建設業許可の相続認可とは|個人事業主死亡後30日以内の手続き
10秒でわかる この記事の要約
- 個人事業の建設業者が亡くなると、建設業許可は本人に与えられたものなので、相続人が当然に引き継げるわけではない。
- 相続人が空白期間なく営業を続けるには、被相続人の死亡後30日以内に「相続認可」を申請する必要がある(建設業法第17条の3)。認可・不認可の処分があるまでは、相続人に対し被相続人の許可がされたものとみなされる。
- 認可には、相続人が経営業務の管理体制・営業所技術者等(従来の専任技術者)などの要件を満たすことが必要。被相続人が営んでいた建設業の全部を引き継ぐのが原則。
- 軽微な工事を超える工事は許可が必要。軽微な工事とは、建築一式工事以外は税込500万円未満、建築一式工事は税込1,500万円未満または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事をいう(建設業法施行令第1条の2)。30日を過ぎると相続認可は使えず、新規許可の取り直しになる。
個人で建設業を営んでいた方が亡くなると、その建設業許可は自動的に相続人へ引き継がれるわけではありません。 建設業許可は、その人(または法人)に対して与えられた許可だからです。何もしないと相続人は無許可の状態になり、軽微な工事を超える建設工事を請け負えなくなります。
そこで重要になるのが、2020年の改正で新設された相続認可制度です。死亡後の限られた期間内に手続きをすれば、空白期間なく営業を続けられます。本記事では、相続手続きと建設業許可の初動整理に対応する行政書士法人トゥモローズが、建設業許可の相続認可を要件・必要書類まで含めて解説します。なお、事業用資産の評価・相続税は税理士法人トゥモローズが対応します。
建設業許可は相続で当然には引き継げない
建設業の許可は、経営や技術の体制が整っていることを前提に、その事業者へ与えられます。許可を受けていた個人事業主が亡くなっても、その許可がそのまま相続人に移るわけではありません。 行政庁の許可・認可が前提となる地位は、建設業法に定める手続きを経なければ承継できないためです。
許可が切れた状態で、軽微な工事を超える建設工事を請け負うと無許可営業になります。軽微な工事の基準は次のとおりで、金額はいずれも消費税込みです(国土交通省)。
| 区分 | 許可が不要な「軽微な工事」の範囲 |
|---|---|
| 建築一式工事以外 | 1件の請負代金が税込500万円未満 |
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が税込1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 |
先代の死亡直後は、進行中の工事や取引先との契約、入札参加資格など止められないものが多くあります。だからこそ営業の空白を作らないことが最優先で、これを可能にするのが相続認可制度です。
死亡後30日以内の相続認可(建設業法第17条の3)
相続による地位承継の認可制度により、建設業者が亡くなった場合、事業を承継する相続人は被相続人の死亡後30日以内に相続認可を申請しなければなりません(建設業法第17条の3。2020年施行)。
ここで重要なのが、認可・不認可の「処分」があるまでの間、相続人に対して被相続人の許可がされたものとみなされるという仕組みです。期限内に申請しておけば、審査結果が出るまで営業を継続でき、空白を作らずに事業を引き継げます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 被相続人の死亡後30日以内 |
| 申請先 | 原則として被相続人の許可行政庁(都道府県知事または国土交通大臣)。相続人側の許可状況により変わる場合がある(後述) |
| 承継できる範囲 | 被相続人が営んでいた建設業の全部を引き続き営もうとする場合(一部業種のみの承継は原則不可) |
| 相続人が複数の場合 | 他の相続人全員の同意により、承継する1人を選定する |
| 効果 | 認可で被相続人の建設業者としての地位を承継。許可番号も引き継げる |
