旧借地法と借地借家法の異同点をわかりやすく解説

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

借地権が苦手という税理士が多いです。
その理由は、実体法である借地借家法等が難解であるためではないでしょうか。
今回は借地借家法と旧借地法について比較しながらわかりやすく解説します。

なお、借地権の相続税評価については、借地権の相続税評価をパターン別に徹底解説をご参照ください。

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借地借家法と旧借地法のどちらを適用するか

借地借家法は平成3年に新たに設けられた法律です。
下記3つの法律を廃止し、借地借家法に1本化されました。

①建物保護法
②借地法
③借家法

改正の趣旨は、当時の住宅難を少しでも緩和するために借地供給を促進ためです。
そのため、旧法に比べ改正後の借地借家法は、地主に甘く、借地人に厳しい内容となっています。
地主に甘くすることにより、地主に土地を貸しやすくして市場に貸地を増やそうという魂胆です。

本来であるならば借地借家法施行前の借地契約にも新法を適用したかったのですが、借地人の不利益が大きいため政治的、社会的に大きな問題になり、なし崩し的に既存の借地契約については旧借地法を適用するという経過措置が設けられたのです。
もう30年前に廃止された旧借地法を今さら新法である借地借家法と比較する必要もないのでは?と思われたかもしれませんが、比較が必要な理由がこの経過措置なのです。

旧借地法は廃止されても未だに借地実務では登場してくるのです。

借地借家法附則第4条の経過措置を確認してみましょう。

借地借家法附則第4条(経過措置の原則)

この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。

この附則第4条を確認すると借地借家法施行日である平成4年8月1日前の契約であっても借地借家法が適用されるように読めますが、「この附則に特別の定めがある場合を除き」というのがポイントです。
借地借家法の主要な条文の殆どが特別の定めになっているのです。
すなわち、借地借家法施行日である平成4年8月1日前に既に設定されていた借地権については、今現在も旧借地法を実質的に適用することとなるのです。

細かいことは置いとくとして、下記の通り大枠を理解してもらえれば大丈夫です。

平成4年7月31日以前の契約⇒旧借地法
平成4年8月1日以後の契約⇒借地借家法

したがって、借地権の法律関係、課税関係を整理するためには当初の賃貸借契約が平成4年8月1日より前か後かを明確に区分しなければなりません。
もちろん、更新契約をしたとしても当初の賃貸借契約が平成4年8月1日より前であれば旧借地法が適用されます。

現在相続実務をやっていても平成4年8月1日前に契約した借地契約も多く登場します。逆に平成4年8月1日以降の借地契約のほうが少ないくらいです。

それでは、借地借家法と旧借地法の異同点について一つ一つ確認していきましょう。
なお、比較するに当たり旧借地法の借地権を「旧借地権」、借地借家法の借地権を「普通借地権」と使い分けします。

借地権の定義

旧借地権と普通借地権との違い

なし

【解説】
借地権は、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義されます。
旧借地権でも普通借地権でもこの定義付けに違いはありません。

借地権の種類

旧借地法と借地借家法との違い

あり

【解説】
旧借地法においては旧借地権のみが存在しましたが、借地借家法においては「普通借地権」に加え、更新なく契約が終了する借地権として「定期借地権」、「事業用定期借地権等」、「建物譲渡特約付借地権」が創設されました。

存続期間

旧借地権と普通借地権との違い

あり

【解説】
旧借地権は、建物の種類や構造に応じて下記の通りです。

堅固な建物:60年(更新後は30年)
非堅固な建物:30年(更新後は20年)

なお、鉄筋コンクリート造等の建物が堅固な建物に該当し、木造等の建物が非堅固な建物に該当します。

これに対し、普通借地権の存続期間は、建物の種類や構造に関係なく一律下記の通りです。

一律30年(最初の更新後の存続期間は20年、その後の更新は10年)

存続期間が短くなったことにより地主有利の改正になりました。

なお、上記存続年数は、法律上の最低限の年数であるため上記年数より長い年数で契約することは可能です。

更新請求等

旧借地権と普通借地権との違い

ほぼなし

【解説】
借地権の存続期間が満了したときや借地人が契約更新の請求をしたときは、更新時に建物が存在する場合に限り、借地契約を更新することができます。
ただし、地主が遅滞なく異議を述べた場合において、その異議に正当な事由があるときは、借地契約を更新しないこともできます。この場合には、借地人は地主に対して建物を買い取るように請求することができます。

建物の朽廃による借地権の消滅

旧借地権と普通借地権との違い

あり

【解説】
旧借地権は、法定存続期間前に建物が朽廃した場合には借地権は消滅します。
これに対し、普通借地権は、この朽廃による借地権の消滅制度は廃止されました。
なお、朽廃なんて聞き慣れない言葉ですが、朽廃とは、建物が自然の時の経過により建物の使用資材等が腐朽損傷して、建物としての社会的経済的効用が失われた場合を言います。

建物の再築による期間の延長

旧借地権と普通借地権との違い

あり

【解説】
旧借地権は、残存期間を超える建物を再築した場合において、地主が異議を述べない限りは、堅固な建物は30年間、非堅固な建物は20年間の存続期間が延長されます。
これに対し、普通借地権は、残存期間を超える建物を再築した場合には、地主の承諾があったときは、20年間の存続期間が延長されます。

更新後の建物滅失による解約

旧借地権と普通借地権との違い

あり

【解説】
旧借地権は、更新後の建物滅失においても原則として借地契約は解約できません。
これに対し、普通借地権は、更新後であれば建物が滅失した場合には借地契約を解約できます。なお、ひとつ上の建物再築による期間の延長は更新前の契約についての決まりとなります。

これも地主に有利に改正された点です。
なお、普通借地権は平成4年8月1日以降に設定された借地権であるため本コラム執筆時点(令和3年5月)では、1回目の更新である30年が経過していないためこの解約の事例は存在しません。

旧借地法(旧借地権)と借地借家法(普通借地権)の比較まとめ

  旧借地法
(旧借地権)
借地借家法
(普通借地権)
当初の存続期間 堅固な建物:60年
非堅固な建物:30年
一律30年
更新後の存続期間 堅固な建物:30年
非堅固な建物:20年
20年
(2回目の更新以降10年)
建物の朽廃による借地権の消滅 消滅する 消滅しない
建物の再築による期間の延長 堅固な建物:30年延長
非堅固な建物:20年延長
一律20年延長
更新後の建物滅失による解約 不可

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