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根抵当権の債務者が亡くなったら|6か月以内の「指定債務者の合意の登記」と銀行対応をわかりやすく

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 事業を営んでいた方の自宅や事業用不動産には、銀行の根抵当権が設定されていることがよくあります。根抵当権は「借りて・返して」を繰り返す事業融資のための担保で、通常の抵当権とはルールが異なります。
  • 債務者が亡くなった場合の最重要ルールが「6か月」の期限です。相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記をしなければ、根抵当権の元本は相続開始時に確定したものとみなされます(民法398条の8)。これは、元本がまだ確定しておらず、登記上の債務者が亡くなった場合の話です。
  • 元本が確定すると、相続開始後に新たに発生する債務は、原則としてその根抵当権では担保されなくなります(新たな借入自体が法律上禁止されるわけではありません)。家業を継いで同じ根抵当権の枠で借入を続けたい場合は、6か月以内に登記まで進める必要があり、通常の相続よりタイトです。
  • 一方、借入枠を継続しないなら、6か月以内の指定債務者登記を急ぐ必要はありません(ただし、相続放棄の判断・銀行への死亡連絡・既存債務の残高確認などは早急に必要です)。本記事では、自分がどちらのケースかの見極めから、段取り・銀行対応まで、相続を専門に扱う行政書士が解説します。

「亡くなった父の自宅の登記を取ってみたら『根抵当権』と書かれていた」「銀行から『6か月以内に手続きしないと枠が使えなくなります』と言われたが、意味が分からない」——。根抵当権は事業融資の世界の仕組みのため、初めて相続に直面したご家族にはなじみが薄く、期限だけが迫ってくる不安の大きい論点です。

整理のポイントはただ一つ、「亡くなった方の融資枠を、相続人が引き続き使いたいかどうか」です。使いたいなら6か月以内の登記に向けて急ぐ必要があり、使わないなら期限に追われる必要はありません。この見極めさえできれば、やるべきことは明確になります。

本記事では、根抵当権の基礎・6か月ルールのしくみ・借入を続けたい場合の段取り・続けない場合の選択肢・銀行との債務承継の協議・期限に間に合わせる進め方・よくある誤解の7つの見出しで解説します。

なお、指定債務者の合意の登記や相続登記などの登記申請は司法書士、承継した借入金の相続税の債務控除などの税務は税理士、返済を巡る紛争や債務整理は弁護士の領域です。行政書士は、戸籍収集・遺産分割協議書の作成・財産と負債の資料整理・全体の進行管理を担い、司法書士らと連携して6か月の期限管理を支えます。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズは、根抵当権付き不動産を含む相続手続きを全国オンラインで対応しています。


根抵当権とは——普通の抵当権と何が違うのか

まず、根抵当権の基本を押さえます。

普通の抵当権:1つの借入に1つの担保

住宅ローンなどの普通の抵当権は、特定の借入を担保します。その借入を完済すれば抵当権は消え、新たに借りるなら改めて設定し直します。

根抵当権:枠(極度額)の中で借りて返してを繰り返せる担保

根抵当権は、極度額(担保の上限額)を決めておき、その枠の中で発生と消滅を繰り返す不特定の債務をまとめて担保する仕組みです。事業資金のように「借りては返す」を繰り返す取引では、毎回抵当権を設定し直す手間が省けるため、事業者への融資で広く使われています。登記事項証明書の乙区に「根抵当権設定」「極度額 金○○○○万円」とあれば、これに当たります。

「元本確定」という概念

根抵当権には元本確定という独特のルールがあります。一定の事由が生じると、その時点で担保される元本が固定され、それ以後に新たに発生する債務は、その根抵当権では担保されなくなります。確定後も普通の抵当権に変わるわけではなく、根抵当権のまま、極度額を上限に、確定した元本・利息・遅延損害金等を担保します

債務者の死亡は「確定に向かう分かれ道」

債務者の死亡そのものでは直ちに確定しませんが、次の見出しのとおり、6か月以内に所定の登記をしなければ確定したものとみなされます。つまり債務者の相続は、「枠を生かして引き継ぐか、確定させて畳むか」を6か月で選ぶ分かれ道なのです。


