UAE・ドバイの相続|シャリア法と不動産の注意点

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国際相続

10秒でわかる この記事の要約
①UAEには現在相続税・遺産税がない
②UAEの相続ではイスラム法と非イスラム教徒向け制度を分けて考える必要がある
③ドバイに財産がある非イスラム教徒の日本人は遺言登録制度の活用を優先して検討すべきである
④ドバイ不動産は外国人でも指定エリアで自由保有権を取得できる
⑤UAEに財産があっても日本の相続税の納税義務があれば日本で申告が必要になる

UAE(アラブ首長国連邦)、特にドバイは不動産投資先として世界的に人気が高まっており、日本人による不動産購入も増えています。

一方で、相続の場面になると、「UAEには相続税がないから簡単だろう」と考えるのは危険です。
実際には、適用される相続法、遺言の有効性、不動産の名義変更、銀行口座の凍結、そして日本の相続税まで、複数の論点が重なります。

結論からいうと、UAEの相続は、税金よりも『どの制度で財産を承継させるか』の設計が重要です。
特にドバイ不動産を持つ非イスラム教徒の日本人は、遺言を登録していないと、家族が想定していた分配どおりに承継できないおそれがあります。

この記事では、UAEの相続制度、日本人が注意すべき法務・税務上のポイント、ドバイ不動産の名義変更、銀行口座の凍結、ゴールドビザやフリーゾーン会社持分まで、実務上重要な論点を整理して解説します。

国際相続の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説、日本の納税義務判定は国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!もあわせてご覧ください。

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目次

UAEには現在相続税・遺産税がない

UAEでは、現在、相続税や遺産税はありません。
そのため、UAE側で日本のような相続税負担が発生する前提ではありません。

ただし、ここで安心してはいけません。
税金がないことと、相続が簡単であることは全く別問題です。

UAEでは、誰にどの割合で財産を承継させるか、どの裁判所や制度を使うか、銀行口座や不動産の名義変更をどう進めるかが実務上の大きな論点になります。

UAEの相続はシャリア法だけで一律に決まるわけではない

UAE相続の説明でよくある誤解が、「UAEでは必ずシャリア法が適用される」という理解です。

たしかに、歴史的にはイスラム法の考え方が相続実務に強く影響してきました。
しかし現在は、非イスラム教徒の居住者について、別の制度を使って相続や遺言を整理できる場面が広がっています。

そのため、UAEの相続では次の2つを分けて考える必要があります。

① イスラム法を前提に処理する場面
遺言登録がなく、一般法の流れで相続が進む場面など

② 非イスラム教徒向けの制度を使って別の法で整理する場面
遺言登録制度や非イスラム教徒向けの個人身分法を使う場面など

日本人がUAEに財産を持つ場合は、「何もしないとシャリア法的な分配に近い処理が問題になり得る」という前提で準備した方が安全です。

シャリア法の相続分は日本の感覚と大きく違う

イスラム法の相続分配は、日本の民法の法定相続分とは大きく異なります。

シャリア法の代表的な考え方

男性相続人は女性相続人の2倍の取り分になることがある

妻は子がいる場合に遺産の8分の1とされることがある

夫は子がいる場合に遺産の4分の1とされることがある

遺言による自由な処分は全体の3分の1程度に制約されることがある

つまり、日本人の感覚で「配偶者に全部残す」「子どもに均等に残す」と考えていても、何も対策しなければそのとおりにならない可能性があります。

非イスラム教徒の日本人は遺言登録制度を優先して検討すべき

UAE、特にドバイに不動産や金融資産を持つ非イスラム教徒の日本人にとって、最も重要な生前対策の一つが遺言登録です。

ドバイには、非イスラム教徒向けに遺言を登録し、相続を整理するための制度があります。
この制度を使うことで、少なくとも「何も準備していない状態」よりは、家族が意図した承継に近づけやすくなります。

DIFCの遺言登録制度

DIFC(ドバイ国際金融センター)の裁判所には、非イスラム教徒向けの遺言登録制度があります。
ここで遺言を登録しておくと、ドバイ所在の財産について、遺言内容に沿った処理を進めやすくなります。

