相続人申告登記とは|相続登記の義務を簡単に果たす方法と本来の登記との違い
10秒でわかる この記事の要約
- 相続人申告登記は、2024年4月に義務化された相続登記を、戸籍一式や遺産分割を待たずにとりあえず簡単に果たすための制度(不動産登記法76条の3)。
- 自分が相続人だと法務局に申し出ると、登記官が職権で氏名・住所を登記に付記し、申請義務を履行したものとみなされる(期限内に適切に申し出れば過料リスクを抑えられる)。
- 提出書類は本来の相続登記より少なく、申出書・申出人が相続人とわかる戸籍・住所を証する情報などで足りる(相続人全員分の戸籍や遺産分割協議書は原則不要)。登録免許税は非課税で、1人でも申し出られる。
- ただし権利の登記ではないため、これだけでは不動産の売却・担保設定はできない(あくまで義務の暫定的な履行)。
- 遺産分割で不動産を取得する相続人が決まったら、その日から3年以内に本来の相続登記(名義変更)が必要。登記は提携司法書士と連携して対応。
「相続登記が義務化されたのは知っているけれど、遺産分割がまとまらない」「戸籍を全部集める時間がない」。そんなときの受け皿が、2024年4月に新設された相続人申告登記です。期限内に適切に申し出れば過料リスクを抑えつつ、簡単に義務を果たせる一方で、「これで終わり」ではない点に注意が必要です。
本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、相続人申告登記の仕組み・本来の相続登記との違い・手続きと注意点を整理します。なお、登記の申請は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。
相続人申告登記とは
相続人申告登記とは、不動産の相続人が「自分はこの不動産の相続人です」と法務局(登記官)に申し出ることで、登記官が職権でその人の氏名・住所などを登記に付記する制度です(不動産登記法第76条の3)。 2024年4月の相続登記義務化にあわせて新設されました。
ポイントは、これが相続登記の申請義務を簡単に果たすための受け皿だということです。本来の相続登記は、被相続人と相続人の関係を示す戸籍等をそろえ、遺言・法定相続分・遺産分割協議など、取得原因に応じた書類を準備して申請するため、時間も手間もかかります。遺産分割がまとまらないうちに3年の期限が来てしまうこともあります。相続人申告登記は、そうした場合でもまず義務だけは果たしておける仕組みです。
相続登記義務化との関係
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する義務を負います(不動産登記法第76条の2)。過去の相続も対象で、正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になり得ます(同法第164条)。
期限内に適切に相続人申告登記をして登記官が氏名・住所を付記すると、その申出人は相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。つまり、遺産分割が間に合わなくても、相続人申告登記をしておけば、まずは過料のリスクを抑えられます。
相続人申告登記でできること・できないこと
相続人申告登記は便利な制度ですが、「とりあえずの義務履行」にすぎない点を正しく理解しておくことが大切です。
- できること:相続登記の申請義務を、簡単な手続きで期限内に果たす。申出人が登記記録上の所有者の相続人であることが分かる戸籍等を用意すればよく、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式や相続人全員分の戸籍、遺産分割協議書は原則不要。
- できないこと:相続人申告登記は権利の登記ではありません。誰がどの持分を取得したかといった権利関係は公示されないため、この状態のままでは、その不動産を売却したり、担保(抵当権)を設定したりすることはできません。
あくまで「申出人が相続人の一人である」ことが記録されるだけで、名義が相続人に移ったわけではない、という理解が重要です。
本来の相続登記との違い
相続人申告登記と、本来の相続登記(所有権移転登記)の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 相続人申告登記 | 本来の相続登記(所有権移転) |
|---|---|---|
| 目的 | 申請義務の暫定的な履行 | 不動産の名義を相続人へ移す |
| 権利の公示 | しない(報告的な登記) | する |
| 売却・担保設定 | できない | できる |
| 必要書類 | 申出書・申出人が相続人とわかる戸籍・住所を証する情報 | 取得原因に応じた戸籍等(遺言・遺産分割協議書など) |
| 遺産分割 | 不要(未分割でも申出可) | 取得原因による(遺言・法定相続分どおりなら協議は不要) |
| 登録免許税 | 非課税 | 原則、固定資産評価額の0.4% |
相続人申告登記は「入口」、本来の相続登記が「ゴール」とイメージすると分かりやすいでしょう。
手続きの流れと必要書類
相続人申告登記は、対象の不動産を管轄する法務局へ申し出て行います。おおまかな流れは次のとおりです。
- 書類の準備:申出書、申出人が相続人であることがわかる戸籍、申出人の住所を証する情報などを用意します(被相続人の出生から死亡までの戸籍一式や相続人全員分の戸籍、遺産分割協議書は原則不要)。
- 申出書の作成:法務局の様式に従って申出書を作成します。
- 法務局へ申出:不動産を管轄する法務局へ、書面またはオンラインで申し出ます。
- 職権による付記:登記官が職権で、申出人の氏名・住所などを登記に付記します。これで申請義務を履行したものとみなされます。
本来の相続登記に比べて必要書類が少なく、登録免許税も非課税のため、負担が軽いのが特徴です。書類の集め方や様式に不安がある場合は、相続手続きの一環としてサポートを受けられます。必要書類の全体像は、相続手続きの必要書類一覧もあわせてご覧ください。
注意点:最終的には本来の相続登記が必要
相続人申告登記でいちばん誤解されやすいのが、「これで相続登記が完了した」と思ってしまうことです。実際には、次の点に注意が必要です。
- 遺産分割がまとまり、その不動産を取得する相続人が決まった場合は、遺産分割の成立日から3年以内に、その内容に応じた本来の相続登記(所有権移転登記)が必要です。相続人申告登記をしていても、この義務は別に生じます。
- 相続人申告登記は各相続人が単独で申し出るもので、原則として申し出た人について義務が履行されます。ほかの相続人の義務まで当然に履行されるわけではありません(ただし、委任を受ければ、ほかの相続人の分も含めて代理で申し出ることは可能です)。
- 権利関係を公示しないため、売却・担保設定・次の世代への整理を考えると、最終的には本来の相続登記まで済ませる必要があります。
なお、本来の相続登記を済ませて相続した不動産を売却する場合は、譲渡所得などの税務も関わります(相続から一定期間内の売却には取得費加算の特例があります)。
▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):相続税の取得費加算の特例をわかりやすく徹底解説
「期限が迫っているが分割がまとまらない」ときのつなぎとして活用し、最終的な名義変更まで見据えて進めるのが安全です。
手続きは誰に頼める?
