事業承継税制 納税猶予の打ち切り事由(取消事由)一覧(相続税編)
本記事は、平成30年税制改正前の情報ですのでご留意ください。
みなさんこんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。
事業承継税制は一定の要件を満たした場合に相続税等の納税を猶予してくれる制度です。
非課税となるのではなくあくまで猶予なのです。
したがって、一定の事由に該当した場合には、一括で猶予税額を納税しないといけません。
今回は、納税猶予の取り消される事項(確定事由)について網羅的に解説します。
本題に入る前に、重要なキーワードである『経営承継期間』について簡単に解説します。
『経営承継期間』とは、
「相続税の申告書の提出期限の翌日から5年を経過する日」又は、
「後継者の死亡の日の前日」のいずれか早い日までの期間をいいます。
基本的には、相続税の申告期限から5年間と覚えていただければいいと思います。
それでは、本題に入りたいと思います。
確定事由は多岐にわたりますので重要性の高い部分に絞って列挙します。
目次
経営承継期間内の取消し事由
① 後継者が代表権を有しないこととなった場合
納税猶予を受けたのにもかかわらずその後継者が社長を辞めてしまっては本末転倒です。
このような場合には猶予された相続税を一括で納付しなければなりません。
ただし、代表権を有しないこととなったことにつき、その後継者が障害者になった場合など一定の理由がある場合には確定事由には該当しません。
② 従業員数が80%未満となった場合
事業承継税制の立法趣旨の一つに中小企業の雇用の確保というものがあります。すなわち、猶予を受けるからには一定期間、一定割合の雇用はキープしてねという制約があるのです。
この確定事由が事業承継税制の適用を躊躇させる一番の要因と言われています。
現在のこの確定事由は、5年間の平均値で従業員数が80%未満となっていないかを判定することができますが、導入当初は毎年の基準日で80%未満かどうかの判定を強いられていました。改正により要件が緩和されたということです。また、平成29年度税制改正により、小規模事業者にとって有利な改正も実現しました。
この改正前は、従業員5人未満の小規模事業者の場合には一人でも従業員が減った場合には確定事由に該当し一括納付を強いられることとなっていました。今回の改正により1人未満の端数が切り上げられることとなりましたので従業員が1人減ったとしても大丈夫になりました。
さらに、平成30年度税制改正により、事業承継税制の特例の適用であれば、一定の書面を都道府県知事に提出すれば納税猶予が継続されることとなりました。この改正は非常に重要な改正となります。
③ 後継者及び同族関係者の議決権割合が50%以下
後継者やその親族等の同族関係者の議決権割合が50%以下となった場合には猶予が取り消されることとなります。後継者が支配を継続して経営をしていく必要があるということです。
④ 後継者が筆頭株主でなくなった場合
後継者が同族関係者内で筆頭株主でなくなった場合には猶予が取り消されることとなります。1位が複数いて1位タイの場合には大丈夫です。
⑤ 非上場株式を譲渡等した場合
後継者が猶予の対象となっている非上場株式を譲渡、贈与、合併等による消滅等した場合には猶予が取り消されることとなります。
⑥ 議決権制限株式に変更した場合
後継者が取得した株式を議決権制限株式に変更した場合には猶予が取り消されることとなります。
⑦ 拒否権付株式(黄金株)を後継者以外が保有した場合
拒否権付株式(黄金株)を後継者以外が取得することとなった場合には猶予が取り消されることとなります。後継者の支配力に影響を与えるような種類株式は要注意です。
⑧ 解散した場合
納税猶予の対象となった会社が解散(合併による解散は除きます。)した場合には、当然のこととして猶予が取り消されることとなります。
⑨ 減資等をした場合
納税猶予の対象となった会社が減資や準備金の額を減少した場合には、猶予が取り消されることとなります。実務上、減資は珍しいことではないので要注意です。
⑩ 組織変更した場合
納税猶予の対象となった会社が組織変更(株式会社を合同会社にするなど)した場合には、猶予が取り消されることとなります。
⑪ その他の確定事由
納税猶予の対象となった会社が資産管理会社に該当することとなった場合、上場した場合、風俗営業会社になった場合、売上がゼロになった場合(すなわち、認定承継会社でなくなった場合)にも納税猶予が取り消されることとなります。
経営承継期間経過後の取消し事由
経営承継期間経過後に上記1①から⑦の事由(⑤については一部取消し)が生じたとしても納税猶予は取り消されません。
それ以外の取消し事由については、上記1とほぼ同様です。
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