海外金融機関への相続照会の実務【Estate Services窓口・初期照会書・死亡通知・残高照会】
10秒でわかる この記事の要約
- 海外金融機関への相続照会は、①初期照会(窓口・必要書類の案内確認)→②死亡通知(凍結)→③残高照会・口座履歴取得の3段階で進めます。段階を飛ばすと後の手続きで書類が揃わず遅延の原因になります。
- 初期照会の主目的は「Estate Services等の相続専門窓口・必要書類・次の手続きの案内を受けること」です。多くの金融機関はプライバシー方針・銀行秘密規制により、初期照会段階では口座の有無や残高を回答しない運用となっています。
- 口座が特定できたら、不正出金・カード利用継続を防ぐため、死亡通知は原則として速やかに行います。ただし、公共料金・保険料・共同名義口座への影響は、死亡通知前または並行して確認します。
- 残高照会で取得した書類は相続税評価・遺産分割協議・凍結解除・送金のすべての段階で使う中核書類です。証券口座の場合は残高だけでなく銘柄・数量・時価・為替・未収配当金までを含む保有明細を取得することが必要です。
海外の相続手続きで最初にぶつかる関門が、「金融機関に何をどう連絡すればよいか」という初動対応です。日本国内の相続なら「相続手続き係」に電話すれば手続き案内が届きますが、海外の金融機関はEstate ServicesやBereavement Teamという専門部署が英文書類での対応を前提としており、初期段階での判断ミスが数か月の遅延を生むこともあります。
本記事では、海外金融機関への相続照会を、①初期照会(相続窓口・必要書類・次手続の確認)→②死亡通知(凍結)→③残高照会・口座履歴取得の3段階に整理し、それぞれの段階で必要な書類・実務上の注意点・所要期間を、行政書士の書類作成支援目線で7つのステップに整理して解説します。
なお、本記事は海外金融機関への相続照会の一般的な流れを解説するもので、国・金融機関・時期により手続きは大きく異なります。実際の照会は各金融機関の指示に従い、現地代理業務・法的判断は現地弁護士・現地専門家と連携して進めます。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、海外相続の初動対応(初期照会書の原案作成・日本側書類の準備・進行管理)を全国オンラインで対応しています。
海外金融機関への相続照会は何を目的とするか——3段階の照会
海外金融機関への相続照会は、目的別に3段階に分かれます。段階を飛ばして「いきなり凍結解除書類パッケージを送る」というアプローチは、書類が揃わず差し戻される原因になるため避けるべきです。
段階1:初期照会(Initial Inquiry)——「窓口・必要書類・次の手続きを確認する」
- 目的:被相続人名義の口座が存在する可能性について、金融機関の相続窓口・必要書類・次の手続きの案内を受けること
- 実施タイミング:相続開始後の初動対応段階(相続発生から1〜4週間)
- 提出書類:初期照会書(Initial Inquiry Letter)、被相続人情報の証明、照会者の身分証明
- 金融機関のプライバシー方針や銀行秘密規制により、初期照会段階では口座の有無や残高を回答しない場合が多い点に留意する
- 詳細な残高開示は、死亡通知・相続人または権限者の確認・必要書類審査後となるのが通常
- この段階で得られる主な情報は、対応窓口・必要書類リスト・次のステップの案内
段階2:死亡通知(Death Notification)——口座凍結手続き
- 目的:口座名義人死亡の公式通知、口座の凍結、詐欺リスクの回避
- 実施タイミング:初期照会後、被相続人の口座存在が確認できた段階
- 提出書類:Death Certificate(死亡証明書)、相続関係を示す書類、金融機関指定の死亡通知フォーム
- 通知後、金融機関は口座を凍結し、その後の資金移動を停止
段階3:残高照会(Balance Inquiry)・口座履歴取得
- 目的:相続開始日時点の残高証明・過去取引履歴の取得(相続税評価・遺産分割協議に必要)
- 実施タイミング:死亡通知が受理された後
- 提出書類:残高証明依頼書、相続人の身分証明、遺言書・遺産分割協議書(該当時)
- 取得できる書類:相続開始日時点の残高証明、過去の取引明細、投資運用報告書、税務書類
なぜ3段階に分けるのか
初動段階で完全な書類パッケージを揃えるのは実務的に困難です。被相続人の口座が確認できない段階で戸籍謄本の英訳や遺産分割協議書を用意しても、口座が存在しないと判明した場合は無駄になります。初期照会で相続窓口・必要書類・次手続を確認→死亡通知で凍結→残高照会で証明書取得、という段階的アプローチが、書類作成のコストを最適化する実務的な進め方です。