相続にまつわる手続きは、内容によって担当する専門家が分かれます。
- 行政書士:戸籍収集、相続人の整理、相続人間で合意した内容に基づく遺産分割協議書の作成、預貯金・自動車などの名義変更
- 司法書士:不動産の登記(相続人申告登記の代理、本来の相続登記)
- 税理士:相続税の試算・申告(相続税がかかりそうな場合)
登記の申請手続きの代理は司法書士の業務です。当法人では、相続人の確定(戸籍収集)や遺産分割協議書の作成までを行い、不動産の登記は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズと連携して、窓口ひとつでご案内します。専門家の選び方は、相続は誰に頼む?もご覧ください。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続人申告登記をすれば、もう相続登記はしなくてよいですか?
A. いいえ。相続人申告登記は申請義務を一時的に果たす制度であって、権利を公示する登記ではありません。後日、遺産分割によって不動産の取得者が確定したときは、その取得者が、分割の日から3年以内に名義変更(所有権移転登記)を申請する必要があります。最終的な登記まで済ませることを忘れないでください。
Q2. 相続人申告登記に費用はかかりますか?
A. 申出にかかる登録免許税は非課税です。ご自身で法務局に申し出る場合は、戸籍の取得費などの実費程度で済みます。司法書士に手続きを依頼する場合は別途報酬がかかります。なお、本来の相続登記には、原則として固定資産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。
Q3. 相続人全員で申し出る必要がありますか?
A. ありません。各相続人が単独で申し出ることができ、原則として申し出た人について申請義務が履行されます。ほかの相続人の義務まで当然には履行されませんが、委任を受ければ、ほかの相続人の分も含めて代理で申し出ることもできます。
Q4. 相続人申告登記は自分でできますか?誰に頼めますか?
A. ご自身で法務局に申し出ることもできます。登記に関する手続きの代理は司法書士の業務です。戸籍の収集や相続人の整理、遺産分割協議書の作成は行政書士が対応できますので、当法人では戸籍収集から、提携司法書士による登記まで連携してご案内します。
まとめ
相続人申告登記は、2024年4月に義務化された相続登記を、戸籍一式や遺産分割を待たずにとりあえず簡単に果たすための制度です(不動産登記法第76条の3)。登録免許税は非課税で、申出人が相続人であることが分かる戸籍等で、1人でも申し出られます。期限内に適切に申し出れば、相続登記の申請義務を履行したものとみなされ、過料のリスクを抑えられます。
ただし、相続人申告登記は権利の登記ではないため、これだけでは不動産を売却・担保にできず、遺産分割で不動産を取得する相続人が決まったら、その日から3年以内に本来の相続登記(名義変更)が必要です。「期限が迫っているが分割がまとまらない」ときのつなぎとして活用し、最終的な名義変更まで見据えて進めましょう。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、相続手続きのご相談に対応しています。戸籍収集や遺産分割協議書の作成は当法人が、不動産の登記は提携司法書士、相続税は税理士法人トゥモローズが連携して対応します。
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税務の観点もあわせてご確認ください
相続登記の期限(3年)とは別に、相続税の申告・納税には「相続開始を知った日の翌日から10か月」などの期限があります。手続きごとの期限の違いは、グループの税理士法人トゥモローズの解説記事もご参照ください(相続税の試算・申告は税理士法人トゥモローズが対応します)。
根拠法令・公的資料
- 不動産登記法第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請義務。所有権の取得を知った日から3年以内)
- 不動産登記法第76条の3(相続人である旨の申出=相続人申告登記。申出により申請義務を履行したものとみなす。遺産分割が成立したときは別途、所有権移転登記の申請義務がある)
- 不動産登記法第164条(申請義務違反の過料。10万円以下)
- 登録免許税法(相続人申告登記の申出は登録免許税が課されない)
- 司法書士法第3条(登記申請の代理は司法書士の業務)/行政書士法第1条の3・第1条の4(戸籍収集・書類作成・相談等)
