相続税の”タワマン節税” その行方は!?

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この記事の執筆者:大塚 英司

埼玉県所沢市出身、東日本税理士法人、EY 税理士法人を経て、税理士法人トゥモローズ代表社員就任。相続に関する案件は、最新情報を駆使しながらクライアント目線を貫き徹底的な最適化を実現します。

タワマン節税

みなさん、こんにちは★
税理士の大塚です。

今回のニュースを斬るは、行き過ぎた節税として問題とされているタワーマンションを使った節税、通称“タワマン節税”についてみていきたいと思います。

そもそも“タワマン節税”って何なの?

 
“タワマン節税”とは、高層マンションの「実際の購入価額」と「税金上の評価額」との差額を利用することで相続税を安くしようとする節税の方法です。
例えば、あるタワーマンションは、市場で購入したら1億円ですが、その購入者が亡くなった場合の「税金上の評価額(相続税評価額)」は4,000万円になるとします。単に現金1億円のお金を持ってお亡くなりになった場合には、その1億円に対して相続税がそのまま課税されますが、これに比べてその現金を使って1億円のタワーマンションを購入した場合には、1億円-4,000万円=6,000万円もその評価額を抑えることができてしまいます。相続税の最高税率は、55%ですので最大で6,000万円×55%=3,300万円もの相続税が節税できることとなります。
この市場価格と相続税評価額との乖離を利用した節税方法が、いわゆる「タワマン節税」といわれるものです。

タワーマンションの相続税評価額とは?

 
では、タワーマンションの相続税評価額は、どの様に算出するのかを簡単に説明します。
マンションは一見その建物だけを持っていると思われている方もいるかも知れませんが、実は建物の所有だけではなく、敷地(敷地権)についても同時に所有をしています。
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●「敷地(敷地権)の価額」は、基本的には、路線価にマンション全体の土地面積を乗じた1棟全体の評価額を算出し、その全体の評価額に各部屋の持分割合を掛けて算出します。
マンションは高層になれば全体の戸数も増えますので、高層であればあるほど1戸当たりの持分割合は小さくなり、結果的に1戸当たりの相続税評価額も小さくなります。
ちなみに、路線価とは、国税庁が毎年7月に発表している「その土地が面している道路に付された価額」のことです。よくニュースで『今年の一番高い土地は銀座四丁目でした』といわれていますが、確かに銀座の路線価は驚くほど高く、ハガキ1枚分の土地で40万円くらいするようです。
●「区分所有建物の価額」は、建物の固定資産税評価額を基に算出しますが、マンションの場合には、1棟全体の固定遺産税評価額を基にして各戸の専有面積に応じて按分をして1戸当たりの価額を算出します。

ここで注目すべきなのは、マンション1棟全体の評価額を各戸の専有面積の割合で按分した金額が、1戸当たりの評価額となる点です。
一般的にタワーマンションの市場価格は高層階の部屋であるほど高くなりますが、上述の評価方法によると、単に床面積や持分で按分しているだけであり、市場価格に影響を与える高層階の眺望などの要素は全く考慮されていません。つまり、2階と50階でも床面積が同じであれば評価は同額となるのです。
その結果、一般的に市場価格が高い高層階ほど相続税評価額との乖離が生じやすく、相続税の圧縮という節税につながりやすくなっています。

ニュースの論点

 
数日前の菅官房長官の会見では、「課税の適正化の観点から実際の取引価格を踏まえた固定資産税の按分方法を検討している。今後の税制改正で検討する」としていました。
このことから、平成29年度の税制改正で固定資産税の見直しが検討されることは明白です。
しかし、ここではあくまで固定資産税についての見直しであり、「固定資産税評価額」については変わらないようです。
タワーマンションの固定資産税は、①1棟全体の「固定資産税評価額」を算出した上で、②その「固定資産税評価額」に税率を掛けるとこで1棟全体の固定遺産税額を計算し、③そこから各戸の専有面積に応じて按分し課税が行われています。
今回の検討では、①1棟全体の「固定資産税評価額」について検討は行われず、③固定資産税の按分の際にタワーマンションの階数などに応じた補正を設けるかが検討されているようです。
相続税評価額は、上述のとおり「固定資産税評価額」を基に算出しますので、今回の検討では「タワマン節税」そのものを封じるというよりも、まずはけん制を行うという意味合いの方が強いように感じます。

節税封じに躍起になっている国税

 
ここ最近の国税のスタンスは、「行き過ぎた節税については認めないよ」というスタンスになってきているようです。パナマ文書をはじめ、キーエンス創業家に対する課税など、形式的には法令や通達などに沿った処理を行っていたとしても、それが過度な節税目的であったり、社会情勢など著しい変化に対応できていない場合、経済的合理性が見受けられないような場合には、行き過ぎた節税として国税は見過ごしてはくれないのです。
実際に、“タワマン節税”を行った相続税申告についても、認められなった事例もあります。

まとめ

 
市場価格と相続税評価額との乖離を利用した“タワマン節税”の効果は大きいものがあります。しかし、一定の富裕層にだけ有効な節税策として、これを放置すると、一般に不公平感が広がり税への信頼感が失わる恐れがあります。
平成29年の税制改正による固定資産税の改正予定を足掛かりとして、“タワマン節税”への課税強化が行われることは間違いなさそうですが、マンションの階数という要素をどの様に「固定資産税評価額」に反映させるのか、また、眺望以外の日当たりや角部屋といったその他の要素については反映されないのかなど、課税強化への道のりは、厳しいものがあります。

(税理士 大塚)

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