台湾の銀行口座を相続したら|遺産税の完税証明書と、日本から解約・送金する手順
10秒でわかる この記事の要約
- 最初に銀行へ連絡し、相続関係・必要書類・払戻しの条件を確認します。
- 銀行は原則として遺産税の税款繳清証明書または核定免税証明書を求めます。少額預金の扱いは銀行ごとに違います。
- 被相続人が身分証統一番号を持つ台湾国民であれば、税務機関の単一窓口で金融資産をまとめて照会できます。
- 日本の書類の認証は、文書の種類と利用する在日窓口によって条件が変わります。
- 日本への送金は、両替の有無・外国為替上の身分区分・金額・誰が申報するかを確認します。
「台湾の父の口座を解約したいのですが、何から手をつければよいですか。」
台湾の預金の相続は、英米法系の国のように裁判所のグラントの取得を一律の出発点とする仕組みではありません。銀行では、相続人と権限の確認に加えて、遺産税の証明書が重要になります。ただし、相続人が明らかでない場合に法院が遺産管理人を選任するなど、裁判所の手続きが必要になる案件もあります(台湾民法1178条)。
本記事では、台湾の法令と、中國信託・玉山銀行・中華郵政の公式案内をもとに、日本に住む相続人が台湾の個人の預金口座を解約して日本へ送金するまでの確認事項を整理します。金額は新台湾ドル(TWD/NT$。以下、台湾元)です。
台湾の相続制度と相続税そのものの解説は、税理士法人トゥモローズの関連記事「台湾の相続制度と相続税を日本と比較しながら徹底解説」をご覧ください。
進め方の全体像(並行して進められます)
大きく3つの段階に分かれます。上から順に終わらせないと次に進めない、というものではありません。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 事前確認と財産の調査 | 銀行へ死亡を連絡し、必要書類と払戻し・送金の条件を確認する。被相続人の国籍、相続に適用される法律、相続人、遺言、財産と債務を整理する |
| 2. 台湾の税務手続きと書類の準備 | 遺産税を申告し、税額があれば納付して、銀行が求める証明書を取得する。日本側の戸籍の収集、中国語訳、認証の準備は同時に進められる |
| 3. 払戻しと両替・送金 | 銀行ごとの条件に従って解約・払戻しを受け、受取方法と送金の手続きを確認する |
制限されているのは、実際に分けて渡す段階です。
遺産及贈与税法8条は、遺産税を納め終わる前の遺産の分割・遺贈の交付・移転登記を制限しています。ただし、同法41条の同意移転証明書や免税証明書などの交付を受けた場合は別です。
銀行への連絡、必要書類の照会、翻訳や認証の準備、相続人の間の話し合いまで止める規定ではありません。日本の相続税の検討も並行して進められます。
相続人の範囲や放棄は、適用される法律を確認してから判断します。
涉外民事法律適用法58条は、相続は原則として被相続人の死亡時の本国法によるとし、中華民国の法律で中華民国国民が相続人となるべき場合は、台湾にある遺産についてその相続を認めるとしています。台湾に預金があるというだけで、相続関係がすべて台湾法で決まるわけではありません。
台湾法が適用される場合、相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、書面で法院に対して行います(民法1174条)。債務は相続で得た財産の限度で責任を負うのが原則ですが(同1148条)、重大な財産の隠匿などには例外があります(同1163条)。
債務や放棄の判断が必要な場合は、払戻しを進める前に台湾の弁護士(律師)に相談してください。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
被相続人の金融資産を1か所で調べる(単一窓口)
どの銀行にいくらあるか分からない場合、税務機関が単一窓口となって金融機関の団体にまとめて照会する制度があります(稽徴機関単一窓口受理査詢被相続人金融遺産資料作業要点)。
| 項目 | 作業要点の定め(2026年9月21日確認) |
