農地を相続したときの手続き|農業委員会への届出(農地法)と売却・転用の注意点
10秒でわかる この記事の要約
- 農地を相続したら、相続登記に加えて、農地ならではの農業委員会への届出(農地法3条の3)が必要。相続では許可は不要だが届出は必須。
- 届出を怠る・虚偽の届出をすると、10万円以下の過料の対象(農地法69条)。
- 農地のまま売買・貸借するには農地法3条の許可(農業委員会・買主に営農要件あり)、宅地等へ転用するには4条・5条の許可(原則、都道府県知事等)が必要。市街化区域内農地の転用は事前届出で足りる場合がある。
- 耕作できない・引き取り手がない場合は、貸付・売却・相続土地国庫帰属制度なども選択肢。評価・納税猶予は税理士へ。
「親から農地を相続したが、何をすればいいのか分からない」。農地の相続は、ふつうの不動産とは違う、農地ならではの手続きがあります。とくに、農業委員会への届出は見落とされやすく、放置すると過料の対象になることもあります。
本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、農地を相続したときの届出・名義変更、売却や転用の注意点、持て余す場合の選択肢を整理します。なお、農地の相続税評価・納税猶予は税理士法人トゥモローズ、相続登記は提携司法書士と連携します。
農地を相続したら必要な「2つの手続き」
農地を相続したときは、大きく次の2つの手続きが必要です。
- 相続登記(名義変更):不動産である農地の名義を相続人へ変更します。登記の申請を代理で依頼する場合は司法書士の業務です。2024年4月から相続登記は義務化されています。
- 農業委員会への届出(農地法第3条の3):これが農地ならではの手続きです。
農地を売買・贈与などで取得するときは、通常、農地法第3条の許可が必要です。しかし、相続による取得は許可が不要です。その代わり、農地を相続などで取得した人は、取得したことを知ったら遅滞なく、その農地のある市町村の農業委員会へ届け出る必要があります(農地法第3条の3)。
この届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、10万円以下の過料の対象になります(農地法第69条)。相続登記とあわせて忘れやすいため、農地が相続財産に含まれる場合は、早めに農業委員会へ確認しましょう。
なお、農地かどうかは登記地目(田・畑)だけで判断しない点に注意します。登記上は別の地目でも、現況が農地であれば農地法の対象になり得ます。判断に迷う場合は、農業委員会に確認します。
農業委員会への届出の方法
届出は、農地のある市町村の農業委員会に対して行います。
- 届出をする人:農地を相続などで取得した相続人
- 時期:権利取得を知ったら遅滞なく。農林水産省の資料では、相続の開始(相続発生日)からおおむね10か月以内を目安とする案内がされています
- 主な書類:届出書のほか、相続関係が分かる書類(戸籍関係、遺産分割協議書、登記事項証明書・登記完了証など)。様式や添付書類は農業委員会ごとに異なるため、事前に確認します
届出自体は難しいものではありませんが、農地が複数の市町村にある場合は、それぞれの農業委員会へ届け出る必要があります。農地の所在や地番は、相続財産の調査の段階で正確に把握しておきましょう(相続財産の調べ方もご覧ください)。
農地を相続した方へ|届出・売却・転用・国庫帰属の可否を初回相談で整理します
農業委員会への届出(農地法3条の3)、転用・売却の許可や届出は、行政書士が対応できる分野です。「農業をしない」「県外の農地を相続した」「売れるのか・手放せるのか分からない」という方へ。固定資産税の課税明細書・名寄帳・登記事項証明書があると、より具体的に確認できます。相続登記は提携司法書士、相続税評価・納税猶予は税理士法人トゥモローズと連携してご案内します。
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相続した農地をどうするか(耕作・貸す・売る・転用・国庫帰属)
相続した農地の使い道には、いくつかの選択肢があります。それぞれ必要な手続きが異なります。
| 選択肢 | 内容 | 主な手続き |
|---|---|---|
| 自分で耕作する | 農地として使い続ける | 農業委員会への届出(相続時) |
| 人に貸す | 農地として貸し付ける | 農地法3条の許可、または農地中間管理機構を通じた農用地利用集積等促進計画など |
| 農地のまま売る | 農業をする人へ売却 | 農地法3条の許可(農業委員会)。買主が営農要件を満たす必要があり、誰にでも自由に売れるわけではない |
| 転用して活用・売却 | 宅地・駐車場などに転用 | 農地法4条(自分で転用)・5条(転用目的で売買等)の許可(原則、都道府県知事等)。市街化区域内の転用は事前届出で足りる場合がある |
| 手放す | 引き取り手がなく管理に困る | 相続土地国庫帰属制度の利用を検討(ただし要件・負担金あり) |
ポイントは、農地を「農地のまま」動かすのか、「転用」して動かすのかで、許可の種類と窓口が変わることです。農地のまま売買・貸借するなら農地法第3条(農業委員会)の許可が必要で、買主は営農要件を満たす必要があるため、宅地のように誰にでも自由に売れるわけではありません。宅地などへ転用するなら農地法第4条・第5条(原則、都道府県知事等)の許可で、市街化区域内の転用は事前届出で足りる場合があります。
耕作する予定がなく、買い手や借り手も見つからない場合は、一定の要件のもとで相続した土地を国に引き渡せる相続土地国庫帰属制度(2023年4月開始)の利用も選択肢になります。ただし、相続した農地なら必ず使えるわけではありません。担保権・使用収益権が付いている、通常の管理を妨げる工作物や境界争いがある、などの場合は、申請できない・承認されないことがあります。土地改良区の賦課金などの金銭債務がある場合も承認されないことがありますが、審査完了前に債務を消滅させれば引取りが可能になることもあります。また、承認後には負担金が必要で、田・畑は20万円が基本ですが、市街化区域・用途地域が指定されている区域・農用地区域等の農地では、面積に応じて20万円を超えることがあります。まずは農業委員会に相談し、地域の状況に応じて方針を決めましょう。
農地の相続税(評価・納税猶予)
農地は、相続税の場面でも特殊です。
農地の相続税評価は、宅地とは異なる方法で行われ、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地など、立地によって評価の考え方が変わります。また、農業を続ける相続人については、一定の要件のもとで相続税の納税猶予を受けられる制度があります(国税庁No.4147)。
これらの評価・納税猶予の判断は専門性が高く、税理士の業務です。農地の評価方法については、税理士法人トゥモローズの解説が詳しいので、あわせてご覧ください。相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):純農地と中間農地の相続税評価
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):農地の評価単位の解説
農地の相続は誰に頼む?