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6か月ルールのしくみ——民法398条の8をわかりやすく

まず登記事項証明書の「債務者欄」を確認する

6か月ルールが問題になるかは、亡くなった方が根抵当権のどの立場かで変わります。まず登記事項証明書の債務者欄を確認しましょう。

死亡者・根抵当権の状況 6か月ルール
元本が既に確定済み 原則として対象外
死亡者が登記上の債務者 対象となる可能性が高い
死亡者が債務者兼・設定者・所有者 債務者変更・指定債務者・所有権の相続を検討
死亡者が設定者・所有者だけ 原則として対象外。所有権の相続登記を行う
法人だけが債務者、死亡者は代表者だけ 原則として対象外
死亡者も共同債務者として登記 個別確認が必要
死亡者が保証人だけ 398条の8ではなく保証債務の承継を確認

原則:何もしなければ相続開始時に元本確定

元本確定前の根抵当権について、その登記上の債務者が亡くなった場合、根抵当権は相続開始時に存在した債務(亡くなった時点の借入残高等)を担保します。そして、相続開始後6か月以内に「指定債務者の合意の登記」をしないときは、担保すべき元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(民法398条の8)。

「指定債務者の合意の登記」とは

相続人のうち1人または複数を、今後の新たな債務の債務者(指定債務者)として、根抵当権者(銀行)と根抵当権設定者(担保不動産の所有者側)の合意で定め、その旨を登記するものです(実務上は事業承継者1人を指定するケースが一般的です)。この登記をすると、根抵当権は①相続開始時に存在した債務+②指定債務者が相続開始後に新たに負担する債務を担保する形で存続します。

ただし、この登記の効果は、指定債務者が相続開始後に負う債務を根抵当権の担保対象に含められることまでです。銀行に新規融資を実行する義務を生じさせる制度ではなく、実際に借入れを続けるには、別途、銀行の与信審査と融資契約が必要です。つまりこの登記は、根抵当権の担保枠を将来の取引に利用できる状態を維持するものと理解してください。

6か月の起算点は「相続開始」——知った日ではない

この6か月は相続開始(死亡)の時から数えます。相続放棄の熟慮期間(知った時から3か月)と違い、相続人が事情を知らなくても進行する点に注意してください。死亡から発見・手続き開始までに時間が経っている場合、残された期間はさらに短くなります。

確定は「悪いこと」とは限らない

誤解されやすいのですが、元本確定は債務が増えることでも、一括返済を求められることでも当然にはありません。確定すると相続開始後の新たな債務がその根抵当権で担保されなくなるだけで、既存の借入は従来の契約どおり返済を続けるのが基本です。事業を継がないご家庭にとっては、確定させて債務を整理していく方がむしろ自然な流れです。急ぐべきかどうかは、次の見出しの「枠を使い続けたいか」で判断します。


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事業を継いで借入を続けたい場合——6か月以内の段取り

家業(個人事業)を相続人が継ぎ、同じ融資枠で運転資金を借り続けたい場合は、6か月以内に登記まで完了させる必要があります。段取りは次のとおりです。

ステップ1:銀行に連絡し、方針を伝える(できるだけ早く)

まず根抵当権者である銀行に相続の発生を連絡し、事業を継いで枠を使い続けたい意向を伝えます。指定債務者の合意は銀行との合意なので、銀行側の審査・手続きの時間も見込む必要があります。後継者の返済能力等によっては、銀行が別の融資形態を提案することもあります。

ステップ2:債務者変更登記と、必要に応じて所有権の相続登記

指定債務者の合意の登記をする前に、相続による根抵当権の債務者変更登記が必要です(不動産登記法92条)。亡くなった債務者が担保不動産の所有者・設定者も兼ねていた場合は、所有権の相続登記も併せて検討します(設定者・所有者が別人で存命なら、死亡を理由とする所有権の相続登記はありません)。

