海外相続で使う英文遺産分割協議書の作り方|Deed of Distribution・海外金融機関提出用の実務
10秒でわかる この記事の要約
- 海外金融機関に相続手続きを申し立てる際、多くの機関で相続人全員の合意を英文で示す書類の提出が求められることがあります。実務ではDeed of Distribution / Deed of Family Arrangement / Agreement on Distribution of Estate等の名称で呼ばれます。
- 日本の遺産分割協議書(実印+印鑑証明書)をそのまま英訳しても、海外金融機関のフォーマット要件と合わないことが多く、英文専用書式で作成し直すのが実務の基本です。
- 日本法上の遺産分割協議書として作成する場合は共同相続人全員の合意・署名が原則ですが、海外金融機関手続ではExecutor・Administrator・Personal Representative・TOD/POD受取人・金融機関指定フォームにより、必要な署名者が異なる場合があります。まず提出先金融機関が誰の署名を求めているかを確認します。
- 日本法上の遺産分割協議書には厳格な定型書式はありませんが、海外提出用のDeed / Agreement / Consent Form等については、提出先金融機関の指定書式や現地法上の形式要件が問題になる場合があります。準拠法(governing law)条項の設計・現地法上の有効性は現地弁護士と個別確認が必要です。
海外金融機関に相続手続きを申し立てる際、多くの機関から「相続人全員の合意を示す英文書類を提出してください」と求められることがあります。日本の遺産分割協議書に慣れている方でも、海外金融機関の担当者が求めるフォーマットは異なり、そのまま英訳しても要件を満たさないケースが少なくありません。
本記事では、海外相続で使う英文遺産分割協議書の作り方を、日本の遺産分割協議書との違い・Deed of Distribution等の海外書式・記載必須項目・署名認証・翻訳・アポスティーユまで、行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。
なお、本記事は海外金融機関に提出する英文遺産分割協議書の一般的な実務を解説するもので、国・金融機関・時期により指定書式や要求される認証は大きく異なります。実際の書類作成は各金融機関の指示に従い、準拠法(governing law)の設計や現地法上の有効性は現地弁護士・現地専門家、税務判断は税理士と連携して進めます。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、海外相続で提出する英文遺産分割協議書の原案作成、戸籍英訳の手配、翻訳者宣言書・公証・アポスティーユの進行管理を全国オンラインで対応しています。
海外金融機関が英文遺産分割協議書を求める理由
海外金融機関が英文遺産分割協議書(または相当書類)を求める背景には、次の3つの理由があります。
理由1:相続人全員の合意を独立に確認するため
海外金融機関は、被相続人の資産を正当な相続人以外へ支払うリスクを強く警戒します。相続人全員が合意した内容を示す書類がなければ、一部相続人の申請だけで資産を送金することはできません。英文遺産分割協議書に相続人全員の署名があることで、「この分配案に全相続人が合意している」という事実を金融機関が独立に確認できます。
理由2:AML/CFT・KYCコンプライアンス上の要件
海外金融機関のマネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)の観点から、誰にいくら分配されるのか、その根拠となる合意はあるのかがコンプライアンス部門によって独立に検証されます。英文遺産分割協議書は、受取人・分配額・分配根拠を明確にする受取根拠書類として機能します。
理由3:プロベート手続や分配段階での提出
米国・英国・オーストラリア等のプロベート(検認)制度がある国では、Grant of Probate・Letters of Administration・Executor / Administratorの権限確認書類が中心となり、英文遺産分割協議書や分配同意書は、手続の内容・提出先の要件に応じて補足資料または分配段階の書類として求められる場合があります。書式の不備や署名認証の不足は、手続きの数か月単位の遅延を招くことがあります。
海外提出用書類の翻訳・公証・認証の全体像は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説」もあわせてご確認ください。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