|---|---|
| 対象となる被相続人 | 身分証統一番号を持つ中華民国国民。これに当たらない場合、この制度は使えない |
| 申請できる人 | 相続を放棄していない相続人、遺言執行者、遺産管理人 |
| 申請の方法 | オンライン(自然人憑証、健保カードのネット登録、モバイル自然人憑証、携帯電話による認証など)または税務機関の窓口 |
| 身分証がない申請人 | パスポート原本。華僑身分証明、国外転出前の戸籍資料、居留証を併せて提出できる |
| 国外で作られた書類 | 台湾の在外機構の認証が必要。国外から委任して申請する場合も同じ |
| 調べられる財産 | 預金、基金、上場・店頭・興櫃の有価証券、短期票券、人身保険、先物、貸金庫、金融機関からの借入とクレジットカード債務、電子決済アカウント、記名式プリペイドカード、投資理財口座、信用組合の出資金の12種類。基準日は死亡日 |
オンライン申請では、利用資格・認証手段・必要書類を確認します。
対象となる被相続人について、申請資格と必要書類の条件を満たす人が利用します。あわせて、自然人憑証や健保カードの登録、携帯電話による認証など、対応する認証手段も必要です。日本に住んでいるという理由だけで使えないわけではありません。使える手段がない場合は、窓口での申請や台湾にいる人への委任を検討してください。
期間の読み方に注意してください。
作業要点が定める10営業日は、金融機関側の回答期限です。申請した日からではなく、財政資訊中心が申請書のデータを所定のサイトに置いた日(または電子回線で伝送した日)の翌日から数えます。申請者が受け取れるのは、所定のサイトでは申請から30日後〜90日の間のダウンロードで、ほかに書留の郵送などの方法があります。受け取れる期間が延びても、遺産税の申告期限が延びるわけではありません。
照会結果は、申告の参考資料です。
同要点は、ほかに財産があれば申告が必要だとしています。回答された内容が死亡日の実際の資料と一致することを確認した場合には、申告のときに関係書類の添付を省略できるとされています。
制度を使えない場合は、通帳、取引明細、郵便物などから銀行を特定して個別に照会します。残高を書面で出してもらう一般的な進め方は、海外口座の残高証明書の取り方にまとめています(英文での請求を前提にした一般論です)。
遺産税の申告・納付と、銀行が求める証明書
台湾の遺産税は、相続人などが申告し、税務機関が税額を決定して納付する流れです。日本の申告納税方式とは進み方が違います。
| 項目 | 遺産及贈与税法の定め |
|---|---|
| 申告期限 | 死亡の日の翌日から6か月以内(23条1項) |
| 申告先 | 原則は被相続人の戸籍所在地を管轄する税務機関。被相続人が法律上の境外居住者である台湾国民、または台湾国民でない場合は臺北国税局(23条2項) |
| 延長 | 期限までに書面で申請。原則3か月が限度(不可抗力などは個別に判断。26条) |
| 納付 | 納税通知書の送達の翌日から2か月以内。必要なら2か月の延期を申請できる。現金一括が難しい場合は、期限内の申請と承認により18期以内の分割(各期の間隔は2か月以内。利息が加算される。30条) |
| 証明書 | 納付後に税款繳清証明書、課税されないと認定された場合は核定免税証明書(41条1項) |
「日本在住だから臺北国税局」ではありません。
遺産及贈与税法4条3項は、死亡前2年以内に台湾に住所があった場合、または台湾に住所はないが居所があり、死亡前2年以内の台湾での居留が合計365日を超える場合などを「境内に経常的に居住する」としています。現在の住所だけで区分は決まりません。申告先は事前に確認してください。
この税務上の区分は、後に説明する外国為替上の区分とは別の判定です。
免税額と、配偶者などの控除は分けて確認します。
2026年中に発生した相続の免税額は1,333万元です。この免税額は、法律上の境外居住者である台湾国民や、台湾国民でない被相続人にも適用されます(18条2項)。