段階を飛ばしていい場合
- 被相続人が生前にLetter of Instruction等で口座を明示していた場合(段階1をスキップ可)
- 相続人が既に口座番号・銀行名を把握している場合(段階1を簡略化可)
- 現地代理人(弁護士等)が金融機関と直接やり取りする場合
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
初期照会前の準備——被相続人・口座・照会者情報の整理
初期照会書を作成する前に、次の情報を整理しておくと手続きが円滑になります。情報が不足したまま初期照会を出すと、金融機関からの追加質問で数週間の遅延が発生します。
被相続人情報
- 氏名(パスポート表記の英字氏名)
- 生年月日
- 死亡日
- 国籍・過去の海外居住歴
- 過去の住所(口座開設時に届出していたと思われる住所)
- パスポート番号(旧版でも可)
- Social Security Number(米国口座の場合)・Tax Identification Number
口座情報(判明している範囲で)
- 金融機関の正式名称・支店名
- 口座番号(判明していれば)
- SWIFT/BIC コード・IBAN(判明していれば)
- 口座種別(普通預金・定期預金・証券口座・信託口座等)
- 想定される保管通貨
照会者情報(相続人代表)
- 氏名(パスポート表記)
- 住所
- 生年月日
- 被相続人との続柄
- 連絡先(電話・メール)
- 相続手続きにおける立場(遺言執行者・法定相続人代表・遺産管理人 等)
口座情報が不明な場合の対応
口座番号やSWIFTコードが不明でも、初期照会は可能です。被相続人情報(氏名・生年月日・過去の住所等)から金融機関が内部データベースを検索し、口座の有無を回答してくれる場合もあります。ただし、プライバシー方針・銀行秘密規制・本人確認方針により、初期照会段階では口座有無すら回答されないことも多いため、郵送物・明細・送金履歴など、口座存在を裏付ける物的資料を集めてから照会するのが実務的です。「口座番号が特定できない照会には回答しない」というスタンスの銀行もあります。その場合は、海外資産の発見「デジタル遺品整理」手順の記事で解説した方法で、まず口座の存在を裏付ける物的証拠(郵送物・銀行取引明細等)を集めることを優先します。
照会先の候補一覧の作成
郵送物・メール・端末で発見した金融機関ごとに、次の情報を一覧化しておくと、複数金融機関への並行照会が効率化できます。
- 金融機関名・国・所在地
- Estate Services窓口の連絡先(電話・メール・郵送先)
- 判明している口座情報
- 照会送付予定日
- 進捗管理欄
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東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、海外金融機関への初期照会書の英文原案作成、Estate Services窓口情報の整理、日本側書類の作成、進行管理を全国オンラインで対応します(現地代理行為・法的判断は現地弁護士、税務判断は税理士と連携)。初回相談無料。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
Estate Services / Bereavement Team の窓口を特定する
海外の主要金融機関は、相続手続き専門の窓口を設けています。この窓口を最初に特定することが実務の起点です。
主要金融機関の相続窓口の呼称
- Estate Services:米国・カナダの主要金融機関(Charles Schwab、Fidelity、Bank of America 等)で一般的
- Bereavement Team / Bereavement Services:英国・オーストラリアの銀行(HSBC UK、Barclays、Lloyds、CBA 等)で一般的
- Deceased Account Services:一部の英米金融機関で使用
- Legacy Management:一部のプライベートバンクで使用
- Wealth Transfer Services:資産運用会社系で使用
窓口の特定方法
- 金融機関の公式サイトで「bereavement」「estate」「deceased」等のキーワードで検索
- 公式サイトの「Contact Us」ページで相続関連セクションを探す
- 一般カスタマーサービスに電話・メールで「Estate Servicesの連絡先」を照会
- Letter of Instructionや被相続人の過去の書類で連絡先が判明していればそれを利用
