Apple・Googleの死後設定|故人アカウントと無効化管理ツール
10秒でわかる この記事の要約
- Appleには故人アカウント管理連絡先、Googleにはアカウント無効化管理ツールがあります。どちらも生前に設定しておく機能です。
- この方式の要点は、パスワードを渡さずに済むことです。家族は本人になりすまさず、提供者が認めた立場でデータを受け取ります。
- ただし渡せる範囲には制限があります。Appleでは購入したコンテンツやキーチェーンのパスワード・パスキーは対象外です。
- Appleは申請時にアクセスキーが要ります。生前に相手へ渡しておかないと、指定した意味がなくなります。
- Googleは共有相手を10人まで指定でき、相手ごとに渡すデータの種類を変えられます。
1本目の記事で、パスワードを遺す方法の「方法1」として、公式の故人アカウント機能を挙げました。
今回は、その設定を具体的に見ていきます。
AppleとGoogleは、本人が亡くなった後にデータを引き継ぐ仕組みを、それぞれ用意しています。
どちらも、生前に設定しておくのが最も確実です。
ただし、設定がなければ一切申請できないわけではありません。
Appleには法的書類を提出して審査を受けるルートがあり、Googleにも個別の申出を受け付ける窓口があります。
いずれも審査制で、認められる範囲は限られます。だからこそ生前の設定を優先します。
本記事では、2つの機能で何が渡せて何が渡せないのか、設定でつまずきやすい点はどこかを、行政書士の実務目線で整理します。
生前設定がないと、データの取得は大幅に難しくなる
先に、設定しなかった場合の話をします。
スマートフォンの中には、家族写真も、やり取りしたメッセージも入っています。
しかし、それらは本人のアカウントに紐づいています。
家族であっても、当然に取り出せるわけではありません。
端末のロックが解除できなければ、そもそも中身に触れません。
仮に解除できたとしても、故人のIDで操作を続けるのは規約上の問題が残ります。
この点はパスワードの遺し方|エンディングノートに書いてはいけない理由で整理しました。
なお、私が相談を受ける中で多いのは、財産の話ではありません。
「親の写真だけでも取り出したい」という相談です。
ここで、どこに保存されていたかが効いてきます。
| 保存先 | 公式機能で取得できるか |
|---|---|
| iCloud・Googleフォトに同期済み | 設定と対象範囲に応じて取得できる |
| 端末の中だけに保存 | ロックを解除できなければ困難 |
| 他社のクラウド | そのサービスの死後手続きが必要 |
| 金融アプリ内の情報 | 公式機能では引き継げない |
つまり、この2つの機能はクラウドに上がっているデータのための仕組みです。
端末のロックを開ける機能ではありません。
Appleも、パスコードでロックされた端末は、消去しない限り解除の支援はできないと案内しています。
財産のためというより、思い出のための備えだと考えてください。
遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
Appleの「故人アカウント管理連絡先」
Appleは、自分の死後にApple Accountのデータへアクセスできる人を、生前に指定できます。
Appleはこれを「一番簡単で、かつ安全な方法」と案内しています。
渡せるデータと、渡せないデータがあります。
| 渡せる | 渡せない |
|---|---|
| 写真 | 購入した映画・音楽・ブック |
| メッセージ | サブスクリプション |
| メモ・ファイル | キーチェーンのお支払い情報 |
| デバイスのバックアップ | キーチェーンのパスワード・パスキー |
ここが重要です。
キーチェーンに保管されたパスワードは引き継げません。
つまり、この機能を設定しても、各サービスのログイン情報は渡りません。
口座の把握は別に用意する必要があります。
もう一点、見落とされやすい仕組みがあります。
申請するとき、指定された人は「アクセスキー」を提出します。
これは、本人が指定したときに生成されるものです。
生前に相手へ渡しておかないと、指定していても手続きに入れません。
渡し方は2つあります。
iMessageで送る方法では、相手が承諾すると、アクセスキーの控えが相手のApple Account設定へ自動保管されます。
