法令解釈、条文の読み方をわかりやすく徹底解説!

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税務一般

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

税理士は税法の専門家で税法は各種ある法令の中でも難解な法令です。
その難解な法令を理解するためには法令解釈を適切にできなければなりません。

「税理士よ法律家たれ」と松沢智先生が仰っていました。
税理士は納税者と国税の橋渡し役であり、どちらに偏ることもなく独立した公正な立場で適切に税法を解釈しなければなりません。

税法を適切に解釈するために最低限知っておかなければならない基本があります。
今回は法令解釈についてわかりやすく解説します。

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法令解釈の前に知っておくべき基本

法令とは?

法令とは、法律(国会で制定した法規範)や命令(行政で制定した法規範)をいいます。
例えば、相続税で考えると

法律:相続税法(国会で制定)
命令:相続税法施行令(政令⇒内閣が制定)、相続税法施行規則(省令⇒財務大臣が制定)

という感じです。

上記でもわかるように国民に選出された国会議員によって成立するものは法律だけです。これに対し命令は、各大臣が閣議で賛成すれば成立してしまうのです。したがって、国民に義務を課したり、権利を制限する規定は法律でしかできません。
ただし、すべての事項を法律に記載すると明瞭性等が失われるため命令に細かい規定を委任することはあります。

通達は法令か?

相続税実務で欠かせないのが、相続税法基本通達、財産評価基本通達、租税特別措置法通達等の法令解釈通達という規定です。
これら通達は法令ではなく、国税庁が下部組織である税務署に対して「法令をこのように解釈してください。」という解説文のようなものです。
したがって、通達は国税組織内部のみでまかり通るお達しであるため、国民は通達に拘束されることはありませんし、裁判で通達を根拠に判決が出されることもありません。
しかし、実務上は税理士も納税者もこの通達により法令を解釈したり、意思決定をしたりします。
ただし、通達はあくまで通達であって税理士としては法令以上に疑いの目を持って通達を読むようにしなければなりません。

法令解釈の基本的態度

法令解釈には次項で本格的に述べるように文理解釈と論理解釈がありますが、その解釈の結果に下記2つが達成されているかを確認しなければなりません。

「正義と公平の観念への適合性」
「普遍的な妥当性」

解釈の結果、上記2つが達成できていない場合にはその解釈は間違えてます。
これを肝に銘じて法令解釈をしなければならないのです。

法令解釈で知っておくべき最低限のルール

法令解釈の詳細解説に入る前に法令解釈する上で最低限知っておくルールがあります。
いくつか重要なルールはありますが、最低限知っておくべきルールは下記の通りです。

①条文に規定されていない原理原則
②強行規定と任意規定
③遡及効と将来効

①条文に規定されていない原理原則

各法律には条文に規定されていない原理原則があります。「〇〇の原則」と言われたり、「◯◯主義」と言われたりもします。
このような条文に規定されていない原理原則を学ぶのが法学を学ぶことなのでしょう。
主な法律の原理原則は下記の通りです。

憲法:法の支配
民法:私的自治の原則、契約自由の原則
刑法:罪刑法定主義

②強行規定と任意規定

条文には強行規定と任意規定があります。
強行規定とは、当事者が合意しても排除できない規定のことをいいます。
任意規定とは、当事者の合意で排除できる規定のことをいいます。
強行規定は法律の定めが優先され、任意規定は当事者の合意が優先するということです。
強行規定の具体例としては、借地借家法における土地賃貸借の契約期間でしょう。当事者が5年と契約したとしても借地借家法で定める30年が優先されます。
任意規定の具体例としては、民法の相続割合でしょう。民法では配偶者と子が相続人の場合における配偶者の相続割合を1/2と定めていますが、当事者の合意で配偶者が全部相続しても大丈夫なのです。

③遡及効と将来効

その法律がいつから効力を生じるかというのは条文解釈をする上でとても重要な問題です。
遡及効とは、法律の効力が行為当時に遡ることをいいます。
将来効とは、将来に向かって法律の効力が生じることをいいます。

