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海外相続でWise海外送金は使えるか【SWIFT送金との違い・使える場面・使えない場面】

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • Wise(旧TransferWise)は英国発の国際送金サービスで、SWIFT経由の伝統的な海外送金と比較して手数料が安く為替レートが実勢に近いため個人利用で急速に普及しています。
  • しかし海外相続の実務では、Wiseが「使える場面」と「使えない場面」があります。相続手続き中の凍結された海外口座から直接Wiseで送金することはできず、あくまで解約後の資金を海外の受取人口座から日本へ動かす場面で活用される仕組みです。
  • Wiseは「送金機能」と「Wiseアカウント残高からの送金・チャージ」で異なる限度額があります。日本住所ユーザーの高額送金機能では大口対応が可能な場合がありますが、Wise残高からの直接送金・チャージには1回あたりの上限があるため、大口相続資金をWise残高に保有する設計は適していません。KYC(本人確認)が厳格で、資金の原資説明を求められることも珍しくありません。
  • Wise送金も100万円超なら国外送金等調書、3,000万円相当額超の場合は外為法55条の支払等報告書が必要となる場合があり、SWIFT送金と同じ税務・法令の枠組みの中にあります。

海外相続で「凍結解除された海外口座の資金を、どうやって日本の相続人口座に送るか」を考えるとき、近年はWise(旧TransferWise)を含むフィンテック送金サービスの活用を検討する相続人が増えています。Wiseは手数料が安く、為替レートが実勢に近いという個人利用での強みが知られており、「SWIFT送金より安く済むなら Wise で相続資金も動かしたい」と考えるのは自然な発想です。

本記事では、海外相続の実務においてWise海外送金が使える場面と使えない場面を、SWIFT送金との比較、手数料構造、KYC(本人確認)の要件、国外送金等調書との関係を含めて、行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。

なお、本記事は特定の送金サービスを推奨するものではなく、相続人がWiseを含むフィンテック送金サービスの利用を検討する際の判断材料を提供するものです。実際のサービス選定と契約は相続人本人が最新の利用規約・手数料・限度額を確認したうえで判断してください。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、海外相続の初動対応から日本の受取口座準備・書類パッケージの整理までを、全国オンラインで対応しています。


Wise海外送金とは——SWIFT送金との根本的な違い

Wiseは、2011年に英国で創業されたフィンテック企業で、従来のSWIFT経由の国際送金と比べて手数料が安く、為替レートが実勢(ミッドマーケットレート)に近いことを強みとする送金サービスです。日本では資金決済法上の資金移動業者として登録された事業者(Wise Payments Japan株式会社)がサービスを提供しています。

SWIFT送金とWise送金の根本的な違い

従来のSWIFT送金 Wise送金
送金経路 銀行間コルレス関係経由 Wiseの現地口座間の相殺(ネッティング)
為替レート 銀行独自レート(スプレッド1〜3%) ミッドマーケットレートに近い(手数料は別途)
手数料 送金銀行+中継銀行+受取銀行の複数段階 Wiseの固定+変動手数料(比較的シンプル)
所要時間 数営業日〜1週間程度 数分〜数日(通貨・国により差)
送金限度額 銀行の内部規定による Wise規約で上限あり(通貨・国により異なる)
追跡 SWIFT gpi等で追跡可 Wiseアプリ・Web上で追跡可

Wise送金の仕組み

Wiseが従来のSWIFT送金より速く安い理由は、多くの通貨・ルートで、送金元国と受取国それぞれの現地口座・提携先ネットワークを利用して現地払いする仕組みを採っているためです。たとえば「日本から米国へ送金」する場合、Wiseは日本国内の指定口座(Wise日本口座)で日本円を受け取り、米国のWise提携ネットワークから米ドルで受取人に支払う、という流れが一般的です。これにより、伝統的なSWIFT送金に比べて中継銀行手数料や為替スプレッドを抑えやすい設計となっています。ただし、通貨・国・支払方法によって処理ルートや制限は異なるため、全ての通貨・ルートで同じ仕組みではない点にご留意ください。