控えをプリントして手渡す方法もあります。
なお、日本での申請書類には注意が必要です。
Appleは、日本では死亡証明書ではなくアカウント所有者の死亡の記載がある戸籍謄本が必要になる場合があると案内しています。
もう1点、複数指定するときの注意があります。
故人アカウント管理連絡先は複数名を指名できます。
ただしAppleは、故人アカウント管理連絡先は誰でも、データを完全に削除するなどの決断を下せるとしています。
全員の同意が要る仕組みではありません。
複数指定するなら、誰が何を保存するかを生前に話し合っておいてください。
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Googleの「アカウント無効化管理ツール」
Googleの仕組みは、少し考え方が違います。
死亡を条件にするのではなく、一定期間アカウントを使わなかったことを条件にします。
Googleは、利用があるかどうかを継続的に確認しています。
設定した期間、利用がなければ、あらかじめ指定した相手にデータが共有されます。
共有相手は10人まで指定できます。
しかも、相手ごとに渡すデータの種類を変えられます。
すべてを渡すことも、写真だけを渡すこともできます。
ただし、共有できない情報もあるとGoogleは案内しています。
なお、この方式には利点があります。
死亡を証明する書類が要りません。
ただし裏を返せば、Googleは死亡を判定しているわけではありません。
長期の入院や施設入所でも、利用がなければ作動し得ます。期間の設定は慎重に決めてください。
また、指定した相手の電話番号を登録します。
Googleは、信頼できる連絡先だけがデータをダウンロードできるようにするため、携帯電話番号で本人確認を行うと説明しています。
なお、設定しない場合にも影響があります。
Googleは、2年以上利用されていない個人用アカウントとそのデータを削除することがあると案内しています。
写真を残したいなら、共有の設定だけでなく、アカウントを使い続けているかも確認してください。
この設定は、相続人を決めるものではない
ここを取り違えると、備えの設計を誤ります。
公式設定で決まるのは、各社が認めた範囲でデータにアクセスできる人だけです。
指定された人が、次のようになるわけではありません。
| 公式設定でできること | 公式設定ではできないこと |
|---|---|
| 認められた範囲のデータを受け取る | 相続人や受遺者になる |
| アカウントの削除を申請する | ネット銀行・証券の財産を取得する |
| 写真やファイルを保存する | 他社サービスのIDとパスワードを引き継ぐ |
| — | 故人名義で送金・解約する |
つまり、データを受け取る人と、財産を取得する人は別です。
同じ人である必要もありません。
財産の取得者は、遺言や遺産分割、受取人の指定によって決まります。
公式設定は、遺言書の代わりにはなりません。
なお、SNSについては、追悼アカウントにするか削除するかを選べるものがあります。
ただし生前に指定できるか、家族が申請するかは、サービスごとに大きく異なります。
サービス別の扱いはデジタル遺品の生前整理|SNS・サブスクの解約準備リストで確認してください。
本記事の範囲では、どのSNSを使っていて、消したいのか残したいのかを書き出しておくところまでで十分です。
なお、換金できる残高や、規約上ほかの人へ引き継げるポイントがある場合は、相続税の申告でも見落とされやすい財産です。すべてのポイントが相続財産になるわけではないため、規約上の承継可否を確認してください。関連解説(税理士法人トゥモローズ)「相続税申告で漏れやすい財産ベスト10|税務調査で指摘されないための対策」もあわせてご確認ください。
アカウント名まで書いておけば、家族は申請先を探さずに済みます。
設定より、その後の見直しのほうが大事
設定そのものは複雑ではありません。
指定する相手と、渡すデータの範囲を先に決めておけば、短い時間で終わります。
問題は、設定した後に古くなることです。
次の3つは、年に一度は見直してください。
| 確認すること | 放置するとどうなるか |
|---|---|
| 指定した相手は今も適切か | 疎遠になった相手にデータが渡る |
