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海外口座の残高証明書の取り方|相続手続きで銀行に英文で請求する方法と必要書類

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海外口座 相続

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 海外の銀行にも、亡くなった方の死亡日時点の口座と残高を書面で知らせる手続きがあります。
  • ただし、呼び方は銀行ごとに違います。日本の「残高証明書」と同じ名前の書類があるとは限りません。
  • 裁判所の手続きの前に相続人に残高を知らせる銀行と、少なくとも裁判所への申立てをしないと開示しない銀行があります。
  • 請求には、死亡を証明する書類、請求する人の本人確認書類、続柄や権限を示す書類が必要です。日本の書類には英訳を付け、翻訳者や証明の方式は銀行の指定に合わせます。
  • 書類がそろい、請求者の権限が確認できてから、14〜15営業日を目安としている銀行があります。
  • 相続税の申告期限(原則10か月)があるため、税理士への確認は残高の取得と並行して進めます。

「父が香港の銀行に口座を持っていたようですが、いくら残っているのか分かりません。」

海外口座の相続は、この確認から始まります。

残高が分からなければ、裁判所の手続きが必要かどうかも、相続人の間でどう分けるかも決められないのです。

日本の銀行なら、相続人が窓口で残高証明書を請求できます。海外の銀行でも似た手続きはありますが、誰に、いつ、何を出してくれるかが銀行ごとに大きく違います

本記事では、香港・シンガポール・オーストラリア・英国の主な銀行の公式情報をもとに、死亡日時点の残高を請求する方法を整理します。

なお、口座があるかどうか自体が分からない場合は、海外金融機関への相続照会から読んでください。


海外の銀行が出す「残高の書面」の呼び方

まず、英語でどう呼ぶかを押さえます。

日本語の「残高証明書」を直訳して「Certificate of Balance」と書いても、相手の銀行に通じないことがあります。

今回確認した銀行の公式ページに、この呼び方は見当たりませんでした。

実際には、次のような呼び方が使われています。

銀行 公式ページでの呼び方 内容
HSBC(香港) balance enquiry(残高照会) 死亡日時点の口座と残高の一覧
HSBC Expat(ジャージー) letter with the details of the products and balances held at date of death 死亡日時点の商品と残高を記載した書面
Commonwealth Bank(オーストラリア) asset letter 口座と残高の明細
Westpac(オーストラリア) Certificate of Product 死亡日時点の口座と残高
NAB(オーストラリア) Statement of Position 死亡日時点の残高を含む書面

請求するときは、名前ではなく中身で伝えるのが確実です。

「死亡日時点の、故人名義のすべての口座とその残高(the accounts held in the name of the deceased and their balances as at the date of death)」と中身で書けば、呼び方が違う銀行にも意図が伝わりやすくなります。


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裁判所の書類がなくても出す銀行・出さない銀行

ここが、海外口座でいちばん差が出るところです。

英米法系の国では、遺産を動かすのに裁判所の書類(Grant of Probate、Letters of Administration など。以下「グラント」)が必要になるのが原則です。

ところが、残高を知らせる段階でグラントを求めるかどうかは、銀行によって違います。

銀行 グラント取得前の残高照会 公式ページの記載
HSBC(香港) 可能(来店が必要) 死亡証明書・故人と請求者の身分証明書・続柄の証明をそろえ、支店に来店して照会する
HSBC(英国) 可能 死亡証明書を受け取り、請求者が法定の近親者か遺言執行者と確認できれば、電話か郵送で残高を伝える
Commonwealth Bank 可能 本人確認を終えた遺産の代表者(Authorised Estate Representative)に、asset letterを送る
OCBC(シンガポール) 可能。ただし裁判所への申立て(Originating Application)が必要 近親者を含む第三者には口座情報を開示しない。グラントか、申立て後に発行されるOriginating Applicationで照会する
DBS(シンガポール) 条件は個別に確認 遺産の金額が分からない場合のFAQがあり、遺言執行者・遺産管理人、遺言がない場合の近親者を対象にしている。払戻しには、シンガポールの裁判所のグラントか、海外のグラントを同国で再承認(reseal)したものが必要

OCBCは、残高の確認だけでも裁判所への申立てが前提になります。

OCBCは、手元の情報でまず裁判所に申し立て(Originating Application)、発行された書類で銀行に口座の詳細を照会し、その結果を財産目録(Schedule of Assets)にまとめて裁判所に出す流れを案内しています。

DBSは、照会する人の立場ごとに必要な書類が違います。グラントを取る前にどこまで開示するかは、DBSに確認してください。

一方で、香港・英国・オーストラリアの銀行には、裁判所の手続きの前に残高を知らせるところがあります。

銀行ごとの手続きは、HSBC香港の口座を相続したらDBS・OCBC・UOBの口座を相続したらANZ・CBA・Westpac・NABの口座を相続したらにまとめています。