Deed of Distribution / Deed of Family Arrangementの用語整理
海外相続の実務で使われる遺産分割関連の英文書式は、国・法域・金融機関ごとに名称と法的性質が異なります。主なものを整理します。
Deed of Distribution
- 遺産分配証書。プロベート手続きの中で、遺産管理人(Personal Representative)から相続人へ分配する内容を示す書式
- 米国・英国・オーストラリア等の英米法系の国で用いられる
- Deed(捺印証書)の形式を取ることがあるが、Deed形式には国・州・提出先ごとに署名・証人・delivery・Notary認証等の形式要件が定められている場合があり、単にタイトルを「Deed of Distribution」とするだけで現地法上の捺印証書として有効になるわけではない点に注意する
- Deed形式を使うか、Agreement形式にするかは、提出先金融機関の指定と現地弁護士の確認に従う
Deed of Family Arrangement
- 家族間の遺産分割合意証書
- プロベート手続きを経ずに家族内で合意した分配を示す場合に用いられる
- 英国・オーストラリアで使われることがある
Agreement on Distribution of Estate / Estate Distribution Agreement
- 遺産分配合意書
- より一般的・私文書的な合意書式
- Deedの形式を取らない場合に用いられる
Family Settlement Agreement
- 家族間和解合意書
- 相続人間の紛争解決や遺言と異なる分配を家族全員で合意する場合に用いられる
- 米国の一部の州で使われる書式
Consent to Distribution
- 分配同意書
- 個別の相続人が「この分配で異議なし」という同意を示す書式
- プロベート手続きの中で相続人全員から取得することがある
Renunciation / Disclaimer of Interest
- 相続放棄書(相続分の放棄書)
- 特定の相続人が「自分の相続分を放棄する」ことを示す書式
- 英米法上の相続放棄は日本の民法上の相続放棄と法的効果が異なる場合があるため、現地弁護士との連携が必須
実務上の使い分け
金融機関から指定書式が示されない場合、実務では次のように使い分けます。
- プロベート制度がある国の金融機関向け → Deed of Distribution
- プロベート制度がない・簡易手続きの国の金融機関向け → Agreement on Distribution of Estate
- 家族内で遺言と異なる分配を合意する場合 → Deed of Family Arrangement
ただし、名称の選定・法的効果の判断は準拠法(governing law)により異なるため、書式選定は必ず現地弁護士・現地専門家に確認します。
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平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
日本の遺産分割協議書との違い——そのまま英訳しない理由
日本の遺産分割協議書は、以下の書式で作成するのが一般的です。
日本の遺産分割協議書の特徴
- 相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付する
- 「相続」「分割」「取得する」等の日本語の相続用語を使用する
- 財産の記載は不動産の登記事項・預貯金の金融機関名・口座番号等を日本語で列挙する
- 記載事項の様式に法律上の細かい決まりはないが、実務上A4縦で作成される
- 作成日と相続人全員の署名捺印を末尾に置く
この日本式の遺産分割協議書を、そのまま英訳してもうまく機能しない理由は次のとおりです。
そのまま英訳しない理由1:実印・印鑑証明書という制度が海外で通用しない
海外金融機関には「印鑑証明書」という概念が存在しないため、実印を押しても署名の真正が証明できません。英文遺産分割協議書では、実印の代わりに手書き署名+Notary Public認証(または公証役場での認証)で署名の真正を証明します。
そのまま英訳しない理由2:相続用語が英米法の対応概念と一致しない
日本の「相続」「分割」「遺産」「取得」「特別受益」「寄与分」等の用語は、英米法の「inheritance / distribution / estate / vest / advancement / contribution」と厳密には一対一で対応しません。誤訳のまま提出すると、金融機関の法務担当者・現地弁護士に誤解を与える可能性があります。英文遺産分割協議書では、日本の用語を英訳する際に説明的な英文表現や括弧書きで元の日本語用語を並記することがあります。