一方、これらの被相続人については、配偶者(553万元)、直系血親卑属(1人56万元)、父母(1人138万元)などの17条1項1号〜7号の控除は適用されません。債務や葬式費用(138万元)など8号〜11号の控除は、台湾の域内で生じたものに限って適用されます(17条2項)。金額はいずれも、それぞれの適用条件を満たす場合のものです。
免税額以下でも、銀行の手続きが自動的に不要になるわけではありません。
申告や免税証明書の取得が必要かどうかは、台湾の税務機関または現地の専門家(記帳士・会計師)に確認してください。
台湾の申告は納税義務者などが行い、必要に応じて現地の専門家へ依頼します。日本の相続税について相談や申告の依頼が必要な場合は、税理士が対応します。当法人は、戸籍の収集、翻訳・認証の段取り、銀行との連絡など、日本側の手続きを支援します。台湾側の税務・法律の手続きの担当者と委任の範囲は、案件ごとに確認します。
台湾の銀行から届いた案内を、そのままご相談ください。
銀行名と、いま困っていることを伺い、必要書類と日本から進められる手続きを整理します。東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、戸籍の収集、中国語訳・認証の段取り、銀行との連絡、解約・払戻し・日本への送金を日本側の窓口として支援します。台湾側の税務・法律の手続きが必要な場合の進め方や、対応範囲・費用は初回のご相談でご案内します。資料がそろっていなくてもご相談いただけます。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
銀行の払戻しに必要な書類と、少額預金の取扱い
必要書類がそろったら、銀行と確認した本人または代理人が、指定された方法で申請します。共通する書類はありますが、書式、原本の提示、外国籍の相続人の扱いは銀行ごとに異なります。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 各行所定の相続申請書 | 相続系統表(相続人の一覧)を含むもの。銀行の窓口またはサイトで入手する |
| 預金の証拠 | 通帳、預金証書、未使用の小切手用紙など |
| 死亡を示す書類 | 死亡証明書、除籍の戸籍謄本、法院の死亡宣告の判決のいずれか |
| 相続人を確認する書類 | 台湾発行の戸籍資料(記事欄を含む戸籍謄本や戸口名簿など)。日本国籍の相続人など台湾の戸籍資料がない場合の代替書類、中国語訳・認証の要否は銀行へ事前に確認する |
| 税務の証明書 | 遺産税の税款繳清証明書または核定免税証明書 |
| 本人確認 | 相続人の身分証またはパスポートと印章。本人が来店して署名する場合は印章なしでよい銀行もある。外国籍の相続人が使える書類は銀行に確認する |
少額預金の扱いは、銀行ごとに違います。
| 銀行 | 公式案内で確認できる内容(2026年9月21日確認) |
|---|---|
| 中國信託 | 原則として、遺産税の税款繳清証明書または核定免税証明書が必要。20万元以下で財産が預金だけなら、証明書の添付を省略できる旨の案内がある。※公式資料には20万元以上についての記載もあるため、20万元ちょうどの扱いは銀行に確認する |
| 玉山銀行 | 相続する預金が20万元以下なら税務の証明書は不要(死亡を示す書類は必要)。合計3万元以下(台湾元・外貨)で未分割の預金は、相続人の1人が自ら、または所定の委任の方法により代理人を通じて手続きできる |
| 中華郵政 | 相続する預金が20万元以下なら税務の証明書は不要。3万元以下は、ほかの相続人の同意を得て代表して申請・受領する旨を書面で確約したうえで、相続人の1人が申請できる。この代表申請で使う戸籍書類は、死亡日以後に発行されたものに限る |
銀行が証明書の添付を省略することと、遺産税の申告や納税が不要であることは別です。
金額の集計の方法は、制度と銀行ごとに確認します。たとえば玉山銀行の3万元以下の取扱いは、台湾元・外貨の相続預金の総額を対象とし、未分割であることも条件です。20万元の証明書の省略に関する集計の範囲など、資料だけでは確定できない点は、外貨の換算方法やほかの財産の有無も含めて、銀行と税務機関に確認してください。
