海外信託(オフショアトラスト)と相続税|課税関係・評価方法・申告上の注意点を解説

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国際相続

海外信託(オフショアトラスト)と相続税|課税関係・評価方法・申告上の注意点を解説
10秒でわかる この記事の要約

  • 海外信託(オフショアトラスト)は日本の相続税法上の信託課税規定が適用される
  • 撤回可能信託は委託者死亡時に相続税、撤回不能信託は設定時に贈与税が課される
  • 受益者連続型信託は相法9条の3により受益者変更のたびに課税される
  • 海外信託の情報開示義務として国外財産調書、信託の計算書等の提出が必要
  • タックスヘイブン対策税制との関係にも注意が必要

「父が海外にトラストを設定していたのですが、相続税はどうなりますか?」

海外信託(オフショアトラスト)は、資産保全、プロベート回避、国際的な資産管理など様々な目的で利用されています。

しかし、日本の税法から見ると、海外信託は極めて複雑な課税関係を生じさせます。

リビングトラスト(撤回可能な信託)については別記事で解説していますが、この記事ではより広範な海外信託全般について、相続税・贈与税の課税関係を徹底解説します。

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海外信託の主な類型

信託の分類

海外信託にはさまざまな種類がありますが、日本の税法上の取扱いを理解するために、以下の分類が重要です。

分類基準 種類 主な課税関係
撤回可能性 Revocable Trust(撤回可能信託) 委託者死亡時に相続税
Irrevocable Trust(撤回不能信託) 設定時に贈与税
受益者の定め 自益信託(委託者=受益者) 信託設定時は課税なし
他益信託(委託者≠受益者) 設定時に贈与税
受益者の変更 受益者連続型信託 受益者変更のたびに課税

代表的なオフショア信託の設立地

オフショアトラストの主な設立地
・ケイマン諸島
・英領ヴァージン諸島(BVI)
・チャネル諸島(ジャージー、ガーンジー)
・クック諸島
・シンガポール
・香港
・ニュージーランド

これらの地域は、信託法制が整備されており、税制面でも有利な条件を提供していることから、オフショアトラストの設立地として選ばれています。

日本の相続税法上の取扱い

受益者等課税信託(原則)

日本の相続税法では、信託の受益者が信託財産を有するものとみなして課税するのが原則です(相法9条の2第1項)。

つまり、海外にトラストが設定されていても、受益者が日本居住者であれば、信託財産に対して日本の相続税・贈与税が課される可能性があります。

委託者死亡時の課税(相法9条の2第4項)

委託者が信託の変更権を有している場合(撤回可能信託)、委託者が存命中は課税関係は生じません。

委託者の死亡により受益者が変更される場合、新たな受益者は遺贈により信託に関する権利を取得したものとみなされます。

受益者連続型信託の課税(相法9条の3)

受益者連続型信託とは、受益者の死亡等により順次他の者が受益権を取得する定めのある信託です。

例えば、「第一受益者の死亡後は第二受益者が受益権を取得する」といった定めがある場合、第一受益者の死亡時に第二受益者に対して相続税が課されます。

信託受益権の評価

評価の原則

信託受益権の評価は、財産評価基本通達202に基づきます。

元本と収益の受益者が同一人である場合は、信託財産の評価額がそのまま受益権の評価額となります。

元本の受益者と収益の受益者が異なる場合は、信託財産の元本価額と収益受益権の価額を別々に評価します。

海外信託特有の評価の問題

海外信託では、受託者の裁量権が広範に認められていることが多く、受益者が実際に受け取る金額が不確定なケースがあります。

このような「Discretionary Trust(裁量信託)」の受益権の評価は、画一的な基準がなく、実務上の判断が必要です。

外貨建て財産の邦貨換算も必要となるため、評価の複雑さはさらに増します。

情報開示義務

国外財産調書

海外信託の受益権は、国外財産調書の提出対象となります。

受益権の価額が国外財産調書の5,000万円の基準額の計算に含まれます。

信託の計算書

受託者が海外に所在する信託について、信託財産に帰せられる収益がある場合は、受益者が「信託の計算書」を税務署に提出する義務があります。

国外送金等調書

信託から100万円超の金銭の交付を受けた場合、国外送金等調書による捕捉の対象となります。

タックスヘイブン対策税制との関係

オフショアトラストの受託者が低税率国に所在する法人(会社型受託者)である場合、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)との関係を検討する必要があります。

特に、委託者やその親族が受託法人の株式等の50%超を保有している場合は注意が必要です。

よくある質問

Q1:海外信託は日本で節税効果がありますか?

A:日本の税法は海外信託を捕捉する規定を整備しており、節税効果はほとんどありません。

むしろ、適正な申告・開示を怠ると重いペナルティが課されるリスクがあります。

Q2:父が設定した海外信託の存在を最近知りましたが、過去の申告は大丈夫ですか?

A:過去の申告に影響がある場合は、速やかに修正申告を行うべきです。

自主的な修正申告であれば、過少申告加算税が免除される場合があります。

まとめ:海外信託の相続は最高難度の国際税務

海外信託と相続税について解説しました。

この記事のポイント

  • 海外信託にも日本の信託課税規定が適用される
  • 撤回可能信託は委託者死亡時に相続税が課税
  • 受益者連続型信託は受益者変更のたびに課税
  • 国外財産調書等の情報開示義務を遵守すべき
  • 海外信託の日本での節税効果はほとんどない

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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