窓口特定時に確認する4項目
窓口が特定できたら、次の4項目を最初に確認します。
- 提出方法:メール添付/郵送/オンラインフォーム/FAX(いまだにファクス指定の金融機関あり)
- 指定書式の有無:金融機関独自のフォームが用意されているか(用意されている場合、そのフォームを優先)
- 必要書類リスト:初期照会・死亡通知・残高照会それぞれの段階での必要書類
- 標準所要期間:各段階の処理にかかる目安期間(通常2〜6週間)
主要金融機関の連絡窓口の例(2026年時点・目安)
以下は代表的な相続窓口の例ですが、公式サイト・電話で最新情報を確認してください(実際の連絡先は本記事執筆時点の情報のため、変更されている場合があります)。
- Bank of America Estate Unit
- HSBC UK Bereavement Team
- Chase Estate Services
- Wells Fargo Estate Care Center
- Charles Schwab Estate Services
- Fidelity Inheritor Services
- UBS Wealth Transfer Services
電話照会は「書類提出案内」を得るための入口
電話での照会は、原則として「書類提出の案内」を得るための入口と割り切ります。電話で被相続人情報を伝えても、詳細情報や具体的な対応方針は電話では回答されないのが通例です。「相続手続きを進めたいので、必要書類のリストと提出方法を教えてほしい」という照会内容にとどめ、詳細な照会は書面(初期照会書)で行うのが実務的です。
初期照会書(Initial Inquiry Letter)の作成
窓口が特定できたら、初期照会書を英文で作成して送付します。書式は自由ですが、金融機関担当者が読みやすい構成にすることが重要です。
初期照会書の記載必須7項目
- 宛先:Estate Services / Bereavement Team宛
- 件名:Inquiry Regarding Account Held by [被相続人氏名] (Deceased on [死亡日])
- 照会者情報:氏名(パスポート表記)、住所、被相続人との続柄、連絡先(電話・メール)
- 被相続人情報:氏名(パスポート表記)、生年月日、死亡日、国籍、過去の住所、パスポート番号
- 照会内容:相続手続きに関する窓口・必要書類・次の手続きの案内依頼(初期照会段階で口座有無・残高の直接回答が得られるとは限らない旨を理解のうえ照会)
- 添付書類:Death Certificate、照会者のパスポートコピー、被相続人との続柄を示す書類(戸籍謄本英訳等)
- 署名:照会者の署名+日付。必要に応じてNotary Publicの認証
英文の書き方のポイント
- フォーマルな英文で作成する(カジュアルな表現は避ける)
- 単刀直入に照会内容を伝える(遠回しな表現は誤解のもと)
- 感情表現は最小限にする(悲しみの表現は必要ないが、丁寧さは保つ)
- 1通の照会書に対して1金融機関にとどめる(複数の金融機関宛の共通照会書は避ける)
Notary Public認証の要否
初期照会段階では、Notary Public認証を求められないことが多いですが、金融機関により対応が分かれます。米国・英国・オーストラリア等では、初期照会段階から署名認証(Signature Verification)を求められる場合があるため、事前に窓口に確認します。
送付方法の選択
- 国際郵便(EMS等):追跡番号付き、原本送付が求められる場合の第一選択
- メール添付:一部の金融機関はメールでの照会受付を対応
- オンラインフォーム:金融機関のウェブサイトに専用フォームがある場合
- FAX:一部の英国系銀行で今も使われる
郵送の場合、書類の到着から金融機関の初回回答までは2〜6週間が目安です。回答がない場合は、送付から3週間経過後に電話・メールで進捗確認を入れます。海外銀行口座の相続手続きで起こりがちな失敗の全体像については、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「海外銀行口座の相続解約で失敗しない!5つの落とし穴と対策」もあわせてご確認ください。
死亡通知(Death Notification)——凍結手続きへの対応
初期照会で被相続人の口座存在が確認できたら、次は公式な死亡通知を金融機関に提出します。これにより口座は凍結され、以降の資金移動が停止されます。
死亡通知に必要な書類