そのまま英訳しない理由3:準拠法(governing law)条項の検討が必要な場合がある
国際的な遺産分割合意書では、必要に応じて準拠法条項を設ける場合があります。ただし、準拠法を日本法とするか、資産所在地法・プロベート地の法令に合わせるかは、現地法上の有効性や金融機関の受理可否に影響する法的判断です。準拠法条項を入れるかどうか、入れる場合の文言は、現地弁護士・現地専門家に確認して決定します。日本の遺産分割協議書には準拠法条項がないのが通常です。
海外金融機関向けの英文遺産分割協議書の設計
そのため、海外提出用の英文遺産分割協議書は日本の書式を英訳するのではなく、海外の慣行に合わせた新しい書類として再設計するのが実務です。日本国内の相続手続き用に作成した日本語遺産分割協議書は、日本の金融機関・法務局提出用として別に保持し、海外金融機関には英文専用書式を提出する二重化の構成を採ります。
英文遺産分割協議書の記載必須項目——実務標準の10項目
海外金融機関に提出する英文遺産分割協議書には、金融機関から専用フォームの指定が無い場合、次の10項目を目安に作成します。書式は自由ですが、A4縦で作成し、上部にタイトル、続いて被相続人情報、相続人情報、分配内容、署名欄の順に配置します。
ブロック1:表題・準拠法(必要に応じて)
- タイトル:Deed of Distribution / Agreement on Distribution of Estate 等(Deed形式・Agreement形式のいずれを使うかは現地弁護士確認)
- 準拠法条項(Governing Law):必要に応じて設ける。入れるかどうか・内容は現地弁護士に確認(法的判断を伴う)
ブロック2:被相続人(Deceased)情報
- 被相続人の氏名:Full Legal Name(戸籍上の英字表記・パスポート表記)
- 被相続人の生年月日・死亡年月日:DD Month YYYY形式
- 被相続人の国籍・最終住所・死亡地:Japanese、東京都〇〇区〇〇、Tokyo, Japan
ブロック3:相続人(Heirs / Beneficiaries)情報
- 相続人の氏名・続柄:Full Legal Name / Relationship(Spouse / Son / Daughter 等)
- 相続人の生年月日・国籍・現住所・パスポート番号:全員分
ブロック4:遺産の特定と分配内容
- 対象遺産(Assets):海外金融機関の口座名・口座番号・通貨・概算残高等を英文で特定
- 分配内容(Distribution):どの相続人にどの資産を分配するかを具体的に列挙
ブロック5:相続人全員の署名・宣誓
- 署名欄・宣誓文・日付・Notary Public認証欄:相続人全員が手書きで署名し、日付を明記。公証人認証欄を末尾に設置
記載上の実務ポイント
- 氏名の英字表記:パスポートと完全に一致させます。ミドルネームやスペースの有無、大文字小文字の違いも受理拒否の原因になります
- 署名者の範囲:日本法上の遺産分割協議書として使う場合は共同相続人全員の署名が原則。海外金融機関手続では、提出先の指定によりExecutor・Administrator・Personal Representative・TOD/POD受取人・金融機関指定フォームで足りる場合もあるため、誰の署名が必要かを事前確認する
- 分配内容の明確化:「相続人Aは口座Xを取得する」のように、対象口座と取得者を明示的に対応させます
- 日付の書式:欧米式(Month Day, Year)と日本式(Year/Month/Day)を混在させず、統一します
- バイリンガル書式:日本語と英文を並記するBilingual Agreement形式を採用する場合、正本言語・優先言語条項の設計は、日本側手続・海外提出先・現地弁護士の確認を踏まえて決定します
相続人全員の署名認証——公証役場・在外公館・現地Notary
英文遺産分割協議書に日本法上の遺産分割協議書として作成する場合は、共同相続人全員の署名認証が原則です(海外金融機関の指定によりExecutor等の署名で足りる場合もあります)。署名認証のルートは、相続人の居住地により3つに分かれます。
ルート1:日本国内在住の相続人 → 日本の公証役場
日本国内在住の相続人は、日本の公証役場で公証人認証を受けます。
- 公証役場に事前予約を取り、パスポートまたは運転免許証を持参して来所
- 公証人の面前で英文遺産分割協議書に署名する(面前署名)、または事前に署名した文書を持参して「自分の署名である」と認める(自認認証)
