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ペットを遺す場合の対策|信託・負担付遺贈・里親探し完全ガイド

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おひとりさま終活

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • ペットは民法上「物」(動産)として扱われるため直接相続人にはできず、ペット信託・負担付遺贈・里親契約のいずれかで飼育を引き継ぐ
  • ペット信託(民事信託の活用)は、信託財産から飼育費を支給する仕組みを作れるため、口約束より飼育費の管理・支給を明確にしやすい。ただし受託者・飼育者・信託監督人・定期報告義務・飼育者変更条項を適切に設計しなければ、世話の質までは十分に担保できない
  • 負担付遺贈は遺言書一本で完結し手軽だが、受遺者は遺贈を放棄でき履行担保が弱いため、定期報告義務や監督者の指定がないと世話を怠られるリスクがある
  • 飼育費は医療費・介護費を含めて多めに見積もり、ペット死亡後の残余財産の帰属先(動物保護団体への寄付等)を契約書に明記しておく

ペットを遺す場合の対策とは、ご自身の死亡後にペットの飼育を引き継いでくれる人・法人を確保し、飼育費を確実に届ける仕組みを生前のうちに法的・契約的に整備することです。 民法上ペットは「物」(動産)として扱われるため、直接相続人にすることはできず、信託法に基づくペット信託・民法第1002条の負担付遺贈・里親契約のいずれかで設計します。

「自分が先に逝ったら、この子はどうなるのか」——ペットと暮らすおひとりさまの方が、最も切実に抱える悩みです。ペットは法律上「物」として扱われるため、直接相続人にすることはできません。しかし、法律と契約の仕組みを正しく使えば、ペットの一生を守る設計が可能です。

飼い主の死後にペットを守るには、①飼育者を決める、②飼育費を確保する、③飼育状況を監督する、④ペット死亡後の残余財産の帰属先を決めるの4点が必要です。方法としては、ペット信託、負担付遺贈、里親契約、老犬・老猫ホームとの生前契約を組み合わせます。

本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズの代表行政書士が、ペットを遺す場合の3つの選択肢を実務目線で解説します。


ペットの法的位置づけ

民法上、ペットは「物」(動産)として扱われ、相続財産の一部となります。ペット自身を相続人に指定したり、ペットに直接財産を遺贈したりはできません。

しかし、ペットの世話を引き受ける人や法人に対して、世話を条件に財産を遺す負担付遺贈や、信託の仕組みを使ったペット信託で、実質的にペットの生活を守ることができます。


3つの対策方式の比較

方式法的根拠特徴
ペット信託信託法信託財産を設定し、受託者が飼育費を管理。継続性が高い
負担付遺贈民法第1002条世話を条件に財産を遺贈。シンプルだが履行担保が課題
里親契約民法第549条(贈与)等の複合契約譲渡・飼育・費用支援・報告義務などを組み合わせて設計

ペット信託の仕組み

いわゆるペット信託とは、信託法に基づく民事信託を活用し、飼育費用となる財産を受託者に管理させ、飼育者へ必要な費用を支給する仕組みの実務上の呼称です。ペット自身は法律上の権利主体ではないため、ペットを受益者にすることはできません。飼育者・信託監督人・残余財産の帰属先などをどう設計するかが重要です。

関係者の構成

役割内容
委託者ペットの飼主。飼育費用となる財産を信託する人
受託者信託財産を管理し、契約に従って飼育費を支払う人
飼育者実際にペットを引き取って飼育する人・団体
信託監督人・報告先受託者や飼育者の履行状況を確認する第三者
残余財産の帰属先ペット死亡後に残った財産を受け取る人・団体

飼育者を受益者と位置づける設計もありますが、常にそうとは限らず、役割の組み合わせはご事情に応じて設計します。

なお、報酬を得て継続的に信託の受託者となる場合は、信託業法上の免許・登録が問題になります。行政書士法人トゥモローズは、ペット信託の契約書作成・関係者間の設計整理をサポートしますが、信託業法上の受託者として信託財産を預かる業務は行いません。

仕組みの流れ

  1. 委託者が信託契約を結び、信託財産(飼育費)を受託者に託す
  2. 受託者は信託財産を管理し、定期的に飼育者へ飼育費を支給
  3. 飼育者は契約に基づきペットの世話を行う
  4. ペットの死後、残余財産は指定先(動物保護団体等)へ

メリットと限界

  • 信託財産から飼育費を支給する仕組みを作れるため、口約束よりも飼育費の管理・支給を明確にしやすい
  • 委託者の死後も長期間継続できる設計が可能

ただし、受託者、飼育者、信託監督人、定期報告義務、飼育者変更条項を適切に設計しなければ、世話の質までは十分に担保できません。仕組みを作ること自体より、「誰が飼うか・誰が資金を管理するか・誰が監督するか・飼育者が倒れたらどうするか」の設計が重要です。