- Death Certificate(死亡証明書):認証付き写し(certified copy)。米国など一部の国では発行機関発行の公式な認証付き写し。日本の被相続人の場合は死亡届受理証明書等の英訳+公証・アポスティーユ(医師発行の死亡診断書は私文書扱いとなり、公文書扱いされる死亡届受理証明書・死亡届記載事項証明書・除籍謄本の英訳の方が受理されやすい傾向)
- 金融機関指定の死亡通知フォーム:金融機関ごとに書式が異なる
- 通知者(相続人代表)の身分証明:パスポートcertified copy、現住所証明
- 相続関係を示す書類:戸籍謄本英訳、遺言書写し、遺産分割協議書等(該当時)
通知後の金融機関側の対応
死亡通知が受理されると、金融機関は次の対応を取ります。
- 口座の凍結(取引停止・出金停止・自動振込停止)
- 定期引き落としの停止(公共料金・保険料・サブスクリプション等)
- クレジットカード等の付帯サービスの停止
- 相続手続き案内書類の交付(次のステップの案内)
凍結による影響と対応
口座凍結により、被相続人名義の各種自動引き落としが停止します。この時期に必要な対応は次の通りです。
- 公共料金・通信料等の名義変更(相続人名義への切替、または解約)
- サブスクリプションサービスの解約通知
- クレジットカードの返却・解約
- 保険料の変更(継続する場合は相続人の口座からの引き落としに切替)
死亡通知のタイミング設計
口座が特定できた場合は、不正出金・カード利用・本人確認通知の放置を防ぐため、死亡通知は原則として速やかに行います。ただし、死亡通知により口座凍結や自動引き落とし停止が生じるため、次の点は死亡通知前または死亡通知と並行して確認します。
- 公共料金・通信料・保険料等の自動引き落としの状況(停止されると生活に影響)
- 共同名義口座(Joint Account)の運用への影響
- 相続人代表への窓口一本化の合意状況
- 被相続人名義のクレジットカード・デビットカードの停止手続きの進捗
「資産全体像がすべて把握できるまで死亡通知を遅らせる」というアプローチは、凍結までの間の不正利用リスク・カード自動引き落とし継続リスクが高まるため、避けるのが実務的です。
共同名義口座(Joint Account)の扱い
被相続人が共同名義人の一人である口座は、死亡通知後の扱いが通常口座と異なります。「Joint Tenancy with Right of Survivorship(生存者権付き共同名義)」の場合、生存する共同名義人に権利が集約されるため、口座が凍結されないことがあります。この扱いは国・州・金融機関により異なるため、共同名義口座については個別に確認します。
残高照会・口座履歴取得
死亡通知が受理された後、相続税評価・遺産分割協議・凍結解除・送金に必要な残高証明・口座履歴を取得します。この段階の書類は相続手続き全体の中核書類となるため、確実に取得することが重要です。
取得すべき書類の一覧
- 相続開始日時点の残高証明:日本の相続税評価に使用(財産評価基本通達4-3)
- 死亡日以降の取引履歴:口座凍結までの取引を確認(不正引き出しがなかったか)
- 過去1〜3年の取引明細:定期的な受取・支払の全体像把握、SOF/SOWの説明資料
- 保有証券明細(証券口座の場合):CUSIP/ISIN、株数、取得価額、時価
- 投資運用報告書:投資信託・ラップ口座の運用状況
- 税務書類:Form 1099(米国)、W-2、Form 1042-S 等
- 口座開設書類:TOD/POD指定書、受益者指定書、共同名義契約書 等
残高照会依頼書の記載事項
- 照会対象口座番号(死亡通知後に金融機関から通知される)
- 残高照会の基準日(相続開始日等)
- 取得したい書類の一覧
- 送付方法(郵送/メール等)
- 手数料に関する承諾(金融機関により残高証明発行手数料が発生)
- 照会者の身分証明・相続人としての立場の証明
相続開始日時点の残高証明の重要性
日本の相続税評価は、相続開始日(被相続人の死亡日)時点の残高で行います。そのため、相続開始日の日付が明記された残高証明を取得することが不可欠です。「本日時点の残高」ではなく、「[死亡日]時点の残高」を明示的に依頼書に記載します。
外貨建て残高の邦貨換算
取得した残高証明は多くの場合、口座通貨(米ドル・英ポンド等)で発行されます。日本の相続税申告では、財産評価基本通達4-3により相続開始日の対顧客直物電信買相場(TTB)で邦貨換算します。外貨換算の実務は、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【相続税申告】外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説」もあわせてご確認ください。
証券口座では残高だけでなく保有明細と時価資料が必要
