役員退職金を税務署から否認された場合の課税関係を徹底解説

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

役員退職金を支給した場合に後日税務署から不相当に高額であると否認されるケースがあります。
不相当に高額であると認定された場合にはその部分は法人税計算上損金不算入となります。

この損金不算入となった役員退職金が法人税以外の所得税、贈与税、相続税にどのような影響を及ぼすのかを検討してみたいと思います。
私見の部分が多くあるため頭の体操程度にご覧いただけましたら幸甚です。

死亡退職金の相続税の取り扱いの詳しい解説は、死亡退職金に相続税がかかる? 遺産分割の対象? わかりやすく徹底解説!をご参照ください。

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1.生前の役員退職金

事業承継において生前に役員退職金を支給して株価を引き下げてその引き下げ後の株式を後継者に贈与するという手法を採用するケースが多いです。

生前の役員退職金が過大であると認定された場合の課税関係を各税目ごとに確認していきましょう。

(1)法人税

支給した役員退職金が不相当に高額だと認定された場合にはその高額な部分は法人税計算上損金不算入となります。

(2)所得税

法人税上損金不算入とされた役員退職金についても所得税上は退職所得であることには変わりはないため所得税の課税関係には影響ありません。

ただし、実態として退職の事実が認められないなどの理由により役員退職金の全額が退職所得でないと認定された場合には、その支給額は役員賞与になります。
役員賞与とされた場合には、税負担が優遇されている退職所得ではなく通常の総合課税の対象となる給与所得となることから所得税が別途課税されることとなります。

(3)源泉所得税

法人税上損金不算入とされた役員退職金については上記(2)の所得税の取扱いと同様であるため源泉所得税の課税関係に変更はありません。

これに対し、上記(2)同様に役員退職金の全額が認められなかった場合には、役員賞与として源泉所得税を徴収、納付する必要が生じるため別途源泉所得税及び不納付加算税を納める必要が生じます。

(4)贈与税

役員退職金を支給して株価を下げたあとに後継者に株式を贈与したとします。
その後役員退職金の一部が否認された場合には贈与税に影響を及ぼすのでしょうか?

答えは
影響を及ぼします。

非上場株式の株価が修正されるためです。
非上場株式は類似業種比準価額と純資産価額があります。
純資産価額は役員退職金が否認されたとしても変更はありません。

これに対し、類似業種比準価額については、利益金額が法人税法上の課税所得をベースとしていることから損金不算入とされた役員退職金がある場合には金額が修正されるのです。
なお、役員退職金が非経常的な利益と相殺されているときは否認された影響が少なくなるケースもあり得ます。
ちなみに、類似業種比準価額の他の要素のうち配当金額には影響ありません。
最後の要素である純資産価額は一見影響ありそうですが、純資産価額についても影響はないのです。過大役員退職金は別表4の社外流出項目であり別表5(1)にインパクト無いためです。

類似業種比準価額の詳しい解説は、非上場株式の評価 類似業種比準価額方式 徹底解説!をご参照ください。
純資産価額の詳しい解説は、純資産価額方式を使った自社株式の評価方法を徹底解説をご参照ください。

2.死亡役員退職金

死亡退職金の場合には全額を退職金ではないと否認されることはほぼ考えられないでしょう。
したがって、税務署から不相当に高額であると否認された場合についてのみ検討していきます。

(1)法人税

支給した役員退職金が不相当に高額だと認定された場合にはその高額な部分は法人税計算上損金不算入となります。

(2)相続税

相続税では死亡退職金の論点と非上場株式の論点の2つがあります。

①死亡退職金(みなし相続財産)

法人税上損金不算入とされた部分の相続税上の解釈には下記の2つがあります。

ア 死亡退職金(みなし相続財産)に該当しないとする解釈
イ 死亡退職金(みなし相続財産)に該当するという解釈

ア 死亡退職金(みなし相続財産)に該当しないとする解釈

下記通達の逐条解説に相続税上の死亡退職金の範囲には法人税上損金不算入とされた役員退職金は含まれないという趣旨の解説があります。

相続税法基本通達3-19

被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける金品が退職手当金等に該当するかどうかは、当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合においてはこれにより、その他の場合においては当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定するものとする。

このように解釈された場合には死亡退職金の非課税枠(500万円✕法定相続人の数)の適用はできません。

なお、この逐条解説を根拠にして損金不算入部分の役員退職金は下記のいずれかに該当すると考えられています。

□会社に対する未収金として本来の相続財産
□会社から相続人に対する贈与

後者に該当した場合には下記の(3)所得税の課税も考えないといけません。

イ 死亡退職金(みなし相続財産)に該当するという解釈

法人税上損金不算入となったとしても相続税上の死亡退職金であることには変わりなくみなし相続財産として認識するという考え方です。

このように解釈された場合には、法人税上損金不算入となった部分も死亡退職金の非課税枠(500万円✕法定相続人の数)の適用が可能です。

私の私見では、法人税上損金不算入となったとしても相続税上の死亡退職金でないと判断されるケースは相当レアケースだと思うので実務上は上記イにて整理すれば問題ないと考えてます。

②非上場株式

ア 類似業種比準価額

法人税上損金不算入となった役員退職金が存在したとしても類似業種比準価額には影響ありません。
生前の役員退職金のときには影響あったのになぜ?と思われたかも知れません。

その理由は、類似業種比準価額は前事業年度以前の事業年度の数値を使うためです。

死亡退職金を支給する事業年度は相続開始日以降の事業年度であるため相続開始日の前事業年度である可能性がないためです。

イ 純資産価額

死亡退職金は純資産価額の負債の部に計上することができます。

それでは、法人税上損金不算入となった死亡退職金はどうでしょうか?
ここからは個人的な私見となりますが、下記のように整理しています。

□死亡退職金(みなし相続財産)に該当しないとされ会社に対する未収金として本来の相続財産を構成した場合
 ⇒ 負債の部に未払金として計上可能
□死亡退職金(みなし相続財産)に該当しないとされ会社から相続人に対する贈与と認定された場合
 ⇒ 負債の部に計上不可
□みなし相続財産に該当する場合
 ⇒ 負債の部に死亡退職金として計上可能

(3)所得税

上記(2)により、法人税上損金不算入とされた部分について死亡退職金(みなし相続財産)に該当しないとされ、かつ、その金額が会社から相続人に対する贈与と認定された場合には、相続人に下記所得税の課税が発生します。

□相続人が会社の役員や従業員の場合:給与所得課税
□相続人が会社とは関係がない場合:一時所得課税

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