国際相続における相続放棄の手続きと注意点|海外財産がある場合の対応を徹底解説

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国際相続における相続放棄の手続きと注意点|海外財産がある場合の対応を徹底解説
10秒でわかる この記事の要約

  • 日本の相続放棄は家庭裁判所への申述により行い、相続開始を知った時から3ヶ月以内が期限
  • 日本で相続放棄しても、海外の財産には効力が及ばない場合がある
  • 海外での相続放棄は現地法に基づく別途の手続きが必要なケースが多い
  • 基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の“法定相続人の数”は、放棄があっても放棄がなかったものとして数えるため、放棄で基礎控除が減ることはない
  • 海外に債務がある場合、日本での相続放棄だけでは債務免除にならないリスクがある

「父に海外の借金があるようですが、相続放棄すれば大丈夫ですか?」

国際相続のご相談の中で、海外に債務がある場合の相続放棄についてのお問い合わせは非常に多くいただきます。

日本国内だけの相続であれば、家庭裁判所での相続放棄の申述により全ての財産・債務を引き継がないことが可能です。

しかし、国際相続の場合は日本の相続放棄の効力が海外にまで及ぶかどうかが大きな問題となります。

この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、国際相続における相続放棄の手続き・効力範囲・注意点を徹底解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

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日本の相続放棄の基本

まず、日本の相続放棄制度の概要を確認しましょう。

相続放棄の手続き

相続放棄は、民法938条により家庭裁判所へ申述して行います。

相続の開始を知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に申述する必要があります。

海外に財産や相続人がいる場合、財産の調査に時間がかかるため、3ヶ月以内に判断が難しいケースが少なくありません。

その場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」を行うことで、熟慮期間を延長できます。

国際相続の複雑さを考慮して、裁判所が3ヶ月〜6ヶ月程度の延長を認めるケースも多く見られます。

相続放棄の効力

相続放棄が受理されると、その相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。

したがって日本法上は、財産も債務も承継しません。

日本の相続放棄についての詳しい解説は、【相続放棄の基礎知識】相続放棄を兄弟姉妹でまとめて行う方法とは?【相続放棄で節税できる?】相続放棄が相続税申告に与える影響を解説をご参照ください。

国際相続で相続放棄する場合の準拠法

国際相続で問題となるのは、「どの国の法律に基づいて相続放棄の効力を判断するか」という準拠法の問題です。

法の適用に関する通則法の規定

日本の「法の適用に関する通則法」第36条は、相続は被相続人の本国法によるとしています。

国際相続があった場合の準拠法で詳しく解説していますが、被相続人が日本国籍であれば、相続に関する事項は日本法が準拠法となります。

しかし、ここで重要なのは、日本法が準拠法であっても、海外での効力が自動的に保証されるわけではないという点です。

海外における日本の相続放棄の効力

海外の裁判所や金融機関が日本の相続放棄を承認するかどうかは、現地の法律や実務慣行に依存します。

国・地域 日本の相続放棄の取扱い 実務上の対応
アメリカ 自動的には認められない 現地プロベート手続き内で個別対応が必要
イギリス Deed of Disclaimerが別途必要な場合あり 現地弁護士を通じた手続きが推奨
香港 現地裁判所の判断による プロベート手続きの中で主張する必要あり
シンガポール 現地裁判所の判断による Grant of Probate手続き内で対応
台湾 比較的認められやすい 日本の家裁証明書の翻訳・認証で対応可能

※国別の取扱いは、国・州・金融機関・債権者で変わります。

つまり、日本で相続放棄をしただけでは、海外の債務から完全に免れることができない場合があるのです。

相続放棄と相続税への影響

基礎控除の計算

相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。

相続放棄があった場合でも、放棄がなかったものとした法定相続人の数で基礎控除を計算します。

したがって、相続放棄により基礎控除額が減ることはありません。

生命保険金の非課税枠

一方、相続放棄をした人が生命保険金を受け取った場合、非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用を受けることはできません

保険金は受け取れますが、全額が相続税の課税対象となります。

納税義務の判定

国際相続における相続税の納税義務の判定では、相続人の住所や国籍が納税義務に影響することを解説していますが、相続放棄をした相続人が遺贈により財産を取得した場合も同様の判定が必要です。

国際相続で相続放棄を検討すべきケース

海外に多額の債務がある場合

被相続人が海外の金融機関に対して借入債務を負っている場合、日本の相続放棄に加え、現地での法的手続きが必要です。

特に米国では、プロベート手続きの中で債権者への通知・弁済が行われますが、相続人個人への請求リスクもあるため、現地弁護士への相談が不可欠です。

海外の不動産に担保が設定されている場合

海外不動産にモーゲージ(住宅ローン)が残っている場合、不動産の所在地国の法律に基づいた対応が必要です。

海外不動産の相続税評価で解説した不動産評価とともに、債務の取扱いも慎重に検討してください。

複数国に財産が分散している場合

被相続人が複数の国に財産を保有している場合、国ごとに相続を承認するか放棄するかを選択できる場合があります。

ただし、日本の相続放棄は「全部放棄」が原則であり、特定の財産だけを放棄する「限定的な相続放棄」はできません。

よくある質問

Q1:海外在住の相続人でも日本の家庭裁判所で相続放棄できますか?

A:はい、可能です。

海外在住の相続人は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、郵送で相続放棄の申述を行うことができます。

ただし、印鑑証明書に代えてサイン証明書(署名証明書)を現地の日本領事館で取得する必要があります。

Q2:限定承認は国際相続でも使えますか?

A:法律上は可能ですが、実務的なハードルが非常に高いです。

限定承認は相続人全員が共同で行う必要があり、海外在住の相続人がいる場合は手続きの調整が困難です。

また、限定承認の場合はみなし譲渡所得課税(所法59条)が発生するため、税務上のデメリットも考慮が必要です。

限定承認の詳しい解説は、限定承認をした場合の準確定申告や相続税について徹底解説をご参照ください。

まとめ:国際相続の相続放棄は日本と現地の両面で検討を

国際相続における相続放棄について解説しました。

この記事のポイント

  • 日本の相続放棄は3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述(延長申立て可能)
  • 日本の相続放棄が海外で自動的に認められるとは限らない
  • 海外の債務免除には現地法に基づく別途手続きが必要な場合がある
  • 相続放棄しても基礎控除の法定相続人数には影響しない
  • 複数国の財産がある場合は国ごとの法的対応が求められる

国際相続での相続放棄は、日本国内の手続きだけでは完結しないケースが大半です。

当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、国際相続における相続放棄の実務経験も豊富です。

「海外に債務があるが、相続放棄で免れるか知りたい」
「日本の相続放棄が海外でも有効か確認したい」
「熟慮期間の延長を申し立てたい」

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回面談は無料です。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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