私の実務の感覚では、ここを最初に確認するだけで、手続き全体の見通しが大きく変わります。


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東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、海外口座の相続手続きについて、戸籍の収集、英訳の手配、英文の依頼文の作成、公証・アポスティーユの段取りを全国オンラインで対応します(現地の裁判所手続きは現地弁護士、税務判断は税理士と連携)。初回相談無料。

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請求に必要な書類

銀行が求める書類は、おおむね次の3種類です。

書類 日本で用意するもの
死亡を証明する書類 死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本など(英訳を付ける)
請求する人の本人確認書類 パスポート
続柄や権限を示す書類 戸籍謄本(英訳を付ける)。遺言がある場合は遺言書

死亡届の記載事項証明書は、利害関係人が特別の事由がある場合に限って請求できる書類です(戸籍法48条2項)。どの書類で死亡を証明すればよいかは、先に銀行に確認してください。

HSBC(香港)の例

HSBC(香港)は、残高照会に次の書類を求めています。

  • 故人の死亡証明書(原本または認証された写し)
  • 故人の身分証明書の原本
  • 照会する人の身分証明書の原本
  • 続柄を証明する書類の原本

そのうえで、書類と本人の確認を対面で行うため、支店に来店する必要があるとしています。

日本から香港まで行けるかどうかは、ご遺族にとって大きな判断材料になります。

Commonwealth Bankの例

Commonwealth Bankは、口座の情報を、本人確認を終えた遺産の代表者か、遺産の代理人である旨の書面を出した弁護士にだけ提供するとしています。

日本の書類を出すときは、英訳が前提です。

翻訳者の資格や証明の方式を指定する銀行もあります。例えばWestpac(オーストラリア)は、英語以外の書類に認定翻訳者(accredited translator)の英訳を求めています。

死亡の証明の英語での出し方は死亡証明書を英語で用意するには、続柄の証明は戸籍謄本の英訳にまとめています。


英文で請求するときに書くこと

銀行所定の書式や、オンラインの届出フォームがある場合は、そちらを使います。

Commonwealth Bankのように、口座を持っていない人でもオンラインで死亡を届け出られる銀行もあります。

書式がない場合は、手紙やメールで請求します。

必ず入れるのは、次の項目です。

  • 故人の氏名(口座に登録されている綴り)
  • 故人の生年月日と死亡日
  • 分かれば口座番号
  • 請求する人の氏名と、故人との続柄
  • 何を求めるか(死亡日時点のすべての口座と残高)
  • 同封する書類の一覧
  • 連絡先(住所・メール・電話)

文例

以下は、書くべき項目を英文に並べた例です。銀行によって求める内容が違うため、そのまま使えるとは限りません。

Subject: Request for account balances as at the date of death – [故人の氏名]

Dear Bereavement Services Team,

I am writing to notify you of the death of [故人の氏名], date of birth [生年月日], who passed away in Japan on [死亡日].

As the [続柄] of the deceased, I would like to request a statement of all accounts held in the name of the deceased and their balances as at the date of death.

Account number(s), if known: [口座番号]

Please find enclosed [銀行が指定した書類。例:a certified copy of the death certificate with an English translation, a document showing my relationship to the deceased with an English translation, and a certified copy of my passport].

Please let me know if any further documents are required.

Yours faithfully,

[署名]

[請求者の氏名]

[住所]

[メールアドレス]

[電話番号(国番号から)]

同封する書類と、その証明の方式は、銀行から指定されたものに差し替えてください。

なお、日付の書き方に注意してください。

英国・香港・オーストラリアは「日/月/年」の順で書くのが一般的です。「03/04/2026」は4月3日と読まれます。誤解を避けるなら「3 April 2026」のように月を英語で書きます。


日本から請求するときの連絡先と注意点

オーストラリアの主な銀行は、海外からかける番号を公式ページに載せています。

Commonwealth Bankは、海外からの問い合わせ先として「+61 2 8629 0143」を案内しています(2026年9月確認)。

一方で、来店を求める銀行もあります。

HSBC(香港)は残高照会に来店を求め、UOB(シンガポール)は口座の解約に遺言執行者・遺産管理人全員の来店を求めています。

日本から動けない場合は、現地の弁護士や公証人を通じた手続きが必要になるかを、事前に銀行へ確認してください。

郵送するときは、原本の郵送を求めず、認証された写しを受け付ける銀行もあります。

Commonwealth Bankは、原本は郵送せず、認証された写しで足りると案内しています。

認証された写しの作り方や、誰が認証できるかは、銀行によって違います。

原本と写しが同じであることの証明、翻訳者の宣言書に対する公証人の認証、公文書に付けるアポスティーユは、それぞれ別の手続きです。銀行の指定を確認してから準備してください。

署名の認証が必要になる委任状の作り方は、POA(委任状)とはにまとめています。


届くまでの期間

発行までの日数は、銀行や手続きによって違います。

公式ページの目安は、書類がそろい、請求者の権限が確認できてからの日数です。

銀行 公式ページの目安
HSBC(香港) 書類がそろってから、通常15営業日
Commonwealth Bank 14営業日以内にasset letterを送付
Westpac Certificate of Product を14営業日以内に送付
NAB 遺産の代表者の指示から14営業日以内に口座の情報を提供