日本の法令上の位置付け

Wiseは資金決済に関する法律(資金決済法)に基づく資金移動業として金融庁に登録されており、銀行ではありません。したがって預金保険機構による保護の対象外です。代わりに資金決済法43条以下により、資金移動業者は送金途中資金について、履行保証金の供託・保証・信託等による資産保全措置を講じることが義務付けられています。銀行送金とは法的な位置付けが異なる点を理解しておく必要があります。


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相続実務でWiseが「使える場面」と「使えない場面」

海外相続の実務でWiseが活用できる場面は限定的です。「凍結された海外口座からWiseで直接送金する」ことはできず、あくまで解約後の資金を動かす後工程で活用される仕組みです。

Wiseが「使える場面」

①海外に住む相続人が、既に自分名義の海外銀行口座に着金した相続資金を、日本の家族へ送る場合

  • 例:米国在住の子が、米国銀行で相続手続き完了→自分名義の米国銀行口座で資金を受領→Wiseの送金機能を使って日本の兄弟へ送金
  • ※Wiseアカウント残高に大口資金を保有して送る設計は、Wise残高からの送金・チャージに1回あたりの上限があるため適さない

②海外相続手続き完了後、受取人が海外個人口座で資金を受け取り、その後日本へ移動する場合

  • 例:現地弁護士から相続人代表の現地個人口座に振込まれた資金を、Wiseの送金機能で日本へ

③相続税納税資金を日本に集める段階での中継

  • 例:海外資産の売却代金の一部を、相続税の納付期限に合わせて日本へ迅速に移動

④生前対策として、海外資産の一部を段階的に本人の日本口座へ移す場合

  • 例:本人が海外資産を段階的に自身の日本口座へ移す(税務判断は税理士に相談)
  • ※家族名義の口座へ移す場合は、贈与税・所得税・国外送金等調書との整合性を必ず税理士に確認してから実行

Wiseが「使えない場面」

①凍結された海外口座から直接Wiseへ送金する

  • 相続手続き未完了の凍結口座からは、そもそも送金指示自体ができない
  • Wiseは「口座名義人本人の指示」を前提とする送金サービスであり、被相続人名義の口座を直接動かせない

②相続財産を故人名義のWiseアカウントから引き出す

  • Wiseは銀行口座と同じではありませんが、金融サービスアカウントとして、名義人が亡くなった場合には死亡時手続が必要
  • 相続人または法定代理人がWise所定の手続に従い、死亡証明書や相続関係を示す書類を提出して残高の払戻し等を進める(後述の落とし穴を参照)

③プロベート裁判所からの資金移動指示

  • プロベート裁判所からの正式な資金移動指示は、通常、法的な代理人(遺産管理人・弁護士)経由でSWIFT送金される
  • Wise経由は認められない場合が多い

④金融機関が正式な送金証明書を要求する場合

  • 相続税申告での外貨換算エビデンス、日本の税務署への説明資料として、SWIFT送金の正式な送金証明が求められる場合がある
  • Wise送金の完了通知は電子的な受領証で足りることもあるが、金融機関により対応が異なる

海外相続実務でのWiseの位置付け

つまり、Wiseは「相続手続き完了後の資金を動かす後工程の一手段」としては非常に便利ですが、「相続手続きそのものの送金経路」としては使えないのが原則です。現地の金融機関が正式な相続手続きに基づいて資金を送金する場面では、SWIFT経由の被仕向送金が採用されるのが一般的です。


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Wiseの手数料構造とSWIFT送金との比較

Wiseが「安い」と言われる根拠を、手数料構造から具体的に見てみましょう。

Wise送金の手数料構造(2つの成分)