担保不動産の取得者と事業承継者を早期に決められるのが理想ですが、注意したいのは、既存の金銭債務は遺産分割の対象ではなく、原則として法定相続分で各相続人に承継される点です。遺産分割が6か月以内に成立しない場合でも、法定相続分による登記や共同相続人全員の関与で対応できるか、直ちに司法書士・銀行へ確認してください。遺産分割の未成立だけを理由に6か月の手続きをあきらめる必要はありません。協議書の作成は行政書士が担い、書き方の基本は遺産分割協議書の記事で解説しています。

ステップ3:登記——司法書士と連携

不動産登記法92条上、指定債務者の合意の登記より先に、相続による債務者変更登記を行うことが必要です。死亡した債務者が担保不動産の所有者・設定者を兼ねていた場合は、これに所有権の相続登記も加えて進めます。つまり、必要に応じた相続登記と債務者変更登記を準備し、債務者変更登記のあとに指定債務者の合意の登記を行う流れで、この一連の登記申請は司法書士の領域です。6か月の期限から逆算すると、戸籍収集と遺産分割協議に使える時間は実質数か月しかありません。根抵当権があると分かった時点で、行政書士(戸籍・協議書)と司法書士(登記)が同時に動く体制を組むのが確実です。

間に合わないと確定してしまう

6か月を過ぎると元本は確定し、相続開始後の新たな債務はその根抵当権では担保されなくなります。その場合の立て直し方はFAQで解説しますが、期限内に間に合わせるのが最も低コストであることは間違いありません。


借入を続けない場合——確定を受け入れて債務を整理する

事業を誰も継がない場合や、すでに借入がほとんど残っていない場合は、指定債務者の登記をせず、元本を確定させるのが通常の選択です。

確定後の姿:既存債務だけを担保する状態に

6か月の経過により、相続開始時に存在した元本債務が確定し、その元本に係る利息・遅延損害金なども極度額の範囲内で担保されます(相続開始後に新たに発生した別個の借入債務は、原則として担保されません)。相続人は既存の借入について返済を続け(債務の承継は次の見出し参照)、完済すれば根抵当権を消す(抹消登記)ことができます。

残債ゼロでも「完済=自動で消える」ではない

実務でよくあるのが、借入はとっくに完済しているのに根抵当権の登記だけが残っているケースです。ただし、根抵当権は借入残高がゼロでも、元本確定前で銀行との基本取引契約が続いていれば当然には消滅しません。抹消するには、銀行との取引終了・元本確定・根抵当権の放棄などの関係を整理し、銀行から抹消書類の交付を受けて抹消登記(司法書士の領域)を行います。不動産を売却する場面では抹消が必須になるので、相続登記とあわせて片付けておきましょう。

残債がある場合の選択肢

  • そのまま返済を続ける:契約どおりの返済を継続。銀行に承継の連絡と返済口座の変更を行う
  • 借り換え・一括返済:他の借入への一本化や、預金・保険金での一括返済で担保を外す
  • 担保不動産の売却で返済:不動産を売却し、代金で完済して抹消する

債務が大きい場合は相続放棄・限定承認の検討も

事業債務が大きく、財産で賄えるか不透明な場合は、相続放棄(3か月の熟慮期間)や限定承認の検討が先になります。根抵当権の6か月より先に、放棄の3か月が来る点に注意してください。判断の考え方は、限定承認の記事相続放棄と管理義務の記事をご覧ください。


銀行との協議——既存債務は誰がどう引き継ぐか

枠を続ける・続けないのどちらでも、相続開始時に存在した借入(既存債務)の承継は避けて通れません。

指定債務者と、既存債務の承継は別物

誤解されやすいのですが、指定債務者は「相続開始後にその相続人が新たに負担する債務」を根抵当権の担保対象にするための制度です。指定債務者に選ばれただけで相続開始時の既存債務を単独で相続するわけではなく、他の相続人が既存債務を免れるわけでもありません。登記・手続きごとに効果が違うので、次の表で区別してください。

