市街化調整区域の雑種地の斟酌割合(しんしゃく割合)を徹底解説

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土地評価

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

雑種地の相続税評価は、近傍地比準方式で評価します。
すなわち、対象地の近くの類似した地目と同様に評価するということです。

雑種地の相続税評価の詳しい説明は、雑種地(駐車場、資材置き場、空き地等)の相続税評価を徹底解説!をご参照ください。

雑種地は宅地に比準して評価することが多くなりますが、宅地並み評価となってしまうと時価以上に高額になってしまうこともあります。
特に建築制限があるような市街化調整区域の雑種地に関しては、30%減、50%減というような斟酌割合を加味することも可能です。

今回は、雑種地の相続税評価の論点でも最難関論点といっても過言ではない「市街化調整区域の雑種地の斟酌割合」について詳しくわかりやすく解説します。

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国税庁質疑応答事例

国税庁の質疑応答事例に「市街化調整区域にある雑種地の評価」というページがあり、下記の表が示されています。
市街化調整区域の雑種地 斟酌割合

上記図の左側(周囲(地域)の状況)の①と②の上半分までは農地比準、山林比準、原野比準で評価するため斟酌割合という概念は存在しません。

②の下半分と③のカテゴリーになった場合には宅地比準で評価することになるため斟酌割合が50%、30%、0%の3つのいずれかの判定が必要となるのです。

ものすごく簡単に整理すると下記の通りです。

■斟酌割合50%:建物の建築が不可
■斟酌割合30%:建物の建築はできるが建物の構造、用途等に制限を受ける
■斟酌割合0%:建物の構造、用途等に原則として制限がない

この斟酌割合の具体的な判定についてこれから解説していきます。

斟酌割合:50%

建物の建築が一切認められない雑種地が斟酌割合50%となります。
建物の建築が一切認められない雑種地とは後述する都市計画法第34条に定める許可基準を満たさない土地となります。
斟酌割合50%の雑種地は、言い換えれば斟酌割合が30%や0%でない雑種地ということなので消去法的に判定していくことになります。

斟酌割合:30%

建物の建築はできるが建物の構造、用途等に制限を受ける雑種地が斟酌割合30%となります。

市街化調整区域で建物の建築が可能ということは、都市計画法第34条の開発許可基準のいずれかを満たす必要があります。
都市計画法第34条は全部で1号~14号の14種類あり、斟酌割合30%が適用されると想定されるものは1号~9号、12号~14号の12種類です。

1号 公益建物、生活必需小規模店舗
2号 鉱物、観光
3号 温度等特別条件
4号 農林水産物処理
5号 農林業活性化
6号 中小企業振興
7号 既存工場関連施設
8号 火薬庫等
9号 道路管理施設等
12号 市街化促進のおそれがない建築物
13号 既存権利者居住用、業務用宅地
14号 その他

これらの12種類は建物の建築はできるもののその建築物が店舗や自己の居住用建物に限定される等の制限があります。
建築物に制限があるということで30%の斟酌割合となるのです。

上記のうち実務上登場する可能性の高い1号、9号、12号、13号の具体的な開発基準等について解説していきます。

1号 公益建物、生活必需小規模店舗

1号の基準は、そこに居住している者が利用する下記の建築物については開発が可能としています。

■公益上必要な建築物
■日常生活のために必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む小規模店舗等

上記2つについてより具体的に条件等を確認していきましょう。

■公益上必要な建築物

(1)建築物の用途
建築物の用途は下記用途に限られます。

①小学校、中学校、幼稚園
②家庭的保育事業、小規模保育事業、事業所内保育事業の用に供する施設
③社会福祉事業用施設のうち福祉サービスを受ける通所者、入所者が直接利用する施設
④診療所、助産所

(2)所在地要件
市街化調整区域の既存集落内の建築物の敷地から100m以内

(3)地積規模要件
上記(1)①②の施設:事業計画に照らし適正な規模
上記(1)③の施設:2,000㎡以下
上記(1)④の施設:診療所は1,000㎡以下、助産所は500㎡以下