相続人が全員そろえない場合は、委託書を使います。
中國信託の案内は「全体の相続人が書類を持って支店で手続きする」としたうえで、全員が来店できない場合の委託書を案内しています。
なお、相続人に未成年者(台湾民法では満18歳未満)がいる場合、通常は法定代理人が署名・押印します。ただし台湾法が適用され、親と子が共同相続人として遺産を分けるなど利益が相反する場合には、特別代理人の選任が必要になることがあります(同1086条)。
日本の書類を台湾で使えるようにする(在日窓口の認証)
日本で取得・作成した戸籍謄本や委任状を台湾で使うときは、提出先が求める中国語訳と認証の範囲を先に確認します。認証が必要な書類は、台北駐日経済文化代表処など、管轄する在日窓口で手続きを行います。
| 項目 | 台北駐日経済文化代表処(東京)の案内(2026年9月21日確認) |
|---|---|
| 公文書(戸籍謄本・住民票など) | 申請書、パスポート原本とコピー、認証を受ける書類の原本とコピー。発行機関の公印があることを確認する |
| 私文書(委任状・授権書・相続放棄声明書など) | あらかじめ公証役場で公証を受ける。または領事の面前で署名するため、署名する直前の状態で持参する |
| 公文書を代理申請する場合 | 申請書、申請者本人のパスポートの写し、認証を受ける書類の原本と写し、代理委任状の原本、代理人のパスポートの原本と写しなど。通常の公文書について、公証済みであることが一律に求められるわけではない |
| 私文書を代理申請する場合 | 公証役場で公証を受けた書類の原本と写しに加えて、申請書、本人のパスポートの写し、代理委任状の原本、代理人のパスポートの原本と写しなど。署名そのものについては、本人が行う手続きを確認する |
| 手数料 | 1部2,300円。現金のみ |
| 所要日数 | 約1週間。特急は2026年8月1日から、申請日の3営業日後の受領 |
| 管轄 | 受け付けられる公文書は、管轄区域内の機関が発行したものに限る。私文書は申請者の居住地または発行機関の所在地が基準で、管轄区域外の公証役場で公証を受けた書類は受け付けない |
| 郵送・予約 | 認証後の返送は日本国内のみ(レターパック)。金曜日は完全予約制 |
条件は窓口ごとに違います。
台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処の案内では、公文書の原本は発行から3か月以内とされ、返送は日本国内のほか台湾宛てのEMSも案内されています。上の表は東京の案内です。利用する窓口の条件を、取り寄せる前に確認してください。
取り寄せた戸籍の発行元が別の地域だと、その地域を管轄する窓口で認証を受けることになり、日程が延びます。
「渡航が不要」と「日本での手続きも不要」は別です。
東京の窓口で委任状などの署名を証明してもらう場合は、本人が公証役場へ行くか、領事の面前で署名する必要があります。郵送だけで署名の確認まで終わるわけではありません。
翻訳は、認証とは別の作業です。
在日窓口は翻訳そのものを行いません。中国語の訳文を用意するのは申請する側です。訳文にも認証が必要になる場合があり、扱いは窓口によって異なります。提出先(国税局・銀行)に、どの書類にどこまでの認証と訳文が必要かを先に確認してください。
戸籍の翻訳前に確認することは、戸籍謄本の英訳でも解説しています。同記事は英訳についての一般的な案内です。台湾向けの中国語訳と認証の方式は、提出先と利用する在日窓口の指定に従ってください。
台湾に行けない場合の委任状と、代理できる手続き
相続人が全員日本にいる場合、全員で渡航するのは現実的ではありません。ただし、何を代理できるかは手続きごとに違います。
| 手続き | 代理の可否と確認すること |
|---|---|
| 銀行の解約・払戻し | 銀行所定の委託書による代理が案内されている。受任者、書式、認証の方式を銀行に確認する |