手続き 効果
相続による債務者変更登記 相続放棄者を除く共同相続人を、被相続債務の承継者として登記
指定債務者の合意の登記 指定相続人が相続後に負う新規債務を担保対象にする
免責的債務引受 銀行の同意により、他の相続人を既存債務から免責することを検討
担保の維持・変更 指定債務者登記や債務引受とは別に、担保がどこまで及ぶかを確認

既存の「可分な金銭債務」は法定相続分で当然に分割承継

通常の借入金のような可分の金銭債務は、遺産分割の対象ではなく、相続開始と同時に各相続人へ法定相続分に応じて当然に分割承継されるのが判例のルールで、遺産分割協議だけで銀行に対する負担割合を変えることはできません。ただし、連帯債務・保証債務・連帯保証債務や、手形・当座貸越などの特殊な債務は別の整理が必要です。また、遺言で相続分が指定されている場合や、銀行が指定相続分による債務承継・免責的債務引受を承認した場合は、扱いが異なります(民法902条の2)。

免責的債務引受は「398条の7の制約」に注意

事業と担保不動産を継ぐ相続人に債務を一本化するには、銀行の同意を得た免責的債務引受により、他の相続人を既存債務から免責できる場合があります。ただし、元本確定前の根抵当権と債務引受の関係には民法398条の7第2項・第3項による制約があり、引受後の債務がその根抵当権でどこまで担保されるかは別途検討が必要です。指定債務者の登記・既存債務の承継契約・担保の維持や再設定は、銀行・司法書士・弁護士と一体で設計してください。

団体信用生命保険・保証人の確認

事業ローンは住宅ローンと違って団体信用生命保険が付いていないことが多いものの、契約によっては保険で残債が精算される場合があります。まず団信・信用保証協会の保証・連帯保証人の有無を契約書と銀行への照会で確認してください。なお、信用保証協会の保証が付いていても、相続人側の債務が当然に消えるわけではありません。保証協会が金融機関へ代位弁済した場合、保証協会が債務者・保証人に対する求償権を取得し、その後は保証協会への返済が必要になります。

既存借入金は債務控除の対象になり得る(極度額ではない)

相続税では、被相続人自身が相続開始時に負担していた借入金で、現に存在し確実と認められるものは、実際にその債務を負担する相続人等の相続税計算上、債務控除の対象となり得ます(相続税法13条・14条)。一方、指定債務者が相続開始後に新たに借り入れた金額や、登記された極度額そのものを控除することはできません。また、亡くなった方が会社借入の連帯保証人だっただけの場合、保証債務は原則として債務控除できず、会社が弁済不能で相続人が保証を履行し会社への求償も見込めないなど、限られた場合に例外的に控除できる可能性があるにとどまります。なお、相続税申告時までに免責的債務引受などで各相続人の実際の負担額が確定していない場合は、原則として相続分に応じた負担額を基準に債務控除を検討し、後日負担額が変わったときの申告への影響は税理士へ確認します。控除の要件・範囲は税理士の領域のため、関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説」をあわせてご確認ください。


6か月に間に合わせる進め方——優先順位のつけ方

枠の継続を目指す場合の、期限から逆算した進め方を整理します。

最初の2週間:現状把握と関係者への連絡

  • 登記事項証明書で根抵当権の内容(極度額・根抵当権者・債務者・設定者)を確認
  • 銀行へ相続発生の連絡、残高証明書の取得、継続意向の打診
  • 司法書士・行政書士への相談開始(この時点で6か月のスケジュールを引く)

〜2か月目:戸籍収集と財産・負債の全体像整理

相続人確定のための戸籍一式の収集と、事業用資産・負債の一覧化を進めます。戸籍収集は行政書士が代行でき、集め方のコツは相続の戸籍収集の記事で解説しています。

〜4か月目:遺産分割協議の成立

担保不動産・事業・債務の承継者を固め、遺産分割協議書を作成して全員の署名・実印をそろえます。並行して、銀行と指定債務者・免責的債務引受の条件を詰めます。

〜6か月:登記の完了

相続登記→根抵当権の変更登記(債務者の相続)→指定債務者の合意の登記を、司法書士が申請します。銀行側の書類準備にも時間がかかるため、登記申請は期限の1か月前を目標にスケジュールを組むと安全です。