証券口座の場合は、単なる残高合計だけでは相続税評価が完了しません。相続開始日時点の保有銘柄・数量・通貨・CUSIP/ISIN・評価時価・未収配当金・現金残高を確認できる明細を取得します。日本の相続税申告では外貨建て資産の邦貨換算は相続開始日のTTBで行いますが、証券については銘柄ごとの時価と為替換算を組み合わせて評価するため、残高証明と保有明細の両方が必要になる点に留意します。
取得所要期間
残高証明の発行は、死亡通知受理後2〜6週間程度が目安ですが、国・金融機関・書類の種類により差があります。米国主要金融機関は電子的な残高証明を比較的迅速に発行する一方、英国・欧州系のプライベートバンクは印刷物の郵送形式で1〜2か月かかることもあります。相続税納付期限(相続開始から10か月)を考慮し、残高証明の取得は相続開始から3か月以内に着手するのが安全です。
相続手続き移行——凍結解除書類パッケージへの引き継ぎ
残高照会が完了したら、次は凍結解除・資産移転(相続完了)のための書類パッケージ提出に進みます。この段階では、これまでの3段階で構築した情報・書類を統合します。
凍結解除書類パッケージの構成
凍結解除申請には、次の書類を統合して提出します。
- 相続人の身分証明:パスポートcertified copy、現住所証明
- 相続関係証明書類:戸籍謄本英訳+翻訳者宣言書+公証・アポスティーユ、法定相続情報一覧図英訳、遺産分割協議書英訳(該当時)
- 遺言書関連:公正証書遺言写し・自筆証書遺言(検認済)・遺言執行者選任状(該当時)
- プロベート関連:Grant of Probate、Letters of Administration(米国・英国等の該当ケース)
- POA(委任状):Special POA(相続人代表への委任)
- 金融機関指定フォーム:凍結解除申請書、資金移転指示書等
- 原資証明・KYC書類:Death Certificate、送金目的の説明書、PEP該当性の確認書類 等
3段階の情報が統合される
凍結解除段階では、これまでの3段階で得た情報がすべて必要になります。
- 初期照会段階:金融機関の窓口情報、必要書類リスト、標準手続き
- 死亡通知段階:Death Certificate、相続関係書類、口座番号
- 残高照会段階:相続開始日時点の残高、保有銘柄、取引履歴、税務書類
これら情報が段階的に積み上がるため、早期の段階から書類を整理・保管しておくことが重要です。
行政書士が支援できる範囲
日本の行政書士は、以下の支援ができます。
- 初期照会書の英文原案作成
- 被相続人・照会者情報の整理
- Estate Services窓口情報の一覧化
- 死亡通知フォーム記入案の準備
- 日本側書類(戸籍謄本英訳・翻訳者宣言書・遺産分割協議書英訳等)の作成
- 各段階の進捗管理・スケジュール調整
- 日本の税理士との連携(相続税申告への影響確認)
現地金融機関との直接的な代理交渉、現地法上の法的判断、プロベート裁判所への申立て等の現地代理業務は、現地弁護士・現地専門家の業務範囲です。行政書士は日本側の書類作成と進行管理の整理役として関与します。
次のステップ
凍結解除書類パッケージの提出後は、実際の資産移転(現物移管・売却送金)の段階に進みます。現物移管の実務は、海外証券口座の現物移管の記事、送金実務は送金実務ステップの記事でそれぞれ解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外金融機関への相続照会は電話でもできますか?
A. 電話は「書類提出の案内を得るための入口」と割り切ります。電話で被相続人情報を伝えても、詳細情報や具体的な対応方針は電話では回答されないのが通例で、金融機関側は「まず書類で正式に照会してください」と案内するのが一般的です。したがって、電話は必要書類のリストと提出方法を確認するために使い、実際の照会は書面(初期照会書)で行うのが実務的です。
Q2. 相続人が複数いる場合、初期照会は全員の同意が必要ですか?
A. 初期照会の「窓口・必要書類の案内を受ける」段階では、単独で対応を受けられる場合があります。ただし口座情報の開示・残高証明・資産移転には、Executor(遺言執行者)・Administrator(遺産管理人)・Personal Representative等の権限確認が必要な場合があります。死亡通知後の凍結解除・資産移転段階では、全相続人からのPOA・同意書・遺産分割協議書等の提出が求められます。共同名義口座の場合は生存名義人の同意も必要です。複数相続人がいる案件では、初期照会段階で「相続人代表として照会する」旨を明記し、後の段階で他の相続人の権限確認書類を追加する流れが実務的です。
Q3. 初期照会にどれくらい時間がかかりますか?