遡及効の例としては、民法の取得時効がわかりやすいでしょう。
20年間他人の土地を専有し続けた場合において、取得時効が認められたときは、所有権が発生したのは認められたときではなく、その土地を専有し始めたときに遡ります。

法令解釈の種類

法令解釈には下記のようにいくつかの種類、方法があります。
まずは法令解釈の種類の全体像を確認してください。

1. 法規的解釈
(1) 定義規定
(2) みなす規定
(3) 目的規定
(4) 趣旨規定
(5) 解釈規定
2. 学理的解釈
(1) 文理解釈
(2) 論理解釈
  ① 拡張解釈
  ② 縮小解釈
  ③ 変更解釈
  ④ 反対解釈
  ⑤ 類推解釈
  ⑥ もちろん解釈

上記の解釈方法の詳細について下記に解説していきます。

1. 法規的解釈

法規的解釈とは法令の中で用語等の解釈を定める方法です。
法令そのものの中で解釈をしてくれているので法令解釈の中でも最も明確な解釈方法です。
法規的解釈にもいくつかの種類があるのでその種類ごとに解説していきます。

(1) 定義規定

定義規定は主に2つのやり方があります。
一つ目は、下記の所得税法第2条の様に定義の条項を設ける方法です。税法だと第2条に定義条項が設けられていることが多いです。

所得税法第2条(定義)

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国内 この法律の施行地をいう。
二 国外 この法律の施行地外の地域をいう。
三 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。
以下省略

二つ目は、個々の条文の中のカッコ書き等で定義する方法です。
例えば、相続税法第15条第1項の「・・・三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。」のカッコ書きの(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)は定義規定の一つです。

(2) みなす規定

みなす規定とは、「~は~とみなす。」と規定して本来の用語の意味ではない解釈を強制的にさせる方法です。
例えば、下記の相続税法第3条です。

相続税法第3条

第三条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす
以下省略

生命保険や死亡退職金は本来の相続財産ではないですが、相続税法上においては相続財産とみなして相続税を課税します。
このようなみなし規定は税法上に多く見られますが法規的解釈の一つなのです。

(3) 目的規定

目的規定はその法律が達成しようとしている目的を規定したもので第1条に規定されることがほとんどです。
条文のタイトルも(目的)となっています。
例えば、下記の国税通則法第1条です。

国税通則法第1条

第一条 この法律は、国税についての基本的な事項及び共通的な事項を定め、税法の体系的な構成を整備し、かつ、国税に関する法律関係を明確にするとともに、税務行政の公正な運営を図り、もつて国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。

(4) 趣旨規定

趣旨規定は、その法律の内容を要約して定めたものです。こちらも上記(3)の目的規定と同様に第1条で規定されることがほとんどです。
目的規定同様、条文のタイトルが(趣旨)となります。
目的規定と趣旨規定の違いは目的規定のほうが解釈の指針としての効能が高い点です。
趣旨規定の具体例は、相続税法第1条です。

相続税法第1条

第一条 この法律は、相続税及び贈与税について、納税義務者、課税財産の範囲、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。

(5) 解釈規定

解釈規定とは、その法律の全部又は一部についての解釈の方向又は指針を示す規定であって、解釈の仕方が問題となるようなときに設けられます。
解釈規定の最たるものは民法第2条です。

民法第2条

第二条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。

2. 学理的解釈

学理的解釈とは学理、すなわち、学問上の研究、努力によって各読み手が法令の規定の意味を判断し、その解釈を行うことをいいます。上記1の法規的解釈は立法者が法令の中で解釈を断定的に決めてしまうのでその解釈をそのまま受け入れるしかありませんが、学理的解釈については読み手の状況や立場によって解釈が異なることもあり、また様々な解釈が想定されます。
以下にそれぞれの解釈について詳細を確認していきましょう。