- 手数料は1通あたり11,500円(私署証書認証の手数料)が目安(制度改正や認証内容により変わり得るため、最新の公証役場案内で確認します)
- 公証人押印証明を経て、外務省アポスティーユまたは公印確認+領事認証へ進む
ルート2:海外在住の相続人(日本国籍) → 在外公館(日本大使館・総領事館)
海外在住の日本国籍の相続人は、居住地の日本大使館・総領事館で署名証明の発給を受けることができます。
- 日本大使館・総領事館に事前予約を取り、パスポートを持参して来所
- 領事の面前で英文遺産分割協議書に署名する
- 領事による署名証明が付与される。在外公館の署名証明は主に日本国内手続における印鑑証明書の代替として用いられる制度で、海外金融機関がNotary認証の代替として受理するかは提出先ごとに異なるため、事前確認が必要
- 詳細は、海外口座相続の委任状(POA)の作り方の記事もあわせてご確認ください
ルート3:海外在住の相続人(日本国籍でない場合や在外公館まで行けない場合) → 現地Notary Public
海外在住の相続人が日本国籍でない場合や、在外公館まで行けない場合は、現地Notary Publicで署名認証を受けます。
- 現地Notary Publicに事前予約を取り、パスポートまたは身分証を持参して来所
- Notary Publicの面前で英文遺産分割協議書に署名する
- 現地の認証形式に応じて、アポスティーユ(条約締約国)または領事認証(非締約国)を追加
相続人が世界各国に散らばっている場合の実務
相続人が日本・米国・シンガポール・オーストラリア等に分散している場合、各相続人がそれぞれの居住地で個別に署名認証を受け、認証済みの署名ページを持ち回りで集約する運用となることが多いです。この場合、全員が同一の書式に署名する必要があるため、各相続人には同じ書式のドラフトを事前に共有し、日付・署名箇所を明示したうえで認証を進めます。書式のバージョン管理を誤ると、金融機関から一括差し戻しを受けるため、ドラフト管理は行政書士・現地弁護士と連携して進めます。
翻訳・公証・アポスティーユの実務
英文遺産分割協議書を海外金融機関に提出する際の認証パッケージは、書類の性質(公文書か私文書か)によって認証ルートが分かれます。
英文遺産分割協議書本体(私文書)
- 相続人が作成・署名した私文書に該当
- 相続人本人が公証役場で公証人認証を受けます
- 公証人押印証明を経て、外務省アポスティーユまたは公印確認+領事認証へ進みます
戸籍謄本・除籍謄本(公文書)
- 市区町村長が発行する公文書に該当
- 外務省で直接アポスティーユを取得できる場合があります
- 詳細は、戸籍謄本・除籍謄本の英訳実務の記事もあわせてご確認ください
英文遺産分割協議書のバイリンガル併記の扱い
英文遺産分割協議書を日本語と英文で並記するBilingual Agreement形式にする場合、英文のみを認証するか、日英併記全体を認証するかは公証役場・提出先金融機関の指定で異なります。実務では、英文正本のみを認証パッケージに含めるのが金融機関側の理解を得やすいですが、日本国内の手続きにも使う場合は日英併記版で認証するケースもあります。
認証パッケージの標準構成
実務上、次の6要素を組み合わせて認証パッケージを作成します。
① 英文遺産分割協議書(相続人全員署名済み)
- 相続人全員が公証役場・在外公館・現地Notaryで署名認証を受ける
② 相続人全員の署名認証
- 日本国内在住の相続人は日本の公証役場、海外在住の日本国籍者は在外公館、日本国籍でない海外在住者は現地Notary
③ 戸籍謄本・除籍謄本(日本の公文書)+英訳+翻訳者宣言書
- 相続関係を証明する根拠書類として添付
- 詳細は戸籍英訳の記事を参照
④ 英文遺産分割協議書に対するアポスティーユまたは公印確認+領事認証
- 提出先国のアポスティーユ条約締約状況に応じてルート選択
⑤ 戸籍謄本原本に対するアポスティーユ
- 公文書として外務省が直接証明できる
⑥ 認証パッケージ全体の綴じ方
- 認証パッケージの綴じ方、契印・割印の要否は公証役場・外務省・提出先金融機関の指定に従います
- 英文遺産分割協議書と戸籍関連書類を一体で認証する場合は、公証役場での綴じ・認証方法を事前に確認
署名認証と宣誓認証の使い分け
通常の署名認証と宣誓認証は異なります。日本公証人連合会の説明では、宣誓認証は作成者本人が公証人の面前で宣誓する必要があり、代理人による嘱託は認められません。提出先金融機関が「sworn affidavit」「affidavit」を要求する場合は、通常の私署証書認証で足りるのか、宣誓認証まで必要なのかを、公証役場・提出先金融機関に事前確認します。
