二重国籍者の相続で知っておくべき5つの注意点【税理士が徹底解説】

- 二重国籍者の相続では、日本法と外国法のどちらが適用されるか(準拠法)の判断が重要
- 相続税の納税義務は「住所」と「国籍」の組み合わせで判定され、二重国籍でも考え方は同じ
- 日本では二重国籍は認められていないが、実態として二重国籍状態の方は存在する
- 遺産分割では、不動産所在地の法律が適用されるなど、財産の種類によって準拠法が異なることがある
- 二重国籍者が被相続人の場合も相続人の場合も、事前の準備と専門家への相談が重要
「父は日本とアメリカの二重国籍でした。相続はどうなりますか?」
グローバル化が進む中、二重国籍を持つ方の相続に関するご相談が増えています。
二重国籍者の相続は、「どちらの国の法律が適用されるのか」という問題から始まり、相続税の課税関係も複雑になります。
この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、二重国籍者の相続における5つの注意点を徹底解説します。
目次
そもそも「二重国籍」とは
二重国籍の定義
二重国籍とは、2つ以上の国の国籍を同時に持っている状態を指します。
例えば、日本国籍とアメリカ国籍の両方を持っている方が該当します。
日本の法律上の立場
日本の国籍法では、二重国籍は認められていません。
国籍法第14条により、二重国籍となった場合は22歳までに(20歳以降に二重国籍になった場合は2年以内に)国籍を選択する義務があります。
国籍法第14条(抜粋)
外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
実態としての二重国籍
ただし、日本では国籍選択を怠っても罰則がなく、外国籍を離脱しなくても日本国籍が自動的に喪失するわけではありません。
そのため、実態として二重国籍状態が継続している方は相当数存在すると言われています。
国籍と相続の関係については、国際相続 国籍についてわかりやすく徹底解説で詳しく解説しています。
注意点①:準拠法(どちらの国の法律が適用されるか)
準拠法(どの国のルールで相続を進めるか)とは
国際相続では、「どの国の法律を適用して相続手続きを進めるか」という問題があります。
この適用される法律のことを「準拠法」といいます。
日本の国際私法のルール
日本の「法の適用に関する通則法」では、相続の準拠法は被相続人の本国法とされています。
法の適用に関する通則法第36条
相続は、被相続人の本国法による。
二重国籍者の本国法はどちらか
二重国籍者の場合、どちらの国籍を「本国法」とするかが問題になります。
同法第38条では、以下のルールが定められています。
①国籍を有する国のうち、常居所(生活の本拠)がある国の法律
②常居所がある国の国籍がない場合は、最も密接な関係がある国の法律
③日本国籍を有する場合は、日本法が本国法となる
実務上のポイント:日本国籍と外国籍の二重国籍者で、日本に住んでいる場合は、日本法が準拠法となります。一方、外国に住んでいる場合は、その外国法が準拠法となる可能性があります。
準拠法の詳しい解説は、国際相続があった場合の準拠法をご参照ください。
注意点②:相続税の納税義務の判定
納税義務の判定基準
日本の相続税法では、納税義務者の範囲を「住所」と「国籍」の組み合わせで判定します。
二重国籍であっても、判定の考え方は同じです。
納税義務の区分
| 区分 | 課税範囲 |
| 無制限納税義務者 | 国内財産+国外財産すべて |
| 制限納税義務者 | 国内財産のみ |
日本国籍を有する場合
二重国籍者が日本国籍を有している場合、多くのケースで無制限納税義務者となり、世界中の財産が日本の相続税の課税対象となります。
納税義務の詳しい判定方法は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!をご参照ください。
外国税額控除
同じ財産に対して日本と外国の両方で相続税が課税された場合、外国税額控除により二重課税を調整できます。
詳しくは、相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
注意点③:遺産分割の方法
法定相続分の違い
準拠法によって、法定相続分が異なります。
例えば、配偶者と子が相続人の場合、日本法では配偶者1/2・子1/2ですが、国によっては配偶者の取り分がもっと少ない、あるいは多いケースがあります。
不動産の準拠法
不動産については、所在地の法律が適用されるケースがあります。