(1) 文理解釈

文理解釈とは、法令の文言、すなわち、文字や文章の意味に主眼を置いて法令を解釈する方法です。
文理解釈において留意すべき主な事項は下記の3つです。

① 法令の文字や用語は通常使われる意味で解釈する

法令では様々な文字・用語が出てきますが、法令の中で定義が規定されているような専門用語を除き法令で登場する文字・用語は、世間一般で理解されているような意味で読むのが原則です。
なお、税法の場合には、民法からの借用概念がとても多いです。
例えば、「相続」などは相続税法で規定はされていません。民法からの借用概念です。「住所」などもそうでしょう。
したがって、相続税法を理解するためには民法の知識も必要となるのです。

② 法令用語を理解する

法令には法令用語という独特の言い回し、ルールが存在します。
例えば、「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」などです。
法令用語の基本ルールも知っておかないと適切に法令解釈はできません。
法令用語の詳細解説は別のコラムにて別途解説します。

③ 杓子定規な解釈をしてはいけない

文理解釈にこだわり過ぎて杓子定規な解釈をしてはいけません。
木を見て森を見ずという解釈をしてしまっては本末転倒です。
例えば、
ある学校の玄関に「靴、草履のほか、昇るべからず」と掲示がしてあったとします。
杓子定規な解釈をしてしまうと靴と草履以外は登れない、すなわち、人間すらも昇れないという解釈になってしまいます。
法令にはここまで不親切な文章はないとは思いますが、難解な法令ほど大局観を持って解釈に臨まなければなりません。

(2) 論理解釈(目的論的解釈)

論理解釈とは、法令の文字、用語のみにとらわれることなく、いろいろな道理、理屈を取り入れて法令を解釈することです。
論理解釈の基本的な態度としてはその法令の目的、趣旨に重きを置いて常に結果の妥当性を確認しながら解釈する必要があります。
論理解釈には複数の解釈方法がありますので一つ一つ解説していきます。

① 拡張解釈

拡張解釈とは、法令の規定の文字を普通に意味するよりも若干広げて解釈する方法です。
具体例としては、過去の小規模宅地等の特例の判決で仮換地指定により仮設住宅に住んでいた被相続人について小規模宅地等の特例の適用があると判断した事例です。
条文を文理解釈すると間違いなく仮設住宅の場合には適用ができませんが、納税者が酷な状況になるため拡張解釈が認められた事例となります。本来租税特別措置法などの納税者有利になる特別法は拡張解釈に対して厳しいのですが本判決では納税者有利な判断がされました。

② 縮小解釈

縮小解釈とは、拡張解釈とは逆に、法令の規定の文字、用語を普通に意味するところよりも狭く解釈する方法です。
具体例として一番わかり易いのが憲法第9条でしょう。

憲法第9条第2項

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自衛隊は上記の戦力を縮小解釈しているからこそ今の日本で認められているのです。縮小解釈の最たるものでしょう。

③ 変更解釈

変更解釈とは、法令の規定の文字を変更して、本来それが意味するところよりも別の意味に解釈する方法です。
変更解釈が用いられる場面は立法上の誤りがあることが明らかなケースなどで一般的にはあまり用いられない解釈方法です。

④ 反対解釈

反対解釈とは、ある法令の規定をもととして、その規定にあることが書いてあることとは、その裏として、それと逆の場合には逆の効果が生ずるというような趣旨の規定をも含んでいるものと解釈する方法です。
反対解釈は日常会話でもよく登場します。
「今日は天気が悪いね」と友人が言っていたら「昨日は天気が良かったんだな」と解釈できます。
反対解釈の具体例としては、相続税法第12条です。

相続税法第12条(相続税の非課税財産)

次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 皇室経済法(昭和二十二年法律第四号)第七条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
以下省略

相続税の非課税財産が限定列挙されています。逆に言うと12条に列挙されていないものは相続税の課税対象です。
これが反対解釈です。非課税財産から逆説的に課税財産を把握するということです。

