CRS(共通報告基準)と相続|海外資産は税務署に把握される?【税理士解説】
- CRS(共通報告基準)により、海外金融口座の情報は自動的に日本の税務署に共有される
- 100以上の国・地域が参加しており、主要な金融センターはほぼ網羅
- 相続で海外資産を取得した場合、申告漏れは発覚するリスクが高い
- 「海外だからバレない」という考えは完全に時代遅れ
- 正直に申告し、必要に応じて国外財産調書も提出することが重要
「海外の銀行口座は日本の税務署にバレないと聞いたのですが、本当ですか?」
結論から言うと、それは完全に間違いです。
CRS(共通報告基準)という国際的な情報交換制度により、海外の金融口座情報は自動的に日本の税務署に共有されています。
「海外だからバレない」という時代は、もう終わりました。
この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、CRSと相続の関係を詳しく解説します。
CRS(共通報告基準)とは
CRSの概要
CRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)とは、OECDが策定した金融口座情報の自動交換制度です。
参加国の金融機関は、非居住者の口座情報を自国の税務当局に報告し、その情報が口座保有者の居住国の税務当局に自動的に共有されます。
この制度は、国際的な脱税を防止することを目的として2014年に策定され、2017年から本格的に運用が開始されました。
CRSの仕組み
具体的な情報の流れを見てみましょう。
①Aさんが香港の銀行に口座を開設(口座開設時に居住国を申告)
↓
②香港の銀行がAさんの口座情報を香港の税務当局(IRD)に報告
↓
③香港の税務当局が日本の国税庁に情報を送付(年1回、自動的に)
↓
④日本の国税庁がAさんの申告内容と照合
↓
⑤申告漏れがあれば税務調査の対象に
この一連の流れは完全に自動化されており、Aさんが何も申告していなくても、国税庁はAさんの香港の口座の存在を把握しています。
CRS参加国・地域
2024年現在、100以上の国・地域がCRSに参加しています。
・香港、シンガポール、韓国、インド、インドネシア、マレーシア、中国
主な参加国・地域(ヨーロッパ)
・イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルク、オランダ
主な参加国・地域(その他)
・オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ブラジル、南アフリカ
注意:アメリカはCRSに参加していませんが、独自のFATCA制度で情報交換を行っています。アメリカの口座も日本の税務署に把握されています。
CRSで共有される情報
報告される情報の種類
| 項目 | 内容 |
| 口座保有者情報 | 氏名、住所、生年月日、納税者番号(マイナンバー) |
| 口座情報 | 口座番号、金融機関名、口座残高(年末時点) |
| 収入情報 | 利子、配当、その他の収入、口座の解約代金 |
報告対象となる金融口座
・銀行の預金口座(普通預金、定期預金等)
・証券会社の口座(株式、投資信託等)
・保険会社の口座(解約返戻金がある貯蓄性保険)
・投資ファンドの持分
報告対象外
・退職年金口座(一定の要件を満たすもの)
・一部の政府機関の口座
CRSと相続の関係
被相続人の海外口座は把握されている
被相続人が海外に金融口座を持っていた場合、その情報はCRSを通じて日本の税務署に把握されています。
相続税申告で海外財産を申告しなかった場合、税務署は「あれ?この人の親は香港に口座を持っていたはずだが、相続税申告に載っていない」と気づきます。
税務調査で指摘されるリスクが非常に高くなります。
相続人が海外口座を引き継いだ場合
相続により海外口座を引き継いだ場合、名義変更後の口座情報もCRSで報告されます。
「相続したことを申告しなければバレない」という考えは通用しません。
相続後、その口座の名義人として毎年情報が報告され続けます。
CRS情報と相続税調査
国税庁は、CRSで得た情報を相続税の調査に活用しています。
①相続税申告書を受理
↓
②CRS情報と照合(被相続人・相続人の海外口座をチェック)
↓
③申告漏れの疑いがあれば調査対象に選定
↓
④税務調査で海外口座について質問
↓
⑤申告漏れが確認されれば修正申告・加算税
申告漏れのリスクとペナルティ
発覚するリスクは非常に高い
CRSの導入により、海外財産の申告漏れが発覚するリスクは飛躍的に高まりました。
以前は「海外の口座は調べようがない」という状況でしたが、今は自動的に情報が入ってきます。
ペナルティ
| ペナルティ | 税率 |
| 過少申告加算税 | 10〜15% |
| 無申告加算税 | 15〜30% |
| 重加算税(隠蔽・仮装の場合) | 35〜50% |
| 延滞税 | 年2.4%〜8.7%程度 |
海外財産の申告漏れリスクについては、海外に財産がある人必見!相続で発生する5つのリスクとデメリットをご参照ください。
国外財産調書の不提出・虚偽記載のペナルティ
12月31日時点で5,000万円超の国外財産を保有している場合、国外財産調書の提出が必要です。
国外財産調書の不提出や虚偽記載があった場合、以下のペナルティがあります。
・1年以下の懲役または50万円以下の罰金(悪質な場合)
詳しくは、国外財産調書制度を徹底解説!提出義務から書き方まで完全ガイドをご参照ください。
CRSに関するQ&A
Q1:アメリカの口座はCRSの対象外ですか?
A:CRSの対象外ですが、FATCA制度で情報交換されています。
アメリカは独自のFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)を運用しており、日本とは租税条約に基づく情報交換を行っています。
結果的に、アメリカの口座情報も日本の税務署に共有されています。
Q2:海外口座を閉鎖すれば過去の情報は消えますか?
A:消えません。
過去に報告された情報は税務当局に保存されています。
また、口座を閉鎖した年の情報も報告されます。
Q3:残高がいくら以上だとCRSで報告されますか?
A:原則としてすべての口座が報告対象です。
ただし、一部の国では少額口座(例:残高$250,000未満の既存の個人口座)を除外している場合があります。
しかし、新規口座や法人口座には金額の下限はありません。
Q4:国外財産調書との関係は?
A:別の制度ですが、両方の情報が照合されます。
CRSは外国からの自動情報交換、国外財産調書は納税者からの自主申告です。
税務署は両方の情報を照合し、矛盾がないかチェックしています。
Q5:過去の申告漏れを自主的に修正したらどうなりますか?
A:税務調査前に自主的に修正申告すれば、加算税が軽減されます。
・過少申告加算税:5%(通常10〜15%)
・延滞税は必要
税務調査後の修正
・過少申告加算税:10〜15%
・悪質な場合は重加算税35〜50%
申告漏れに気づいたら、税務調査を受ける前に自主的に修正申告することをお勧めします。
まとめ
- CRSにより海外口座情報は自動的に日本の税務署に共有
- 100以上の国・地域が参加、主要な金融センターはほぼ網羅
- 「海外だからバレない」は完全に時代遅れ
- 申告漏れは加算税・延滞税のペナルティ対象
- 正直に申告することが最も重要
海外に財産がある方は、CRSの存在を理解し、正直に申告することが重要です。
申告漏れがあれば、いずれ発覚します。
その時に慌てるよりも、最初から正しく申告しておく方が、結果的に負担が少なくて済みます。
当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、海外財産がある相続の実績も豊富です。
「海外に口座があるが、どう申告すればいいか分からない」
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