例えば、アメリカでは不動産は所在地法が適用されるため、カリフォルニア州にある不動産はカリフォルニア州法に基づいて相続されます。
つまり、被相続人が日本とアメリカの二重国籍で、日本とアメリカに不動産がある場合、それぞれの不動産について異なる法律が適用される可能性があります。
遺産分割協議書の作成
二重国籍者の相続では、日本語の遺産分割協議書に加えて、英語版の作成が必要になることがあります。
遺産分割協議書の書き方については、遺産分割協議書の書き方 注意点も含めてわかりやすく徹底解説!をご参照ください。
注意点④:相続手続きの複雑化
両国での手続きが必要になるケース
二重国籍者の相続では、日本と外国の両方で相続手続きが必要になることがあります。
・日本の財産:日本の相続手続き
・アメリカの財産:アメリカのプロベート手続き
・日本の相続税:日本で申告・納付
・アメリカの遺産税:申告が必要なケースあり
アメリカの相続手続きについては、アメリカの相続手続きと遺産税【税理士が完全ガイド】をご参照ください。
戸籍の問題
二重国籍者の場合、日本の戸籍と外国の出生証明書等の両方が必要になることがあります。
また、日本の戸籍に外国での婚姻や出生が反映されていないケースもあり、相続人の確定作業が複雑になることがあります。
注意点⑤:生前対策の重要性
遺言書の作成
二重国籍者は、両方の国で有効な遺言書を作成しておくことが重要です。
・日本の財産については日本法に基づく遺言書
・外国の財産については外国法に基づく遺言書(英文)
・両方の遺言書が矛盾しないように注意
財産の整理
複数の国に財産が分散していると、相続手続きが複雑になります。
可能であれば、生前に財産を整理し、相続手続きを簡素化しておくことをお勧めします。
国籍選択
日本では22歳までに国籍を選択する義務がありますが、相続の観点からも国籍を整理しておくことで、手続きがシンプルになります。
二重国籍者の相続に関するQ&A
Q1:二重国籍者が亡くなった場合、両方の国で相続税がかかりますか?
A:国によります。
日本では、被相続人の国籍にかかわらず、相続人が日本に住所がある場合などは相続税がかかります。
外国でも相続税・遺産税が課税される場合は、外国税額控除で調整します。
Q2:相続人が二重国籍の場合、相続分はどうなりますか?
A:相続人の国籍ではなく、被相続人の本国法で決まります。
日本の国際私法では、相続は被相続人の本国法によると定められています。
相続人が何国籍であるかは、法定相続分の決定には影響しません。
Q3:外国籍を選択して日本国籍を離脱した場合、日本の相続税はどうなりますか?
A:住所と離脱後の期間によります。
日本国籍を離脱しても、日本に住所がある場合や、離脱後10年以内の場合は、日本の相続税の納税義務者となる可能性があります。
詳しくは、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!をご参照ください。
Q4:二重国籍者の相続で、日本の小規模宅地等の特例は使えますか?
A:要件を満たせば使えます。
小規模宅地等の特例は、被相続人や相続人の国籍に関係なく、日本国内の土地について適用できます。
ただし、相続人が非居住者の場合は、同居親族の要件を満たせないなどの制約があります。
詳しくは、国際相続における小規模宅地等の特例の留意点をご参照ください。
Q5:二重国籍であることを税務署に申告する必要がありますか?
A:二重国籍であること自体の申告義務はありませんが、相続税申告書には国籍の記載欄があります。
相続税申告書の「国籍」欄には、実際の国籍を記載します。
二重国籍の場合は、両方の国籍を記載するか、日本国籍を記載することが一般的です。
まとめ:二重国籍者の相続は専門家への相談を
二重国籍者の相続について解説しました。
- 注意点①:準拠法→住所と国籍の組み合わせで本国法を判定
- 注意点②:納税義務→日本国籍があれば多くの場合、世界中の財産が課税対象
- 注意点③:遺産分割→不動産は所在地法が適用されることも
- 注意点④:手続きの複雑化→両国での手続きが必要になるケースあり
- 注意点⑤:生前対策→両国で有効な遺言書の作成が重要
二重国籍者の相続は、国内の相続と比べて格段に複雑です。
準拠法の判断、納税義務の判定、外国での手続きなど、専門的な知識が必要な場面が多くあります。
当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、国際相続の実績も豊富です。
「二重国籍の家族がいて相続が心配」
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