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死因贈与と遺贈の違い|契約か遺言か・撤回・税金まで徹底比較

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 死因贈与(民法第554条)も遺贈も死亡を原因に財産を渡す方法。死因贈与は「契約」、遺贈は「遺言による単独行為」で、受贈者の承諾が要るかが大きく違う。
  • 遺贈には特定の財産を渡す「特定遺贈」と、全部や割合を渡す「包括遺贈」があり、放棄・債務承継が異なる。相続人に渡すなら「相続させる旨の遺言」(特定財産承継遺言)という選択肢もある。
  • どちらも贈与税ではなく相続税の対象。ただし不動産では、死因贈与の登録免許税・不動産取得税が遺贈より重くなることがある。
  • 撤回は遺贈がいつでも自由。死因贈与も原則撤回できるが、負担付で履行済みの場合などは制限される。

「自分が亡くなったら、この財産を○○に渡したい」。これを実現する方法には、「遺贈」だけでなく「死因贈与」もあります。どちらも死亡を原因として財産を渡す点は同じですが、契約か遺言か、撤回できるか、不動産の登記や税金の扱いなどで違いがあります。

民法第554条は、死因贈与について「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与は、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と定めています。入口は同じでも、不動産を渡す場合は税額・登記・遺留分で結果が大きく変わります。本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、死因贈与と遺贈の違いと使い分けを、税金の扱いまで含めて整理します。


死因贈与と遺贈の基本的な違い

両者の最大の違いは、契約か、単独行為かです。

  • 死因贈与:「あげる人(贈与者)」と「もらう人(受贈者)」の生前の合意で成立する契約です。贈与者の死亡によって効力が生じます(民法第549条・第554条)。
  • 遺贈:遺言によって財産を渡す、遺言者の一方的な行為(単独行為)です。受贈者にあたる受遺者の承諾は不要です。

死因贈与は、生前に相手と「自分が亡くなったらこれをあげる」と約束しておくものなので、受け取る側に確実に伝わり、合意のうえで進められます。これに対し遺贈は、相手に知らせずに遺言で定められますが、受遺者はあとから遺贈を放棄することもできます。

民法第554条により、死因贈与には「遺贈に関する規定」が準用されますが、死因贈与は契約である以上、遺言の方式や遺言能力に関する規定など、契約の性質になじまない部分は準用されないと考えられています。


「遺贈」は一括りにできない|特定遺贈・包括遺贈・相続させる旨の遺言

実務で見落とされがちなのが、「遺贈」と書けばよいわけではないという点です。財産の渡し方には、次の整理があります。

  • 特定遺贈:「自宅を甥に遺贈する」など、特定の財産を受遺者に渡すものです。受遺者はいつでも放棄できます。
  • 包括遺贈:「財産の3分の1を遺贈する」など、全部または割合で渡すものです。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持ち(民法第990条)、借金などの債務も承継します。
  • 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言):相続人に対し「自宅を長男に相続させる」と書くものです。遺贈ではなく相続として扱われ、登記や税務で負担が軽くなる場面があります。

どの文言にするかで、登記手続き・放棄・債務承継・遺留分対応が変わります。とくに相続人に渡す場合は、遺贈ではなく「相続させる旨の遺言」にするほうが有利なことが多く、単に「遺贈する」と書くと損をするケースもあります。

4類型の比較

項目死因贈与特定遺贈包括遺贈相続させる旨の遺言
性質契約遺言遺言遺言
相手の承諾必要不要不要不要
渡せる相手相続人・第三者相続人・第三者相続人・第三者相続人のみ
債務の承継契約内容による原則なし相続人と同様に承継相続人として承継
放棄契約関係の整理が必要いつでも放棄可(986条)3か月以内に家裁へ(相続放棄に準じる)相続放棄・遺産分割の問題
登録免許税原則2%相続人0.4%・第三者2%取得者により確認原則0.4%

