遺言で未成年後見人を指定する方法|ひとり親の備えと民法839条
10秒でわかる この記事の要約
- 未成年の子について親権を行う者がいなくなると、未成年後見が開始する(「ひとり親かどうか」ではなく、死亡時点で親権者が残るかで判断)。
- 最後に親権を行う親は、遺言で未成年後見人を指定できる(民法第839条)。自分の死後、誰に子を託すかを決めておける。
- 遺言で指定された人は、その指定により後見人に就任する。就任後は後見開始届・財産目録の作成などが必要。指定がなければ家庭裁判所が選任する。
- 2026年4月1日施行の改正で離婚後も共同親権を選べる。離婚後共同親権なら一方の死亡で他方が残り、未成年後見は開始しないことがある。相続税には未成年者控除(満18歳までの年数×10万円)がある。
未成年の子を育てる親にとって、「自分にもしものことがあったら、子は誰が育て、財産を管理するのか」は切実な問題です。子について親権を行う人がいなくなると、子には親権者がいなくなります。このとき、あらかじめ遺言で未成年後見人を指定しておくことで、信頼できる人に子のことを託せます(民法第839条)。なお、未成年後見が始まるかどうかは「ひとり親かどうか」ではなく、死亡時点で親権を行う者が残るかで判断します。
本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、遺言による未成年後見人の指定について、誰が指定できるか・効果・書き方・家庭裁判所の選任との違いを整理します。
親権者がいなくなると未成年後見が始まる
未成年の子には、通常、親が親権者として、身の回りの世話(身上監護)と財産の管理を行います。しかし、親権を行う人がいなくなると、その役割を担う人が必要になります。これが未成年後見です。
たとえば、すでに一方の親が亡くなっている場合や、離婚後に単独親権となっていて唯一の親権者である親が亡くなる場合には、子に親権を行う人がいなくなり、未成年後見が開始します。このとき、未成年後見人が、親に代わって子の身上監護と財産管理を担います。
ここで注意したいのが、2026年4月1日施行の民法改正により、離婚後も共同親権を選べるようになった点です(民法第819条)。そのため、未成年後見が始まるかどうかは、「ひとり親かどうか」ではなく、死亡時点で親権を行う者が残るかで判断します。婚姻中や離婚後共同親権で、一方が亡くなっても他方の親権者が残る場合は、原則として未成年後見は開始しません。
| 状況 | 未成年後見が始まるか |
|---|---|
| 婚姻中の父母の一方が死亡し、他方が親権者として残る | 原則、始まらない |
| 離婚後の単独親権者が死亡し、他方に親権がない | 始まる |
| 離婚後共同親権で、一方が死亡し他方が親権者として残る | 原則、始まらない |
| 父母双方が死亡 | 始まる |
| 親権者が親権喪失・停止・管理権喪失となった | 状況により始まる |
遺言で未成年後見人を指定できる(民法第839条)
未成年後見人を誰にするかは、あらかじめ遺言で指定できます。民法第839条は、最後に親権を行う者は、遺言で未成年後見人を指定することができると定めています(ただし、管理権を持たない者は除きます)。
「最後に親権を行う者」とは、たとえば、もう一方の親が先に亡くなっている、または親権を持っていないなどで、自分が唯一の親権者である親を指します。その親が、自分の死後に備えて、信頼できる親族や知人を未成年後見人に指定しておけるのです。
遺言で指定された人は、その指定によって未成年後見人に就任します。家庭裁判所の選任を待つ必要がなく、親の意思がそのまま反映される点が大きなメリットです。子を誰に託すかという、最も重要な希望を、確実な形で残せます。
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指定がない場合との違い・遺言での書き方
遺言で未成年後見人を指定しなかった場合は、家庭裁判所が未成年後見人を選任します。未成年者本人や親族などが申し立て、家庭裁判所が一切の事情を考慮して、ふさわしい人を選びます。
このとき、必ずしも親が望んでいた人が選ばれるとは限りません。希望する人に子を託したいなら、遺言で指定しておくのが確実です。遺言では、後見人に指定する人の氏名・続柄・生年月日などを特定して記載します。あわせて、後見人の財産管理を監督する未成年後見監督人を指定することもできます。
指定する前には、必ず本人へ意思を確認しておきましょう。指定された人は、家庭裁判所の許可を得て辞任できる場合があり、引き受けてもらえないと指定が無駄になりかねません。また、民法第847条の欠格事由(未成年者、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人等、破産者、被後見人に対して訴訟をした者やその配偶者・直系血族、行方の知れない者)に当たる人は後見人になれないため、候補者がこれに該当しないか確認します。方式の不備や紛失を防ぐため、公正証書遺言で作成しておくと安心です。
指定後見人に就任した後の手続き
遺言で指定された未成年後見人は、家庭裁判所の選任を待たずに就任しますが、就任後の届出・財産管理が必要です。まず、市区町村への後見開始の届出を、戸籍法第81条により就職の日から10日以内に行います(届書には後見開始の原因・年月日と就職年月日を記載し、指定遺言の謄本を添付します)。あわせて、未成年者の財産の調査と財産目録の作成を行います。民法第853条は、後見人は遅滞なく財産の調査に着手し、1か月以内に調査を終えて財産目録を作成しなければならない(後見監督人があるときは立会いが必要)と定めています。財産目録には、預貯金・有価証券・保険・不動産・負債などを漏れなく記載します。
後見人は、子の生活・教育・医療などの身上監護と、相続財産・預貯金などの財産管理を担う重い立場です。日常の養育を担う親族(同居先)と、法的な未成年後見人が異なる設計を検討することもできますが、その場合でも未成年後見人は法定代理人として身上監護・財産管理の責任を負います。誰が日常の養育を担い、誰が財産を管理し、後見人がどう関与するかを、子の利益を中心にあらかじめ整理しておくことが大切です。
未成年後見人と遺産分割・財産管理
未成年後見人は、子の身上監護だけでなく、財産管理も担います。親が亡くなり、未成年の子がその相続人になる場合、子は単独で遺産分割協議に参加できないため、未成年後見人が子に代わって遺産分割や財産管理を行います。
