ハワイ不動産の相続手続き完全ガイド|プロベート・FIRPTA・回避策を徹底解説

・単独名義のハワイ不動産がある場合には「プロベート」と呼ばれる裁判所手続きが必要
・プロベート完了まで1~2年、費用は50万~200万円以上かかることがある
・Joint Tenancy(合有不動産権)やTODD(死亡時移転証書)でプロベート回避可能
・売却時はFIRPTA(15%)+HARPTA(7.25%)の源泉徴収に注意
「ハワイにコンドミニアムを持っている父が亡くなりました。相続手続きはどうすればよいですか?」
ハワイは日本人に人気の不動産投資先であり、このようなご相談を多くいただきます。
しかし、ハワイの相続手続きは日本と全く異なり、時間と費用がかかります。
今回は、ハワイ不動産の相続手続きについて、プロベートの流れから税金、プロベート回避策まで、詳しく解説します。
アメリカの相続制度全般については「アメリカの相続手続きと遺産税【税理士が完全ガイド】」をご覧ください。
目次
ハワイの相続制度の概要
プロベート制度
ハワイ州では、他のアメリカの州と同様に、プロベート(Probate)と呼ばれる裁判所の検認手続きが必要です。
プロベートとは、遺言の有効性を確認し、遺産の管理・分配を監督する裁判所手続きです。
各国のプロベート比較については「プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較【税理士解説】」をご参照ください。
プロベートが必要なケース
ハワイ州でプロベートが必要となるのは、以下のケースです。
・被相続人名義の不動産がある場合(タイムシェアを含む)
・被相続人単独名義の財産が10万ドルを超える場合
ハワイのコンドミニアムやタイムシェアは、金額に関わらずプロベートが必要です。
相続分割主義
アメリカは「相続分割主義」を採用しており、不動産には所在地法が適用されます。
したがって、日本人がハワイに不動産を持っている場合、その不動産についてはハワイ州法が適用されます。
準拠法については「国際相続があった場合の準拠法」をご覧ください。
プロベート手続きの流れ
ステップ1:遺言と遺産の確認
まず、被相続人が遺言を残しているかを確認し、ハワイ州内の財産を調査します。
遺言がある場合、遺言で指定された人物(Personal Representative)が手続きを進めます。
遺言がない場合は、相続人が裁判所に管理人の選任を申請します。
ステップ2:プロベート申請
ハワイ州巡回裁判所(Circuit Court)にプロベートを申請します。
正式プロベート(Formal Probate)と略式プロベート(Informal Probate)があり、不動産がある場合は正式プロベートが必要になることが多いです。
ステップ3:公告と債権者への通知
地元新聞に公告を掲載し、債権者に通知します。
債権者は4か月以内に請求を申し出る必要があります。
ステップ4:遺産の管理
Personal Representativeは、遺産の目録を作成し、債務を清算し、必要に応じて資産を売却します。
ステップ5:最終分配と終結
すべての債務が清算された後、受遺者に遺産を分配し、裁判所に最終報告書を提出してプロベートを終結します。
所要期間と費用
ハワイのプロベートは完了まで1年~2年程度かかります。
| 費用項目 | 目安 |
| 裁判所費用 | 数百ドル |
| 弁護士費用 | 5,000~15,000ドル以上 |
| Personal Representative報酬 | 一般的に遺産総額の数%程度 |
| その他(公告費、鑑定費等) | 1,000~3,000ドル |
| 合計目安 | 50万~200万円以上 |
ハワイ不動産の税金
米国連邦遺産税
米国には連邦レベルの遺産税(Estate Tax)があります。
非居住外国人の基礎控除はわずか6万ドルです。
一方、米国市民・居住者の基礎控除は約1,361万ドル(2024年)と大きな差があります。
| 区分 | 基礎控除額 |
| 米国市民・居住者 | 約1,293万ドル(2024年) |
| 非居住外国人 | 6万ドル |
米国遺産税の税率は、課税遺産額に応じて18%から40%の累進税率が適用されます。
米国遺産税申告については「日本居住の日本人でも米国遺産税申告(Form706-NA)が必要になるケース、記載方法等について徹底解説」をご参照ください。
日米租税条約による調整
日米租税条約により、日本人(非居住外国人)についても、一定の控除が認められる場合があります。
ただし、条約の適用は複雑であり、専門家への相談が必要です。
日本の相続税
日本居住者がハワイの不動産を相続した場合、日本でも相続税が課税されます。
米国で支払った遺産税は、外国税額控除により日本の相続税から控除できます。
外国税額控除については「相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説」をご覧ください。
売却時の源泉徴収(FIRPTA・HARPTA)
相続後にハワイの不動産を売却する場合、FIRPTAとHARPTAによる源泉徴収があります。
税率は原則として下記の通りです。(条件により下記と異なる場合もあります)
HARPTA(ハワイ州):売却価額の7.25%
合計:22.25%
例えば、100万ドルで売却した場合、22万2,500ドル(約3,300万円)が売却代金から差し引かれます。
源泉徴収は「譲渡益」ではなく「売却価額」に対して行われるため、売却損が出ていても源泉徴収されます。
確定申告により、実際の税額との差額は還付されます。
プロベートを回避する方法
プロベートは時間と費用がかかるため、生前対策として回避策を講じることが重要です。