  1. 固定手数料(Fixed fee):通貨・支払方法により異なる(例:数十円〜数百円)
  2. 変動手数料(Variable fee):送金額に対する一定率(例:0.4〜0.6%程度)

Wiseは「送金額から差し引かれる合計手数料」を送金前に明示する仕組みになっており、為替レートも実勢のミッドマーケットレートを表示するため、受取人にいくら着金するかが事前に確定します。銀行送金でありがちな「送金してみたら想定より少なかった」という事態を避けやすい点が個人利用者に評価されています。

SWIFT送金の手数料構造(4つの成分)

対して、SWIFT経由の伝統的な海外送金では次の4つの手数料が別建てで発生します。

  1. 送金銀行手数料:送金元銀行が徴収(20〜100 USD 程度)
  2. 中継銀行手数料:中継銀行が徴収(1中継銀行あたり20〜50 USD)
  3. 受取銀行手数料(被仕向送金手数料):日本の受取銀行が徴収(1,500〜5,500円)
  4. リフティングチャージ:外貨のまま外貨預金で受ける場合の日本側手数料(送金額の0.05%・最低2,500円等)

加えて、銀行の適用為替レートにはスプレッド(1〜3%程度)が含まれているため、表面の手数料だけでなく為替換算部分でも実質的なコストが発生します。

送金額別の実質コスト比較(2026年時点の一例)

送金額 Wise送金の実質コスト目安 SWIFT送金の実質コスト目安
10万円 数百円〜1,000円台 5,000〜10,000円
100万円 5,000〜10,000円 10,000〜20,000円
1,000万円 Wiseの高額送金機能で対応可 20,000〜50,000円+為替スプレッドが大きくなる場合がある
5,000万円 Wiseの高額送金機能で対応できる場合あり(入金方法・KYC・原資確認等の制限) 30,000〜80,000円+為替スプレッドが大きくなる場合がある

※上記はあくまで一例。Wise・銀行手数料・レートはリアルタイムで変動し、為替スプレッドも銀行・通貨・優遇レートで大きく変わります。実際の送金額に対する実質コストは、Wise公式シミュレーター・各銀行の被仕向送金手数料ページで最新の数値を確認してください。

送金額により最適解が変わる

小口(数十万〜数百万円)ではWise送金の手数料メリットが大きい傾向がありますが、大口(数千万円以上)ではWiseの高額送金機能で対応可能でも、入金方法・KYC・原資確認・通貨・国により制限され、書類対応に時間がかかる場合があります。海外相続では送金額が数百万〜数千万円になることも多いため、案件により Wise が最適な選択とは限らない点に注意が必要です。税務説明・送金証明・金融機関対応まで含めて、WiseとSWIFT送金の双方を比較して判断します。


Wiseを使う際の相続実務上の注意点

Wiseを海外相続の資金移動に使う場合、SWIFT送金にはない相続実務上の注意点がいくつかあります。

注意点1:送金限度額——「送金機能」と「Wise残高からの送金」で異なる

Wiseの限度額は、「送金機能」と「Wiseアカウント残高からの送金・チャージ」で別建てで設定されており、通貨・国・アカウント種別により異なります。

日本住所ユーザーの一般的な仕組み(Wise公式による説明の概要)

  • 送金機能(第一種資金移動業に基づく高額送金機能):対応通貨で大口の送金が可能な場合があります(Wise公式によれば最大1億5,000万円まで可能とされるケースがあります)
  • Wiseアカウント残高からの直接送金1回あたり100万円等の上限が残ります
  • Wiseアカウントへのチャージ1回あたり100万円等の上限が残ります

つまり、大口相続資金をWiseアカウント残高に入れて保有・分割送金する設計は適さないことになります。銀行口座からWiseの送金機能を使って直接送る形が実務的です。