実際には、書類の不備でやり取りが往復します。

日本からの郵送日数や、英訳・認証の差し戻しがあると、公式の目安より長くかかります。

OCBCのように裁判所への申立てが先に必要な銀行では、その手続きの期間も別にかかります。


残高が分かったあとにすること

残高の書面は、次の手続きを決めるための材料です。

1. 裁判所の手続きが必要かを判断する

銀行によっては、一定の金額までグラントなしで払い戻します。

Commonwealth Bankは、同行にある単独名義の口座の残高の合計が10万豪ドルを超える場合や、同行が取得を求めた場合に、グラントが必要になるとしています。

残高がこの基準を下回るかどうかで、手続きの重さが大きく変わります。

2. 相続人の間で分け方を決める

日本の法律が相続に適用される場合、海外口座も原則として遺産分割で検討する財産になります。

ただし、遺言の有無や、口座の名義・契約の内容、現地の相続手続きによって扱いが変わります。

3. 相続税の確認は、残高の取得を待たずに進める

相続税の申告期限は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁タックスアンサーNo.4205)。海外の銀行の回答を待ってから相談すると、期限が迫ります。

国外にある財産が相続税の対象になるかは、相続人や故人の住所・国籍・過去の居住期間などで判断します(国税庁タックスアンサーNo.4138)。申告が必要か、いくらになるかの判断は税理士の業務です。

外貨建ての残高を円に換算する方法は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説」で解説しています。

払い戻したお金を日本に送る段階の注意点は、海外口座の相続金を日本に送金する手順にまとめています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 故人の口座番号が分かりません。それでも残高を請求できますか?

A. HSBC(香港)は、照会に応じて故人名義の口座の一覧を死亡日時点で提供できると案内しています。口座番号が分からなくても、故人の氏名・生年月日・住所など、本人を特定できる情報をそろえて照会してください。どの情報で特定できるかは銀行によって違うため、通帳、取引明細、郵便物、メールなど手元の資料からできるだけ多くの情報を集めておくと手続きが早く進みます。

Q2. 相続人のうち1人が請求してもよいですか?

A. 誰が請求できるかは銀行によって違います。HSBC(英国)は、法定の近親者か遺言執行者であることが確認できれば残高を伝えるとしています。Commonwealth Bankは、本人確認を終えた遺産の代表者に情報を提供します。OCBC(シンガポール)は、近親者にも口座情報を開示せず、グラントか、裁判所への申立て後に発行されるOriginating Applicationによる照会を案内しています。請求する前に、その銀行が誰を窓口として認めるかを確認してください。

Q3. 残高の書面が英語で届きました。日本の手続きに使うとき、和訳は必要ですか?

A. 提出先によります。相続人の間の話し合いの資料にするだけなら、要点を訳したメモで足りる場合があります。一方で、日本の役所や金融機関、税理士に提出する場合は、和訳を求められることがあります。どこに何を出すかを先に決めてから、必要な範囲で訳すのが効率的です。

Q4. 残高を知るだけで、銀行に手数料はかかりますか?

A. 今回確認した銀行の公式ページでは、死亡日時点の残高を知らせる書面の手数料について、はっきりした記載は見当たりませんでした。手数料の有無は銀行や口座の種類によって違うため、請求するときに確認してください。なお、英訳や公証、郵送にかかる費用は、銀行の手数料とは別に日本側で発生します。


海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。

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まとめ

海外の銀行にも、死亡日時点の口座と残高を書面で知らせる手続きがあります。

ただし、呼び方は銀行ごとに違います。請求するときは「死亡日時点のすべての口座とその残高」と中身で伝えてください。

香港・英国・オーストラリアの銀行には、裁判所の書類がなくても相続人に残高を知らせるところがあります。シンガポールのOCBCは、少なくとも裁判所への申立て(Originating Application)をしないと口座情報を開示しません。

請求には、死亡の証明、請求者の本人確認、続柄や権限の証明が必要です。日本の書類には英訳を付け、証明の方式は銀行の指定に合わせます。

公式ページでは14〜15営業日を目安とする銀行がありますが、書類のやり取りを含めると、それより長くかかる前提で予定を組んでください。

残高が分かれば、裁判所の手続きの要否と分け方を決められます。相続税の確認は、残高の取得と並行して進めてください。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、海外口座の相続手続きについて、戸籍の収集・英訳の手配・英文の依頼文の作成をお手伝いしています。


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根拠法令・公的資料

  • 相続税法(居住無制限納税義務者は国内財産・国外財産が課税対象。国税庁タックスアンサーNo.4138)
  • 相続税の申告期限(国税庁タックスアンサーNo.4205)
  • 戸籍法48条2項(届書の記載事項証明書)
  • 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
  • 各銀行の相続手続きの案内(HSBC香港・HSBC英国・HSBC Expat・Commonwealth Bank・Westpac・NAB・OCBC・DBS。2026年9月確認)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。