| 審査中の扱い | 認可・不認可の処分があるまでは、被相続人の許可がされたものとみなされ、営業を継続できる |
逆に30日を過ぎると、この認可は使えず、改めて新規の許可を取り直すことになります(審査期間中は軽微な工事しか請け負えません)。
建設業許可の相続認可は、死亡後30日の初動がすべて
ご相談時は、死亡日・許可通知書(許可番号・許可業種)・営業所所在地・承継予定者の資格や実務経験が分かる資料があるとスムーズです。そろっていない段階でも、まずは30日以内に申請できるかを先に確認します。進行中の工事や元請対応も含め、相続認可の初動を整理します。事業用資産の評価・相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
相続認可を受けるための要件
相続認可は、相続人が建設業許可の要件を満たして初めて認められます。主な要件は次のとおりです。
- 経営業務の管理体制があること(経営業務の管理を適正に行うに足りる能力。法人では常勤役員等のうち1人、個人では本人または支配人のうち1人が、建設業の経営経験など一定の要件を満たす。従来「経営業務の管理責任者」と呼ばれてきた要件)
- 営業所ごとに営業所技術者等(従来の専任技術者)を置いていること
- 適正な社会保険への加入状況(健康保険・厚生年金保険・雇用保険。加入義務がある場合は必要な届出を行い、適用除外の場合はその根拠を確認できる状態にしておく。建設業法施行規則第7条第2号)
- 誠実性・財産的基礎などの要件を満たすこと
- 欠格要件に該当しないこと
実務で問題になりやすいのが、先代が経営業務の管理と営業所技術者等を1人で兼ねていたケースです。後を継ぐ相続人に経営経験や国家資格・実務経験がないと要件を満たせないことがあり、要件を満たす相続人が継ぐ、技術者を雇用して体制を整えるといった対応が必要です。先代が元気なうちの生前の準備が効いてきます。
相続認可を受けられないケース
次のような場合は、相続認可を受けられない、または手続きの見直しが必要になります。
- 相続人が要件を満たさない: 経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件を、相続人側で満たせない場合
- 被相続人の許可が有効期間内でない: 相続認可は、申請時に被相続人の建設業許可が有効期間内であることが前提です。許可の更新切れなどで失効していると、相続認可ではなく新規許可の取得になります
- 一部の業種だけを承継しようとする: 相続認可は被相続人の建設業の全部を引き続き営む場合の制度であり、一部業種だけを選んで承継することは原則できません。承継しない業種がある場合の一部廃業の可否・タイミングは、申請先の行政庁により取扱いが異なるため、必ず事前に確認します
- 一般建設業と特定建設業の区分が衝突する: 同一の業種について、被相続人と承継する相続人が一般・特定の異なる区分の許可を持つ場合などは、そのまま承継できないことがあります
- 30日の期限を過ぎた: 相続認可は使えず、新規許可を取り直すことになります
判断に迷うケースが多いため、相続が起きたらすぐに、申請先の行政庁または行政書士に確認することが重要です。なお、事業を継がず相続認可を申請しない場合は、被相続人の死亡後30日以内に廃業届を提出する運用が一般的です(不認可となった場合は、通知後速やかに行政庁へ対応を確認します)。
申請先の判定
相続認可の申請先は、原則として被相続人の許可行政庁ですが、承継する相続人の許可状況によって変わることがあります。
| 状況 | 主な申請先 |
|---|---|
| 被相続人が知事許可で、相続人も同じ都道府県のみで営業 | 都道府県知事 |
| 承継により営業所が2以上の都道府県にまたがる場合(相続人が別の都道府県で許可を持つ等) | 国土交通大臣 |
| 被相続人が大臣許可 | 国土交通大臣 |
様式や添付書類は申請先により異なるため、どの行政庁に出すのかを最初に確定させます。
相続認可の必要書類チェックリスト
相続の事実と、相続人が要件を満たすことを示す書類をそろえます(様式・添付書類は申請先により異なります)。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 認可申請書 | 所定の様式(相続用) |