A. 初期照会書の送付から金融機関の初回回答までは、2〜6週間が目安です。国・金融機関・時期により差があります。米国主要金融機関は電子的な対応で比較的迅速な傾向があり、英国・欧州系プライベートバンクは郵送ベースで1〜2か月かかることもあります。回答がない場合は、送付から3週間経過後に電話・メールで進捗確認を入れるのが実務的です。
Q4. 相続照会の書類は日本語でも受理されますか?
A. 原則として英文が必要です。海外金融機関の相続窓口(Estate Services / Bereavement Team等)は英語対応が基本で、日本語書類は受け付けないのが一般的です。ただし、日本語の公文書(戸籍謄本・住民票・死亡届受理証明書等)については、翻訳者による英訳+翻訳者宣言書+公証・アポスティーユを添付することで受理されます。日本語のまま送付すると差し戻されるため、必ず英訳+認証を組み合わせて提出します。
Q5. 初期照会後、口座はすぐに凍結されますか?
A. 初期照会のみで直ちに凍結されるとは限りませんが、Death Certificateを添付して死亡事実を正式に伝えた場合、金融機関の運用により死亡通知として扱われ、口座の取引制限・凍結が開始される場合があります。初期照会と死亡通知を明確に分けたい場合は、照会書の件名・本文で「必要書類と手続案内の確認」であることを明示し、死亡通知の提出方法を金融機関に別途確認します。口座が特定できた段階では原則として速やかに死亡通知を行うのが実務的で、通知前または並行して自動引き落とし・共同名義口座への影響を確認します。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
海外金融機関への相続照会は、①初期照会(相続窓口・必要書類・次手続の確認)→②死亡通知(凍結)→③残高照会・口座履歴取得の3段階で進めるのが実務のコツです。段階を飛ばして完全な書類パッケージを最初から用意しても、口座が存在しないと判明すれば無駄になります。初動はEstate Services / Bereavement Teamという相続専門窓口を特定し、電話は「書類提出の案内を得るための入口」と割り切って、英文の初期照会書で正式照会を進めます。
死亡通知後の口座凍結、相続開始日時点の残高証明の取得、口座履歴の取得を経て、凍結解除書類パッケージ(相続関係書類・遺言書・POA・KYC書類等)に統合していきます。所要期間は3段階全体で相続開始から3〜6か月、凍結解除完了までを含めると6か月〜1年半程度を見込んでおくのが安全です。日本の行政書士は、初期照会書の英文原案作成・日本側書類の準備・進行管理を通じて、相続人の負担軽減に貢献できる領域です。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、海外相続の初動対応(海外金融機関への初期照会書の作成、Estate Services窓口情報の整理、日本側書類の作成、進行管理)を、相続発生直後の各段階でご支援しています。アメリカ・香港・シンガポール・英国・スイス・オーストラリア等、主要国の金融機関実務に対応可能で、現地代理行為・現地法判断は現地弁護士、税務判断は税理士法人トゥモローズと連携します。
関連記事
税務の観点もあわせてご確認ください
本記事は海外金融機関への相続照会の実務を、行政書士の書類作成支援目線でまとめたものです。取得した残高証明を用いた相続税評価、外貨換算、外国税額控除、CRS・国外送金等調書との整合性など税務面の判断については、税理士法人トゥモローズが公開している以下の記事もあわせてご確認ください。
根拠法令・公的資料
- 民法882条(相続の開始)
- 民法896条(相続の一般的効力)
- 民法898条(共同相続の効力)
- 相続税法22条(相続財産の評価)
- 財産評価基本通達4-3(外貨建て財産の邦貨換算)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)4条(取引時確認義務)
- 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
- 海外金融機関からの情報開示は、各国の金融機関規制・銀行秘密・個人情報保護法制・金融機関の内部規程に従う(相続人であるだけで直ちに口座情報が開示されるわけではなく、Death Certificate・相続関係書類・Executor/Administrator等の権限確認書類が求められる場合がある)
- FATF(金融活動作業部会)勧告——国際的なAML/CFT基準
