相続した実家・空き家をどうする|管理・解体・売却と特定空家・国庫帰属の手続き
10秒でわかる この記事の要約
- 相続した空き家は、まず相続登記(2024年4月から義務化)。そのうえで、管理・賃貸・売却・解体・手放す、の方針を決める。
- 放置して傷むと、市町村から「管理不全空家」「特定空家」として指導・勧告を受けることがある(空家対策特別措置法)。
- 勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増える。さらに特定空家等として命令・行政代執行に進むと、解体費用を請求されることも。
- 手放したい場合、相続土地国庫帰属制度は建物があると使えず、更地化(解体)が必要。負担金もかかる。
- 売却時の空き家の3,000万円特別控除などの税務は税理士の領域(税理士法人トゥモローズと連携)。
「実家を相続したが、誰も住まず空き家になっている。どうすればいいのか」。少子高齢化で、こうした相続空き家の悩みは増えています。空き家は、ただ持っているだけでも固定資産税や管理の負担がかかり、放置すると特定空家として行政の措置を受けるリスクもあります。
本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、相続した空き家の手続き——相続登記・管理・解体・売却・国庫帰属——を、選択肢ごとに整理します。なお、売却時の税金は税理士法人トゥモローズ、相続登記は提携司法書士と連携します。
相続した空き家、まず何をする
相続した空き家について、最初にすべきは相続登記(名義変更)です。2024年4月から相続登記は義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象になることがあります。登記の申請を代理で依頼する場合は司法書士の業務です(相続登記の費用相場もご覧ください)。
名義を整えたうえで、空き家を今後どうするかの方針を決めます。大きく次の選択肢があります。
- 管理して保有する(将来使う・様子を見る)
- 賃貸に出す
- 売却する
- 解体する(更地にして活用・売却・国庫帰属へ)
- 手放す(相続土地国庫帰属制度など)
判断のために、固定資産税の課税明細、登記事項証明書、境界の資料などを集めておくと、検討がスムーズです。
なお、空き家の固定資産税・管理費・解体費用などの負担が大きく、相続放棄を検討している場合は、売却・解体・賃貸・国庫帰属の申請などに進む前に注意が必要です。これらは相続を承認して空き家を処分する方向の行為であり、相続財産を処分したと評価されると、法定単純承認により相続放棄ができなくなるおそれがあります。放棄を検討する場合は、管理・処分に着手する前に専門家へ確認します。
放置のリスク(特定空家・管理不全空家)
空き家で最も注意したいのが、放置によるリスクです。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)により、市町村は、管理されず問題のある空き家に対して措置をとることができます。
- 特定空家等:そのまま放置すれば倒壊などのおそれがある、衛生上著しく有害、著しく景観を損なうなどの状態の空き家
- 管理不全空家等:そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家(2023年12月の改正で追加)
市町村の措置は、空き家の状態によって段階が分かれます。管理不全空家等には、まず助言・指導 → 勧告が行われます。さらに、倒壊のおそれや著しい衛生上の問題などがある特定空家等には、助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行へと進むことがあります。
とくに大きいのが、管理不全空家・特定空家のいずれも、勧告を受けると、その敷地は固定資産税の「住宅用地特例」が外れることです。住宅が建つ土地は固定資産税が軽減されていますが、勧告でこの特例が外れると、土地の固定資産税が大きく増えることがあります。さらに、特定空家で命令にも従わないと、最終的に行政代執行(市町村が解体などを行い、費用を所有者に請求)に至ることもあります。
「空き家を放置していると、かえって費用がかかる」ことを理解し、早めに方針を決めることが大切です。
空き家の選択肢(管理・賃貸・売却・解体・国庫帰属)
相続した空き家には、いくつかの選択肢があり、それぞれ必要な手続きが異なります。
| 選択肢 | 内容 | 主な手続き・注意点 |
|---|---|---|
| 管理・保有 | そのまま所有して管理 | 固定資産税・管理の負担。放置すると特定空家リスク |
| 賃貸に出す | 第三者へ貸す | 修繕・改修費。賃貸借契約の管理 |
| 売却する | 第三者へ売る | 売却時の譲渡所得税。空き家の3,000万円特別控除の検討(税理士) |