DIFC遺言登録制度の主なポイント

対象:主にドバイ所在の不動産、金融資産、会社持分など

登録言語:英語

登録費用:単独の不動産遺言で7,500ディルハムが目安

役割:非イスラム教徒の財産承継を実務上整理しやすくする

ドバイに不動産を持つ日本人で、配偶者や子に明確に承継させたい場合は、DIFC遺言の登録を強く検討すべきです。

日本の遺言だけでは足りるのかという点は、国際相続で有効な英文遺言書の作成方法と注意点も参考になります。

アブダビでは別制度もある

アブダビでは、別の国際金融センターの制度を通じて遺言登録を検討する場面があります。
アブダビに財産がある場合は、ドバイと同じ感覚で処理せず、所在地に応じた制度を確認する必要があります。

ドバイ不動産は外国人でも自由保有権を取得できる

ドバイでは、指定エリアにおいて外国人が自由保有権で不動産を取得できます。

代表的な指定エリアとして、ダウンタウン・ドバイ、ドバイ・マリーナ、パーム・ジュメイラなどが知られています。
外国人が自由保有権を取得できる指定エリアの存在は、ドバイ土地局の案内でも確認できます。 ドバイ土地局の投資家向け資料

そのため、日本人がドバイで不動産を持つこと自体は珍しくありません。
問題は、その不動産を相続時にどう名義変更し、誰に承継させるかです。

ドバイ不動産の名義変更は遺言の有無で難易度が変わる

ドバイ不動産の名義変更は、ドバイ土地局で行います。

もっとも、単純に死亡証明書を出せば終わるわけではありません。
DIFCの遺言登録がある場合は、その制度を前提に裁判所手続を経て名義変更しやすくなりますが、登録がない場合は、より不確実な手続や追加資料が問題になりやすくなります。

また、不動産の種類が完成物件かオフプランかでも実務は変わります。
オフプラン物件では、売買契約上の地位や開発会社への届出が問題になり、相続人側の判断だけで自由に動けないことがあります。

共同所有でも自動的に全部が残るとは限らない

ドバイでは、夫婦や親子で共同所有にすることもあります。

しかし、日本の感覚で「共同名義なら一方が亡くなっても当然に全部が他方へ行く」と考えるのは危険です。
共同所有の持分の扱いと、死亡時の承継ルールは別に確認する必要があります。

共同所有を使う場合は、遺言登録まで含めて設計しておいた方が安全です。
この点は、ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点も参考になります。

UAEの銀行口座は死亡で凍結されやすい

UAEの銀行口座は、被相続人の死亡が確認されると凍結されることがあります。

この口座凍結は、不動産以上に実務上の混乱を招きます。
なぜなら、生活費、管理費、住宅ローン返済、サービスチャージ、学校費用などの支払いが止まる可能性があるからです。

凍結解除には相続関係書類が必要になる

銀行口座の凍結解除には、裁判所や登録制度に基づく相続関係書類が必要になります。
案件によっては数か月単位で時間がかかります。

つまり、相続財産の大半がUAE銀行口座にある場合でも、その資金をすぐに日本へ送金できるとは限りません。
日本の相続税の納税資金をその口座から直ちに出せる前提で動かない方が安全です。

UAEから日本への送金自体は比較的しやすい

UAEは、一般に外貨管理規制が厳しい国ではありません。
そのため、相続手続が整えば、日本への送金自体は比較的進めやすいです。

ただし、日本側では多額の海外送金を受けたときに、その資金の性質を説明できるようにしておく必要があります。
相続であること、どの財産の送金なのか、どの書類に基づくのかを示せるよう、相続関係書類や送金資料は必ず保管すべきです。

UAEのゴールドビザは相続とは別問題になる

UAEでは高額不動産投資などを前提に長期滞在ビザが付与される制度があります。

このビザは、保有者が死亡すれば当然に承継されるものではありません。
そのため、被相続人がゴールドビザを持っていたとしても、配偶者や子がそのまま同じ地位で滞在できるとは限りません。

相続と在留資格は別の制度です。
日本の相続税やUAE財産の承継とは切り分けて考える必要があります。

UAE居住日本人でも日本の相続税が問題になる

UAEに住んでいる日本人の中には、「UAEには相続税がないのだから、日本の相続税も関係ない」と考える方がいます。
しかし、これは危険です。

日本の相続税の納税義務は、UAEに住んでいるかどうかだけでは決まりません。
被相続人と相続人の住所、国籍、過去10年の住所歴によって判定されます。

UAEに移住していても、日本の相続税の納税義務が残っていれば、UAE財産も日本の相続税の対象になります。

この点は、海外移住で相続税ゼロ?10年ルールの要件を徹底解説国際相続における住所の判定もあわせて確認してください。

UAEの居住証明書は相続税そのものを軽減するものではない

UAEでは、税務居住証明書の取得が問題になることがあります。

これは主に所得税の租税条約適用などで使う書類であり、相続税に関する条約がない以上、それだけで日本の相続税が軽くなるわけではありません。

もっとも、日本の相続税法上の「住所」の判定では、UAEでの居住実態を示す補助資料として意味を持つことがあります。
つまり、相続税の軽減書類ではなく、生活実態を説明する資料としての位置づけです。