(4)建築規模要件
床面積:事業計画に照らし適正な面積
高さ:10m以下

(5)非居住施設要件
居住施設を含まないこと

■日常生活のために必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む小規模店舗等

(1)建築物の用途
建築物の用途は、小売業、飲食店、サービス業等で周辺地域において居住している者の日常生活のために必要な店舗に限られます。
なお、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等に掲げる用途は除かれます。

(2)所在地要件
市街化調整区域の既存集落内の建築物の敷地から50m以内

(3)地積規模要件
500㎡以下

(4)敷地形状要件
延長敷地形態でないこと

(5)建築規模要件
床面積:300㎡以下
高さ:10m以下

(6)建築形態要件
共同建て及び長屋建てでないこと

(7)管理施設、倉庫制限要件
店舗等の管理施設及び倉庫の規模は必要最小限とすること

(8)非居住施設要件
居住施設を含まないこと

雑種地の斟酌割合の判定で重要になってくるのが土地関連の要件である上記(2)所在地要件と(3)地積規模要件となります。
これらの要件が満たされてない雑種地は当該1号の許可基準を満たすことはできない土地ということになります。

9号 道路管理施設等

9号の基準は、市街化調整区域における道路の円滑な交通を確保するために適切な位置に設けられる下記の建築物については開発が可能としています。

■道路管理施設:その道路の維持修繕その他の管理を行うために道路管理者が設置するもの
■休憩所:食堂、レストラン、喫茶店、休憩設備を備えたコンビニ等
■給油所等:ガソリンスタンド等

9号の開発基準で重要となってくるのは、対象地が接する道路が下記いずれかに該当するか否かです。

□高速自動車国道
□料金徴収が認められている一般国道、県道又は市町村道(通称「有料道路」)
□一般国道、道路法の規定により国土交通大臣が指定する主要な県道又は市道
□四車線以上の県道又は市町村道
□上記以外の県道又は市町村道で中央線より車線が分離されている6m以上の幅員を有するもののうち、市街化区域から道程で1km以上離れている道路

したがって、対象地が上記いずれか4つの道路に面していない雑種地は当該9号の許可基準を満たすことはできない土地ということになります。

12号 市街化促進のおそれがない建築物

12号の基準は、地方自治体によって様々です。
分家住宅のみ認めるという自治体もあれば、事業用建物のみ認めるという自治体もあります。
すなわち、自治体の条例により建築できる用途に制限があるため原則として30%の斟酌割合となるわけです。
なお、自治体によっては後述する11号の基準とあまり遜色ない基準で宅地化を認めているようなケースもあります。その場合には斟酌割合0%となります。

13号 既存権利者居住用、業務用宅地

13号の基準は、下記の要件を満たした場合に開発が可能としています。

■自己の居住若しくは業務の用に供する建築物を建築し、又は自己の業務の用に供する第一種特定工作物を建設する目的
■市街化調整区域に指定される前に、土地を所有するか、又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた
■市街化調整区域に指定された日から6ヶ月以内に上記の旨を届け出
■市街化調整区域に指定された日から5年以内に行う開発行為

すなわち、市街化調整区域に線引される前に土地を保有していた場合には自己の居住用又は業務用の建物に限り建築して良いという基準です。
13号の基準を満たす雑種地はこのように建築物の用途に制限があるため斟酌割合が30%とできるのです。

なお、線引されてから5年以内という要件があるため、相続開始前5年間で線引された市区町村でしか13号基準を満たす土地はないということになりますが、市町村再編等により新たに市街化区域から市街化調整区域に逆線引きされた場合等が有り得るかなと思います。

斟酌割合:0%

建物の構造、用途等に原則として制限がない雑種地は斟酌割合が0%となります。

斟酌割合が0%となる可能性があるのは、都市計画法第34条10号、11号となります。
ちなみに、都市計画法第34条10号、11号は、市街化調整区域にも関わらず例外的に地積規模の大きな宅地の適用が認められています。
その理由としては、当該各号に該当する土地については宅地分譲開発が可能なためです。
宅地分譲開発が可能ということは、原則として宅地化に制約がないということですので斟酌割合が0%になるということなのです。

