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遺言による認知とは|婚外子を遺言で認知する方法と相続への影響

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 認知は、生前の届出だけでなく、遺言によってもできる(民法第781条第2項)。
  • 遺言で嫡出でない子を認知すると、その子は法律上の子となり、相続人になる。相続分は嫡出子と同じ。
  • 遺言による認知では、遺言執行者が、就職の日から10日以内に認知届を提出する(戸籍法第64条)。遺言での遺言執行者の指定が重要(指定がなければ家裁が選任・民法第1010条)。
  • 認知で相続人が増えると、ほかの相続人の相続分・遺留分・相続税に影響する。相続開始後の認知で、すでに遺産分割が済んでいた場合は、価額の支払請求になる(民法第910条)。認知の有効性に争いがある場合は弁護士と連携。

認知は、生きている間に役所へ届け出るだけでなく、「遺言」によってもできます。 家庭の事情から生前は認知しづらいけれど、自分の子として財産を遺したい——そうしたときに使えるのが、遺言による認知です(民法第781条第2項)。

ただし、遺言による認知には、遺言執行者による届出など、独特の手続きと注意点があります。本記事では、遺言を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、遺言で認知する方法・効果・相続への影響を整理します。なお、認知をめぐって争いが見込まれる場合は提携弁護士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。


遺言で認知できる(民法第781条第2項)

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた嫡出でない子(いわゆる婚外子)について、父が自分の子であると法律上認め、法律上の親子関係を生じさせる手続きです(民法第779条)。民法上は父または母が認知できますが、母子関係は出生により明らかなことが多く、実務で問題になるのは主に父による認知です。

認知は、通常は戸籍法の定めにより役所へ認知届を出して行いますが、民法第781条第2項は、認知は遺言によってもすることができると定めています。遺言に「○○を認知する」と記載しておくことで、死亡後に認知の効果を生じさせられます。生前に届け出ることが難しい事情がある場合に、自分の死後に意思を実現できる点が、遺言による認知の特徴です。

認知の効果は、子の出生の時にさかのぼって生じます(民法第784条本文)。これにより、認知された子は、出生のときから父の子であったものとして扱われ、相続人になります。ただし、第三者がすでに取得した権利を害することはできません(同条ただし書き)。なお、母が婚姻中であった場合や離婚後間もない出生の場合は、子が母の夫・元夫の子と推定されることがあり、その場合は単に遺言で認知すると書いても直ちに整理できないことがあります(後述)。


遺言執行者による認知届(戸籍法第64条)

遺言による認知で、実務上とくに重要なのが遺言執行者の存在です。

遺言で認知をする場合、その認知届を提出するのは遺言執行者です。遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添えて、市区町村へ認知届を提出しなければなりません(戸籍法第64条)。

そのため、認知を遺言に入れるなら、あわせて遺言執行者を指定しておくことが欠かせません。「就職の日」とは、遺言執行者がその就職を承諾した日を指します。遺言執行者の指定がないとき(または欠けたとき)は、家庭裁判所が利害関係人の請求により遺言執行者を選任します(民法第1010条)が、その分、手続きが滞ります。確実に認知を実現するため、遺言書では「認知」と「遺言執行者の指定」をセットで定めておきます。方式の不備や紛失を防ぐためにも、公正証書遺言で作成しておくと安心です。


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認知の要件と対象による違い

認知には、対象となる子によって、満たすべき要件があります。

  • 成年の子:その子本人の承諾が必要です
  • すでに亡くなっている子:その子に直系卑属(孫など)がいる場合に認知でき、成年の直系卑属がいるときはその承諾が必要です
  • 胎児:母の承諾が必要です

これらの要件を満たさないと、認知が認められないことがあります。遺言で認知する子が誰かによって必要な要件が変わるため、対象に応じて確認したうえで遺言を作成します。なお、認知の効力をめぐって、ほかの相続人との間で争いになることもあります。紛争性がある場合は、弁護士と連携して対応します。


相続人・相続分・遺留分への影響

遺言による認知は、相続関係に大きく影響します。

認知された子は、法律上の子として相続人になります。現在の民法では、嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分と同じです。そのため、認知された子が1人加わると、ほかの相続人の相続分が変わり、遺留分(一定の相続人に保障される最低限の取り分)にも影響します。

たとえば、すでに配偶者と子がいる場合に、遺言で別の子を認知すると、その子も相続人に加わり、各人の取り分が変わります。認知された子にも遺留分があります。認知だけを遺言に入れて財産の分け方を決めずにおくと、かえって争いを招くこともあります。認知とあわせて、財産全体の分け方や遺留分への配慮も検討しておくのが安全です。


相続開始後に認知された場合(民法第910条)

遺言による認知は、遺言者の死亡後に届出・戸籍反映が行われるため、ほかの相続人が認知された子の存在を知らないまま、遺産分割や預貯金解約・名義変更を進めてしまうことがあります。

このような場合、相続開始後に認知によって相続人となった子が遺産分割を請求しようとしても、他の共同相続人がすでに分割その他の処分をしていたときは、遺産そのものの分け直しではなく、自分の相続分に応じた価額の支払いを請求することになります(民法第910条)。認知された子を除いたまま手続きを進めると、後から金銭精算や紛争が生じかねません。遺言で認知する場合は、認知届の反映と相続人の確定を確認してから、遺産分割・名義変更・相続税申告を進めることが重要です。