| 遺産税の申告 | 委任の方式は税務機関と現地の専門家に確認する |
| 両替・送金の申報 | 金額と身分区分によって、本人が行うか、境内の代理人名義で行うかが変わる(次章) |
国外に住む相続人が委任する場合
委任状の書式と、求められる証明の方法は銀行ごとに指定されます。日本から依頼するときは、書式と記載内容を銀行に確認してから、在日窓口の案内に従って認証を受けてください。
税務機関の単一窓口については、作業要点が、国外で作られた証明書類と、国外から委任して申請する場合の授権について、台湾の在外機構の認証を求めています。銀行の手続きでも、同様の認証を求められることがあります。
外国籍の相続人が使える戸籍・本人確認書類、中国語訳、認証の範囲は、預金のある支店に事前に照会してください。
日本の印鑑登録証明書の扱い
日本の印鑑登録証明書を、台湾の戸政事務所が発行する印鑑証明と当然に同じものとして扱うことはできません。国外の相続人については、銀行が指定する委任状と認証の方式を確認してください。日本の印鑑登録証明書を補足資料として求めるかどうかも、提出先に確認します。
中國信託は、委託人が同行に口座を持っていれば届出印、口座がなければ1年以内の印鑑証明を求めており、台湾に戸籍がある人を前提にした運用です。日本から手続きする場合にどの形が受け付けられるかは、支店に確認してください。
委任状には、進めたい範囲を具体的に書きます。
口座の解約、払戻しの受領、送金の依頼などです。範囲が狭すぎると、窓口で追加の委任状を求められます。委任状そのものの考え方は、POA(委任状)とはにまとめています(同記事は主に英語で作成する委任状の解説です)。
日本への送金は、両替の有無・身分区分・代理の方式を確認する
払い戻したお金を日本で受け取るときは、銀行の払戻しの条件に加えて、台湾の外国為替の規制を確認します。台湾元を外貨に換えて送る場合と、外貨預金をその通貨のまま送る場合とで、確認する手続きが違います。
日本在住でも、外国為替上の非居住民とは限りません。
外匯收支或交易申報辦法(外国為替の収支・取引の申報に関する規則。以下「同辦法」)3条は、満18歳で中華民国の国民身分証を持つ人などを「個人」とし、居留証を持たない非中華民国国民などを「非居住民自然人」としています。遺産税で使う居住の区分とは別の判定です。送金する銀行に身分証明書を示して確認してください。
| 外国為替上の非居住民が、台湾元の両替を伴う取引をする場合 | |
|---|---|
| 1件10万米ドル相当以下 | 申報書を記入して、新台湾ドルの結匯申報ができる(4条1項5号) |
| 1件10万米ドル相当を超える | 台湾で適法に取得した遺産・保険金・弔慰金については、申報書と証明書類を添えて、銀行を通じて中央銀行の許可を受けてから申報する(6条1項3号(四)) |
送金が禁止される金額ではなく、手続きが変わる基準です。
申報そのものの基準は、別にあります。
同辦法2条は、台湾域内の新台湾ドル50万元相当以上の外貨の収支・取引を申報の対象としています。これより少額なら、銀行の本人確認や相続資金であることの確認まで不要になるわけではありません。
認証した委任状があっても、両替の申報まで同じ代理人ができるとは限りません。
同辦法10条1項は、非居住民である自然人が4条1項5号などの結匯申報をするとき、中央銀行に別段の定めがある場合を除き、パスポートなどの身分証明書により本人が行うことを求めています。
一方、同条3項は、非居住民が6条1項3号・4号により銀行を通じて中央銀行に申請する場合について、授権書により台湾域内の代理人の名義で申報を代行させることができるとしています。
日本から進めたい場合は、口座の解約・払戻しの委任だけでなく、両替・送金の申報に使える代理の方式も、委任状を作る前に銀行へ確認してください。
複数回に分けるかどうかも、先に相談します。
複数回の払戻しや送金を予定する場合も、相続財産の総額と予定する取引の内容を銀行に伝え、必要な許可や申報の扱いを確認してください。許可が不要になると自分で判断して金額を分けることのないようにしてください。