負担付遺贈の活用

仕組み

「○○氏に金300万円を遺贈する。ただし、○○氏は遺贈者が飼育する犬・○○を遺贈者の死亡後に引き取り、当該犬の生涯にわたり責任をもって飼育するものとする」

メリット

  • 遺言書一本で完結する
  • 信託のような複雑な設計が不要

注意点

  • 負担を履行しない場合、相続人が相当の期間を定めて履行を催告し、履行がないときは家庭裁判所に遺言の取消しを請求できる(民法第1027条)。ただし取消請求だけで日々の飼育状況を管理できるわけではない
  • 受遺者がいつでも遺贈を放棄できる(民法第986条)
  • 受遺者が負担した義務を履行する責任は、遺贈の目的の価額を超えない限度に限られる(民法第1002条1項)。将来の医療費・介護費が遺贈額を大きく超える可能性がある場合は、負担付遺贈だけでは不十分

【実務上のポイント】

負担付遺贈は手軽ですが、履行担保が弱いのが弱点です。長期にわたって確実に世話を継続してもらいたい場合は、ペット信託の方が安全です。


里親契約と老犬老猫ホーム

里親契約

信頼できる知人・親族や、ペット保護団体と里親契約を結ぶ方式です。里親契約は、ペットの譲渡契約、飼育委託契約、費用支援契約、報告義務、再譲渡禁止条項などを組み合わせて設計します。ペットの所有権を無償で譲渡する部分は贈与契約(民法第549条)の性質を持ちますが、それだけでは飼育の質を十分に担保できません。費用支援を含めて契約することで、世話の動機づけにもなります。

老犬老猫ホーム

高齢ペットの介護を専門に行う施設です。月額制で長期預けが可能です。料金は月3万円〜8万円程度が一般的です。利用する場合は、動物取扱業の登録・届出の有無を含め、後述の選び方のポイントを確認してください。

なお、動物愛護管理法は、動物を取り扱う者に動物の健康・安全の保持等を求めており、飼い主には終生飼養の責任があります。飼い主の死後にペットが行き場を失わないよう備えることは、この責任を全うするための設計でもあります。


飼育費用の試算と信託財産の設計

種別年間飼育費10年分の目安
小型犬20万円〜30万円200万円〜300万円
大型犬30万円〜50万円300万円〜500万円
15万円〜25万円150万円〜250万円
小動物5万円〜15万円50万円〜150万円

医療費・介護費を含めて、多めに見積もるのが安全です。飼育費の試算では、日常の餌代・トリミング代・医療費だけでなく、高齢期の介護費、手術費、看取り費用、ペット火葬・納骨費用、残余財産の帰属先への送金費用まで含めて設計します。


おひとりさま終活サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

おひとりさまの不安に、確かな備えを。行政書士法人トゥモローズのおひとりさま終活サポート

世話の質を担保する仕組み

担保のための4つの工夫

  1. 飼育者からの定期報告義務を契約に盛り込む
  2. 第三者(信託監督人など)による監督を設定
  3. 世話の質に応じた段階的な費用支給
  4. 怠った場合の飼育者変更条項

ペット信託の具体的設計と運用

信託契約のスキーム

ペット信託の典型的なスキームは「委託者(飼主)→ 受託者(信頼できる親族・知人)→ 飼育者(個人または団体)」の三者構造です。委託者は信託財産(現金)を受託者に託し、受託者が信託契約に基づき毎月一定額を飼育者に支給します。飼育者は支給された資金でペットの世話を行い、定期的に状況を受託者へ報告します。受託者と飼育者を兼ねる設計とすることもあります。

受託者の選定

受託者には、信頼できる親族や知人を選ぶのが一般的です。報酬を得て業として信託を引き受けるには信託業の免許が必要なため、当法人が受託者になることはありません。当法人が行うのは、契約書の起案・関係者間の取り決めの整理など書類作成面のサポートです。受託者・飼育者として適切な方が身近にいない場合は、後述の里親契約や老犬・老猫ホームの活用を検討します。

信託財産の額の目安

ペットの年齢・種別・飼育コスト・想定残存寿命から逆算します。例えば10歳の小型犬(残存寿命5年)であれば、年間飼育費30万円×5年=150万円+医療費予備20万円=170万円程度が目安です。動物医療の進歩により高齢期の医療費が増える傾向にあるため、多めに設定することをおすすめします。

ペット死亡後の残余財産

ペットが死亡した時点で信託は終了し、残余信託財産の帰属先(動物保護団体への寄付・受託者への報酬として留保・指定された個人への帰属など)を契約書に明記しておきます。多くの委託者は「動物保護団体への寄付」を指定されており、ペットの命を社会の動物福祉につなげる選択をされています。