嫡出推定・認知無効など争いになるケース

認知が常にスムーズに進むとは限りません。とくに次のような場合は、別の手続きや争いが問題になります。

  • 嫡出推定がある子:母が婚姻中であった、または離婚後一定期間内に出生したなどで、子が母の夫・元夫の子と推定される場合は、単に遺言で認知すると書いても整理できないことがあります。嫡出否認や親子関係不存在確認などの手続きが関係します
  • 認知の有効性が争われる:認知が真実の親子関係に反する場合、ほかの相続人などから認知無効が争われることがあります(民法第786条)。DNA鑑定や家庭裁判所・訴訟手続が関係します
  • 子の側から求める場合:父が認知しないとき、子などの側からは認知調停・認知の訴え(民法第787条)の問題になります

これらは戸籍・相続人確定・遺産分割・相続税申告に影響します。認知無効・親子関係争い・遺留分侵害・遺産分割の紛争は弁護士の領域のため、争いが見込まれる場合は提携弁護士と連携して対応します。


認知と相続税

認知は、相続税の計算にも影響します。認知により法定相続人が1人増えると、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が増え、生命保険金・死亡退職金の非課税枠(各500万円×法定相続人の数)も増えます。

一方で、相続人が増えることで、各相続人の相続分や納税額の配分も変わります。なお、認知された子は被相続人の子なので、相続税額の2割加算の対象にはなりません。

注意したいのが申告のタイミングです。遺言による認知は相続開始後に届出・戸籍反映が行われるため、相続税の申告期限(10か月)までに認知された子を含めて遺産分割がまとまらないことがあります。その場合、いったん未分割申告を行い、分割が成立した後に修正申告または更正の請求で調整することになります。未分割のままでは、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が原則として使えず、適用するには「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出が必要です。また、認知後に法定相続人の数が変わると、基礎控除や非課税枠を含めて税額を計算し直す必要が生じます。認知を含む遺言を作るときは、相続人の増加による税額変動だけでなく、申告期限から逆算した手続き設計が重要です。相続税の計算・申告は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続が発生したら誰が「相続人」なの?意外と知らない法定相続人の範囲と相続分


遺言の作成や遺言執行者については、こちらもあわせてご覧ください。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ生前ではなく遺言で認知するのですか?

A. 生前に届け出にくい事情があるケースがあります。遺言による認知は、自分の死後に認知の意思を実現できる方法で、認知された子を法律上の子として相続人にできます。嫡出でない子に財産を遺したい場合の手段になります。事情に応じて、生前の認知と遺言による認知を選びます。

Q2. 遺言で認知すると、認知届は誰がいつ出しますか?

A. 遺言による認知では、遺言執行者が認知届を提出します。遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添えて市区町村へ認知届を出す必要があります(戸籍法64条)。そのため、遺言書では認知とあわせて遺言執行者を指定しておくことが実務上重要です。

Q3. 認知された子の相続分は、ほかの子と違いますか?

A. 違いません。現在の民法では、嫡出でない子の相続分は、嫡出子の相続分と同じです。遺言で認知された子も、ほかの子と同じ割合で相続人になります。これにより、ほかの相続人の相続分や遺留分にも影響が及ぶため、認知を遺言に入れる場合は、財産全体の分け方もあわせて検討するのが安全です。

Q4. 遺言で認知された子を除いて遺産分割してしまったらどうなりますか?

A. 相続開始後に認知によって相続人となった子が遺産分割を請求する場合、他の共同相続人がすでに分割や処分(不動産売却・預金解約など)を済ませていたときは、遺産そのものの分け直しではなく、自分の相続分に応じた価額の支払いを請求することになります(民法910条)。認知された子を除いて進めると金銭精算や紛争のもとになるため、遺言で認知する場合は、認知届の反映と相続人の確定を確認してから遺産分割を進めます。

Q5. 遺言で認知すると相続税にも影響しますか?

A. 影響します。認知により相続人が1人増えると、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や、生命保険金・死亡退職金の非課税枠が増えます。一方で、各相続人の相続分や納税額の配分も変わります。相続税の計算への影響は税理士の業務のため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。


まとめ

認知は、生前の届出だけでなく遺言によってもできます(民法第781条第2項)。遺言で嫡出でない子を認知すると、その子は出生時にさかのぼって法律上の子となり、相続人になります(相続分は嫡出子と同じ)。遺言による認知では、遺言執行者が就職から10日以内に認知届を提出する必要があるため(戸籍法第64条)、遺言で遺言執行者を指定しておくことが重要です。認知は相続分・遺留分・相続税の基礎控除にも影響するため、財産全体の分け方や税務面もあわせて検討しましょう。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言作成のご相談に対応しています。認知をめぐる紛争は提携弁護士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第779条(認知)・第781条(認知の方式。第2項=遺言による認知)
  • 民法第782条・第783条(成年の子・胎児・死亡した子の認知の承諾要件)
  • 民法第784条(認知の効力は出生の時にさかのぼる。第三者の権利を害さない)
  • 民法第786条(認知無効)・第787条(認知の訴え)
  • 民法第887条・第900条・第902条(子の相続権・法定相続分・遺言による相続分指定)・第1042条(遺留分)
  • 民法第910条(相続開始後に認知された者の価額の支払請求権)
  • 民法第985条(遺言の効力発生時期)・第1006条・第1007条・第1010条(遺言執行者の指定・任務開始の通知・選任)
  • 戸籍法第64条(遺言認知の届出。遺言執行者が就職から10日以内)
  • 相続税法第12条(生命保険金・死亡退職金の非課税)・第15条(法定相続人の数)・第27条(申告期限)
  • 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)
  • 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。