受取口座は、払戻しの前に決めます。
台湾元の口座への入金、小切手、外貨での送金のどれになるかは、銀行と案件によって異なります。日本側にも、受け取れる通貨、相続資金であることの確認書類、SWIFTコード、口座名義、手数料を確認してください。台湾元の両替を伴わない外貨送金の場合も、銀行の相続払戻しと送金の条件は確認が必要です。
着金までの流れと中継銀行の手数料の考え方は、海外口座の相続金を日本に送金する手順で説明しています(台湾の規制の説明は本章をご覧ください)。
中國信託で貸金庫・証券口座がある場合に、先に確認すること
中國信託は、次の2つについて、先に済ませてから支店での手続きに進むよう案内しています。
貸金庫は、国税局の立会いで開けます。
先に国税局へ開扉を申請し、相続人が死亡証明書と相続関係の書類を持参して、国税局の担当者の立会いのもと、約束した日に貸金庫のある支店で開扉と中身の確認を行います。
勝手に開けて中身を持ち出すことはできません。単一窓口の照会では貸金庫の有無も分かります。
証券口座は、先に証券会社で名義を書き換えます。
同行は、先に証券会社で株式の相続の名義変更を済ませ、集中保管口座の番号が結清されたことを確認してから、銀行でのその証券口座の継承・解約に進むよう案内しています。
証券の決済に結びついた口座についての案内であり、別の証券会社の資産や、関係のない預金口座まで一律に止まるという意味ではありません。
単一窓口の回答で、ほかに何が残っているかを確認してから着手してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続人の中に台湾籍でない人がいます。手続きできますか?
A. 台湾籍でない相続人も、必要書類と銀行の受付条件を確認して手続きを進めます。本人確認は身分証のほかパスポートでもよいとする銀行がありますが、相続人の範囲を日本の戸籍で示せるか、どこまでの中国語訳と認証が必要かは銀行によって判断が分かれます。外国籍の相続人について必要な書類は、預金のある支店へ事前に問い合わせるのが確実です。口座のある支店に、使う予定の書類の一覧を伝えて確認してください。
Q2. 日本の実印と印鑑登録証明書は、台湾の印鑑証明の代わりになりますか?
A. 当然に同じものとして扱うことはできません。台湾の印鑑証明は戸政事務所が発行するもので、台湾に戸籍がある人のための制度です。国外に住む人の委任については、台湾の在外機構の認証を受けた授権委任書など、別の証明の方法が定められていることがあります。全銀行に共通する手順ではないため、日本の印鑑登録証明書で代替できると判断せず、取引銀行が指定する委任状の書式と認証の方法を確認してください。
Q3. 台湾元のまま受け取ることはできますか?
A. 払戻しの先と方法は銀行によって異なります。台湾元の口座への入金、小切手、日本の口座への外貨送金のどれが選べるかを、払戻しの前に確認してください。台湾元を外貨に換える場合は、外国為替上の身分区分、金額、本人または代理人による申報の条件も確認します。日本在住という理由だけで一律に非居住民になるわけではありません。非居住民が台湾で適法に取得した遺産について、1件10万米ドル相当を超える両替を伴う取引を行う場合は、銀行を通じた中央銀行の許可が必要です。
Q4. 日本の行政書士には何を頼めますか?
A. 日本側の戸籍などの収集、相続関係の整理、翻訳・認証の手配、銀行との連絡、解約・払戻し・日本送金に向けた手続きを支援します。台湾の税務申告や台湾法に基づく法律手続きは、それぞれの手続きと資格に応じて対応する必要があります。銀行の払戻しの代理は親族が行える場合もあるため、台湾での代理がすべて律師の業務というわけではありません。日本の相続税は税理士法人トゥモローズが対応します。日本と台湾のどちらで何をするかを先に分けておくと、認証の取り直しを防げます。
Q5. 台湾の口座のお金にも、日本の相続税はかかりますか?
