知的財産権を相続したときの手続き|特許・商標・著作権の名義変更と注意点
10秒でわかる この記事の要約
- 故人が権利者として保有していた特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権などの知的財産権も相続財産。預貯金や不動産と同じく相続の対象になる。
- 特許権などの産業財産権は、相続による移転は登録がなくても生じるが、特許庁へ一般承継(相続)の届出が必要(特許法第98条第2項など)。
- 特許料(年金)・更新登録料の納付を忘れると権利が消滅することがある。相続で納付が止まらないよう期限の確認が重要。
- 著作権は登録なしで承継するが、遺産分割等で法定相続分を超えて取得した部分などは、第三者に対抗するため文化庁への移転登録が必要になる場合がある(著作権法第77条・民法899条の2)。著作者人格権は相続されない。
- 特許庁への手続きの代理は弁理士の業務。戸籍収集・遺産分割協議書の作成は行政書士が対応し、弁理士と連携できる。
特許や商標、著作権といった知的財産権も、預貯金や不動産と同じように相続の対象です。ところが、目に見えない財産のため見落とされやすく、名義の届出や更新料の納付を怠ると、価値ある権利を失ってしまうこともあります。
本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、知的財産権の相続手続きと注意点を整理します。なお、特許庁に対する産業財産権の手続きは提携の弁理士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。
知的財産権も相続財産になる
知的財産権のうち、財産的な価値をもつ権利は相続の対象になります。代表的なものは次のとおりです。
| 種類 | 管轄 | 相続の扱い |
|---|---|---|
| 特許権・実用新案権・意匠権・商標権(産業財産権) | 特許庁 | 相続の対象。原簿の名義は届出で反映 |
| 著作権(財産権) | 文化庁等の登録制度 | 登録なしで承継。遺産分割等で法定相続分を超えて取得した部分などは第三者対抗のため登録が必要な場合あり |
| 著作者人格権 | — | 一身専属で相続されない |
特許権などは、ライセンス収入を生む財産であることもあり、見落とすと相続人の不利益になります。まずは、故人がどんな知的財産権を持っていたかを、登録番号や契約書、特許庁からの通知などから確認しましょう。
なお、発明者や著作者として名前が残っていても、権利者が故人本人とは限りません。会社が権利を持っている(職務発明・職務著作)、すでに第三者へ譲渡している、といったこともあります。登録原簿・J-PlatPat・契約書などで、故人が権利者だったかを確かめます。
特許権・商標権など産業財産権の手続き
特許権・実用新案権・意匠権・商標権は、相続(一般承継)による移転は、登録がなくても効力が生じます。ただし、特許庁の原簿に反映するため、相続人は遅滞なく一般承継の届出をする必要があります(特許法第98条第2項。商標・意匠・実用新案にも同様の規定があります)。
届出をしないと、原簿上の名義が亡くなった方のままになり、その後の特許料・登録料の納付、権利の移転、ライセンス契約、権利管理などの手続きに支障が出ることがあります。
とくに注意したいのが、特許料(年金)や商標の更新登録料の納付です。これらを納付期限までに納めないと、権利が消滅してしまうことがあります。相続のあわただしさの中で納付が止まらないよう、期限を早めに確認してください。なお、特許庁に対する手続きの代理は弁理士の業務のため、提携弁理士と連携して進めます。
著作権の相続
著作権(財産権としての著作権)は、登録がなくても発生し、相続によって承継されます。小説・音楽・写真・プログラムなどについても、故人が著作権者として権利を保有していた場合は、著作権が相続人に承継されます。ただし、出版社・勤務先・制作会社などへ著作権を譲渡している場合や、職務著作に該当する場合は、故人個人の相続財産とは限りません。
注意したいのが第三者への対抗です。通常の相続では当然に承継されますが、遺産分割や相続分の指定によって法定相続分を超えて著作権を取得した部分などは、文化庁への移転登録をしなければ第三者に対抗できない場合があります(著作権法第77条・民法第899条の2)。出版・配信・譲渡などで第三者との権利関係が問題になる場合は、登録の要否を確認します。あわせて、出版社・配信事業者などへ、権利者が変わったことを通知し、印税・使用料の受取口座を変更しておくと安心です。
なお、著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は、著作者の一身に専属するため相続の対象になりません。ただし、著作者の死後も一定の人格的利益が保護され、遺族が差止め等を求められる場合があります。
また、著作権(財産権)は永久に続くものではなく、個人の著作物では原則として著作者の死後70年まで保護されます。権利の有無とあわせて、保護期間が残っているかも確認します。
知的財産権の相続税評価
知的財産権は財産的価値があるため、相続税の課税対象になり得ます。評価は、権利の種類、使用料・印税収入の有無、自ら実施しているか、将来の収益見込みなどによって変わります。財産評価基本通達でも、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権等について評価方法が定められています。
知的財産権は「目に見えない財産」のため、相続税の申告で漏れやすい財産でもあります。評価や申告は税理士の業務のため、当法人グループでは税理士法人トゥモローズが対応します。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税申告で漏れやすい財産ベスト10|税務調査で指摘されないための対策
手続きの流れ
知的財産権の相続手続きは、おおむね次の流れで進みます。
- 権利の洗い出し:登録番号・契約書・特許庁や文化庁からの通知・印税の入金履歴などから、どんな権利があるかを確認します。登録済みの権利だけでなく、出願中の特許・商標・意匠がないかも確認します(出願中は、登録済みの権利とは別に、出願人名義変更届などの手続きが必要になることがあります)。
- 相続人の確定・遺産分割:戸籍を集めて相続人を確定し、誰が承継するかを遺産分割で決めます。
- 特許庁への届出:産業財産権は、相続による一般承継の届出をします(代理は弁理士)。
- 著作権の対応:必要に応じて文化庁への移転の登録、出版社等への通知・受取口座の変更を行います。
- 更新料・特許料の納付:権利を維持するための納付期限を確認し、失効を防ぎます。
権利の有無の調査や戸籍収集、遺産分割協議書の作成は、相続手続きの一環として当法人がサポートできます。財産の調べ方は、相続財産の調べ方もあわせてご覧ください。
手続きは誰に頼める?