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比較表:方式・撤回・能力・登記

死因贈与と遺贈の主な違いを整理すると、次のとおりです。

項目死因贈与遺贈
性質契約(双方の合意)遺言による単独行為
相手の承諾必要不要(受遺者は放棄できる)
方式遺言ほど厳格な方式はないが、書面化が実務上必須遺言の方式(自筆証書・公正証書等。民法960条)が必要
できる年齢・能力契約に必要な意思能力・行為能力が必要満15歳以上で遺言可能(民法961条)
撤回原則撤回できるが、負担付で履行済み等は制限遺言者がいつでも自由に撤回できる(民法1022条以下)
不動産の生前対応始期付所有権移転仮登記ができる仮登記は基本的になじまない

方式について、遺贈は遺言の方式(民法第960条)を満たさないと無効です。死因贈与は契約のため遺言ほど厳格な方式はありませんが、書面によらない贈与は履行が終わるまで各当事者が解除できる(民法第550条)ため、書面化、できれば公正証書化が実務上必須です。

年齢・能力は、遺言が満15歳以上で可能(民法第961条)なのに対し、死因贈与は契約なので、原則として意思能力・行為能力が必要です。未成年者や成年被後見人が当事者となる場合は、代理や取消しの問題が生じるため注意します。


撤回と「受贈者が先に亡くなった場合」

撤回について、遺贈は遺言者がいつでも自由に撤回できます(民法第1022条以下)。死因贈与も、民法第554条により遺言の撤回に関する規定が準用され、原則として贈与者が撤回できると考えられています。

ただし例外があります。負担付死因贈与で、受贈者がすでに負担の全部または一部を履行している場合は、特段の事情がない限り、贈与者が一方的に撤回することはできないとされています(最高裁昭和57年4月30日判決)。「介護をしてくれたら自宅を渡す」と約束し、相手が実際に介護を続けてきたようなケースです。

また、財産を受け取る予定の人が、贈与者・遺贈者より先に亡くなった場合も整理が必要です。遺贈では、受遺者が遺言者の死亡以前に亡くなると、その遺贈は効力を生じません(民法第994条第1項)。死因贈与でも、特段の合意がなければ、受贈者の地位がその相続人に当然に承継されるわけではないと考えられています。確実に渡したい相手がいる場合は、予備的な定めをしておくと安心です。


不動産を渡す場合の登記・仮登記

不動産を渡すときは、登記の進め方に違いが出ます。

死因贈与では、生前に始期付所有権移転仮登記をしておくことができます。これは「贈与者の死亡」を始期として将来の所有権移転を予約する仮登記で、登記の順位を確保し、第三者対策になります。ただし、仮登記だけでは所有権は移転せず、贈与者の死亡後に本登記をして初めて確定します。

このとき、死因贈与契約のなかで、死亡後の登記・引渡しを進める執行者(登記手続の協力者)を定めておくと、本登記が円滑になります。これは遺言の遺言執行者とは法的性質が異なる契約上の取り決めで、権限の範囲は司法書士と確認しますが、相続人全員の協力を取り付ける必要がなくなる場合があります。

一方、遺贈は、生前に受遺者の権利が発生しないため、仮登記にはなじみません。死亡後に登記することになり、遺言執行者がいれば執行者と受遺者で申請しますが、執行者がいないと相続人の協力が必要になることがあります(相続人に対する遺贈を除く)。不動産が関わる場合は、登記は司法書士に確認しながら進めるのが確実です。


死因贈与・遺贈と税金(相続税・登録免許税・不動産取得税)

税金の扱いは、この比較で最も差が出るポイントです。

まず相続税について、死因贈与・遺贈はいずれも、死亡を原因として財産を取得するものとして、贈与税ではなく相続税の対象になります。国税庁も、相続税がかかる財産として「相続や遺贈(死因贈与を含みます。)」によって取得した財産を挙げています。「贈与」という言葉から贈与税を連想しがちですが、死因贈与は相続税で扱われる点に注意が必要です。