地積規模の大きな宅地の詳しい解説は、地積規模の大きな宅地の評価(規模格差補正率)を徹底解説【広大地の抜本改正】をご参照ください。

それでは、都市計画法第34条10号、11号について詳しく確認していきましょう。

10号 地区計画又は集落地区計画区域内の開発行為

都道府県等で地区計画又は集落地区計画が定められている場合において、当該計画区域内で当該計画内容に適合する建築物等の開発行為が認められます。
対象地が当該地区計画内にあって地区計画に適合する建築物等が建築できるならば斟酌割合は0%となります。

主な都道府県等の地区計画のガイドラインは下記をご参照ください。
千葉市
愛知県

11号 条例指定区域内の開発行為

11号は旧既存宅地確認制度(平成12年都市計画法改正で廃止)が廃止され、その代替措置として新たに追加された基準です。

下記の地域に所在する土地で予定建築物の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないものになります。

■市街化区域に隣接し、又は近接する地域
■自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域
■おおむね50以上の建築物が連たんしている地域
■政令で定める基準に従い、都道府県の条例で指定する土地の区域内

以下各要件について埼玉県の市街化調整区域の立地基準を参考に解説していきます。

■市街化区域に隣接し、又は近接する地域

市街化区域に隣接する地域とは、市街化区域に隣り合って接している集落地域、市街化区域に近接する地域とは、当該市街化区域の規模、奥行きその他の態様、市街化区域との位置関係、集落の形成状況に照らして近接と判断される集落地域のことをいいます。

また、市街化区域に近接する地域について、市街化区域との境界線からの距離をもって判断する場合は、少なくとも、当該距離が数百メートル程度の範囲内の区域は近接する地域に含まれると解されますが、当該距離が数キロメートルとなるような区域についてはこれに含まれないものと解されます。

なお、埼玉県では、市街化区域からの距離が1km以内に集落の全部又は一部が含まれる地域を市街化区域に近接する地域と考えるようです。

■自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域

自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域とは、地形、地勢、地物等の状況や文教、公共・公益、利便、交通施設の利用状況等に照らし、市街化区域と一体的な関係を持った地域のことをいいます。

なお、埼玉県では、地域の実情を最も把握している市町村の総合的な判断を踏まえることとしているようです。

■おおむね50以上の建築物が連たんしている地域

建築物がおおむね50m以内の間隔で50戸以上ある地域をいいます。
50戸連たん地域ともいいます。

■政令で定める基準に従い、都道府県の条例で指定する土地の区域内

都道府県の条例で指定される必要があります。
なので11号は別名「条例指定区域」とも呼ばれます。

11号基準を設けていない地方自治体もあります。
例えば、神奈川県は、下記の通り県全域で11号の条例化はしておりません。
神奈川県HP 市街化調整区域における基準
また、川越市も以前は条例指定区域がありましたが、2011年の条例改正により廃止になっているようです。

市街化調整区域の雑種地の斟酌割合について解説しました。
なお、上記はあくまで原則的な取り扱いとなります。
上記の各号の基準を満たす雑種地であれば必ず該当の斟酌割合が減額ができるというわけではありません。

例えば、9号基準を満たす雑種地であっても対象地周囲に郊外型店舗等が立ち並び、宅地価格と同等の取引が行われている実態があると認められる場合には、斟酌割合が0%と判定される可能性もあるということです。
また、12号基準は地方自治体の条例により基準が大きく異なります。したがって、対象地によっては12号基準であっても斟酌割合0%と判定されることも多々あります。

すなわち、最終的には対象地ごとの個別判定が必要になるということです。

市街化調整区域の雑種地の斟酌割合(しんしゃく割合)を徹底解説の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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