⑤ 類推解釈

類推解釈とは、似通った事柄のうち、一方についてだけの規定があって、他方については明文の規定がない場合に、その規定と同じ趣旨の規定が他方にあるものと考えて解釈する方法です。
類推解釈は反対解釈と表裏一体の関係にあります。
例えば、会社に従業員Aと同期入社の従業員Bがいたとします。
従業員Aの給料が5万円昇給しました。
そこでBの解釈としては、反対解釈をすれば、「Aだけが呼ばれて昇給があったから自分は昇給していないだろう」となります。
これに対し類推解釈をすれば、「Aとは同期だしこの後自分も呼ばれて5万円昇給するだろう」となります。
その条文を反対解釈するのか類推解釈するのかにより結論が正反対となるためこれら2つの解釈は慎重にしなければなりません。
その法令の趣旨や目的を重点的に考えてどちらの解釈が適切かを見極めましょう。

⑥ もちろん解釈

もちろん解釈とは、類推解釈の一種で類推解釈をしてその結論を出すのが当然であるような場合に用いられる解釈方法です。
例えば、息子が紅茶をこぼして親から「紅茶はこぼしちゃダメ」と怒られました。
文理解釈すると紅茶はこぼしてはダメだけどコーヒーはこぼしても良いとなりますが、もちろん解釈を使えば、当然のこととしてコーヒーも牛乳もこぼしちゃダメなのです。
具体例としては、相続税法第19条の2第3項です。

相続税法第19条の2第3項(配偶者に対する相続税額の軽減)

第一項の規定は、第二十七条の規定による申告書(省略)又は国税通則法第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に、第一項の規定の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の計算に関する明細の記載をした書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

配偶者の税額軽減の申告要件の規定で、申告書に適用を受ける旨等を記載し、各種書類を添付した場合に限り配偶者の税額軽減の適用が可能となるとの記載がありますが、もちろん解釈をすれば、無申告の場合には配偶者の税額軽減の適用はないということです。わざわざ無申告だと適用はないとは条文上は書いてませんが、もちろん解釈により無申告だと適用できないと判断しているのです。

複数の法令間の優先順位

法令は無数に存在します。
その法令間で矛盾、抵触する場合にはどちらの法令を優先するべきでしょうか?
最後に法令間の優先順位について解説します。

法律と命令

法律と命令はもちろん法律を優先します。
ここまで読んできてくれた人なら説明せずとも理解できますね。

法律と条約

条約とは国家間又は国家と国際機関との間で締結される国際法によって規律される国際的合意です。
税金の世界だと租税条約が有名ですね。
国内の法律と条約が矛盾、抵触する場合には条約を優先します。

憲法とその他の法律

憲法はすべての法律のトップに君臨します。
したがって、もちろん憲法が優先されます。

一般法と特別法

法令には一般法と特別法という考え方があります。
立場によって同じ法律でも特別法になったり、一般法になったりします。
例えば、相続税法について検証してみましょう。
国税通則法を一般法としたら相続税法は特別法です。
これに対し、租税特別措置法を特別法としたら相続税法は一般法です。
また、国税通則法も会計法を一般法としたら特別法になり得るのです。
さて、このように一般法と特別法のどちらを優先するかですが、特別法を優先します。
相続税法と租税特別措置法で矛盾抵触した場合には租税特別措置法を優先して適用します。

前法と後法

前法というのは先にできた法律です。後法というのは後にできた法律です。
税法は毎年のように改正されますが、改正前の法律を前法、改正後の法律を後法と考えることもあります。
部活の先輩後輩で考えると先輩の意見が優先されますが、法律では後輩の意見が優先されます。
これを後法優先の原則といいます。
法律は施行された瞬間に陳腐化して劣化します。後からできた法律のほうが優秀で偉いのです。

所管

それぞれの法律には守備範囲があります。それを所管といいます。
例えば所得税法で相続の規定があったとします。それが相続税法の規定と抵触していたとします。
相続の所管は相続税法なので相続税法が所得税法に優先するのです。

このコラムを書くに当たり私が何度も読み返した下記林修三先生の書籍を参考にしております。もっと法令解釈について詳しく知りたい人は是非読んでみてください。

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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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