事業承継税制 相続税の納税猶予額の計算方法

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事業承継税制

本記事は、平成30年税制改正前の情報ですのでご留意ください。

みなさんこんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

今回は、事業承継税制における相続税の猶予額を具体的な計算例を用いて解説します。
後継者が債務を承継する場合には若干ややこしくなるので注意が必要です。

事業承継税制の要件については、事業承継税制 基本中の基本をご参照ください。

非上場株式の相続税の納税猶予額は、下記の手順に従って計算します。

相続税の納税猶予額の計算方法

1.手順①(通常の相続税計算)

納税猶予のことは一切忘れて普通に相続税の計算をします。
後継者以外の相続人の相続税額はこの手順①で終了です。この金額がそのまま納付税額となります。すなわち、手順②以降は後継者の納税猶予額を出すためだけに計算するのです。

2.手順②(非上場株式に限定して相続税計算)

後継者が非上場株式のみを相続したものと仮定して計算します。
すなわち、後継者以外の相続人の課税価格と後継者が相続した非上場株式の課税価格のみを合計して相続税の計算をします。
後継者が債務を承継していない場合にはここまでの解説だけで問題ないのですが、後継者が債務を承継した場合には若干ややこしくなります。

a.承継した債務≦後継者が相続した非上場株式以外の財産

債務のことは気にしないで上記の通り非上場株式の評価額のみを課税価格に含めます。

b.承継した債務>後継者が相続した非上場株式以外の財産

この場合には、非上場株式の評価額をそのまま課税価格に含めることはできません。
次の「特定価額」を課税価格に算入します。
特定価額=非上場株式の評価額―控除未決済債務額
※控除未決済債務額=承継した債務―後継者が相続した非上場株式以外の財産

3.手順③(20%評価で相続税計算)

後継者が非上場株式の評価額(又は特定価額の評価額(上記2bの場合))×20%の金額のみを相続したものと仮定して計算します。すなわち、後継者以外の相続人の課税価格と後継者の上記の20%を合計して相続税の計算をします。

4.手順④(納税猶予額)

上記2と上記3の相続税額を控除した金額が納税猶予額となります。

5.手順⑤(納付税額)

上記1の相続税額から上記4の納税猶予額を控除した金額が後継者の納付相続税額となります。
後継者以外の相続人の納付相続税額は前述の通り上記1で計算した金額そのままです。

【具体的計算例その1】

被相続人 (先代) 父
相続人   長男(後継者)、長女
遺産    非上場株式3億円 その他の財産2億円 借入金1億円
遺産分割  長男:非上場株式2億円、借入金1億円 長女:その他の財産2億円

1.手順①(通常の相続税計算)

長男 2億円(非上場株式3億円-借入金1億円)+長女2億円-基礎控除4,200万円=3億5,800万円
3億5,800万円×1/2=1億7,900万円
1億7,900万円×40%―1,700万円=5,460万円
5,460万円×2=1億920万円
長男 1億920万円×2億円/4億円=5,460万円
長女 1億920万円×2億円/4億円=5,460万円

2.手順②(非上場株式に限定して相続税計算)

控除未決済債務 借入金1億円-(取得財産3億円―非上場株式3億円)=1億円
長男2億円(非上場株式3億円-控除未決済債務1億円)+長女2億円-基礎控除4,200万円=3億5,800万円
3億5,800万円×1/2=1億7,900万円
1億7,900万円×40%―1,700万円=5,460万円
5,460万円×2=1億920万円
長男 1億920万円×2億円/4億円=5,460万円

3.手順③(20%評価で相続税計算)

長男4,000万円(2億円×20%)+長女2億円-基礎控除4,200万円=1億9,800万円
1億9,800万円×1/2=9,900万円
9,900万円×30%―700万円=2,270万円
2,270万円×2=4,540万円
長男 4,540万円×4,000万円/2億4,000万円=756万円

4.手順④(納税猶予額)

5,460万円-756万円=4,704万円

5.手順⑤(納付税額)

長男 5,460万円-4,704万円=756万円
長女 5,460万円

【具体的計算例その2】

被相続人 (先代) 父
相続人   長男(後継者)、長女
遺産    非上場株式3億円 その他の財産4億円 借入金1億円
遺産分割  長男:非上場株式3億円、その他の財産2億円、借入金1億円 長女:その他の財産2億円

1.手順①(通常の相続税計算)

長男2億円(非上場株式3億円+その他の財産2億円-借入金1億円)+長女2億円-基礎控除4,200万円=5億5,800万円
5億5,800万円×1/2=2億7,900万円
2億7,900万円×45%―2,700万円=9,855万円
9,855万円×2=1億9,710万円
長男 1億9,710万円×4億円/6億円=1億3,140万円
長女 1億9,710万円×2億円/6億円=6,570万円

2.手順②(非上場株式に限定して相続税計算)

控除未決済債務 借入金1億円-(取得財産5億円―非上場株式3億円)=△1億円⇒ゼロ
長男3億円(非上場株式3億円-控除未決済債務ゼロ)+長女2億円-基礎控除4,200万円=4億5,800万円
4億5,800万円×1/2=2億2,900万円
2億2,900万円×45%―2,700万円=7,605万円
7,605万円×2=1億5,210万円
長男 1億5,210万円×3億円/5億円=9,126万円

3.手順③(20%評価で相続税計算)

長男6,000万円(3億円×20%)+長女2億円-基礎控除4,200万円=2億1,800万円
2億1,800万円×1/2=1億900万円
1億900万円×40%―1,700万円=2,660万円
2,660万円×2=5,320万円
長男 5,320万円×6,000万円/2億6,000万円=1,227万円

4.手順④(納税猶予額)

9,126万円-1,227万円=7,899万円

5.手順⑤(納付税額)

長男 1億3,140万円-7,899万円=5,241万円
長女 6,570万円

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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