トラブルを防ぐための実務ポイント

負担付遺贈の履行を担保する

負担付遺贈は、受遺者が財産だけ受け取って世話を怠るリスクがあります。民法第1027条では、負担を履行しない場合に相続人が相当の期間を定めて履行を催告し、履行がないときは家庭裁判所に遺言の取消しを請求できるとされています。ただし、ペットの世話は長期間にわたるため、取消請求だけで日々の飼育状況を十分に管理できるわけではありません。遺言執行者や第三者監督者による定期確認・報告義務を遺言・契約にあわせて設計しておくことが重要です。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):負担付遺贈についてわかりやすく徹底解説

里親探しの進め方

里親探しでは、信頼できる知人・親族のほか、ペット保護団体を活用します。相性確認のためのトライアル期間(2週間〜1か月程度)を設け、飼い主候補とペットの相性を見極めてから正式譲渡に進むと安心です。飼育費の補助を組み合わせると、引き受け手が見つかりやすくなります。

老犬・老猫ホームの選び方

高齢ペットの長期預けには、老犬・老猫ホームの利用も選択肢です。選定時は、①動物取扱業の登録・届出、②獣医師との連携、③施設の衛生状態と運営方針、④看取りまでの対応、⑤ご家族(受任者)への報告体制・定期報告の有無、⑥契約終了時の返金条件、⑦施設閉鎖時の引継ぎ・運営者の継続性などを確認します。複数施設を見学してから決定するのが安全で、見学せずに一括前払いをすることは避けるべきです。

ペット保険の活用

ペット保険は医療費の平準化に役立つことがありますが、高齢ペットでは加入制限、既往症免責、更新条件、補償限度額の問題があります。信託財産から保険料を支払う設計をする場合も、保険だけに依存せず、医療費予備費を別途確保しておくことが重要です。

予備飼育者の指定

第1順位の飼育者が万一の事情で対応できない場合に備え、予備飼育者を指定しておくと安心です。


ペット相続の総合的視点

ペットを遺すための備えは、おひとりさまの方の終活の中でも特に大切な要素です。信託・遺贈・里親契約を組み合わせ、ペットの一生を守る設計を実現しましょう。

なお、ペット信託や負担付遺贈では、信託財産・遺贈財産・残余財産の帰属先により、相続税・所得税・贈与税の確認が必要になる場合があります。特に、飼育者に支給する金銭が実費精算なのか報酬なのか、動物保護団体への寄付が税務上どのように扱われるのかは、団体の種類によっても異なるため、税理士に確認します。当法人では、グループの税理士法人トゥモローズと連携して対応します。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):遺言で寄付をすると相続税が非課税に!?(相続と寄付の関係 遺贈寄付編)


よくある質問(FAQ)

Q1. ペットに直接財産を遺せますか?

A. ペット自体は法律上「物」として扱われるため、直接の相続人にすることはできません。負担付遺贈や信託の仕組みを使って、ペットの世話を条件に第三者へ財産を遺す形をとります。

Q2. ペット信託の費用はどのくらいですか?

A. 信託財産(飼育費の原資)はペットの種別・年齢・想定飼育期間によりますが、医療費を含めて100万円〜数百万円が一つの目安です。契約書作成などのサポート費用は内容により異なるため、初回相談でお見積りします。

Q3. 里親はどう探せばよいですか?

A. 信頼できる知人・親族の他、ペット保護団体や老犬老猫ホームと連携する選択肢があります。生前に候補を複数確保しておくことをおすすめします。

Q4. 負担付遺贈で世話を怠られたらどうなりますか?

A. 民法第1027条では、相続人が相当の期間を定めて履行を催告し、それでも履行されない場合には家庭裁判所に遺言の取消しを請求できるとされています。ただし取消請求だけで日々の飼育状況は管理できないため、遺言執行者や第三者監督者による定期確認・報告義務をあわせて設計しておくのが有効です。

Q5. 高齢のペットでも対策できますか?

A. はい、高齢ペットほど早めの対策が必要です。老犬老猫ホームや専門の介護施設との生前契約も組み合わせて設計できます。


まとめ

ペットを遺す場合の対策は、ペット信託・負担付遺贈・里親契約の3方式を、ペットの年齢・性格・財産規模に応じて組み合わせます。

行政書士法人トゥモローズでは、ペットの飼育承継に関する契約書作成、負担付遺贈を含む遺言書起案、関係者間の役割整理をサポートします。信託を活用する場合は、受託者の選定、信託業法、税務上の取扱いを確認しながら、税理士・司法書士・弁護士等と連携して進めます。


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根拠法令・参考判例

  • 民法第549条(贈与)
  • 民法第986条(遺贈の放棄)
  • 民法第1002条(負担付遺贈)
  • 民法第1027条(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
  • 信託法/信託業法(信託の引受けを営業として行う場合の免許・登録)
  • 動物の愛護及び管理に関する法律(終生飼養の責任等)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。