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遺言書を作り直す方法|撤回・変更の手続きと古い遺言の扱い

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遺言書作成

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 遺言はいつでも、遺言の方式に従って全部または一部を撤回できる(民法第1022条)。撤回しない約束をしても無効(民法第1026条)。
  • 新旧の遺言の内容が抵触する部分は、後の遺言が優先する(民法第1023条)。部分的な変更を重ねると解釈争いの火種になるため、「過去の遺言をすべて撤回する」と明記した全部の書き直しが安全。
  • 自筆証書遺言は故意の破棄で撤回とみなされるが(民法第1024条)、公正証書遺言は原本が公証役場にあるため、手元の正本を破っても撤回にならない。
  • 結婚・離婚・相続人や受遺者の死亡・財産の大きな変動・おひとりさまの遺贈先変更などは、作り直しを検討するタイミング。

遺言の撤回とは、いったん作成した遺言の全部または一部を、遺言者がみずから無かったことにする行為です。 民法第1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定めており、遺言は一度作ったら終わりではなく、人生の変化に合わせて作り直すことが制度として予定されています

一方で、作り直し方を誤ると「古い遺言と新しい遺言のどちらが有効か」という争いを残します。本記事では、相続を専門に扱う行政書士法人トゥモローズが、遺言を安全に作り直す方法と古い遺言の扱いを解説します。なお、遺言の有効性をめぐる紛争への対応は弁護士の業務のため、提携弁護士と連携してご案内します。


遺言はいつでも撤回できる(民法第1022条・第1026条)

遺言の撤回には、2つの大原則があります。

  1. いつでも・何度でも撤回できる(民法第1022条)。理由は問われません。
  2. 撤回する権利は放棄できない(民法第1026条)。「この遺言は変更しない」と家族に誓約しても、その誓約に法的な拘束力はありません。

撤回は「遺言の方式に従って」行います。ここでいう方式は、自筆証書遺言・公正証書遺言などいずれかの方式を満たせばよく、前の遺言と同じ方式である必要はありません。公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも、法律上は可能です。


撤回・変更の主な方法

方法根拠ポイント
① 新しい遺言で撤回を明示する民法第1022条「遺言者は、過去に作成した遺言をすべて撤回する」と明記して全部を書き直す。最も確実
② 内容が抵触する新しい遺言を作る民法第1023条抵触する部分だけ後の遺言が優先。抵触しない部分は古い遺言が残るため、解釈争いの火種になりやすい
③ 遺言書を故意に破棄する民法第1024条自筆証書遺言にのみ実効性のある方法。破棄した部分は撤回とみなされる。遺贈の目的物を故意に破棄した場合も同様
④ 遺言後に内容と抵触する生前処分をする民法第1023条第2項遺贈すると書いた不動産を生前に売却するなど、遺言と抵触する生前行為があると、その抵触部分は撤回したものとみなされる

実務でおすすめできるのは①の「全部書き直し」です。②の抵触による一部撤回は、「どこまでが抵触か」の判断が相続発生後に争われやすく、③の破棄は紛失や偽造の疑いと区別がつきにくい場面があります。新しい遺言の冒頭で過去の遺言をすべて撤回し、財産の承継先を一から書き直す形にすれば、複数の遺言が併存する状態を避けられます。また、④のように、遺言を作り直さなくても、遺言後に遺言内容と抵触する生前処分をすると、その抵触部分は撤回したものとみなされます(民法第1023条第2項)。

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公正証書遺言を作り直すときの注意点

公正証書遺言には、他の方式と違う重要な特徴があります。原本が公証役場に保管されていることです。

このため、手元にある正本・謄本を破り捨てても、民法第1024条の「破棄による撤回」にはなりません。公正証書遺言の内容をやめたい・変えたい場合は、新しい遺言を作成して撤回する必要があります。

作り直しの方式は自由ですが、当法人では新しい公正証書遺言での作り直しをおすすめしています。自筆証書遺言で撤回すると、方式不備で撤回自体が無効になるリスクや、紛失・発見されないリスクが残るためです。公正証書で作り直せば、公証人の関与のもとで撤回の意思が明確に記録され、古い遺言との優劣をめぐる争いを防ぎやすくなります。

作り直しの際は、公証役場の手数料が新規作成と同様にあらためてかかります。3〜8万円程度に収まることもありますが、財産を取得する人の人数・財産価額・遺言加算・正本謄本代・出張作成の有無により変動し、8万円を超える場合もあります。なお、2025年10月1日以降、公正証書の作成手続きはデジタル化されています(日本公証人連合会公表)。署名方法・本人確認の方法は公証役場の案内に従ってください。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):【公正証書遺言費用の目安は?】公正証書遺言にかかる手数料を徹底解説!


保管制度に預けた自筆証書遺言の書き直し

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、用語の整理が重要です。

  • 保管申請の撤回: 法務局に預けるのをやめて遺言書の返還を受ける手続き。遺言自体の効力はなくなりません
  • 遺言の撤回: 民法第1022条以下にもとづき、遺言の内容を無かったことにする行為

「預けるのをやめた=遺言をやめた」ではない点に注意してください。内容を変えたい場合は、新しい遺言を作成したうえで、必要に応じて新しい遺言についてあらためて保管を申請します。古い遺言を返還してもらった場合は、破棄(民法第1024条)まで行えば撤回の意思が形に残ります。なお、保管制度は紛失・改ざん防止や検認不要というメリットがありますが、法務局が遺言内容の相談に応じたり、遺言の有効性を保証したりする制度ではありません。

▶ 関連解説(税理士法人トゥモローズ):自筆証書遺言の保管制度をわかりやすく徹底解説


撤回した遺言は元に戻らない(民法第1025条)

いったん撤回された遺言は、その撤回行為がさらに撤回されたり効力を失ったりしても、原則として効力を回復しません(民法第1025条。撤回行為が錯誤・詐欺・強迫による場合は例外)。

「前の内容に戻したくなった」場合は、古い遺言が復活することを期待するのではなく、同じ内容の遺言をあらためて作り直すのが確実です。遺言の歴史が複雑になるほど相続発生後の解釈は難しくなるため、見直しのたびに「過去の遺言をすべて撤回する」と明記し、最新の遺言だけで財産承継の全体像が分かる状態を保つことが、遺された方への何よりの配慮になります。


作り直しを検討すべきタイミング

次のような変化があったときは、遺言の見直しを検討してください。

  • 家族関係の変化: 結婚・離婚、子の誕生、相続人や受遺者が先に亡くなった
  • 財産の変化: 不動産の売却・購入、預貯金や有価証券の大きな変動、事業の開始・廃止
  • 承継先の気持ちの変化: お世話になった方や寄付先を変えたい(おひとりさまの遺贈先変更は、この種のご相談の中心です)
  • 制度・状況の変化: 受遺者に指定していた団体の解散、遺言執行者の高齢化

特に、受遺者が遺言者より先に亡くなった場合にその部分の遺贈が効力を失うこと(民法第994条)への備え(予備的な定め)がない遺言は、作り直しの優先度が高いといえます。当法人では、見直しのご相談の際に、現在の遺言の内容と財産・家族関係の変化を突き合わせて、書き直しの要否から整理しています。


遺言作成サポートの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

残された家族を守る、公正証書遺言。行政書士法人トゥモローズの遺言作成サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 一度作った遺言書は変更できますか?

A. できます。遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます(民法第1022条)。気持ちや財産状況が変わったら、新しい遺言を作り直すのが基本です。

Q2. 公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回できますか?

A. できます。撤回は「遺言の方式に従って」行えばよく、前の遺言と同じ方式である必要はありません。ただし、自筆証書遺言には方式不備や紛失のリスクがあるため、公正証書遺言を見直す場合は、新しい公正証書遺言で作り直す方法をおすすめしています。

Q3. 古い遺言書を破って捨てれば撤回したことになりますか?

A. 自筆証書遺言を遺言者本人が故意に破棄した場合、破棄した部分について撤回したものとみなされます(民法第1024条)。ただし公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため、手元の正本・謄本を破っても撤回にはなりません。公正証書遺言をやめたい場合は、新しい遺言で撤回する必要があります。

Q4. 新しい遺言を作ると、前の遺言はどうなりますか?

A. 前の遺言と後の遺言の内容が抵触する部分は、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条第1項)。抵触しない部分は前の遺言も有効に残るため、遺言が複数あると解釈をめぐる争いの火種になります。作り直すときは「過去の遺言をすべて撤回する」と明記して全部を書き直す方法が安全です。

Q5. 撤回した遺言を、やっぱり元に戻すことはできますか?

A. 撤回された遺言は、撤回行為が撤回・取消しされたり効力を失ったりしても、原則として効力を回復しません(民法第1025条)。元の内容に戻したい場合は、同じ内容の遺言をあらためて作り直す必要があります。

Q6. 「この遺言は二度と変更しない」という約束は有効ですか?

A. 無効です。遺言者は遺言を撤回する権利を放棄できません(民法第1026条)。家族と「変更しない」と約束していても、遺言者はいつでも遺言を作り直すことができます。

Q7. 法務局の保管制度に預けた自筆証書遺言を書き直したいときは?

A. 保管の申請を撤回して遺言書の返還を受けることができますが、保管申請の撤回は預かりをやめる手続きであり、遺言自体の撤回ではない点に注意が必要です。遺言の内容を変えたい場合は、新しい遺言を作成し、必要に応じてあらためて保管を申請します。

Q8. 遺言の作り直しにはどのくらい費用がかかりますか?

A. 公正証書遺言を作り直す場合、公証役場の手数料は新規作成と同様にあらためてかかります(3〜8万円程度に収まることもありますが、財産価額・受遺者数・遺言加算・出張の有無で8万円を超える場合もあります)。当法人の公正証書遺言作成サポート(220,000円〜・税込)は、作り直しの場合も文案整理・公証役場との調整・証人2名の手配まで一体でお引き受けします。


まとめ

遺言はいつでも・何度でも・方式に従って撤回できます(民法第1022条)。安全な作り直しの要点は、①「過去の遺言をすべて撤回する」と明記して全部を書き直す、②公正証書遺言は破棄では撤回できないことを理解する、③保管申請の撤回と遺言の撤回を混同しない、の3つです。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、遺言の見直し・作り直しをサポートしています。今の遺言が現状に合っているかの点検だけでも、初回無料相談をご利用ください。


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根拠法令・公的資料

  • 民法第994条(受遺者が遺言者より先に死亡した場合の遺贈の失効)
  • 民法第1022条(遺言の撤回)
  • 民法第1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等。第2項は生前処分による撤回みなし)
  • 民法第1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
  • 民法第1025条(撤回された遺言の効力)
  • 民法第1026条(遺言の撤回権の放棄の禁止)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。