差が出るのは、不動産が関わる場合の登録免許税と不動産取得税です。

税目死因贈与遺贈・相続させる旨の遺言
相続税課税対象課税対象
贈与税かからないかからない
登録免許税不動産は原則「贈与等」として2%相続人への遺贈・相続は0.4%、相続人以外への遺贈は2%
不動産取得税課税対象になり得る相続・包括遺贈・相続人への遺贈は非課税、相続人以外への特定遺贈は課税

登録免許税は、所有権移転登記で、相続による移転が原則0.4%(1,000分の4)であるのに対し、贈与などによる移転は2%(1,000分の20)です。死因贈与は登記上「贈与」として扱われるため、相続人に渡す場合でも登録免許税が重くなることがあります。なお、相続人に対する遺贈は相続と同じ0.4%とされています(国税庁No.7191)。

不動産取得税は、相続により取得した場合は課税されませんが、贈与等による取得は課税対象です。包括遺贈や相続人への遺贈は相続に準じて非課税となる一方、死因贈与や相続人以外への特定遺贈では、不動産取得税が問題になることがあります。

税務・登記の負担は、財産の種類・受け取る人・遺言の文言によって変わります。相続税の試算・申告は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税のかかる財産とかからない財産の一覧【相続税の課税対象の解説】


死因贈与契約書に書いておきたいこと

死因贈与を選ぶ場合、後の争いを防ぐため、契約書には次のような点を明確にしておきます。

  • 当事者:贈与者・受贈者を正確に特定します。
  • 対象財産:不動産は登記事項どおりに、預貯金は金融機関・口座を特定します。
  • 効力発生:「贈与者の死亡により効力を生じる」ことを明記します。
  • 負担の内容(負担付の場合):介護などの負担と、その確認方法・履行の範囲を具体的に書きます。
  • 執行者:登記や引渡しを行う執行者を定めておくと手続きが円滑です。

口頭やメモだけでは、書面によらない贈与として撤回されたり、死後に契約の存在を争われたりするリスクがあります。公正証書にしておけば、内容が公的に残り、不動産登記の場面でも信頼性が高まります。負担付死因贈与で履行・解除をめぐる紛争が生じた場合は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士と、それぞれの専門家と連携します。


どちらを選ぶか・使い分けの考え方

目的に応じて、次のように使い分けます。

  • 遺贈が向くケース:内容を秘密にしたい、後で気が変わる可能性がある、複数の財産を一括して指定したい。
  • 死因贈与が向くケース:受け取る相手と生前に合意しておきたい、見返り(負担)とセットにしたい、不動産の仮登記で確実性を高めたい。
  • 相続させる旨の遺言が向くケース:相続人に特定の不動産を渡したい(登記・税負担が軽くなりやすい)。

いずれの方法でも、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(最低限の取り分)があり、特定の人に多くを渡すと、ほかの相続人から遺留分侵害額請求(民法第1046条)を受ける可能性があります。この請求は金銭の支払いを求めるもので、渡した財産そのものを取り戻すものではありませんが、紛争の火種になりやすいため、配分は相続人全体のバランスを見て設計することが大切です。


遺言の作成や、財産の渡し方の設計については、こちらもあわせてご覧ください。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 死因贈与契約書は公正証書にしたほうがよいですか?

A. 公正証書にしておくと安心です。死因贈与は契約のため口頭でも成立し得ますが、書面がないと、書面によらない贈与として撤回されたり、死後に契約の存在自体を争われたりするおそれがあります。公正証書化や執行者の定めまでしておくと、負担の内容や撤回の可否が明確になり、不動産の登記手続きもスムーズに進みやすくなります。

Q2. 死因贈与や遺贈は、ほかの相続人の遺留分を侵害しますか?

A. 侵害することがあります。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という最低限の取り分があり、死因贈与・遺贈で特定の人に多くを渡すと、ほかの相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。請求は金銭の支払いを求めるもので、渡した財産そのものを取り戻すものではありませんが、紛争の火種になりやすいため、配分には事前の配慮が必要です。

Q3. 財産を受け取る予定の人が、贈与者より先に亡くなったらどうなりますか?

