速報!【最高裁総則6項訴訟は納税者敗訴】不動産を使った相続税の節税は今後どうなる?

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この記事の執筆者:角田壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

令和4年4月19日の午後に最高裁の上告審判決で納税者の主張した路線価による評価が否定され、国税側が勝訴しました。
この判決は今後の不動産の相続実務に大きな影響を及ぼします。

本事案の内容と今後の実務の留意点について解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

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本事案について

相続の概要

相続開始日 H24.6.17
被相続人 父
相続人 妻、長女、長男、二男、孫養子(二男の長男)

被相続人の概要

死亡時の年齢は94歳
H21.6まで不動産売買賃貸業の会社社長(その後は長男が社長)

不動産の概要

①甲不動産

購入時期:相続開始の3年5ヶ月前
購入金額:8億3,700万円
借入金額:6億3,000万円
路線価評価額(納税者主張額):2億円(購入金額の23.9%
鑑定評価額(国税主張額):7億5,400万円

※甲不動産は相続後に売却していません。

②乙不動産

購入時期:相続開始の2年6ヶ月前
購入金額:5億5,000万円
借入金額:4億2,500万円
売却時期:相続開始の9ヶ月後
売却金額:5億1,500万円
路線価評価額(納税者主張額):1億3,366万円(購入金額の24.3%
鑑定評価額(国税主張額):5億1,900万円

被相続人と信託銀行とのやり取り

□H20.5.13に被相続人が高齢となり同族会社の事業承継について信託銀行に相談をしにいった。

□被相続人は信託銀行から経営相談診断結果の報告を受けた際、借入金により不動産を取得した場合の相続税の試算及び相続財産の圧縮効果の説明を受けていた。

□本件借入の際の信託銀行の内部稟議書に「採上理由」として相続対策のため不動産購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった旨及び相続対策のため本年1月に不動産購入、前回と同じく相続税対策を目的として収益物件の購入を計画、購入資金につき借入れの依頼があった旨の記載があった。

被相続人は、借入れを申し込むに際し、信託銀行との間で、金員の借入れの目的が、相続税の負担の軽減を目的とした不動産購入の資金調達にあるとの認識を共有していた。

相続税申告の概要

H25.3.11 札幌南税務署に相続税申告書提出(課税価格2,826万円、相続税ゼロ
H28.3.10 国税庁長官は札幌国税局長に対し、総則6項により路線価評価ではなく他の合理的な方法により評価すべき指示をした
H28.4.27 札幌南税務署長は上記指示に基づき納税者に本件不動産を鑑定評価額により再評価し、更正処分(課税価格8億8,874万円、相続税2億4,049万円)及び賦課決定処分

国税不服審判所

 
H29.5.23 納税者の請求棄却

詳しくは、国税不服審判所HPをご参照ください。
裁決の要旨のみ貼り付けておきます。

裁決事例要旨

請求人らは、相続財産のうち一部の不動産(本件各不動産)については、財産評価基本通達(評価通達)に定める評価方法によらないことが相当と認められる特別の事情がないから、評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》を適用することはできず、評価通達に定める評価方法により評価すべきである旨主張する。
 しかしながら、被相続人による本件各不動産の取得から借入れまでの一連の行為は、被相続人が、多額の借入金により不動産を取得することで相続税の負担を免れることを認識した上で、当該負担の軽減を主たる目的として本件各不動産を取得したものと推認されるところ、結果としても、本件各不動産の取得に係る借入金が、本件各不動産に係る評価通達に定める評価方法による評価額を著しく上回ることから、本件不動産以外の相続財産の価額からも控除されることとなり、請求人らが本来負担すべき相続税を免れるものである。このような事態は、相続税負担の軽減策を採らなかったほかの納税者はもちろん、被相続人が多額の財産を保有していないために同様の軽減策によって相続税負担の軽減という効果を享受する余地のないほかの納税者との間での租税負担の公平を著しく害し、富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反するものであるから、本件各不動産について、評価通達に定める評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である。

東京地裁

R2.11.12 納税者敗訴⇒納税者控訴

東京高裁

R3.4.27 納税者敗訴⇒納税者上告

最高裁

R4.4.19 納税者敗訴⇒確定

詳しくは、裁判所HPをご参照ください。
判決のポイントのみ貼り付けておきます。

最高裁判決のポイント

相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

少しややこしいので噛み砕いて解説します。

相続税法上の一般原則に平等原則というものがある

路線価評価額が鑑定評価額(時価)より低くても合理的な理由がない限り路線価評価額を採用すべし
(路線価評価額を採用することが平等原則に違反しない)

しかし、路線価評価額を採用することにより実質的な租税負担の公平に反するという事情がある場合には鑑定評価額を採用すべき

なお、路線価評価額と鑑定評価額で大きな乖離があることのみでは上記の事情があるとは言えない

路線価評価額と鑑定評価額で大きな乖離があり、なおかつ、租税負担の負担軽減ができることを知り、かつ、これを期待して意図的に租税回避行為をした場合には上記の事情があると認められる