| 解体する | 建物を取り壊す | 解体費用。建物滅失登記。更地化で住宅用地特例が外れることに注意 |
| 手放す | 引き取り手がなく管理に困る | 相続土地国庫帰属制度(建物がある場合は更地化が必要・負担金あり) |
ポイントは、売却・解体・国庫帰属には、それぞれ別の手続きや費用がかかることです。とくに、相続土地国庫帰属制度は「土地」が対象で、建物が建ったままでは申請できません。建物を解体して更地にする必要がありますが、更地にすれば必ず使える制度ではありません。境界が明らかでない、担保権などが設定されている、隣地と争いがある、崖がある、地上・地下に除去すべき有体物がある、管理・処分に過分な費用や労力がかかるといった土地は、申請できない・承認されないことがあります。申請時には審査手数料(土地1筆あたり14,000円)がかかり、承認後には負担金(標準的な管理費用を考慮した額)の納付も必要です。山林・農地など他の不動産の相続については、山林・森林を相続したときの手続きもあわせてご覧ください。
解体するとき(滅失登記・更地化の注意)
空き家を解体する場合は、次の点に注意します。
- 解体費用がかかります。自治体によっては、老朽危険空き家の解体に補助金を設けている場合があるため、事前に市町村へ確認します。
- 建物を取り壊したら、建物滅失登記が必要です(建物が滅失した日から1か月以内)。建物滅失登記は不動産の「表示に関する登記」であり、本人が申請するか、専門家に依頼する場合は土地家屋調査士に依頼します(相続登記など権利に関する登記は司法書士の業務です)。
- 更地にすると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がることがあります。解体のタイミングは、跡地の活用・売却の予定と合わせて検討します。
なお、相続土地国庫帰属制度を使って手放す場合も、更地にしてからの申請になります。解体と国庫帰属、売却のどれを選ぶかは、費用と手間を比べて判断します。
売却・税金(空き家の特例は税理士へ)
相続した空き家を売却する場合、売却益(譲渡所得)に対して税金がかかることがあります。
一定の要件を満たす相続空き家を売却したときは、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」を利用できる場合があります。控除額は原則最高3,000万円ですが、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で、その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円までとなるなど、耐震基準・売却期限を含む細かい要件があります。適用できるかは個別の判断になります。
これらの税金の計算・特例の判断は、税理士の業務です。空き家の売却を検討する際は、税理士法人トゥモローズの解説もあわせてご覧ください。譲渡所得や特例の判断は、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)を徹底解説
空き家の相続は誰に頼む?
空き家の相続は、内容によって相談先が分かれます。
- 行政書士:戸籍収集による相続人の確定、遺産分割協議書の作成、相続手続き全体の段取り、空き家の管理・処分方針の整理のサポート
- 司法書士:相続登記(名義変更)など権利に関する登記
- 土地家屋調査士:建物滅失登記、境界確認・測量、筆界特定手続など表示に関する登記
- 税理士:売却時の譲渡所得税・空き家の特別控除などの判断・申告
- 宅地建物取引業者:空き家の売却・賃貸の仲介
- 弁護士:相続人間の争いや、隣地との境界・所有権をめぐる紛争がある場合の交渉・代理
空き家は、相続登記・管理・売却・解体・税金と、関わる手続きが多岐にわたります。「実家が空き家になっている」段階で相談すると、登記から処分の方針まで全体を整理できます。費用は依頼する範囲・内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。
相続手続きの全体像や、他の不動産の相続については、こちらもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続した空き家を、当面は使う予定がありません。放っておいても問題ないですか?
A. 放置はおすすめできません。管理されず傷んだ空き家は、市町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導・勧告を受けることがあります。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増えることがあります(空家対策特別措置法)。さらに命令・行政代執行に進むと、解体費用を請求されることもあります。早めに管理・売却・解体などの方針を決めましょう。
Q2. 相続した空き家は、まず何の手続きが必要ですか?
