条以下(遺留分)
- 相続税法1条の3(相続税の納税義務者)
- 相続税法2条(相続税の課税財産の範囲)
- 相続税法22条(相続財産の評価)
- 財産評価基本通達4-3(外貨建て財産の邦貨換算)
- 米国 Uniform TOD Security Registration Act(統一TOD証券登録法)——各州が採用
- 米国 内国歳入法(Internal Revenue Code)Form 706-NA関連規定
- 日米相続税条約(二重課税調整の根拠)
- 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
公的機関・根拠リンク
- 民法(e-Gov法令検索)
- 相続税法(e-Gov法令検索)
- 行政書士法(e-Gov法令検索)
- 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
- 国税庁「No.4665 外貨(現金)の邦貨換算」
- SEC Investor.gov「Transferring Assets(TOD Registration)」
- Uniform Law Commission「Personal Property(TOD Security Registration Act 掲載)」
- IRS「About Form W-8 BEN」
- IRS「Estate tax for nonresidents not citizens of the United States」
- IRS「Instructions for Form 706-NA」
- IRS「Transfer certificate filing requirements for the estates of nonresidents」