結果として、本件の場合には鑑定評価額を採用することが平等原則に違反しないため鑑定評価額を相続税評価額とすべし

相続専門税理士の本事案の感想

相続専門税理士の視点から本事案の感想を箇条書きでつらつら述べたいと思います。

□相続対策のスケジュールがタイトすぎる

被相続人が信託銀行に事業承継、相続対策の相談にいったのが平成20年で、被相続人の年齢は90歳前後
対策をするには少し遅すぎたか
そこから2年位の間で上記2つの不動産の購入と借入を実施してる

□明らかにやり過ぎの目立つ事案となってしまった

購入不動産2件であり、路線価評価額は購入金額の約1/4、そのうち1物件は相続開始後に売却
被相続人は北海道居住で購入不動産の所在地は川崎と荻窪という関東で被相続人とゆかりのある地域ではない
(被相続人が不動産会社を以前経営していたため不動産の所在地は関係ないという話もあるが)
不動産による節税対策を講じなければ相続税の課税価格は6億円を超えたが、本件節税対策により、課税価格は2,800万円で相続税はゼロ
一部の富裕層にしかできないやり過ぎで過度の節税スキームとなってしまっていた

□相続税の節税以外の経済合理性

不動産投資家としてこのタイミングで本件2件の不動産を購入する経済合理性が相続税の節税以外にあったかどうか
それを立証しきれなかったのが大きな敗因だろう
信託銀行の稟議書には「相続税対策を目的」と記録されていたのも国税側を後押しした

□信託銀行・不動産会社の存在

本件相続税節税対策で甘い蜜を吸っているのが借り入れをしてもらった本件スキームを考えた信託銀行と不動産を販売した不動産会社
信託銀行は借り入れによる利息や手数料、不動産会社は販売益や仲介手数料等の利益を本件スキームで享受している
不動産会社が信託銀行の関連会社の可能性もある
納税者にとっては数億円の相続税が圧縮できて、信託銀行や不動産会社にとってはスキームにより利益を享受できる
納税者と銀行・不動産会社の利害が一致したときに税務リスクが高まる

□本件スキームを実行しなかった場合

仮に本件スキームを実行しなかったとしても最終的に納税者が負けた金額の納税が生じていたとすると納税者にしてみればワンチャンやってみようと思ったのかもしれない
しかし、本件スキームにより納税者は下記のような損失が生じている
・不動産の売却損
・信託銀行への手数料、借入金利息
・不動産会社への仲介手数料や売買に伴うコスト
・裁判での弁護士報酬等々
最高裁判決で決定した本件不動産の鑑定評価額と購入金額の差額部分は相続税の節税が実現したかもしれないが、上記のコストとの見合いで本件節税対策を実施しなかった方が相続人の手残りが多くなったのではないだろうか

今後の不動産を使った相続税の節税対策について

さて、本件最高裁判決が今後の相続実務にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

まず、銀行や不動産会社が富裕層に対して提案する節税スキームの内容は変わると思います。
この判決をきっかけに自社の利益を追求しスケジュールを無視した過度なスキームの提案を控えるのではないでしょうか。

次に税理士の相続税申告業務、すなわち、不動産の相続税評価についてです。
この判決が出てしまって相続開始直前に購入した不動産や相続開始直後に売却した不動産のすべてを鑑定評価や購入金額で評価すべきだとの意見も一部の税理士の先生からでてきそうですが、私自身はそこまでなるとは思っていません。
もちろん、非上場株式の不動産評価のように、この判決をきっかけに財産評価基本通達が改正されて昔のように個人でも相続開始前3年間に購入された金額は通常の取引価格で評価すべき等の運用になればそれに従うこととなりますが、通達が改正されない限りは現状通り、原則として過度なスキームを実施している案件以外は路線価評価を実施するつもりです。

なお、今まで以上に相続開始直前に不動産を購入している事案についてはお客様に税務リスクを強く伝えなければならなくなりました。
また、過度な節税スキームを実施している案件は、路線価評価ではなく鑑定評価や購入金額での申告も必要となる可能性もあります。

そのような評価をすべき案件の見極めに税理士の手腕が問われるのではないでしょうか。
私は個人的に下記のような不動産であれば路線価評価以外の評価方法も検討しないといけないかなと考えています。

■購入時期が相続開始前3年間程度
■購入原資が借入金
■借入金の完済予定日が購入者の平均余命を超えている
■購入者が近い将来に相続が予想される高齢者
■路線価評価額が購入金額の50%以下となるような相続税を圧縮できる不動産
■相続開始からある程度近い時期に購入し、相続開始後に売却した不動産
■不動産購入に相続税節税以外に経済的な合理性がない

上記の3年や50%以下っていうのは適当な例示の数字で何の根拠や裏付けはございませんのであしからず。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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