A. まず、不動産の名義を相続人へ変更する相続登記が必要です。2024年4月から相続登記は義務化されています(登記の代理は司法書士の業務)。そのうえで、住み続ける・賃貸する・売却する・解体する・手放すなど、空き家をどうするかの方針を決めます。固定資産税の課税明細や登記事項証明書、境界の資料などを集めると、判断がしやすくなります。
Q3. 誰も引き取らない空き家を、国に引き取ってもらえますか?
A. 相続土地国庫帰属制度を利用できる場合があります。ただし、この制度の対象は土地で、建物が建ったままでは申請できません。建物を解体して更地にする必要があり、境界が不明、担保権がある、土地に争いがあるなどの場合は使えないこともあります。承認後には負担金もかかります。利用できるかは法務局に確認します。
Q4. 空き家を解体したら、税金は安くなりますか?
A. 一概には言えません。建物を解体して更地にすると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税が上がることがあります。一方、特定空家・管理不全空家として勧告を受けた場合も同様に特例が外れます。解体費用や跡地の活用・売却も含めて、総合的に判断する必要があります。売却時の税金は税理士に確認します。
Q5. 相続人が複数いる空き家は、どう進めればよいですか?
A. まず遺産分割協議で、誰が空き家を取得するか(または売却して分けるか)を決めます。共有のままにすると、売却や解体の際に共有者全員の同意が必要になり、手続きが進めにくくなります。管理の費用負担や将来の処分方針も含めて、早めに話し合っておくことが大切です。協議がまとまらない場合は、弁護士に相談します。
Q6. 空き家を相続放棄したい場合、解体や売却を進めてもよいですか?
A. 相続放棄を検討している場合は、解体・売却・賃貸・国庫帰属の申請などに進む前に確認が必要です。これらは相続財産を処分する行為にあたり、法定単純承認とみなされると相続放棄ができなくなるおそれがあります。負担が大きく放棄を考える場合は、管理・処分に着手する前に専門家へ相談しましょう。
まとめ
相続した空き家は、まず相続登記(2024年4月から義務化)を行い、そのうえで管理・賃貸・売却・解体・手放す、の方針を決めます。放置して傷むと、市町村から管理不全空家・特定空家として指導・勧告を受けることがあり(空家対策特別措置法)、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が増えます。さらに特定空家に該当して命令にも従わないと、行政代執行で解体費用を請求されることもあります。なお、相続放棄を検討している場合は、売却・解体・国庫帰属の申請などに進む前に、単純承認とならないか確認が必要です。
手放したい場合、相続土地国庫帰属制度は建物があると使えず、更地化(解体)が必要で、負担金もかかります。売却時の空き家の3,000万円特別控除などの税金は税理士の領域です。空き家は関わる手続きが多いため、早めに全体像を整理して進めましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。相続登記は提携司法書士、売却時の税金は税理士法人トゥモローズと連携します。
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空き家の売却・税金もあわせてご確認ください
相続した空き家を売却するときは、譲渡所得税や、一定の要件を満たす場合の3,000万円特別控除(空き家特例)が関わります。要件や計算については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(譲渡所得・相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(管理不全空家等への指導・勧告、特定空家等への助言指導・勧告・命令・行政代執行。2023年改正で管理不全空家等を追加)
- 地方税法第349条の3の2(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例。勧告を受けた敷地は対象外)
- 不動産登記法第76条の2(相続登記の申請義務。2024年4月施行)/第57条(建物滅失登記。滅失の日から1か月以内)
- 土地家屋調査士法第3条(建物滅失登記など表示に関する登記の申請手続の代理)
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属制度。対象は土地)
- 租税特別措置法第35条第3項(被相続人の居住用財産=空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除)
- 税理士法第2条・第52条(税額の計算・申告は税理士の業務)/司法書士法第3条(登記申請の代理)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く