外務省は「証明(公印確認・アポスティーユ)」および「申請手続きガイド 1 証明できる書類」ページで、私文書は直接証明できず、公証役場で公証人認証を受けた上で公証人押印証明があれば外務省の証明を取得できる旨を説明しています(外務省ウェブサイトでご確認ください)。
英文遺産分割協議書が受理されないケースと対処
英文遺産分割協議書を海外金融機関に提出しても、担当者から追加対応を求められるケースがあります。典型的な差し戻しパターンと対処を整理します。
ケース1:金融機関の専用フォームがあり、汎用書式では代替できない
米国の大手銀行(Bank of America、Chase 等)、英国の大手銀行(Barclays、HSBC UK 等)、米国主要証券会社(Charles Schwab、Fidelity 等)は、相続手続きに関する独自のフォーム(Estate Distribution Form、Beneficiary Distribution Agreement 等)を用意しています。この場合、金融機関の専用フォームを取り寄せて、その書式に沿って再作成します。汎用の英文遺産分割協議書を提出しても「当行指定のフォームで再提出してください」と差し戻されるため、初動段階でEstate Services / Bereavement Team窓口に指定フォームの有無を確認します。
ケース2:相続人の署名認証が不足している
相続人の一部の署名認証が不足している(Notary Public認証がない、アポスティーユがない、公証済みでない等)場合、「Signature authentication is required for all beneficiaries」と差し戻されます。全相続人の署名認証を漏れなく完備してから送付するのが原則です。
ケース3:分配内容が不明確
「相続人が全員平等に分ける」等の抽象的な記載では、「Please specify the exact amount or percentage allocated to each beneficiary」と追加要求されます。対象口座と取得者を具体的に対応させて記載します。
ケース4:準拠法条項がない、または不整合
国際的な合意書では、準拠法条項が求められる場合があります。準拠法条項がない場合や、日本法と現地法のどちらが適用されるかが不明確な場合、現地弁護士から「Please clarify the governing law of this agreement」と指摘されます。書式作成前に現地弁護士と準拠法の設計を確認します。
ケース5:戸籍関連の根拠書類が不足
英文遺産分割協議書に相続人全員の署名があっても、「そもそも誰が相続人か」を証明する戸籍関連書類(戸籍謄本・除籍謄本の英訳+翻訳者宣言書)が不足していると、「Please provide the family register documents to verify the beneficiaries」と差し戻されます。認証パッケージには必ず戸籍関連書類を同梱します。
ケース6:相続人間の紛争が疑われる場合
遺産分割協議書の内容が特定の相続人に極端に有利な内容の場合や、相続人の一部から「この合意は無効である」旨のクレームが金融機関に届いた場合、金融機関は手続きを一時停止し、現地裁判所の判断を求めることがあります。この場合、行政書士の書類作成支援の範囲を超え、現地弁護士による紛争対応・訴訟対応が必要になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 英文遺産分割協議書は誰が作成できますか?
A. 書式に法定要件がないため、相続人本人・行政書士・翻訳者のいずれも作成可能です。ただし、準拠法(governing law)条項の設計、現地法上の有効性、書式の法的性質(Deed vs Agreement)の判断は現地弁護士・現地専門家の領域です。日本の行政書士は、書式の原案作成・戸籍英訳の手配・翻訳者宣言書・公証・アポスティーユまでの進行管理を一貫して支援できる立場です。海外金融機関との個別交渉や現地法判断は現地弁護士・現地専門家、税務判断は税理士と連携して進めます。
Q2. 英文遺産分割協議書の作成費用と所要期間はどれくらいですか?
A. 書式作成費用は、行政書士・翻訳者への依頼で5万円〜15万円台が目安です。相続人全員の署名認証、公証・アポスティーユの費用は別途発生します。相続人が世界各国に散らばっている場合は、各相続人の署名認証を持ち回りで集めるため、所要期間は2〜4か月と長めになる傾向があります。相続人全員が日本国内在住の場合は6〜10週間程度で完了できることが多いです。初動段階で相続人の居住地を確認し、認証ルートを設計するのが実務的です。
Q3. 日本の遺産分割協議書がある場合、英文版を追加で作成する必要はありますか?
