亡くなった人が保証人だったら|連帯保証債務は相続される・身元保証は相続されない
10秒でわかる この記事の要約
- 亡くなった人(親など)が誰かの連帯保証人だった場合、その保証債務は相続債務として相続人に承継される(民法896条)。相続人が複数なら原則、法定相続分に応じて分割承継。
- 一方、身元保証は原則として相続されない(一身専属的なものとして、判例上、相続の対象にならないと解されている)。ただし死亡時にすでに発生していた具体的な賠償債務は相続され得る。
- 個人根保証は、主たる債務者・保証人の死亡で元本が確定する(民法465条の4)。2020年4月以降に締結・合意更新された個人根保証は極度額の定めが必要(民法465条の2)。
- 保証契約は登記に現れず見つけにくい。契約書・督促状・通帳の返済記録などから確認する。
- 負担が大きいなら相続放棄も選択肢(3か月の期限・処分行為に注意)。保証債務は原則、相続税の債務控除の対象にならない(求償できるため)。
「亡くなった親が、知人や会社の借入の連帯保証人になっていたらしい」。こうしたとき、相続人が心配になるのが「その保証債務を自分が引き継ぐのか」という点です。結論からいうと、連帯保証の債務は相続されますが、身元保証は原則として相続されません。保証の種類によって扱いが大きく変わります。
本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、保証債務の相続について、種類ごとの扱い・確認方法・相続放棄との関係を整理します。
保証の種類と「相続されるか」
ひとくちに「保証人」といっても、いくつかの種類があり、相続されるかどうかが異なります。
| 保証の種類 | 内容 | 相続されるか |
|---|---|---|
| 連帯保証(特定の借入など) | 特定の債務を主債務者と連帯して保証 | 相続される |
| 個人根保証(賃貸借・継続的取引など) | 個人が、一定範囲の不特定の債務を保証 | 主たる債務者または保証人の死亡で元本が確定し、確定した範囲の保証債務が相続され得る |
| 身元保証(就職時など) | 従業員の行為で生じる損害を保証 | 原則として相続されない |
ポイントは、特定の借入の連帯保証は相続され、身元保証は原則相続されないということです。次から、それぞれを詳しく見ていきます。
連帯保証債務は相続される
亡くなった人が、特定の借入(住宅ローン・事業資金・知人の借金など)の連帯保証人になっていた場合、その保証債務は相続債務として相続人に承継されます(民法第896条)。
- 相続人が複数いる場合は、原則として法定相続分に応じて分割して承継します。
- 主たる債務者がきちんと返済していれば、相続人に請求が来ることはありません。しかし、主たる債務者が滞納すれば、相続人が連帯保証人として請求を受ける可能性があります。
また、賃貸借や継続的取引の保証などの個人根保証契約では、主たる債務者または保証人の死亡によって保証の元本が確定します(民法第465条の4)。つまり、保証人が亡くなった時点で保証する債務の範囲が固まり、その後に新たに発生する債務は、原則として相続人が保証し続けるわけではありません。なお、2020年4月以降に締結・合意更新された個人根保証契約は、極度額(責任の上限額)の定めがなければ効力を生じません(民法第465条の2)。保証契約書に極度額の記載があるかも確認します。賃貸借の連帯保証については、賃貸住宅の借主が亡くなったときの手続きもあわせてご覧ください。
なお、相続人間の遺産分割協議で「特定の相続人が保証債務を負担する」と決めることは、相続人間の内部的な取り決めとしては意味があります。しかし、債権者の同意がない限り、他の相続人が債権者からの請求を当然に免れるわけではありません。保証債務がある場合は、債権者との関係も含めて確認する必要があります。
こうした保証債務は、表面上は見えにくく、相続後しばらくして請求が来て初めて気づくこともあります。心当たりがある場合は、早めに確認することが大切です。
身元保証は原則として相続されない
一方、身元保証は扱いが異なります。身元保証とは、就職などの際に、その従業員が会社に損害を与えた場合に賠償する責任を負う保証です。