限度額・仕様は随時変更されるため、海外相続の資金移動を計画する際は必ずWise公式サイト(wise.com)のヘルプセンター・ご自身のアカウントページで最新の条件を確認してください。特に、Wiseアカウントを開設して本人確認レベルを引き上げる手続きに時間がかかる場合があり、急ぎで大口を送りたい場面では前もって準備しておく必要があります。

また、税務署からの「短期間の連続送金は何のため?」という原資確認の照会リスクは、分割送金・通常送金いずれのパターンでも意識しておく必要があります。

注意点2:受取口座名義の一致

Wise送金では、送金元アカウントと受取口座の名義が一致していないと、受取拒否・返金・原資確認等の追加手続きが発生します。「相続人代表がWiseの送金機能を使って、他の相続人の日本口座へ直接送金する」場合は、名義不一致になるためWise内での送金確認(送金目的・受取人との関係の説明)が必要となります。同名義の口座間送金は問題なく完了することが多いですが、他名義への送金では書類提出が求められる場合があります。

注意点3:原資確認(Source of Funds)

Wiseは犯罪収益移転防止法の対象事業者として、一定額を超える送金に対して原資の説明資料の提出を求めます。相続資金であることを説明するには、現地の相続完了通知書・遺産分割協議書・被相続人の死亡証明書等の書類が必要になる場合があります。この対応で数日〜数週間送金が保留になることがあるため、事前に書類を準備しておくのが安全です。

注意点4:税務署への調書提出

Wise送金も、100万円超の国外送金・国外受取であれば国外送金等調書が税務署に提出されます。「Wiseだから調書は出ない」と思っている方がいますが、それは誤解です。資金決済法に基づく資金移動業者もこの調書提出の対象で、税務署は Wise 送金の情報も把握しています。3,000万円相当額超の受領であれば外為法55条の支払等報告書も別途必要となる場合があります。

注意点5:相続税申告の外貨換算エビデンス

相続税申告における外貨建て財産の邦貨換算は、財産評価基本通達4-3により相続開始日のTTBで行います(実際の送金・着金の為替とは別物)。Wiseは実勢レートに近い為替を提供しますが、税務申告で用いるのは相続開始日のTTBであり、Wiseの為替レートではない点に注意します。詳細は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【相続税申告】外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説」もあわせてご確認ください。


Wiseの本人確認(KYC)と大口送金の限界

Wiseアカウントの開設・維持・大口送金には、犯罪収益移転防止法や国際的なマネーロンダリング対策(AML)の観点から、厳格な本人確認(KYC・Know Your Customer)が求められます。

アカウント開設時のKYC

  • 氏名・生年月日・住所
  • パスポート・マイナンバーカード等の身分証明書
  • 顔写真の撮影(セルフィー認証)
  • 現住所証明(公共料金請求書等)

大口送金時の追加確認

一定額を超える送金や、通常と異なるパターンの送金に対しては、追加のKYCが実施されます。

  • 原資証明(Source of Funds):資金の出所を示す書類
  • 収入証明:給与明細・確定申告書等
  • 送金目的の説明:何のための送金か
  • 受取人との関係:家族・親族の場合はその証明

大口送金の限界と対応可能性

Wiseの高額送金機能は個人の大口送金にも対応可能な設計になっていますが、海外相続の資金移動では以下の実務上の制約に注意が必要です。

  • 高額送金機能を使うには本人確認レベルの引き上げ・詳細なKYCが必要で、書類提出・審査に時間がかかる
  • 入金方法(銀行振込等)の制約により、Wiseアカウント残高経由では大口送金できない
  • 大口・連続送金は不審取引として一時凍結・調査対象となる可能性がある
  • 相続資金であることの原資確認(現地の相続完了通知書、遺産分割協議書、被相続人の死亡証明書等)が求められる場合があり、書類対応で数日〜数週間の遅延が発生することがある
  • 送金完了証明・記録の形式が、日本の税務署・金融機関が求める正式な送金証明と一致するかを事前に確認する必要がある