農地の相続は、内容によって依頼先が分かれます。
- 行政書士:農業委員会への届出(農地法3条の3)、農地の転用許可・売買等の許可申請(農地法3条・4条・5条)などの手続き。農地の許認可は行政書士が対応できる分野です。
- 司法書士:農地の相続登記(名義変更)
- 税理士:農地の相続税評価・納税猶予の判断・申告
- 弁護士:相続人間で争いがある場合の交渉・代理
農地は、許可・届出の手続きが特殊で、放置すると過料や、売却・活用ができないといった問題につながります。「どうすればいいか分からない」段階で相談すると、全体の段取りを整理できます。費用は依頼する範囲・内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。
相続手続きの全体像や必要書類については、こちらもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 農地を相続したら、まず何をすればよいですか?
A. 大きく2つの手続きが必要です。1つは不動産の名義変更(相続登記)で、これは司法書士の業務です。もう1つが、農地ならではの手続きである農業委員会への届出(農地法3条の3)です。相続による農地の取得は農地法の許可は不要ですが、取得したことを知ったら遅滞なく、その農地のある市町村の農業委員会へ届け出る必要があります。
Q2. 農業委員会への届出をしないと、どうなりますか?
A. 農地法3条の3の届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、10万円以下の過料の対象になります(農地法69条)。過料は罰金とは異なりますが、金銭的な負担が生じます。相続登記とあわせて忘れやすい手続きなので、農地が相続財産に含まれる場合は、早めに農業委員会へ確認するのが安心です。
Q3. 相続した農地は売れますか?
A. 売れますが、買い手や用途によって手続きが変わります。農地を農地のまま売る場合は農地法3条の許可(農業委員会)が必要で、買主は営農要件を満たす必要があるため、誰にでも自由に売れるわけではありません。宅地などへ転用して売る・使う場合は農地法4条・5条の許可(原則、都道府県知事等)が必要で、市街化区域内の転用は事前届出で足りる場合があります。手続きが特殊なので、農業委員会や専門家への相談をおすすめします。
Q4. 農業をするつもりがなく、農地を持て余す場合は?
A. 選択肢として、農地中間管理機構などを通じて貸す、農地として売る、転用して活用する、といった方法があります。引き取り手がなく管理に困る場合は、相続土地国庫帰属制度を利用できることもありますが、相続した農地なら必ず使えるわけではありません。土地改良区の賦課金がある、担保権や境界争いがあるなどの場合は利用できないことがあり、承認後には負担金(田・畑は20万円が基本)もかかります。まずは農業委員会に相談し、地域の状況に応じて方針を決めます。
Q5. 農地の相続税はどうなりますか?
A. 農地の相続税評価は、宅地とは異なる方法で行われ、立地によって評価の考え方が変わります。また、農業を続ける相続人については、一定の要件のもとで相続税の納税猶予を受けられる制度があります。評価や納税猶予の判断は専門性が高く税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
Q6. 相続登記が終わる前でも、農業委員会への届出はできますか?
A. 農業委員会への届出(農地法3条の3)と相続登記は別の手続きで、届出は相続登記の完了を待たずに行えるのが一般的です。むしろ届出には期限の目安(相続発生からおおむね10か月以内)があるため、登記の準備と並行して、早めに農地のある市町村の農業委員会へ確認するのがよいでしょう。なお、遺産分割が終わっていない場合や相続人が複数いる場合は、誰を届出者とするか(相続人代表者でよいか等)の運用が農業委員会で異なるため、あわせて確認します。
まとめ
農地を相続したときは、相続登記に加えて、農業委員会への届出(農地法第3条の3)という農地ならではの手続きが必要です。相続では許可は不要ですが届出は必須で、怠ると10万円以下の過料の対象になります(農地法第69条)。
相続した農地を売る・転用するには、農地のまま動かすなら農地法第3条(農業委員会・買主に営農要件)、転用するなら第4条・第5条(原則、都道府県知事等。市街化区域内の転用は事前届出で足りる場合あり)の手続きが必要です。耕作できない・引き取り手がない場合は、貸付・売却のほか、相続土地国庫帰属制度も選択肢になりますが、賦課金・負担金などの要件に注意します。農地の評価・納税猶予は税理士の業務のため、専門家と連携して進めましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。相続登記は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
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農地の相続税評価・納税猶予もあわせてご確認ください
農地の相続税評価は宅地とは異なり、純農地・中間農地など立地で考え方が変わります。評価方法や農業相続人の納税猶予については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 農地法第3条(権利移動の許可)・第3条の3(相続等による権利取得の届出)・第4条(転用の許可)・第5条(転用目的の権利移動の許可)・第69条(届出義務違反の過料)
- 民法第896条(相続の一般的効力)/不動産登記法第76条の2(相続登記の申請義務)
- 租税特別措置法第70条の6・第70条の6の2・第70条の6の3等(農地等についての相続税の納税猶予・免除等)
- 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)/司法書士法第3条(登記申請の代理)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く