| 戸籍など | 被相続人の死亡と、申請者が相続人であることを確認 |
| 相続人全員の同意により承継者を選定したことを示す書類 | 相続人が複数の場合。承継する1人を全員の同意で定める |
| 経営業務の管理体制を証する資料 | 常勤役員等の経営経験を確認 |
| 営業所技術者等を証する資料 | 国家資格・実務経験などの確認 |
| 財産的基礎を示す資料 | 残高証明など |
| 誠実性・欠格要件に関する確認資料 | 所定の誓約書など |
期限が30日と短いため、亡くなった直後から、誰が事業を継ぐかを早期に決め、要件の確認・書類集め・相続人の同意取り付けを同時並行で進めます。
相続認可・新規許可・廃業の比較
事業をどうするかで、取るべき手続きは異なります。
| 項目 | 相続認可 | 新規許可の取得 | 廃業 |
|---|---|---|---|
| どんな場合 | 死亡後30日以内に承継する | 30日に間に合わない/新たに取り直す | 事業を続けない |
| 営業の空白 | 処分まで継続でき、空白を作りにくい | 許可が下りるまで空白が生じる | ― |
| 許可番号 | 引き継げる | 新しい番号になる | ― |
| 主な手続き | 相続認可申請 | 新規許可申請 | 廃業届の提出 |
まずは相続認可で空白を作らないことを最優先に検討し、難しい場合に新規許可や廃業を考えます。
許可が途切れたときのリスク
相続認可が間に合わず許可が途切れると、次のような影響があります。
- 無許可営業:許可なく軽微な工事を超える工事を請け負うと、建設業法違反として罰則の対象になりうる
- 進行中の工事・契約:元請や発注者との契約で、許可業者であることが前提になっている場合、契約の継続に支障が出ることがある
- 公共工事の入札参加資格:経営事項審査(経審)を受けて入札参加資格を得ていた場合、許可が途切れると資格にも影響しうる
法人の代表者が死亡した場合との違い
相続認可は、個人事業主が亡くなった場合の制度です。法人で建設業許可を取得していた場合は、代表者が亡くなっても法人格は存続するため、許可そのものは原則として継続し、相続認可は不要です。
ただし、法人でも油断はできません。代表者の死亡により役員変更届(原則30日以内)が必要になるほか、亡くなった方が経営業務の管理体制(常勤役員等)や営業所技術者等を担っていた場合は、欠員により許可要件を欠くおそれがあります。欠員は短期での対応が求められるため、後任の確保や体制の立て直しを早めに確認します。なお、法人では株式(持分)の相続も別途整理が必要です。
事業用資産・相続税と小規模宅地等の特例
建設業を引き継ぐ場合、事業用資産(建設機械・車両・在庫・売掛金など)や借入金の承継も整理が必要です。これらは相続財産として遺産分割の対象になります。
相続税では、事業に使っていた土地の評価が大きな論点になります。被相続人の事業用の宅地が特定事業用宅地等に当たり、一定の要件(取得した相続人が申告期限まで事業を引き継ぎ、宅地を保有・事業継続することなど)を満たせば、小規模宅地等の特例により400㎡を限度に評価額を80%減額できる場合があります(国税庁No.4124)。ただし相続開始前3年以内に事業供用した宅地は対象外となる例外もあります。
なお、事業用資産について他の相続税の納税猶予制度の適用を受ける場合などは、小規模宅地等の特例を併用できないことがあります。こうした評価・相続税・特例適用の判断は税理士の業務のため、土地・事業用資産・特例の適用関係は一体で税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):特定事業用宅地等とは?400㎡80%減の要件と計算を税理士が解説
行政書士法人トゥモローズのサポート
行政書士法人トゥモローズでは、30日以内に申請できるかの初動確認、必要書類や相続人全員の同意書類の整理、戸籍収集・遺産分割協議書の作成まで一体でサポートします。事業用資産の評価・相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続人に建設業の実務経験がない場合でも認可を受けられますか?