大口の場合はSWIFT送金との併用・切替を検討

相続で数千万円以上を移動する場合は、Wiseの高額送金機能で対応できるかを検討しつつ、現地銀行から日本の銀行へのSWIFT経由の被仕向送金も並行して比較します。SWIFT送金は所要時間が長く手数料も高めですが、正式な送金証明の発行・税務署対応の実績があり、相続実務でのスタンダードです。SWIFT送金の実務は、海外口座の送金実務ステップの記事で詳しく解説しています。


Wise以外のフィンテック送金サービスとの比較(参考)

海外相続の資金移動を検討する際、Wiseだけでなく他のフィンテック送金サービスも選択肢に入ります。対応国・日本での提供状況・規約・手数料は頻繁に変わるため、以下は参考としての概要のみを示します。実際の利用にあたっては、必ず各社の公式サイトで最新の対応国・限度額・手数料・KYC要件を確認してください。

参考:主要サービスの位置付け(2026年時点)

  • Wise:日本の資金移動業者として登録済み。ミッドマーケットレートに近い為替と手数料透明性が強み。送金機能と残高送金・チャージで別限度額
  • Revolut:デジタル銀行アプリとしての機能性、複数通貨保有機能。日本での金融機関連携は制限的
  • Remitly:一部の新興国向け送金に強み。コンビニ受取等の柔軟な受取方法
  • PayPal:既存アカウントで送金可能。手数料と為替スプレッドは高めの傾向
  • 銀行系フィンテック連携サービス:既存の銀行取引と一体化。大口送金にも対応

参考としての位置付けにとどめる理由:フィンテック送金サービスの対応国・限度額・手数料は四半期単位で変わるため、本記事の情報を鵜呑みにせず、必ず利用時点の公式情報を確認してください。

海外相続で選ぶ際の判断軸

海外相続の資金移動でどのサービスを選ぶかは、次の判断軸で決めます。

  1. 送金額:数百万円以下ならWise等のフィンテックが有利になりやすい一方、数千万円以上ではWiseの高額送金機能とSWIFT送金を並行比較する(KYC・原資確認・送金証明・税務説明のしやすさまで含めて判断)
  2. 通貨:主要通貨ならフィンテックでほぼ対応、マイナー通貨ならSWIFT送金
  3. 急ぐか:数日以内に着金させたいならWise等、数週間かかっても正式な送金証明が必要ならSWIFT送金
  4. 税務説明:相続税申告や税務調査への対応まで見据えるなら、正式な送金証明書が発行されるSWIFT送金が安心
  5. 原資確認への対応:Wise は KYC が厳格で、大口では書類対応の時間がかかる

「安いから Wise」ではなく「案件に合ったサービス」を

海外相続の資金移動は、単に「手数料が安いか」だけで判断するべきではありません。送金額・通貨・急ぎ具合・税務説明の必要性・受取口座の状況などを総合的に考慮して、案件に合ったサービスを選ぶことが重要です。小口ならWise、大口ならSWIFT、というのが実務的な使い分けの目安です。


海外相続でWiseを利用する場合の実務フロー

海外相続でWiseを利用する具体的な実務フローを、ケース別に整理します。

ケースA:海外在住相続人が自分の口座に受け取った資金を日本の家族に送る

  1. 海外在住相続人が現地銀行での相続手続きを完了し、自分名義の現地銀行口座で資金を受領
  2. 相続人がWiseアカウントを開設(または既に保有)、KYC・本人確認レベルの引き上げを完了
  3. Wiseで日本の家族口座宛ての送金を作成
  4. Wiseが指定する入金方法(銀行振込等)に従って、現地銀行口座から支払い
  5. 名義違い送金となるため、送金目的・受取人との関係・相続資金であることの説明資料を求められる場合がある
  6. 日本の家族の口座に着金(数分〜数日)
  7. 100万円超なら国外送金等調書、3,000万円超なら外為法55条報告書の対応