そのため、後見人を誰にするかは、子が受け取る相続財産の管理に直結します。子の利益を守れる、信頼できる人を選ぶことが大切です。なお、後見人と子の利益が対立する場面(後見人自身も相続人であるなど)では、未成年後見監督人がいればその監督人が子を代理し、いなければ家庭裁判所に特別代理人の選任を求める必要が生じます(民法第860条・第826条)。
未成年後見監督人は、未成年後見人の財産管理を監督する立場です(遺言での指定も可能)。子に多額の相続財産が入る場合、後見人が高齢の場合、後見人と親族間に利害関係がある場合などは、後見監督人を置くことで財産管理の透明性を高められます。前述の財産目録の作成にも、後見監督人があるときは立会いが必要です。
未成年の子の相続と相続税
未成年の子が相続人になる場合、相続税には未成年者控除があります。相続・遺贈で財産を取得した時に18歳未満で、かつ法定相続人であることなどが要件で、控除額は「満18歳になるまでの年数×10万円」で計算します(国税庁No.4164)。控除しきれない部分は、その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引ける場合があります。なお、過去に未成年者控除を受けている場合は控除額に制限があります。
後見人が未成年者の財産から納税する場合は、納税資金の管理・記録も重要です。後見人による財産管理とあわせて、税務面も早めに整理しておくと安心です。控除の計算・適用や相続税の申告は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の未成年者控除をわかりやすく徹底解説
遺言の作成や、ひとり親の終活については、こちらもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 誰でも遺言で未成年後見人を指定できますか?
A. 遺言で未成年後見人を指定できるのは、民法839条の「最後に親権を行う者」です。具体的には、死別や離婚後の単独親権で、自分だけが親権者となっている親が当てはまります。なお、2026年4月1日施行の改正で離婚後も共同親権を選べるため、婚姻中や離婚後共同親権で一方が亡くなっても他方の親権者が残る場合は、原則として未成年後見は開始しません。財産の管理権を持たない親は指定できません。
Q2. 遺言で指定すると、家庭裁判所の手続きは不要ですか?
A. 遺言で指定された人は、指定により未成年後見人に就任するため、家庭裁判所による後見人の選任は原則として不要です。一方、遺言での指定がない場合は、未成年者本人や親族などの申立てにより、家庭裁判所が未成年後見人を選任します。希望する人に任せたいなら、遺言で指定しておくのが確実です。
Q3. 指定された人は必ず引き受けなければなりませんか?
A. 指定された人は、家庭裁判所の許可を得て後見人を辞任できる場合があります。また、不適任な事情があるときは、家庭裁判所が解任することもあります。確実に引き受けてもらうためには、遺言で指定する前に、本人へ意思を確認しておくことが大切です。あわせて、財産管理を監督する未成年後見監督人の指定も検討できます。
Q4. 未成年後見人と遺産分割は関係しますか?
A. 関係します。未成年の子が相続人になる遺産分割では、子は単独で協議に参加できず、未成年後見人(または親権者)が代理します。親が亡くなって親権者がいなくなる場合、未成年後見人が子に代わって遺産分割や財産管理を行います。後見人を誰にするかは、その後の子の財産管理に直結します。
Q5. 未成年の子が相続する場合、相続税で配慮はありますか?
A. あります。未成年の相続人には相続税の「未成年者控除」があり、18歳になるまでの年数に応じて税額を軽減できます。控除しきれない分は、親族など扶養義務者の税額から差し引ける場合もあります。過去に控除を受けていると控除額に制限が出ることもあります。計算や適用は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
まとめ
未成年後見が始まるかは、ひとり親かどうかではなく、死亡時点で親権を行う者が残るかで判断します。2026年4月1日施行の改正で離婚後も共同親権を選べるため、他方の親権者が残る場合は原則として未成年後見は開始しません。親権を行う者がいなくなる場合、最後に親権を行う親は、遺言で未成年後見人を指定できます(民法第839条)。指定された人は、その指定により後見人に就任するため、家庭裁判所の選任を待たずに親の希望を実現できます。
ただし就任後は、戸籍法第81条の後見開始届(就職の日から10日以内)、財産調査・財産目録の作成(民法第853条)、利益相反時の対応などが必要です。後見人は遺産分割や財産管理も担い、相続税には未成年者控除があります。信頼できる人を選び、事前に本人の意思を確認したうえで、財産管理や税務まで含めて準備しておきましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言作成のご相談に対応しています。家庭裁判所の手続きは提携弁護士・司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
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未成年の子が相続人になる場合、相続税の未成年者控除があります。控除の要件・計算については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第818条・第819条(親権者。2026年4月1日施行の改正で離婚後共同親権を選択可)・第824条(財産管理権)
- 民法第838条(後見の開始)・第839条(遺言による未成年後見人の指定)・第840条(家庭裁判所による選任)
- 民法第844条(後見人の辞任)・第846条(後見人の解任)・第847条(後見人の欠格事由)・第848条(未成年後見監督人の指定)
- 民法第853条(財産の調査・財産目録の作成)・第859条(身上監護・財産管理)・第860条・第826条(利益相反・特別代理人)
- 戸籍法第81条(後見開始の届出。就職の日から10日以内)
- 相続税法第19条の3(未成年者控除。満18歳までの年数×10万円)
- 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く