協議がまとまりそうにないときは早めに方針転換

相続人間の意見対立で6か月内の協議成立が見込めない場合、無理に枠の継続にこだわらず、元本確定を前提とした資金計画(新規融資・借り換え)へ早めに切り替える方が、結果的に事業への影響を小さくできることもあります。この判断は銀行・税理士も交えて行いましょう。


よくある誤解と注意点

誤解1:「6か月以内に返済しないといけない」

6か月は指定債務者の合意の登記の期限であって、返済期限ではありません。根抵当権の元本確定それ自体によって、当然に既存借入の返済期限が到来するわけでもありません。ただし、融資契約や銀行取引約定書に、債務者の死亡・事業廃止・代表者変更・保証人の死亡などを期限の利益喪失や条件変更の事由とする条項がある場合があります。根抵当権の元本確定と、融資契約上の返済条件は分けて確認してください(返済が滞れば期限の利益を失い得るのは通常の借入と同じです)。

誤解2:「根抵当権があると相続放棄できない」

根抵当権の有無と相続放棄は別の問題です。債務超過が疑われるなら、3か月の熟慮期間内の相続放棄・限定承認を優先して検討します。放棄を検討している間に事業資産の処分などをすると単純承認とみなされ得るため、順序を間違えないでください。

誤解3:「登記は自分でやれば費用がかからない」

指定債務者の合意の登記は、債務者変更登記(必要なら相続登記)との連件になり、銀行との調整も伴う専門性の高い登記です。本人申請も法律上は可能ですが、書類作成と銀行調整が連続し、6か月の期限がある中で書類不備の差し戻しを繰り返す余裕はないため、実務上は司法書士への依頼を強く推奨します。

注意:設定者(担保提供者)が別にいるケース

担保不動産の所有者(設定者)と債務者が別人のこともあります(親の土地を担保に子が借入など)。亡くなったのがどの立場の人か(債務者か・設定者か・保証人か)で必要な手続きは変わります。登記事項証明書と融資契約書で、亡くなった方の立場を最初に確認してください。立場の整理から必要書類の準備までは、行政書士がサポートできます。


よくある質問(FAQ)

Q1. 借入をしていたのは会社(法人)で、亡くなったのは社長個人です。6か月ルールの対象ですか?

A. 登記上の債務者が法人だけで、亡くなった社長個人が債務者として登記されていない場合は、社長の死亡だけを理由とする民法398条の8の6か月ルールは原則として適用されません。ただし、社長個人も共同債務者として登記されている場合は別途確認が必要なので、まず登記事項証明書の債務者欄を確認してください。あわせて、亡くなった社長個人が担保提供者(設定者)や連帯保証人になっていないか、会社の株式・代表者の地位の承継も問題になります。会社の借入と経営者個人の相続が絡む場合は、銀行・税理士・司法書士を交えた事業承継の枠組みで整理する必要があります。

Q2. 亡くなったのは債務者ではなく、土地を担保に提供していた父(物上保証人)です。急ぐ必要はありますか?

A. 6か月ルールの適用はありません。設定者(物上保証人)の死亡は元本の確定事由ではなく、根抵当権は従前のまま存続します。必要なのは、担保不動産についての通常の相続手続き、つまり遺産分割協議と相続登記(3年以内の申請義務)です。ただし、担保付きの不動産を誰が取得するかは、債務者の返済が滞れば競売され得るリスクを引き受けることを意味します。取得者を決める協議の際は、債務者の返済状況や被担保債務の残高を銀行に確認したうえで判断してください。

Q3. 6か月を過ぎて元本が確定してしまいました。もう融資枠は復活できませんか?