ケースB:日本在住相続人が海外に個人口座を持ち、そこからWiseで日本へ

  1. 日本在住相続人が現地の相続手続きを現地弁護士経由で完了
  2. 現地弁護士から相続人代表の現地個人口座(米国銀行等)にSWIFT送金で着金
  3. Wiseで自分名義の日本口座宛ての送金を作成
  4. Wiseが指定する入金方法(現地銀行口座からの銀行振込等)に従って支払い
  5. 日本口座で受け取る
  6. 相続税申告・国外送金等調書等の税務対応

※Wise残高へ大口資金をチャージして保有する設計は、保有限度額・チャージ限度額により適さない場合があります。

ケースC:相続税納税のための緊急送金

  1. 相続税納付期限が迫っており、海外資産を売却・凍結解除して納税資金を確保
  2. 相続手続き完了後、相続人本人名義の海外口座から、Wiseの送金機能を使って日本の相続人口座へ送金
  3. 相続税納付
  4. 事後の税務説明資料として、Wiseの送金記録・現地の相続完了通知書等を保管

ただし、大口送金ではKYC・原資確認で数日〜数週間保留される可能性があるため、納付期限直前の利用は避け、SWIFT送金も並行して検討するのが安全です。

行政書士が支援できる範囲

日本の行政書士は、以下の支援ができます。

  • 海外相続の全体スケジュール整理・Wise利用タイミングに関する判断材料の整理
  • 現地の相続完了通知書・遺産分割協議書等の英訳資料の準備
  • 原資確認への説明資料の整理
  • 国外送金等調書・外為法55条報告に関して、税理士・金融機関・日本銀行等へ確認すべき事項や必要資料の整理
  • 日本の税理士との連携(相続税申告への影響確認)

Wiseの選定・アカウント開設・実際の送金指示は相続人本人が行う

行政書士はWiseアカウントの開設代行や送金指示の代理は行いません。アカウント開設・KYC対応・送金指示は相続人本人が行うことになります。資金移動そのものは相続人本人の判断・行為で、行政書士はその前後の書類作成・進行管理を担当する役割分担が実務的です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 海外の相続口座から直接Wiseで日本に送金できますか?

A. できません。Wiseは口座名義人本人の指示に基づく送金サービスであり、被相続人名義の凍結された口座から直接Wise送金することはできません。相続手続きが完了して相続人名義の海外口座に資金が着金してからでないと、Wise送金は利用できません。相続手続き完了までは、現地弁護士・遺産管理人経由でSWIFT送金するのが通常の流れとなります。

Q2. Wiseの送金限度額はいくらですか?

A. Wiseの限度額は「送金機能」と「Wiseアカウント残高からの送金・チャージ」で別建てで設定されており、通貨・国・アカウント種別により異なります。日本住所ユーザーの場合、第一種資金移動業に基づく高額送金機能では大口の送金が可能な場合があります(Wise公式によれば最大1億5,000万円まで可能とされるケースがあります)が、Wiseアカウント残高から直接送金する場合やチャージする場合は1回あたり100万円等の上限が残ります。海外相続の大口資金をWise残高に保有して送る設計は適しません。銀行口座から送金機能を使って送る形が実務的です。最新の限度額は、Wise公式サイト(wise.com)のヘルプセンターまたはご自身のアカウントページで必ず確認してください。

Q3. Wiseで送金した場合、国外送金等調書は税務署に提出されますか?

A. はい、提出されます。Wiseを含む資金移動業者も、国外送金等調書法により100万円超の国外送金・国外受取について税務署への調書提出義務があります。「銀行送金ではないから調書は出ない」という誤解は多いですが、Wise送金も税務署に情報が集約されます。相続税・所得税との整合性を取ることが重要で、税理士に着金額・為替レートの記録を共有しておくのが実務的です。3,000万円相当額超の受領なら、外為法55条の支払等報告書も別途対応が必要となる場合があります。

Q4. Wiseアカウントの名義人が亡くなった場合、残高はどうなりますか?

