【夫婦財産制】コミュニティプロパティと別産制の相続税、贈与税

最終更新日:

国際相続

【夫婦財産制】コミュニティプロパティと別産制の相続税、贈与税
10秒でわかる この記事の要約
・日本は「夫婦別産制」だが、アメリカは州によって「夫婦共有財産制」と「別産制」に分かれる
・カリフォルニア州は「共有財産制」、ハワイ州は日本に近い「別産制」を採用している
・共有財産制(コミュニティ・プロパティ)の州では、婚姻後の所得や資産は自動的に夫婦1/2ずつとなる
・日本の相続税計算において、夫婦共有財産制下の資産は「持分50%」のみが課税対象となる可能性がある
・州法と日本の税法が交錯するため、自己判断での名義変更や送金は贈与税のリスクが高い

国際化が進む現代において、日本とアメリカの両方に資産を持つご家族や、国際結婚をされているカップルから、相続・贈与に関するご相談が急増しています。

特に頭を悩ませるのが、「夫婦財産制(Marital Property System)」の違いです。

日本では当たり前の常識が、アメリカでは通用しない。

逆に、アメリカの常識で資産管理をしていたら、日本で思わぬ贈与税がかかってしまった。

このようなケースは後を絶ちません。

今回は、アメリカ(特に日本人が多いカリフォルニア州とハワイ州)と日本の夫婦財産制の違いと、それが日本の相続税・贈与税にどう影響するのかを、税理士の視点で網羅的に解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

タップで発信

0120-916-968

平日 9:00~21:00 土日 9:00~17:00

お問い合わせ

日本とアメリカで全く異なる「夫婦の財布」の考え方

相続税や贈与税を考える前提として、まず「その財産は誰のものか?」という法律上の定義を理解する必要があります。

ここが日本とアメリカ、さらにはアメリカの州ごとで大きく異なります。

日本の原則は「夫婦別産制」

日本の民法では、夫婦であっても財産は別々に管理する「夫婦別産制」を採用しています。

例えば、夫が働いて得た給与は夫のもの、妻が働いて得た給与は妻のもの、とはっきり区別されます。

預金口座の名義がどちらにあるかで、所有者が推定されるのが一般的です。

なお、夫が稼いだ給与を妻の預金に入金した場合には、名義にかかわらず夫の財産と認定されることがあります。
これを名義預金といいます。
名義預金の詳しい解説は、名義預金は相続税の対象?!判断基準や対策、遺産分割協議書の書き方など徹底解説をご参照ください。

アメリカは州によって制度が異なる

一方、アメリカは連邦制であるため、財産に関する法律は州ごとに定められています。

大きく分けて以下の2つの制度が存在します。

1. コモン・ロー(Common Law)州
日本と同様の「別産制」を採用している州。 ニューヨーク州、ハワイ州など41州が採用しており、全米の多くの州がこれに該当します。 稼いできた人=所有者という考え方が基本です。

2. コミュニティ・プロパティ(Community Property)州
「夫婦共有財産制」を採用している州。 カリフォルニア州、テキサス州、ワシントン州など、西部や南部の州に多く見られます。 婚姻期間中に得た所得や取得した財産は、名義にかかわらず「夫婦共有(50%ずつ)」とみなされます。

カリフォルニア州(共有財産)とハワイ州(別産制)の比較

日本人の居住者や不動産保有者が多い、カリフォルニア州とハワイ州を例に挙げて、より具体的に見ていきましょう。

この2州は、まさに「共有財産制」と「別産制」の代表格であり、税務上の取り扱いも大きく異なります。

比較項目 カリフォルニア州

(Community Property)

ハワイ州

(Common Law)

財産制度 夫婦共有財産制 夫婦別産制(日本に近い)
婚姻中の所得 夫の給与も妻の給与も自動的に夫婦1/2ずつの権利となる 稼いだ本人の固有財産となる
相続時の権利 配偶者が死亡した場合、共有財産の半分は生存配偶者の持分 故人の財産が遺産となる

このように、カリフォルニア州の法律が適用されるご夫婦の場合、夫が一人で働いて得た収入でも、その半分は自動的に『妻のもの』となります。(※ただし、日本国籍のご夫婦の場合、原則としてこのルールは適用されず、日本と同じ扱いになることが一般的です。詳しくは後述します。

専門用語では潜在的持分といいますが、要するに『名義は夫でも、中身の半分は最初から妻のもの』という意味です。

この考え方が、日本の税務に大きなインパクトを与えるのです。

なお、アメリカの不動産を購入した際の「ジョイント・テナンシー」などの保有形態については、以下の記事で詳しく解説しています。

ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点

夫婦財産制が「日本の相続税」に与える影響

ここからが本題です。

被相続人(亡くなった方)が日本人で、日本の相続税の対象となる場合、アメリカにある財産はどう評価されるのでしょうか。

準拠法の確認

夫婦財産制は、通則法26条により25条のルールを当てはめて、①夫婦の本国法(同一ならそれ)、②同一の常居所地法、③最密接関係地法…の順で判断します。
さらに夫婦が書面で合意すれば、一定の範囲で準拠法を選べる場合もあります。

