借金がある相続人がいる場合の遺産相続

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

相続人の中に借金がある人がいる場合には、将来的に遺産分割が債権者から取り消されるリスクがあります。
これを詐害行為取消権の行使といいます。

今回は、詐害行為取消権の内容と詐害行為取消権を回避する方法について解説します。

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1.詐害行為取消権とは?

まずは、民法から確認していきましょう。民法では424条以降に詐害行為取消権について規定がされており、メインの条文が424条となります。

民法第424条 詐害行為取消請求

債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

少し難しい論点であるため具体例を使って解説していきます。

【具体例】
被相続人 母
相続人 長男、長女
遺産 預金1億円
長男は事業で失敗しB金融機関に3,000万円の借金がある

このような状況ですべての遺産を長女が取得するという遺産分割協議をしたとします。
このときに長男の債権者であるB金融機関が詐害行為取消請求をして遺産分割協議という法律行為を取り消せるかどうかがポイントとなります。

結論としては、遺産分割は取消の対象となります。
過去の判例(平成11年6月11日最高裁判決)でも遺産分割協議は詐害行為取消権行使の対象となり得ると判断してます。

詐害行為取消とは、債務者(長男)が詐害意思を持って債権者(B金融機関)を害する行為をした場合、債権者がその行為を取り消すことができることです。

詐害行為取消について詳しく解説すると詐害行為取消権の成立要件は下記の4つです。

①債務者が無資力であること
②詐害行為が財産権を目的としていたこと
③債権者が詐害行為前に債権を有していたこと
④債務者と受益者が債権者を害することを知っていたこと

各要件につきもう少し詳しく解説していきます。

①債務者が無資力であること

詐害行為時と詐害行為取消権行使時の2つのタイミングにおいて債務者(長男)が無資力である必要があります。
これは当然ですよね。
仮に長男に資力があるのならその長男の固有財産から債権者は返済を求めるべきであり、わざわざ遺産分割という行為を取り消す意味もないですからね。

②詐害行為が財産権を目的としていたこと

詐害行為取消権の行使は、将来の強制執行の準備として債務者の責任財産を保全するためのものです。
したがって、詐害行為自体が財産権を目的としたものでなければ強制執行ができないこととなるため財産権を目的とした行為に限定されているのです。

③債権者が詐害行為前に債権を有していたこと

これも当然の要件だと思いますが、詐害行為後に生じた債権にまで取消権を行使してしまうと憲法の大原則である財産権の侵害に該当してしまうためです。
仮に、遺産分割協議後に長男が借金をしてその債権者から遺産分割協議を取り消さえたら長女にとっては酷すぎますからね。

④債務者と受益者が債権者を害することを知っていたこと

債務者(長男)と受益者(長女)はこの遺産分割協議をしたことにより長男が債権者(B金融機関)への返済が困難になることを知っていた場合には、詐害行為取消権の対象となります。

2.詐害行為取消権を回避するにはどうすれば良かったか?

詐害行為取消権の対象とならないためには、下記の2つの方法が考えられます。

①母が遺言書を書いておく
②長男が相続放棄をする

①母が遺言書を書いておく

母が生前に「全ての財産を長女に相続させる」旨の遺言書を書いておけば長男の債権者から詐害行為取消権を行使されることはありません。
なお、長男が遺留分侵害額請求をしないことが詐害行為に当たるのかどうかですが、過去の判例では遺留分減殺請求をしないことは、詐害行為には該当しないと判断されています。(平成13年11月22日最高裁判決)

②長男が相続放棄をする

母が遺言を残していなかった場合には長男が家庭裁判所で相続放棄をすれば長男の債権者から詐害行為取消権を行使されることはありません。
相続放棄のような身分行為については詐害行為取消権の行使の対象とならないと過去の裁判で判断されています。(昭和49年9月20日最高裁判決)

相続放棄についての詳しい解説は、【相続放棄が認められない!?】相続放棄を確実に行うための注意点を解説【相続放棄で節税できる?】相続放棄が相続税申告に与える影響を解説をご参照ください。

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