| 相手の電話番号・連絡先は最新か | 通知が届かず手続きが進まない |
| アクセスキーは相手の手元にあるか | 指定していても申請できない |
特に3つ目です。
アクセスキーを本人のパソコンにだけ保存していると、意味がありません。
相手が持っていて初めて機能します。
なお、指定した相手が先に亡くなることもあります。
そのときに指定し直せるよう、見直す日を決めておいてください。
公式機能で足りない部分をどう埋めるか
ここまで見てきたとおり、公式機能には守備範囲があります。
写真やファイルは渡せますが、口座やパスワードは渡せません。
そのため、備えは3層に分けて考えるのが実務的です。
| 層 | やること | 法的な役割 |
|---|---|---|
| 1 | Apple・Googleの公式設定 | 対象データへのアクセス権限 |
| 2 | 口座・契約の一覧を作る | 財産と契約の発見 |
| 3 | 遺言・死後事務委任 | 財産の取得者、解約や削除の設計 |
1だけでは、財産にたどり着けません。
2だけでは、分け方が決まりません。
3つがそろって、はじめて家族が困らない状態になります。
2の作り方はネット銀行・ネット証券の一覧の作り方|通帳のない口座を遺す、3の進め方は遺言書のデジタル下書きを作る意味|法的効力・清書・2026年改正にまとめました。
なお、私見ですが、着手する順番は1からで構いません。
設定が30分で終わり、効果がはっきりしているためです。
手を動かすと、次の2と3が現実の課題として見えてきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 指定した相手に、生前から中身を見られてしまいませんか?
A. 見られません。いずれの機能も、本人が亡くなった後や、一定期間利用がなかった後に初めて作動します。なお、相手に伝わるかは異なります。AppleはiMessageで共有すればその時点で相手に伝わりますが、Googleは設定時には通知されず、指定した期間に達してから通知されます。生前にご自身から伝えておくほうが確実です。
Q2. 指定された側は、何をすればよいのですか?
A. Appleの場合は、アクセスキーと死亡を証する書類を添えて申請します。Googleの場合は、共有の通知が届いた後に案内に従って受け取ります。どちらも本人のパスワードでログインする手続きではありません。
Q3. 設定していない親が亡くなった場合、後から申請できますか?
A. 申請の窓口はあります。Appleは故人のApple Accountへのアクセスまたは削除を申請できる仕組みを用意しており、法的書類を提出して審査を受けます。通常は死亡を証する書類、場合によっては裁判所命令が必要です。ただし生前指定に比べて手続きは重く、認められる範囲も限られます。
Q4. 会社で使っているアカウントも同じように設定できますか?
A. 組織が管理しているアカウントは、管理者の設定と組織の規程が優先されます。個人用アカウントと同じ機能を使えるとは限りません。個人用と業務用は分けて考えてください。
遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
Appleの故人アカウント管理連絡先と、Googleのアカウント無効化管理ツール。
どちらも、生前に設定しておかなければ使えません。
渡せるのは写真・メッセージ・ファイルなどです。
購入したコンテンツや、キーチェーンのパスワード・パスキーは渡せません。
Appleはアクセスキーを相手に渡すところまでが設定です。
Googleは10人まで指定でき、相手ごとに渡すデータを変えられます。
設定は30分で終わります。そのうえで、口座の一覧と遺言書を用意してください。
この3つがそろって、家族が困らない状態になります。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、アカウントや口座の棚卸しから遺言書の作成まで、生前の備えを一体で設計しています。
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根拠法令・公的資料
- 民法第896条(相続の一般的効力)
- 不正アクセス行為の禁止等に関する法律第3条(不正アクセス行為の禁止)
- 各サービスの利用規約(アカウントの一身専属性・第三者への貸与禁止)