A. 海外金融機関の指示によります。日本の遺産分割協議書(実印+印鑑証明書)を英訳+翻訳者宣言書+アポスティーユで認証する形で受理される金融機関もあれば、英文専用書式(Deed of Distribution等)での作成を求める金融機関もあります。実務では、日本国内の相続手続き用に日本語遺産分割協議書を作成し、海外金融機関向けには英文専用書式を並行して作成する二重化が効率的です。二重化する場合、日英で内容の齟齬がないよう、両方の書式を同時に設計します。
Q4. 相続人の1人が署名を拒否した場合、どうすればよいですか?
A. 英文遺産分割協議書は相続人全員の署名が原則として必須で、1人でも署名を拒否すると海外金融機関の相続手続きは進みません。この場合、日本国内であれば家庭裁判所の遺産分割調停・審判を経て強制的に分割方法を確定する手段がありますが、海外資産についてはさらに複雑で、現地の裁判所への申立てが必要になる場合があります。行政書士による書類作成支援の範囲を超え、紛争対応は弁護士(日本国内)・現地弁護士(現地法)と連携して進めます。まずは相続人間の任意の合意形成に向けた対話を優先するのが実務的です。
Q5. 作成した英文遺産分割協議書は複数の海外金融機関で使い回せますか?
A. 同じ相続案件で分配内容が変わらなければ、原則として複数の海外金融機関で流用可能な場合があります。ただし、金融機関ごとに専用フォーム・追加記載項目・認証パッケージの構成が異なるため、そのままではなく金融機関ごとに微修正が必要になることが多いです。アポスティーユ付き原本の取扱いも金融機関によって異なり、原本提出・原本返却不可を求める機関もあります。原本の返却可否・コピーで足りるかを事前に確認し、必要に応じて複数セットを最初から準備するのが安全です。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
海外相続で使う英文遺産分割協議書(Deed of Distribution / Deed of Family Arrangement / Agreement on Distribution of Estate等)は、海外金融機関の担当者・コンプライアンス部門・現地弁護士・プロベート裁判所が相続人全員の合意内容を独立に確認するための重要な合意書類です。日本の遺産分割協議書(実印+印鑑証明書)をそのまま英訳するのではなく、海外の慣行に合わせた英文専用書式で再設計するのが実務の基本です。
書式に法定要件はありませんが、金融機関の指定フォームがある場合はそれに従います。指定がない場合は、被相続人情報・相続人情報・遺産の特定・分配内容・準拠法条項・相続人全員の署名認証欄を含む標準10項目を目安に作成します。相続人全員の署名認証は、日本の公証役場・在外公館・現地Notaryのいずれかで受け、認証済みの署名ページを持ち回りで集約する運用となります。
英文遺産分割協議書は戸籍等の公文書、翻訳文、翻訳者宣言書、英文遺産分割協議書本体を分けて整理し、提出先の指定に応じて、公証人認証・公証人押印証明・外務省アポスティーユまたは公印確認+領事認証を組み合わせて認証パッケージを構成します。所要期間は署名認証から認証パッケージ完成まで6週間〜4か月が目安で、日本の行政書士は書式の原案作成・翻訳手配・進行管理の領域で相続人の負担軽減に貢献できます。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、海外相続で必要な英文遺産分割協議書(Deed of Distribution / Agreement on Distribution of Estate等)の原案作成、戸籍英訳の手配、翻訳者宣言書・公証・アポスティーユの進行管理を、全国オンラインで対応しています。アメリカ・英国・シンガポール・香港・オーストラリア等、主要国の金融機関実務に対応可能で、準拠法(governing law)条項の設計・現地法判断は現地弁護士、税務判断は税理士法人トゥモローズと連携します。
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根拠法令・公的資料
- 民法882条(相続の開始)
- 民法906条(遺産の分割の基準)
- 民法907条(遺産の分割の協議又は審判)
- 民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
- 民法909条(遺産の分割の効力)
- 戸籍法(戸籍謄本・除籍謄本の発行根拠)
- 公証人法(公証人による認証の根拠)
- 外国公文書の認証を不要とする条約(アポスティーユ条約、日本は1970年批准)
- 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