A. 相続人自身が経営業務の管理体制や営業所技術者等(従来の専任技術者)の要件を満たさない場合は、そのままでは認可を受けられません。対応策として、要件を満たす技術者を雇用して体制を整える、要件を満たす別の相続人が承継する、といった方法があります。先代が生前に後継者へ資格を取得させ、経営経験を積ませておくと、いざというときに認可を受けやすくなります。
Q2. 相続の認可申請にはどれくらい費用がかかりますか?
A. 認可申請自体の行政庁手数料は、不要とされる運用が一般的です。新規許可で必要な許可手数料や登録免許税が、相続認可では不要とされています(念のため申請先にご確認ください)。一方、戸籍などの証明書の取得費用や、行政書士に申請を依頼する場合の報酬は別途かかります。
Q3. 被相続人が複数の業種の許可を持っていた場合、一部だけ引き継げますか?
A. 相続認可は、被相続人が営んでいた建設業の全部を引き続き営もうとする場合の制度です。そのため、一部の業種だけを選んで承継することは原則としてできません。続けない業種がある場合は、承継する業種と続けない業種の扱いを、申請先の行政庁に事前に確認しながら進めます。
Q4. 許可が切れている間に工事を請け負うとどうなりますか?
A. 建設業許可が必要な規模の工事を無許可で請け負うと、建設業法違反として罰則の対象になりえます。元請や発注者との契約にも支障が出るおそれがあります。相続の認可を期限内に申請しておけば、認可・不認可の処分が出るまでは営業を継続できるため、まず30日以内の申請が重要です。
Q5. 法人で建設業を営んでいた場合も相続の認可が必要ですか?
A. 相続認可は、個人事業主が亡くなった場合の制度です。法人で許可を取得していた場合は、代表者が亡くなっても法人格は存続するため、許可そのものは原則として継続します。ただし、役員変更届のほか、経営業務の管理体制や営業所技術者等に欠員が生じると要件を欠くおそれがあるため、体制の立て直しを早めに確認します。
まとめ
個人事業主の建設業許可は、相続で当然には引き継げません。空白なく営業を続けるには、被相続人の死亡後30日以内に相続認可を申請する必要があります(建設業法第17条の3)。申請しておけば、認可・不認可の処分まで相続人に許可がされたものとみなされ、営業を継続できます。認可には相続人が経営業務の管理体制・営業所技術者等の要件を満たすことが前提で、被相続人の建設業の全部を承継するのが原則です。期限を過ぎると新規許可の取り直しになります。初動のスピードが鍵となるため、亡くなった直後から準備を始めましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)を拠点に、首都圏とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続認可申請から戸籍収集・遺産分割協議書の作成まで、許認可を含む相続手続きをサポートしています。事業用資産の評価・相続税は税理士法人トゥモローズと連携します。
関連記事
- 個人事業主が亡くなったときの手続き|廃業・準確定申告・事業の引き継ぎ
- 相続手続きの必要書類一覧|手続き別チェックリスト
- 相続手続きをワンストップで依頼するメリット|行政書士・税理士・司法書士・弁護士の連携
事業用宅地の相続税もあわせてご確認ください
建設業を営む個人事業主が亡くなった場合、事業に使っていた宅地が特定事業用宅地等に当たれば、小規模宅地等の特例で評価額を大きく減額できる場合があります。詳しくは、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(評価・相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 建設業法第3条(建設業の許可・軽微な建設工事)
- 建設業法第7条・第15条(許可の要件・経営業務の管理体制・営業所技術者等)
- 建設業法施行令第1条の2(軽微な建設工事の範囲。建築一式以外は税込500万円未満、建築一式は税込1,500万円未満または150㎡未満の木造住宅)
- 建設業法施行規則第7条第2号(適正な社会保険への加入)
- 建設業法第17条の3(相続の認可・死亡後30日以内の申請・処分までのみなし・全員同意)
- 民法第896条(相続の一般的効力)
- 税理士法第2条・第52条(事業用資産の評価・相続税は税理士の業務)
- 行政書士法第1条の3(許可申請・届出書類の作成等)