A. 確定した根抵当権を元に戻すことはできませんが、事業資金の調達が絶たれるわけではありません。実務では、①銀行と協議して新たに根抵当権を設定し直す(設定費用・登録免許税が改めてかかります)、②証書貸付など根抵当によらない融資形態に切り替える、③信用保証協会の保証付き融資を利用する、といった立て直しが行われます。事業計画と返済能力を示して銀行と交渉することになるため、後継者の事業の実績資料を整えたうえで、早めに銀行へ相談してください。

Q4. 根抵当権付きの実家を相続しますが、借入残高がいくらか分かりません。どう調べればよいですか?

A. まず登記事項証明書の乙区で根抵当権者(銀行等)と極度額を確認します。極度額は「枠の上限」であって実際の借入額ではないため、実際の残高は、相続人であることを示す戸籍等を持って(または郵送で)その銀行に残高証明書を請求して確認します。信用保証協会付きの融資やカードローン枠が同じ根抵当権で担保されていることもあるため、「この根抵当権が担保している取引の一覧」を銀行に照会するのが確実です。あわせて信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)への開示請求も補助的に使えますが、機関ごとに加盟会社・登録情報が異なり、死亡後に情報が削除されている場合や、事業上の買掛金・税金・個人間借入・保証債務などは表示されない場合があるため、銀行への照会と併用してください。


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まとめ

根抵当権の債務者が亡くなったときの分かれ道は、「亡くなった方の融資枠を引き続き使いたいかどうか」です。使いたいなら(元本確定前で、亡くなったのが登記上の債務者の場合)、相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記(民法398条の8)まで完了させる必要があり、銀行協議・戸籍収集・債務者変更登記(必要なら所有権の相続登記も)を数か月で駆け抜ける、時間との勝負になります。6か月は「知った時から」ではなく相続開始から進む点にも注意してください。

なお、指定債務者の合意の登記の効果は、指定相続人が相続後に負う債務を根抵当権の担保対象に含められることまでで、銀行に新規融資を約束させる制度ではありません(借入継続には銀行の審査・融資契約が別途必要です)。

一方、借入枠を継続しないなら、登記をせずに元本を確定させ、既存債務の返済・借り換え・完済後の抹消登記へと整理していくのが自然な流れです。通常の可分な金銭債務は法定相続分で各相続人に分割承継されるため、後継者に一本化するには銀行の同意を得た免責的債務引受が必要です(連帯債務・保証債務は別の整理が必要)。債務超過の疑いがあるなら、6か月より先に来る相続放棄の3か月の検討が最優先です。

一連の登記は司法書士、債務控除など相続税の扱いは税理士、返済を巡る紛争は弁護士の領域です。行政書士は、銀行・司法書士・税理士と整理した方針および相続人全員の合意内容を遺産分割協議書に反映し、財産と負債の整理・期限から逆算した進行管理を担い、各専門家と同時並行で動く体制を整えて、6か月の期限徒過リスクを抑えます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、根抵当権付き不動産を含む相続手続きについて、戸籍収集・財産と負債の資料整理・事業承継を見据えた遺産分割協議書の作成・6か月の期限から逆算した進行管理を、全国オンラインで対応しています。「登記簿に根抵当権と書いてあるが何をすればいいか分からない」といったご相談に、指定債務者の合意の登記など登記申請は司法書士、債務控除・相続税は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。


関連記事


根拠法令・公的資料

  • 民法398条の7(根抵当権者又は債務者の相続と債務引受・元本確定前の制約)
  • 民法398条の8(根抵当権者又は債務者の相続・指定債務者の合意の登記と元本確定)
  • 民法470条以下・472条以下(併存的・免責的債務引受)
  • 民法896条(相続の一般的効力)・902条の2(相続分の指定がある場合の債権者の権利)
  • 民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
  • 不動産登記法92条(指定債務者の合意の登記より先に相続による債務者変更登記が必要)・76条の2(相続登記の申請義務)
  • 相続税法13条・14条(債務控除・控除できる債務の範囲)

公的機関・根拠リンク

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。