リビングトラストとは?相続税の取扱いと日本の税務上の注意点【税理士解説】

最終更新日:

国際相続

10秒でわかる この記事の要約

  • リビングトラスト(Living Trust)とは、米国で広く利用される生前に設定する撤回可能な信託
  • プロベート(裁判所を通じた遺産分配手続き)を回避できる最大のメリットがある
  • 日本の相続税法上、リビングトラストの財産は信託受益権として評価される
  • 受託者が管理する財産でも日本の相続税の課税対象となる
  • 日本の税務上は相法9条の2〜9条の6(信託に関する規定)が適用される

「アメリカに住む父がリビングトラストを設定しているのですが、日本の相続税はどうなりますか?」

当事務所では、米国在住の被相続人の相続で、リビングトラストに関するご相談が増加しています。

リビングトラストは米国の相続対策として非常にポピュラーな仕組みですが、日本の税法には「リビングトラスト」という概念がありません。

ジョイントテナンシーと相続税・贈与税の注意点コミュニティプロパティと相続税・贈与税と並んで、日米間の法制度の違いが顕著に表れる論点です。

この記事では、年間350件超の相続税申告を手がける相続専門税理士が、リビングトラストの基本から日本の相続税への影響までを徹底解説します。

なお、相続税申告でお急ぎの方はお電話、またはLINEにてお問い合わせいただけます。

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リビングトラストの基本

リビングトラストとは

リビングトラスト(Revocable Living Trust)とは、委託者(Grantor/Settlor)が生前に設定し、自らを受託者(Trustee)兼受益者(Beneficiary)とする信託です。

「Revocable(撤回可能)」という名前の通り、委託者が存命中はいつでも信託の内容を変更・撤回できます。

リビングトラストの基本構造
・委託者(Grantor):信託を設定する人(通常は推定被相続人)
・受託者(Trustee):信託財産を管理する人(存命中は委託者自身)
・後継受託者(Successor Trustee):委託者死亡後に管理を引き継ぐ人
・受益者(Beneficiary):信託の利益を受ける人(存命中は委託者、死亡後は指定された相続人等)

リビングトラストのメリット

米国でリビングトラストが広く利用される最大の理由はプロベート回避です。

リビングトラストに組み入れた財産は、委託者の死亡後もプロベートを経ずに後継受託者が管理・分配できます。

リビンクトラストの主なメリットは以下の通りです。

メリット 説明
プロベート回避 裁判所を通さずに財産移転が可能(時間・費用の節約)
プライバシー保護 プロベートは公開手続きだが、信託は非公開
認知症対策 委託者が判断能力を失った場合、後継受託者が管理を引き継ぐ
複数州の財産管理 複数州に不動産がある場合、各州のプロベートを回避

日本の相続税法上の取扱い

信託課税の原則

日本の相続税法では、信託に関する課税規定が相法9条の2から9条の6に定められています。

リビングトラストのような撤回可能信託の場合、委託者が信託財産を実質的に支配しているとみなされます。

したがって、委託者の死亡時には、信託財産は遺贈により取得したものとみなされ、日本の相続税の課税対象となります。

信託受益権の評価

リビングトラストの財産は「信託受益権」として評価します。

受益者が信託財産の全部を受ける場合は、信託財産そのものの評価額がそのまま受益権の評価額となります(財基通202)。

不動産であれば不動産として、株式であれば株式として、それぞれの評価方法に従って評価します。

国内財産、国外財産の判定で解説した所在判定では、信託財産の種類に応じた所在地の判定が必要となります。

撤回可能信託と撤回不能信託の違い

種類 委託者の支配 日本の課税タイミング
撤回可能信託(Revocable Trust) あり
(いつでも変更・撤回可能)
委託者の死亡時
(相続税)
撤回不能信託(Irrevocable Trust) なし
(設定後は原則変更不可)
信託設定時
(贈与税)

リビングトラストは撤回可能信託のため、信託設定時には課税関係は生じず、委託者の死亡時に相続税が課税されます。

米国遺産税との関係

米国における取扱い

米国の遺産税法上、撤回可能信託の財産は委託者の遺産(Gross Estate)に含まれます。

アメリカの相続手続きと遺産税で解説した通り、米国市民・永住者の場合は基礎控除が高額(2025年で1,399万ドル)ですが、非居住外国人の場合は6万ドルにとどまります。

二重課税の調整

リビングトラストの財産に日本の相続税と米国の遺産税が二重に課される場合は、外国税額控除で調整します。

実務上の注意点

信託財産の把握

リビングトラストに何が組み入れられているかを正確に把握することが最初のステップです。

信託証書(Trust Agreement)には、対象財産のリストが記載されていますが、設定後に追加された財産は別途のSchedule(付属書類)に記載されています。

後継受託者から信託証書の写しと最新の財産目録を取得してください。

日本の相続税申告への反映

リビングトラスト内の財産は、信託受益権として相続税申告書の第11表(相続税がかかる財産の明細書)に記載します。

個々の財産の種類に応じて、不動産、預貯金、有価証券等に分類して記載する必要があります。

後継受託者との連携

日本の相続税申告に必要な資料(財産目録、評価額の算定根拠等)は、後継受託者から取得します。

後継受託者が非協力的な場合や連絡が取れない場合は、現地弁護士を通じた対応が必要になることもあります。

よくある質問

Q1:日本でもリビングトラストと同じ制度はありますか?

A:完全に同じ制度はありませんが、「家族信託」が類似の機能を持ちます。

家族信託については下記で解説していますので、ご関心のある方は御覧ください。

家族信託

Q2:リビングトラストを設定すると日本の相続税が節税できますか?

A:いいえ、日本の相続税の節税効果はありません。

リビングトラストのメリットはあくまで米国のプロベート回避です。

日本の相続税法上は、信託財産は委託者の遺産として課税されるため、リビングトラストの有無で日本の相続税額は原則として変わりません。

まとめ:リビングトラストと日本の相続税は専門家に相談を

リビングトラストと日本の相続税について解説しました。

この記事のポイント

  • リビングトラストは米国のプロベート回避策として広く利用される
  • 日本の相続税法上は信託受益権として課税対象
  • 撤回可能信託のため委託者死亡時に相続税が課税される
  • 米国遺産税との二重課税は外国税額控除で調整
  • 日本の相続税の節税効果はないが、手続き面のメリットは大きい

リビングトラストは、日米の法制度・税制度の違いを正確に理解した上で対応する必要があります。

当事務所では年間350件超の相続税申告を行っており、リビングトラストを含む国際相続の実績も豊富です。

「リビングトラスト内の財産をどう申告すればよいか分からない」
「米国の遺産税と日本の相続税の二重課税を調整したい」

そのようなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

初回面談は無料です。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

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税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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