Joint Tenancy(合有不動産権)
Joint Tenancy with Right of Survivorshipは、最も一般的なプロベート回避策です。
この形態で不動産を所有すると、一方の所有者が死亡した場合、その持分は自動的に生存している所有者に移転します。
プロベートを経由せず、死亡証明書を提出するだけで名義変更が完了します。
詳しくは「ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点」をご覧ください。
日本の税務上の注意点
Joint Tenancyで持分が移転した場合、日本では相続税または贈与税の課税対象となります。
「プロベート回避=非課税」ではありませんのでご注意ください。
TODD(Transfer on Death Deed)
TODD(死亡時移転証書)は、ハワイ州で2011年から認められている制度です。
不動産所有者が生前にTODDを作成・登記しておくと、死亡時に指定した受益者に不動産が自動的に移転します。
・プロベート不要
・生前は所有者がすべての権利を保持
・いつでも撤回可能
・登記費用のみで設定可能
TODDのデメリット
・共有者がいる場合は全員の同意が必要
・受益者が先に死亡した場合の備えが必要
・ローンがある場合は銀行との調整が必要
リビングトラスト(Revocable Living Trust)
リビングトラスト(生前信託)を設定し、不動産を信託財産に移転する方法です。
委託者が死亡しても、信託は継続し、受益者に財産が移転されます。
プロベートを経由しないため、時間と費用を節約できます。
リビングトラストについては「リビングトラストとは?相続税の取扱いと日本の税務上の注意点【税理士解説】」をご参照ください。
| 方法 | メリット | デメリット |
| Joint Tenancy | シンプル、低コスト | 生前に持分を失う、贈与税の可能性 |
| TODD | シンプル、低コスト、撤回可能 | ハワイ州限定 |
| リビングトラスト | 柔軟、プライバシー保護 | 設定費用が高い(3,000~5,000ドル以上) |
ハワイ相続の実務ポイント
必要書類
日本側で準備する書類
・相続人の戸籍謄本
・相続人の印鑑証明書
・遺産分割協議書(該当する場合)
・宣誓供述書(Affidavit)
これらの書類は、英語翻訳とアポスティーユ認証が必要です。
認証手続きについては「相続でアポスティーユが必要な場合の取得方法を完全解説【税理士監修】」をご覧ください。
現地弁護士の選定
ハワイのプロベート手続きは、現地の弁護士に依頼するのが一般的です。
ハワイには日本語対応可能な弁護士事務所も多いため、コミュニケーションに不安がある方でも手続きを進めやすいです。
不動産管理の継続
プロベート中も不動産の管理費(HOA費用)、固定資産税、保険料などの支払いは継続します。
Personal Representativeは、これらの支払いを遺産から行います。
よくある質問
Q1. ハワイのタイムシェアにもプロベートは必要ですか?
はい、タイムシェアも不動産の一種であり、プロベートが必要です。タイムシェアは金額が小さくても不動産権として扱われるため、10万ドル以下であってもプロベートを回避できません。TODDを設定しておくことをお勧めします。
Q2. 遺言がなくても日本人が相続できますか?
遺言がない場合、ハワイ州の法定相続分に従って相続されます。配偶者と子がいる場合、配偶者が遺産の半分、残り半分を子が均等に相続するのが一般的です。ただし、プロベート手続きは必要であり、遺言がある場合より複雑になることが多いです。
Q3. FIRPTAで源泉徴収された税金は戻ってきますか?
源泉徴収額が実際の税額を超えている場合は、米国での確定申告(Form 1040NR)により還付を受けることができます。ただし、還付には数か月かかることがあります。また、日本での外国税額控除の対象となるのは、最終的に確定した税額です。
Q4. ハワイの不動産を売らずに保有し続けることはできますか?
はい、可能です。プロベート完了後、相続人名義に変更すれば、そのまま保有し続けることができます。賃貸に出して収益を得ることも可能ですが、米国での確定申告が必要になります。また、日本でも不動産所得として申告が必要です。
Q5. Joint Tenancyに変更すると贈与税がかかりますか?
被相続人単独名義からJoint Tenancyに変更する場合、持分の移転が発生するため、日本では贈与税の課税対象となる可能性があります。ただし、配偶者へ居住用不動産を贈与する場合は、贈与税の配偶者控除(2,000万円)が使える場合があります。変更前に税務上の影響を確認することをお勧めします。
まとめ:ハワイ不動産は生前対策が重要
ハワイの不動産相続は、プロベートに1~2年、50万~200万円以上の費用がかかります。
□ 不動産がある場合は必ずプロベートが必要
□ 非居住外国人の米国遺産税基礎控除はわずか6万ドル
□ 売却時はFIRPTA(15%)+HARPTA(7.25%)の源泉徴収あり
□ Joint Tenancy、TODD、リビングトラストでプロベート回避可能
□ 日本でも相続税が課税される
ハワイに不動産をお持ちの方は、生前にプロベート回避策を講じておくことを強くお勧めします。
当事務所では、ハワイの弁護士とも連携し、プロベート手続きから日本の相続税申告まで一貫してサポートしております。
ハワイ不動産の相続でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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