カリフォルニア州(共有財産)の資産を相続する場合

例えば、アメリカ国籍で日本に住む夫婦の夫が亡くなったとします。

夫名義のカリフォルニア州の銀行口座に1億円(カリフォルニア在住時に稼いだお金)が入っていたとしても、カリフォルニア州法(コミュニティ・プロパティ)に基づけば、「この1億円のうち5,000万円は、もともと妻の持ち物である」という解釈が成り立ちます。

この場合、日本の相続税の課税対象(遺産総額)に含まれるのは、夫の持分である「5,000万円のみ」となる可能性があります。

これは納税者にとって有利な解釈ですが、自動的に認められるわけではなく、資金の出所や現地の法律専門家の意見書(Legal Opinion)などで、「コミュニティ・プロパティであること」を日本の税務署に立証する必要があります。

ハワイ州(別産制)の資産を相続する場合

一方、ハワイ州の場合は日本と同様です。

夫が稼いだ財産が原資の夫名義の不動産や預金は、原則として100%夫の遺産として相続税の課税対象となります。

ただし、夫が全額拠出した「Joint Tenancy(合有不動産権)」を持っていた場合は、取得時に夫から妻に贈与が成立したものとしてJoint Tenancyの50%のみが夫の財産として認定されます。

詳しい解説は、ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点をご参照ください。

夫婦財産制と「贈与税」の落とし穴

相続税よりもさらに注意が必要なのが「贈与税」です。

アメリカの感覚で資金移動をすると、日本で高額な贈与税が発生するリスクがあります。

ケーススタディ:カリフォルニアでの資金移動

コミュニティ・プロパティ州では、夫婦間の財産のやり取りは比較的自由です。

しかし、日本の贈与税法は「資産の実質的な移転」に着目します。

【危険な事例】
カリフォルニア在住の夫が稼いだ給与(コミュニティ・プロパティ)を、日本の妻名義の単独口座に送金した。

この場合、アメリカでは「もともと夫婦共有のお金を移動しただけ」と考えられますが、日本の税務署は「夫から妻への贈与」と認定する可能性があります。

なぜなら、日本の銀行口座に入った時点で、そのお金は日本の法律下で管理され、妻が自由に使えれば「贈与が成立した」とみなされやすいからです。

ジョイント・アカウント(共同口座)の取扱い

アメリカでは一般的なジョイント・アカウントですが、日本にはこの概念がありません。

ジョイント・アカウントに入金した時点では贈与税はかからないことが一般的ですが、「そこから引き出して、固有の財産(不動産の購入や単独口座への移動)に変えた瞬間」に贈与税の課税リスクが発生します。

ジョイントアカウントの詳しい解説は、ジョイントアカウント(共同名義口座) 相続税、贈与税はどうなる?をご参照ください。

Q&A:よくあるご質問

Q1. 私は日本国籍ですが、カリフォルニア州に住んでいれば自動的にコミュニティ・プロパティが適用されますか?

日本の財産については準拠法である別産制が適用されますが、現地の財産については住所地(ドミサイル)がある州法が適用されます。

国籍が日本であっても、生活の本拠がカリフォルニアにあれば、現地の財産に関してはコミュニティ・プロパティとして扱われる可能性が高いです。
ただし、日本にある不動産、預金などは日本の法律が適用されるため、資産の所在地ごとに判断が必要です。

整理の順番はこうです。
①カリフォルニアの財産:ドミサイル(生活の本拠)がコミュニティ・プロパティ州かどうかで、財産が“共有”かが大きく変わります(例:カリフォルニアでは婚姻中に取得した財産は原則コミュニティ)。
②日本の財産:その財産の“実質の持分”を前提に、相続税・贈与税の判断をします。

Q2. 日本に帰国した後も、アメリカ時代の共有財産としての性質は維持されますか?

非常に難しい論点ですが、維持されると解釈されるケースもあります。

これを「準共有財産(Quasi-Community Property)」と呼ぶ概念がありますが、日本帰国後にその資金で日本の不動産を買った場合、それが夫婦共有となるか、名義人の単独所有となるかは、資金の紐付き証明が重要になります。税務署との見解の相違が生まれやすいポイントですので、専門家への相談が必須です。

まとめ:日米をまたぐ相続対策は「州法」の確認から

日米の夫婦財産制の違いは、単なる法律用語の違いではありません。

相続税の課税価格が半分になるか、倍になるかを左右する極めて重要なファクターです。

カリフォルニア州など:夫婦共有財産制。相続財産が1/2になる可能性があるが、立証が必要。
ハワイ州・NY州など:夫婦別産制。日本と同様、名義ごとの課税が原則。
贈与税リスク:州法で「共有」であっても、資金移動の仕方によっては日本で贈与とみなされるリスクがある。

ご自身が住んでいる州、あるいは資産がある州がどちらの制度を採用しているかを確認し、日本の税法と照らし合わせた対策を行うことが重要です。

税理士法人トゥモローズでは、日米の税制に精通した税理士が、あなたの状況に合わせた最適なプランニングをご提案します。

自己判断で処理を進める前に、ぜひ一度ご相談ください。

【夫婦財産制】コミュニティプロパティと別産制の相続税、贈与税の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

初回面談は無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

タップで発信

0120-916-968

平日 9:00~21:00 土日 9:00~17:00

お問い合わせ

国際相続のトータルサポート
TOM相続クラブ 専門家による事前対策で万が一の負担を軽減 入会金・年会費無料
採用情報