ドミサイル(Domicile)とは?国際相続における重要概念を解説
国際化が進む現代社会において、海外に資産を持つ方や外国籍の方の相続案件が増えています。
このような国際相続の場面で重要となるのが「ドミサイル(Domicile)」という概念です。
日本に住むアメリカ人やイギリス人などの英米法が適用される国の人が亡くなった場合の相続手続きでドミサイルを決定するということが非常に重要となるのです。
本記事では、ドミサイルの意味や重要性、そして国際相続における影響について詳しく解説します。
目次
ドミサイルの定義と基本的な考え方
ドミサイルとは、英米法系の国で用いられる法的概念で、「個人が固定的な本拠を持ち、そこを離れても帰来する意思を持っている場所」と定義されます。
日本語では「法定住所」や「本拠地」と訳されることもありますが、単なる居住地や住所とは異なる概念です。
ドミサイルの特徴として以下が挙げられます。
□ 一人につき常に1つのみ存在する
□ 国籍とは独立した概念である
□ 時間とともに変更される可能性がある
□ 個人の属人法(身分や財産に関する法)を決定する重要な要素となる
ドミサイルの種類
ドミサイルには主に2つの種類があります。
本源住所(ドミサイル・オブ・オリジン) | 出生時に親から法律上当然に取得する住所 |
選定住所(ドミサイル・オブ・チョイス) | 成人後、自らの選択により取得する住所 |
重要なのは、選定住所を選択した場合、本源住所は失われるということです。
つまり、ドミサイルは常に1つしか持つことができません。
ドミサイルと国際相続
国際相続の場面において、ドミサイルは非常に重要な役割を果たします。
特にアメリカやイギリスなど英米法系の国の国籍を持つ被相続人の場合、ドミサイルの概念が相続手続きに大きな影響を与えます。
ドミサイルと適用法の決定
国際相続では、どの国の法律を適用するかが重要な問題となります。
一般的に、以下のような原則があります。
・不動産:所在地の法律が適用される
・動産:被相続人のドミサイルがある地の法律が適用される
上記は一般的な原則であり、国や地域によって異なる取り扱いをする場合もありますのでその都度現地の法律を確認するようにしましょう。
例えば、日本に居住する日本人がアメリカに不動産と銀行預金を残して亡くなった場合で考えてみましょう。
・銀行預金については、日本の相続法が適用される
このように、ドミサイルの判断によって適用される法律が変わるため、国際相続では非常に重要な概念となります。
ドミサイルと課税
ドミサイルは相続税の課税にも大きな影響を与えます。
特にアメリカの連邦遺産税では、ドミサイルの概念が重要な役割を果たします。
・アメリカ市民またはアメリカにドミサイルを有する人:全世界の資産に対して課税
・上記以外の外国人:アメリカ国内の資産のみに課税
上記は被相続人の状況で課税範囲を判定します。
日本と異なり相続人の国籍や住所は課税範囲に影響しません。
ドミサイルの判断基準
ドミサイルの判断は、単に居住期間や国籍だけでなく、様々な要素を総合的に考慮して行われます。
主な判断基準には以下のようなものがあります。
家族の居住地
仕事や事業の拠点
資産の所在地
社会的・経済的つながり
将来の計画
例えば、日本に長期滞在しているアメリカ人でも、将来アメリカに戻る意思を持っている場合は、アメリカにドミサイルがあると判断される可能性があります。
逆に、日本に永住する意思を持って生活しているアメリカ人は、日本にドミサイルがあると判断される可能性が高くなります。
なお、アメリカの裁判例によるとどの州にドミサイルがあったかどうかは下記のような具体的な状況により判断されているようです。
□被相続人が州内で過ごした時間や活動場所
□被相続人が納税していた州
□被相続人が所有する不動産が所在する州
□被相続人の主な銀行口座の解説した州
□被相続人が選挙にて投票をしていた州
□被相続人が政治献金や寄付を行っていた州
□被相続人が運転免許証、車検証等を登録して州
□被相続人が購読していた新聞や雑誌の郵送先に指定していた州
ドミサイルと二重課税の問題
国際相続では、複数の国で課税される二重課税の問題が生じる可能性があります。
例えば、日本に居住する日本人がアメリカに資産を残して亡くなった場合、日本とアメリカの両国で相続税が課税される可能性があります。
この問題に対処するため、多くの国々が二重課税防止条約を締結しています。
日本とアメリカの間にも日米相続税条約があり、一定の条件下で外国税額控除が認められています。
しかし、二重課税の問題を完全に回避するためには、被相続人のドミサイルを正確に判断し、適切な税務プランニングを行うことが重要です。
ドミサイルと非居住者(ノン・ドム)の税制
イギリスなど一部の国では、ドミサイルの概念を利用した「非居住者(ノン・ドム)」の税制があります。
これは、その国に居住しているものの、ドミサイルは別の国にあると認められる個人に対して、一定の税制上の優遇措置を与える制度です。
国外所得に対する課税の繰り延べ
送金ベース課税の選択肢
相続税の優遇措置
ただし、この制度を利用するには複雑な要件があり、また長期間利用する場合には追加の課税が発生する場合もあります。
国際相続におけるドミサイルの重要性
ドミサイルの概念は、国際相続において以下のような重要な役割を果たします。
適用法の決定:相続人の範囲や相続分の決定に適用される法律を決める
課税範囲の決定:全世界の資産に課税されるか、特定国の資産のみに課税されるかを決める
二重課税の回避:適切な税務プランニングにより、二重課税のリスクを軽減する
税制優遇の活用:非居住者税制などの優遇措置を利用する可能性を検討する
まとめ
ドミサイルは、国際相続において非常に重要な概念です。
適用法の決定や課税範囲の判断に大きな影響を与えるため、正確な判断が求められます。
しかし、ドミサイルの判断は複雑で、個々のケースによって異なる可能性があります。
国際相続に直面した場合、以下の点に注意が必要です:
□ 被相続人のドミサイルを正確に判断する
□ 関係国の相続法と税法を理解する
□ 二重課税のリスクを評価し、適切な対策を講じる
□ 必要に応じて、非居住者税制などの優遇措置の利用を検討する
これらの複雑な問題に対処するためには、国際相続に精通した専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。
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