UAEのフリーゾーン会社持分も相続の対象になる

ドバイやアブダビの自由貿易地域に設立した会社の持分も、当然に相続の対象になります。

しかし、持分が相続財産になることと、フリーゾーン当局がその承継をそのまま受け入れることは別問題です。
定款、株主間契約、フリーゾーン当局の承認ルールを確認しないと、名義変更で止まることがあります。

また、日本の相続税申告では、その会社持分を評価する必要があります。
非上場会社の持分評価の論点が出るため、不動産だけ見ていても足りません。

日本の相続税申告ではUAE財産を日本円で評価する

UAEに相続税がなくても、日本の相続税申告ではUAE財産を日本円に換算したうえで評価しなければなりません。

外貨建て財産の邦貨換算

外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で日本円に換算します。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。

邦貨換算の具体的な考え方や、死亡日に相場がない場合の扱い、金融機関ごとの相場の見方については、【相続税申告】 外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。

UAE不動産の評価

UAE不動産は、日本の路線価方式や倍率方式では評価できません。
現地鑑定評価や売買実例、ドバイ土地局の登録情報などを参考に時価を算定する必要があります。

この点は、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。

海外財産は把握される前提で考えるべき

UAEの銀行口座や投資口座についても、国際的な情報交換制度により、日本の税務当局に把握される可能性があります。

そのため、「UAEは税金がない国だから日本でも分からない」と考えるのは危険です。
海外財産は、最初から把握される前提で、正しく申告する方が安全です。

この点は、CRS(共通報告基準)と相続もご参照ください。

UAE・ドバイ相続の生前対策チェックリスト

ドバイに財産を持つ日本人の生前対策チェックリスト

① 遺言登録制度の利用を最優先で検討する

② 不動産、銀行口座、投資口座、会社持分を一覧化する

③ 配偶者や子に物件番号や口座情報の所在を共有する

④ 日本の公正証書遺言にもUAE財産を明記する

⑤ 納税資金を日本国内で確保する方法をあらかじめ考える

国際結婚や海外居住者が関わる案件では、相続開始後に家族が状況を把握できないこと自体が最大のリスクになります。
「何を持っているか」「どこに連絡するか」「どの制度を使うか」を、被相続人が元気なうちに整理しておくことが最も重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. UAEには相続税がないなら、日本でも税金はかからないのか?

A. かかることがあります。日本の相続税の納税義務があれば、UAE財産も日本の相続税の対象になります。

Q. DIFCの遺言登録をしないとどうなるのか?

A. 非イスラム教徒であっても、何も準備がなければ、意図しない法定分配や手続負担の増大が起きるおそれがあります。ドバイ財産がある場合は、登録制度の利用を優先的に検討すべきです。

Q. ドバイ不動産は外国人でも相続できるのか?

A. 指定エリアで自由保有権として保有している不動産であれば、相続の対象になります。ただし、名義変更手続は別途必要です。

Q. UAEの銀行口座は相続後すぐ日本へ送金できるのか?

A. すぐにできるとは限りません。口座凍結や相続関係書類の整理が先に必要になるため、時間がかかることがあります。

まとめ

まとめ

UAE相続では、相続税の有無よりも、どの制度で承継させるかの設計が重要である。

非イスラム教徒の日本人がドバイに財産を持つ場合は、遺言登録制度の活用を優先して検討すべきである。

ドバイ不動産や銀行口座は、相続開始後すぐに自由に動かせるとは限らない。

UAEに相続税がなくても、日本の相続税の納税義務があれば日本で申告が必要である。

外貨換算、不動産評価、納税資金の準備まで含めて、生前から全体設計しておくことが重要である。

税理士法人トゥモローズでは、国際相続に強い税理士が、UAE・ドバイ財産を含む相続税申告、納税義務判定、海外不動産評価、必要書類整理まで一貫してサポートしています。

「ドバイ不動産を持っているが何から準備すべきか分からない」
「UAE財産が日本の相続税でどう扱われるか知りたい」
「遺言登録制度を使うべきか判断したい」
という場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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