A. 遺贈では、受遺者が遺言者より先に亡くなると、その遺贈は効力を生じません(民法994条1項)。死因贈与でも、特段の合意がない限り、受贈者の地位がその相続人に当然に引き継がれるわけではないと考えられています。誰に渡すかを確実にしたい場合は、予備的に次の受取人を定めておくなど、契約・遺言の内容で備えておくことが大切です。

Q4. 包括遺贈と特定遺贈は、放棄の方法が違いますか?

A. 違います。特定遺贈は、遺言者の死亡後にいつでも放棄できます(民法986条)。一方、包括受遺者は相続人と同じ立場に立つため(民法990条)、放棄するには、自分のために遺贈があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。包括遺贈は債務も引き継ぐため、放棄の判断は早めに行う必要があります。

Q5. 相続人に不動産を渡すなら、死因贈与と遺言のどちらが負担が軽いですか?

A. 相続人に渡す場合は、死因贈与より、遺言で「相続させる」と書く方法(特定財産承継遺言)のほうが、登記の登録免許税や不動産取得税の負担が軽くなることが多いです。死因贈与は登記上「贈与」として扱われ登録免許税が高くなりがちで、不動産取得税も課税され得ます。誰に何を渡すかによって有利な方法が変わるため、税理士・司法書士と確認して設計します。

Q6. 受け取る人が相続放棄したら、死因贈与や遺贈で財産は受け取れますか?

A. 相続放棄をすると相続人ではなくなりますが、死因贈与や特定遺贈は相続とは別の原因で財産を受け取るものなので、相続放棄をしても、原則としてその財産は受け取れます。一方、包括遺贈は相続人と同様の立場に立ち、債務も引き継ぐため扱いが異なります。借金が多いなどで放棄を考える場合は、何をどの原因で受け取るのかを整理して判断することが大切です。


まとめ

死因贈与(民法第554条)も遺贈も、死亡を原因として財産を渡す方法ですが、死因贈与は契約(受贈者の承諾が必要)、遺贈は遺言による単独行為という違いがあります。遺贈は特定遺贈・包括遺贈に分かれ、相続人に渡すなら「相続させる旨の遺言」という選択肢もあります。

不動産では差が顕著です。死因贈与は登記原因が「贈与」となるため、登録免許税は原則2%・不動産取得税は課税となりますが、相続や相続人への遺贈なら登録免許税0.4%・不動産取得税非課税になり得ます。撤回は遺贈がいつでも自由、死因贈与は負担履行済みなどで制限されます。誰に・何を・どの方法で渡すかにより結果が大きく変わるため、内容は書面(できれば公正証書)で明確にし、税務は税理士、登記は司法書士と確認しましょう。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言・死因贈与契約書の原案作成のご相談に対応しています。不動産登記は提携司法書士、相続税・不動産取得税は税理士法人トゥモローズ、紛争性がある場合は弁護士と連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第549条(贈与)・第550条(書面によらない贈与の解除)・第554条(死因贈与。性質に反しない限り遺贈の規定を準用)
  • 民法第960条(遺言の方式)・第961条(15歳以上の遺言能力)・第964条(包括遺贈・特定遺贈)
  • 民法第985条(遺言の効力発生時期)・第986条(特定遺贈の放棄)・第987条(受遺者に対する遺贈の承認・放棄の催告)・第990条(包括受遺者の権利義務)・第994条(受遺者の死亡による失効)
  • 民法第1004条(遺言書の検認)・第1012条・第1013条(遺言執行者の権限・妨害行為の禁止)
  • 民法第1022条〜第1024条(遺言の撤回・撤回擬制)・第1046条(遺留分侵害額請求)
  • 最高裁昭和57年4月30日判決(負担を履行した負担付死因贈与の撤回の制限)
  • 相続税法第1条の3・第2条(相続・遺贈(死因贈与を含む)による取得財産への相続税)
  • 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)
  • 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。