身元保証人の地位は、その人個人の信用を前提とした一身専属的なものと考えられており、判例上、原則として相続の対象にならないと解されています。つまり、亡くなった親が誰かの身元保証人になっていても、その地位を子が当然に引き継ぐわけではありません。
なお、身元保証契約そのものにも、期間の制限があります。期間を定めなかった場合は原則3年、定めても最長5年とされています(身元保証ニ関スル法律)。
ただし、例外もあります。身元保証人が亡くなった時点で、すでに具体的に発生していた賠償債務(従業員が起こした損害について、保証人が支払うべき金額が確定していた場合など)は、通常の金銭債務として相続の対象になり得ます。あくまで「将来の保証人の地位」が相続されないということです。
親が保証人だったと分かったら(確認の手順)
保証債務のやっかいな点は、不動産のように登記に現れず、見つけにくいことです。次のような手順で確認します。
- 資料の確認:保証契約書、金銭消費貸借契約書の控え、債権者からの督促状・通知書、通帳の返済記録などを探します。
- 保証の種類を見分ける:連帯保証・根保証・身元保証など、種類と相続されるかを確認します。
- 債権者へ確認:心当たりがあれば、債権者(金融機関・取引先など)へ、残債務や保証の有無を確認します。
- 相続放棄の検討:負担が大きい場合は、相続放棄の期限(3か月)を意識して検討します。
保証債務の有無は、プラスの財産と合わせて、相続全体の中で把握することが大切です。財産・負債の調べ方は、相続財産の調べ方もあわせてご覧ください。
保証債務と相続放棄・相続税
保証債務が大きい場合の対応と、税務上の扱いを整理します。
① 相続放棄
保証債務を含めて、プラスの財産より負担が大きい場合は、相続放棄が選択肢になります。相続放棄をすれば、相続人として連帯保証債務を承継しません。ただし、放棄には自己のために相続の開始を知ってから3か月という期限があり(民法第915条)、相続財産を処分すると法定単純承認(民法第921条)とみなされ放棄できなくなるおそれがあります。なお、相続人自身がもともと保証人だった場合、その責任は相続放棄では消えません。相続放棄ができなくなる行為については、税理士法人トゥモローズの解説もご覧ください。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):法定単純承認とは?相続放棄ができなくなる行為
② 相続税の債務控除
保証債務は、原則として相続税の債務控除の対象になりません。保証人は本来、肩代わりした分を主たる債務者に求償できる立場だからです。ただし、主たる債務者が弁済不能で、保証人が肩代わりせざるを得ず、求償しても回収できないと見込まれる部分など、確実と認められるものは債務控除の対象になることがあります。税務上の判断は専門性が高いため、税理士法人トゥモローズと連携して確認します。
保証債務の相続は誰に頼む?
保証債務が関わる相続は、内容によって相談先が分かれます。
- 行政書士:戸籍収集による相続人の確定、財産・負債の調査の整理、相続手続き全体の段取りのサポート
- 司法書士:不動産がある場合の相続登記、家庭裁判所へ提出する相続放棄申述などの書類作成
- 弁護士:債権者との金額・責任をめぐる交渉・代理、保証債務の存否に争いがある場合の対応
- 税理士:相続税の試算・申告(保証債務の債務控除の判断を含む)
保証債務は、見つけにくく、相続放棄の判断とも直結します。「親が保証人だったかもしれない」という段階で相談すると、調査から放棄の可否まで整理できます。費用は依頼する範囲・内容で変わるため、見積もりで確認しましょう。
相続放棄の判断や、財産・負債の調査については、こちらもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 亡くなった親が誰かの連帯保証人でした。子が保証債務を引き継ぐのですか?
A. はい。連帯保証債務は、相続の対象となる債務(相続債務)として相続人に承継されます(民法896条)。相続人が複数いる場合は、原則として法定相続分に応じて分けて承継します。主たる債務者が返済できれば請求は来ませんが、滞納があれば相続人が請求を受ける可能性があります。負担が大きい場合は、相続放棄も含めて早めに検討します。
Q2. 亡くなった親が会社の従業員の身元保証人でした。これも相続しますか?