A. 国外にある財産が課税対象に含まれるかは、被相続人と財産を取得した人の住所、国籍、過去の居住状況などで判定します(国税庁タックスアンサーNo.4138)。課税対象に含まれることと、基礎控除や特例を踏まえて申告・納税が必要かどうかは別の問題です。申告が必要な場合、期限は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(同No.4205)。台湾で遺産税を納めた場合の調整も含め、判断は税理士の業務です。台湾側の手続きの完了を待たず、並行して相談してください。
海外口座の相続代行サービスの内容と料金の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
まず銀行に死亡を連絡し、相続関係、必要書類、払戻しと送金の条件を確認してください。書類の準備や日本の相続税の検討は並行して進められます。
銀行は原則として遺産税の税款繳清証明書か核定免税証明書を求めます。少額預金で証明書の添付が省略されることと、申告・納税が不要であることは別です。
日本の書類の認証は、文書の種類と利用する在日窓口で条件が変わります。委任状は、銀行の払戻しの代理と、両替・送金の申報の代理を分けて確認してください。
進め方に迷ったら、銀行から届いた案内を持ってご相談ください。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、台湾を含む海外の口座の相続手続きについて、口座と残高の確認、戸籍の収集と翻訳・認証の段取り、銀行とのやり取り、解約・払戻し・日本への送金までを日本側の窓口としてお手伝いしています。
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税務の観点もあわせてご確認ください
台湾の相続税と日本の相続税については、税理士法人トゥモローズの関連記事で解説しています。台湾の相続制度と相続税の全体像、海外口座を解約するときの日本の税務上の注意点は、以下をあわせてご確認ください(台湾の控除や両替の規制については、本記事の該当箇所と公式資料をご覧ください)。
根拠法令・公的資料
- 遺産及贈与税法4条(経常的に境内に居住するかの判定)・8条(納付前の分割等の制限)・17条(控除と、境外居住の被相続人への適用制限)・18条(免税額)・23条(申告期限と申告先)・26条(延長)・30条(納付・分割)・41条(税款繳清証明書・核定免税証明書)
- 台湾民法12条(満18歳で成年)・1086条(利益相反の場合の特別代理人)・1148条(相続財産の限度での責任)・1163条(その例外)・1174条(相続放棄は3か月以内に書面で法院へ)・1178条(法院による遺産管理人の選任)
- 涉外民事法律適用法58条(相続は被相続人の死亡時の本国法による)
- 稽徴機関単一窓口受理査詢被相続人金融遺産資料作業要点(2023年12月26日改正)
- 外匯収支または交易申報辦法2条(申報の対象)・3条(個人と非居住民自然人の定義)・4条1項5号・6条1項3号(四)・10条(本人による申報と、境内代理人による代理申報)
- 相続税の申告期限(国税庁タックスアンサーNo.4205)/国外財産の課税範囲(同No.4138)
- 行政書士法1条の3・1条の4(行政書士の業務範囲)
- 中國信託・玉山銀行・中華郵政の公式案内および公式書式(2026年9月21日確認)
公的機関・根拠リンク
- 遺産及贈与税法(全国法規資料庫)
- 台湾民法1174条(相続の放棄)
- 台湾民法1178条(法院による遺産管理人の選任)
- 涉外民事法律適用法58条
- 稽徴機関単一窓口受理査詢被相続人金融遺産資料作業要点
- 財政部臺北国税局「単一窓口査詢金融遺産」専区
- 財政部「115年度遺産税免税額及各項扣除額金額」
- 外匯収支または交易申報辦法3条(定義)
- 外匯収支または交易申報辦法4条
- 外匯収支または交易申報辦法6条
- 外匯収支または交易申報辦法10条(本人・代理人による申報)
- 中國信託銀行「一般繼承_辦理繼承結清作業應備文件及作業提醒」(PDF)
- 玉山銀行FAQ「存款人亡故,須徵提何種文件以辦理相關繼承事宜?」
- 中華郵政「請問存簿儲金繼承要準備那些文件?」
- 台北駐日経済文化代表処「個人名義の認証」
- 台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処「公文書」
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき
