土地保有特定会社と株価の評価方法を徹底解説
- 土地保有特定会社は原則として純資産価額方式で評価する(類似業種比準方式は使えない)
- 総資産に占める土地等の割合が大会社70%以上・中会社90%以上で該当
- 小会社も総資産価額基準によっては該当する場合がある
- 土地の含み益が大きい老舗企業は純資産価額評価で株価が跳ね上がりやすい
- 「土地保有特定会社外し」は評基通189で牽制あり。合理的な理由なく恣意的に操作すると否認リスク
社歴の長い非上場の同族会社で土地の保有率が高い場合、含み益を抱えていることが多く、貸借対照表上の簿価と時価に大きな乖離が生じていることがあります。
非上場の同族会社が発行する「取引相場のない株式」の評価は、通常は会社規模を勘案して類似業種比準価額などを基に行います。しかし、土地の保有率が高い会社は上場企業と比準できる状態にないため、「特定の評価会社」として原則として純資産価額方式で評価することになります。
この記事では、「特定の評価会社」のひとつである「土地保有特定会社」の判定基準、株価評価、外し方の注意点を解説します。
非上場株式の評価方法の全体像については「非上場会社の株価評価 最低限知っておきたい基礎知識!」をご参照ください。
土地保有特定会社とは
土地保有特定会社とは、会社の相続税評価による総資産価額に占める土地等の価額の割合が、会社規模区分ごとに一定の割合以上である会社をいいます。
判定基準(会社規模別)
| 会社規模 | 土地保有割合 | 判定 |
|---|---|---|
| 大会社 | 70%以上 | 土地保有特定会社に該当 |
| 中会社 | 90%以上 | 土地保有特定会社に該当 |
| 小会社(卸売業:20億円以上等の一定規模) | 70%以上 | 土地保有特定会社に該当 |
| 小会社(卸売業:7,000万円以上20億円未満等) | 90%以上 | 土地保有特定会社に該当 |
小会社の取扱い
土地保有特定会社は本来的には大会社と中会社を対象としていますが、資産規模が大きく土地保有割合の高い小会社(従業員数5人以下等)については、その資産価値に応じて評価することが合理的であることから、総資産価額基準に応じてそれぞれ保有割合により土地保有特定会社に該当するか判定します。
会社規模の判定方法については「非上場株式の相続税評価 会社規模はどうやって判定するの!?」で詳しく解説しています。
土地保有特定会社の株価評価
土地保有特定会社に該当する場合には、純資産価額方式により評価を行います。
なお、取得者およびその同族関係者の議決権割合の合計が50%以下の場合には、純資産価額の80%で評価できます(大会社であっても80%評価を行えます)。
純資産価額方式の詳しい計算方法は「純資産価額方式を使った自社株式の評価方法を徹底解説」をご参照ください。
なお、同族株主以外の少数株主が取得する場合には、原則として配当還元方式で評価します。配当還元方式については「非上場株式の相続税評価 配当還元方式とは!?」で解説しています。
注意点
① 判定の基礎となる土地の範囲
「土地保有特定会社の株式」に該当するかどうかの判定の基礎となる土地には、所有目的や所有期間のいかんにかかわらず、会社が有しているすべての土地等が含まれます。
したがって、以下も判定基礎に含まれます。
- 地上権
- 借地権
- 不動産販売会社などが保有する棚卸資産としての販売用の土地等
なお、販売用の土地等の場合の相続税評価額は、財産評価基本通達4-2(不動産のうちたな卸資産に該当するものの評価)の定めにより、同132(評価単位)および同133(たな卸商品等の評価)により評価します。
② 土地保有特定会社から外れることを検討する
土地の保有割合が高い会社は、自社株式の評価を純資産価額により行うため株価が高くなる傾向にあります。そこで、「土地保有特定会社」に該当する場合には、土地保有特定会社から外れる(いわゆる「土特外し」)方法を検討します。
具体的な手段としては、次のような方法が考えられます。
- 借入等による土地以外の資産購入
- 建物の建て替え
- 更地となっている遊休地などを第三者へ貸し付ける等の資産構成の変更
しかし、財産評価基本通達189では、この土地保有特定会社から外れることに対して牽制が入れられています。
【財産評価基本通達189】なお、評価会社が、次の「土地保有特定会社の株式」に該当する評価会社かどうかを判定する場合において、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が「土地保有特定会社の株式」に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする。
つまり、「合理的な理由なく恣意的に土地保有割合を操作することは認めませんよ」ということです。
土地保有特定会社による評価額への影響は大きいため節税効果も大きくなりますが、それだけに税務調査などで「合理的な理由がなく、その変動が土地保有特定会社に該当すると判定されることを免れるためのもの」と否認された場合のリスクも大きいことに注意が必要です。
③ 他の特定の評価会社との関係
土地保有特定会社以外にも、以下の「特定の評価会社」があります。
- 比準要素数1の会社:「非上場株式の相続税評価 「比準要素数1」の会社は株価が高くなる!?」
- 株式等保有特定会社:「株式等保有特定会社と株価の評価方法を徹底解説」
- 開業前・開業3年未満・休業中・清算中の会社:「開業前、開業3年未満、休業中、清算中の会社の株価は?」
複数の特定の評価会社に該当する場合もあるため、判定順序に注意が必要です。
よくある質問
Q1. 借地権は土地保有割合の判定に含まれますか?
含まれます。判定基礎となる土地等には、地上権や借地権も含まれます。所有目的や所有期間を問わず、会社が有しているすべての土地等が対象です。
Q2. 土地保有特定会社に該当すると、類似業種比準価額との併用方式も選択できませんか?
選択できません。土地保有特定会社は原則として純資産価額方式のみでの評価となります。比準要素数1の会社のように併用方式を選択することはできません。
Q3. 課税時期直前に土地を売却して土地保有特定会社から外すことは可能ですか?
合理的な理由(事業上の必要性等)があれば可能ですが、課税時期前に合理的な理由なく資産構成を変動させた場合、財産評価基本通達189により「変動はなかったもの」として判定されます。事業計画の変更など、客観的に説明できる理由が必要です。
Q4. 棚卸資産としての販売用土地も判定に含まれますか?
含まれます。不動産販売会社が保有する販売用の土地等も判定基礎に含まれます。ただし、評価は評基通4-2・132・133により棚卸資産として評価します。
まとめ
土地保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式のみでの評価となり、含み益の大きい土地を持つ会社では株価が大幅に高くなります。「土特外し」の検討は可能ですが、恣意的な操作は評基通189により否認されるリスクがあります。
非上場株式の評価は専門的な判断が多く、特定の評価会社の該当判定や外し方の検討を誤ると、相続税・贈与税に大きな影響が生じます。
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根拠法令・通達
- 財産評価基本通達189(特定の評価会社の株式)
- 財産評価基本通達189-4(土地保有特定会社の株式の評価)
- 財産評価基本通達185(純資産価額の計算)
- 財産評価基本通達4-2(不動産のうちたな卸資産に該当するものの評価)
- 財産評価基本通達132(評価単位)
- 財産評価基本通達133(たな卸商品等の評価)
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