A. Wiseは銀行口座と同じではありませんが、金融サービスのアカウントとして名義人が亡くなった場合、アカウントは凍結されます。相続人がWiseに死亡通知を行い、Wise所定の相続手続き(Death Certificate・相続関係を証明する書類の提出等)を経て、残高が相続人に払い戻されます。資金決済法上の資金移動業者は銀行預金と異なり、預金保険機構の保護対象外です(代わりに履行保証金の供託・保証・信託等による資産保全措置がとられています)。生前対策として、Wiseアカウントの残高情報・アクセス方法をLetter of Instruction等で家族に共有しておくと、相続時のトラブルを避けられます。最新の相続手続き案内はWise公式の「亡くなられたお客様の報告ガイドライン」等で確認してください。

Q5. 相続税納税資金を海外から迅速に集めるのにWiseは有効ですか?

A. 限定的には有効です。相続税の納付期限(相続開始から10か月)に間に合わせるために海外資産を日本に移す場合、Wiseは数分〜数日で着金することが多く、SWIFT送金より迅速です。ただし、①送金額がWiseの限度額を超える場合は複数回に分割する必要があり、②大口送金では原資確認のKYCで数日〜数週間保留される可能性があり、③相続税申告の外貨換算は相続開始日のTTBで行うためWiseの為替レートとは別物となる、といった点に注意が必要です。数千万円以上の大口はSWIFT送金への切替を検討します。


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まとめ

Wise(旧TransferWise)は、SWIFT経由の伝統的な海外送金と比べて手数料が安く為替レートが実勢に近いため、海外相続の資金移動でも活用が検討される送金サービスです。ただし、Wiseは相続手続き完了後の資金を動かす後工程で活用される仕組みであり、凍結された海外口座から直接Wiseで送金することはできません。

Wiseの限度額は「送金機能」と「Wiseアカウント残高からの送金・チャージ」で別建てで設定されており、日本住所ユーザーは送金機能で大口対応が可能な場合がありますが、Wiseアカウント残高に大口資金を保有する設計は適しません。銀行口座から送金機能を使って送るのが実務的です。KYC(本人確認)や原資確認が厳格で、書類対応に時間がかかる場合もあります。Wiseを含む資金移動業者による海外送金も、100万円超なら国外送金等調書法等の対象、3,000万円相当額超なら外為法55条の支払等報告書が必要となる可能性があり、税務・法令の枠組みはSWIFT送金と同じです。案件の送金額・通貨・急ぎ具合・税務説明の必要性を総合的に考慮して、案件に合ったサービスを選ぶことが重要です。限度額・仕様は随時変更されるため、必ずWise公式サイトで最新情報を確認してから利用します。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、海外相続の初動対応から日本の受取口座準備、Wise・SWIFT送金を含む資金移動の書類パッケージ整理、着金後の記録整理を、書類作成と進行管理の観点でご支援しています。アメリカ・香港・シンガポール・英国・スイス・オーストラリア・中国・カナダ等、主要国の金融機関実務に対応可能で、税務判断(為替差益・差損の取扱い等)は税理士法人トゥモローズと連携し、現地法上の代理行為や紛争性のある案件は現地弁護士・現地専門家と連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 資金決済に関する法律(資金決済法)2条・37条(資金移動業の登録)
  • 資金決済法43条以下(資金移動業者による履行保証金の供託・保証・信託等による資産保全措置)
  • 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)4条(取引時確認義務等)
  • 外国為替及び外国貿易法(外為法)55条(支払又は支払の受領に関する報告書)
  • 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外送金等調書法)4条(資金移動業者を含む)
  • 相続税法22条(相続財産の評価)
  • 財産評価基本通達4-3(外貨建て財産の邦貨換算)
  • 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。