A. 身元保証は、原則として相続されないと考えられています。身元保証人の地位は、その人個人の信用に基づく一身専属的なものとされ、判例上、相続の対象にならないと解されているためです。ただし、身元保証人が亡くなった時点で、すでに具体的に発生していた賠償債務がある場合は、その分は相続の対象になり得ます。
Q3. 親が保証人になっていたかどうかは、どうやって調べますか?
A. 保証契約は登記などに現れないため、調査が難しいのが実情です。保証契約書や金銭消費貸借契約書の控え、債権者からの督促状・通知書、預金通帳の返済記録などが手がかりになります。信用情報機関への開示請求が役立つこともあります(ただし登録対象の借入・保証等に限られ、すべての保証契約が分かるわけではありません)。心当たりがある場合は、債権者へ確認し、相続放棄の期限(3か月)も意識して早めに調査します。
Q4. 保証債務が大きい場合、相続放棄すれば支払わなくて済みますか?
A. 相続放棄をすれば、相続人として連帯保証債務を承継することはありません。ただし、放棄には自己のために相続の開始を知ってから3か月という期限があり、相続財産を処分すると放棄できなくなるおそれがあります。また、相続人自身がもともと保証人だった場合は、その責任は相続放棄では消えません。負債が不明な場合は、早めに専門家へ相談します。
Q5. 亡くなった人が保証人だった場合、相続税の計算ではどう扱われますか?
A. 亡くなった人の保証債務は、原則として相続税を計算する際に債務として差し引くこと(債務控除)はできません。保証人は、肩代わりした分を本来の借り手に返してもらえる立場だからです。例外的に、本来の借り手が支払えず、保証人が代わりに払うしかなく、返してもらう見込みもないようなケースでは、確実な部分にかぎって差し引ける場合があります。判断は税理士に確認します。
Q6. 遺産分割協議で、保証債務を一人の相続人に負担させることはできますか?
A. 相続人間の内部的な取り決めとして、特定の相続人が保証債務を負担すると決めることはできます。ただし、債権者の同意がない限り、他の相続人が債権者からの請求を当然に免れるわけではありません。保証債務がある場合は、相続人間の取り決めとは別に、債権者との関係も確認する必要があります。
まとめ
亡くなった人(親など)が誰かの連帯保証人だった場合、その保証債務は相続債務として相続人に承継されます(民法第896条)。相続人が複数なら、原則として法定相続分に応じて分割承継します(ただし、遺産分割で特定の相続人が負担すると決めても、債権者の同意がなければ他の相続人が請求を当然には免れません)。賃貸借や継続的取引などの個人根保証は、主たる債務者・保証人の死亡で元本が確定します(民法第465条の4)。
一方、身元保証は原則として相続されません(一身専属的なものとして、判例上、相続の対象にならないと解されています)。ただし、死亡時にすでに発生していた具体的な賠償債務は相続され得ます。保証契約は登記に現れず見つけにくいため、契約書・督促状・通帳の返済記録などから確認します。負担が大きい場合は相続放棄も選択肢ですが、3か月の期限や処分行為に注意が必要です。なお、保証債務は原則として相続税の債務控除の対象になりません(求償できるため)。
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保証債務の相続放棄・債務控除もあわせてご確認ください
保証債務は、相続放棄の判断や、相続税の債務控除(原則対象外だが確実なものは控除され得る)に関わります。相続放棄ができなくなる行為や債務控除については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第896条(相続の一般的効力。連帯保証債務も相続財産として承継)
- 民法第465条の2(個人根保証の極度額)・第465条の4(主たる債務者又は保証人の死亡で元本確定)
- 民法第915条(相続の承認・放棄の熟慮期間)/第921条(法定単純承認)
- 身元保証ニ関スル法律(身元保証の期間。期間の定めがない場合は原則3年、定める場合も最長5年)
- 大審院昭和18年9月10日判決(身元保証人たる地位は一身専属的であり、特別の事情がない限り相続されないとした判例)
- 相続税法第13条・第14条(債務控除。確実と認められる債務に限る。保証債務は原則対象外)
- 税理士法第2条・第52条(相続税の計算・申告は税理士の業務)/司法書士法第3条(登記申請の代理、裁判所提出書類の作成等)
- 行政書士法第1条の3(業務)・第1条の4(相談等)。他の法律で制限された業務を除く