知的財産権の相続は、内容によって担当する専門家が分かれます。
- 行政書士:相続人の確定(戸籍収集)、相続人間で合意した内容に基づく遺産分割協議書の作成、契約書・入金資料などの整理
- 弁理士:特許庁に対する産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)の移転・名義変更等の手続きの代理
- 弁護士:知的財産権の帰属やライセンス契約、権利侵害、出版社・共同相続人との紛争への対応
- 税理士:知的財産権を含む相続財産の評価・相続税の申告
当法人では、戸籍収集や遺産分割協議書の作成までを行い、特許庁への手続きは提携弁理士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携して、窓口ひとつでご案内します。専門家の選び方は、相続は誰に頼む?もご覧ください。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特許権や商標権を相続したら、何もしなくても自分のものになりますか?
A. 相続による移転は登録がなくても効力が生じますが、特許庁の原簿に反映するため、遅滞なく一般承継(相続)の届出が必要です(特許法第98条第2項など)。届出をしないと原簿上の名義が亡くなった方のままになり、その後の手続きに支障が出ることがあります。
Q2. 特許料(年金)の納付を忘れるとどうなりますか?
A. 特許権・商標権などは、登録を維持するために特許料(年金)や更新登録料の納付が必要です。納付期限を過ぎると権利が消滅することがあります。相続でうっかり納付が止まると、せっかくの権利を失うおそれがあるため、期限を早めに確認してください。
Q3. 著作権の相続にも登録は必要ですか?
A. 著作権は登録がなくても発生・承継するため、登録は必須ではありません。ただし、法定相続分を超えて取得した部分などは、登録しないと権利の取得を第三者に主張できないことがあります(著作権法77条・民法899条の2)。著作者人格権は相続の対象になりません。
Q4. 相続した特許権や商標権は、そのまま使い続けたり、他人に使わせたりできますか?
A. はい。相続した産業財産権は、相続人が引き続き利用したり、第三者にライセンス(実施許諾・使用許諾)して使用料を得たりできます。ただし、原簿の名義を相続人に反映する届出や、登録を維持するための納付を済ませておくことが前提です。活用を検討する際は、提携弁理士とあわせてご相談ください。
Q5. 故人が発明者・著作者であれば、必ず相続財産になりますか?
A. いいえ。発明・創作をした人と、その権利を持つ人は別のことがあります。職務発明や職務著作では勤務先が、譲渡済みであれば譲り受けた人が権利者です。相続の対象になるのは、亡くなった方が権利者として保有していた権利だけです。心当たりがあれば、契約書や使用料の入金履歴もあわせて確認しましょう。
まとめ
特許権・商標権・著作権などの知的財産権も、預貯金や不動産と同じく相続の対象です。産業財産権は、相続による移転は登録がなくても生じますが、特許庁への一般承継の届出が必要で、特許料・更新登録料の納付を忘れると権利が消滅することがあります。著作権は登録なしで承継しますが、遺産分割などで法定相続分を超えて取得した部分などは、第三者に対抗するため文化庁への移転登録が必要になる場合があります(著作者人格権は相続されません)。
目に見えない財産のため見落とされやすいので、まずは権利の有無を確認することが第一歩です。特許庁への手続きは弁理士、相続税は税理士の領域のため、相続手続き全体を見ながら、各専門家と連携して進めるのが安全です。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。戸籍収集や、相続人間で合意した内容に基づく遺産分割協議書の作成は当法人が、特許庁への手続きは提携弁理士、相続税は税理士法人トゥモローズが連携して対応します。
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知的財産権は相続税の課税対象になり得ますが、目に見えないため申告で漏れやすい財産です。評価や申告については、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 民法第896条(相続の一般的効力。被相続人の一身に専属したものを除き権利義務を承継)
- 民法第899条の2(相続による権利の承継の対抗要件。法定相続分を超える部分は登記・登録等がなければ第三者に対抗できない)
- 特許法第98条(特許権の移転等。一般承継は登録なしで効力が生じ、遅滞なく特許庁長官へ届出)。実用新案法・意匠法・商標法にも同旨の規定
- 著作権法第59条・第60条(著作者人格権の一身専属性・死後の人格的利益の保護)・第77条(著作権の移転の登録=第三者対抗要件)
- 弁理士法第4条・第75条(特許庁に対する手続きの代理は弁理士の業務)/行政書士法第1条の3・第1条の4(戸籍収集・書類作成等)
